第一話 秤アルトと覚悟の音
「状況は?」
「一発命中。被害も想定通りに広がってる」
「ミメシスは?」
「『人形』の方の準備はできたらしい」
舗装されたカタコンベ内を『アリウススクワッド』は歩幅を揃えて歩いていく。
「んじゃ____
アルトはその惨状を見据え________________
「アリウススクワッド、作戦開始」
そう、呟いた。
トリニティ総合学園 陥落
____________________
一ヶ月前
「これが、今回の作戦です」
「......侵略行為だろ」
「ええ、そうですが?」
「ゲマトリアは『神秘』に直接干渉しなかったんじゃないのか?まぁ、俺がいる時点でそれはもう終わってんのか」
アルトはベアトリーチェから渡された書類をパラパラと適当に捲り、いつものように悪態をつく。
「ボケるのもいい加減にしろ。俺はやらな_______________
「今回の作戦に成功した暁には、アリウススクワッド全員を解放しましょう」
その言葉に、アルトは否定の言葉を引っ込める。
「......」
「ふふ......生意気な瞳も、今回ばかりは許してあげましょう」
ベアトリーチェは心底楽しそうにほくそ笑む。
「......テメェが約束を守るとは思えねぇがな」
「約束を破れば、あなたはゲマトリアを解体してでも私を殺すでしょう?」
「当たり前だがな」
「すでに底をついた賭けに乗じるほど、私は愚か者ではありません」
「鏡でも見てこいよ。お前の今言った愚か者が見えるぞ」
「今日ばかりはあなたのその悪態もBGMとして使えそうですねぇ」
煽っても笑い続けるベアトリーチェが反吐が出るほど気味が悪い。
だが、アルトがその話に一瞬でも興味を持ったのは依然として残り続ける事実。
「......少し、考えさせろ」
「ええ、悔いのない選択を」
妙にポジティブな言葉を吐き続けられた。
今日も今日とて胃が気持ち悪い
「......トリニティ襲撃、ミメシスによる短時間制圧......『エデン条約の奪取』」
エデン、条約
『エデン条約のための、架け橋になって欲しいの』
アルトは、1人の少女を思い出す。
『そのために、君の妹さんが必要』
可憐で、それでいて力強い。まるで主人公のような女の子
『アリウスの子が、たとえトリニティでも楽しく暮らせるよって、証明したいの』
俺たちに、土下座までしてその夢を語ってくれた。
再び、書類を見据える。
「......クソババアが」
いつものように、破って捨ててしまいたかった
だが、できない
自由が、手に入る?
本物の学籍に、あたたかい住居、いつでも受けられる医療機関に作り置きして少し悪くなった飯を食う必要もない不自由なき生活。
ミサキの怪我もきっと頻度が減るだろう。
少なからず、こんなところにいるよりかは精神的にもだいぶマシだろう
痛みで何かを誤魔化す必要はないと、気づいてほしい
ヒヨリは、夢を追える。
こんなところで燻っていい人間じゃない。もっとヒヨリには自分自身の夢を追い続けてほしい
雑誌に書いてあることでもいい
サオリは、学ぶ喜びを知ってほしい。
何年もベアトリーチェのコマとして扱われた人生と、早くおさらばしてほしい。
俺の、俺に対する罪に苛まれることもなく
アズサは、今の環境が楽しいものであって欲しい。
今は、アリウスの生徒じゃないんだから
たくさん何かを好きになって欲しい。たくさん友達と話して欲しい
アツコは_______________
「お兄ちゃん?」
「......あ、アツコ」
考え事をしていて、いつの間にか近くにいたアツコに気づかなかった
「大丈夫?」
「......ああ、大丈夫」
手のひらに握った書類を、握りしめる。
アツコは、
「アツコは、花が好きか?」
「え?うん、好きだよ」
「......いつか、たくさん一緒に育てような」
花が好きだ。
小さな雑草の花束をプレゼントしてくれた日は、今でも鮮明に覚えている。
「お兄ちゃんも花、好きになったの?」
「いや、アツコが好きなら俺も好きだ。でもそこに生えてる花の名前も種類も知らない」
近くに生えている花を指差し、そこに視線が向く。
白色の、凛々しい花だった。
「珍しいね、シラユリだよ」
「へぇ〜......やっぱ、見てると面白かったりするか?」
「うん。特にユリは好きかな」
「なんか理由とかあったり?」
花に手をそっと添えて、嬉しそうに微笑むアツコの姿はとても可憐で、可愛らしかった。
「なんか、お兄ちゃんみたいだなぁって」
「俺?俺ってこんな可愛いの?」
少し茶化して言ってみる。
俺はアツコに似てると思った。
「うん。可愛い」
「......あ、ユリがね?」
「お兄ちゃんも可愛いよ」
しゃがみながら、アツコは俺の腕に抱きつく。
この歳で可愛いって言われるのは、まぁ、嬉しいけどちょっと恥ずかしいものがある
「......持って帰ろうか?」
「大丈夫。邪魔になっちゃうから」
また、我慢しただろう。
もっと好きに花を摘んで、好きに育ててほしい。
だって、昔コスモスを育てていた時のアツコの表情はそれこそシラユリそのもので________________
「.........そっか」
どれだけ施設を潤沢にしても、趣味や嗜好品に手を出せるほど財政は良くない。
明日の飯が怪しくなる時だって、沢山ある。
アリウスを、出たいさ。
もっとあたたかいところで暮らせたら、もっと風が心地居場所で暮らせたら、もっと綺麗な場所で暮らせたら、もっと.........痛くない場所で、暮らせたら
そしたら、アツコには庭をプレゼントしたい。
広々走り回れるくらいの広さで、いろんな種類の花で満たされるくらいの、大きな庭
......決めた
「......アツコ」
「?どうしたの」
いつものようにアツコの手を握り、不安と重圧で押し潰れそうになる体を動かす。
もし失敗したら
もし何かしくじれば
「トリニティに、ついてきてくれない......?」
でも、1人は怖いから
「......お兄ちゃんとなら、どこでも」
繋ぎ返してくれた手が、あたたかい。
不安は、捨てられない。
重圧は、降ろせば誰かが背負ってしまう
家族のこれからを背負うのも、俺
それならば
「......ありがとう、アツコ」
俺は、やる
ところでお気に入り1000とかUA100000の時とかってなんかやって欲しいこととかあります?