私は、はちゃめちゃに行きたいですが、修学旅行があるため、行けません。
カスが
……ところで、せんアカ行った?
「セイアちゃんなんで我がもの顔でアルトさんの隣に座ってるのかなぁ?」
「アルトとはたくさん話すことがあってね、これも仕方のない距離なのだよ」
「見苦しいですよお二人とも。あ、紅茶はいかがでしょうか......♡」
「「ハート飛ばしてんじゃないよ」」
建物に入ると同時に、お兄ちゃんの周りに羽虫が集り始めました。
「久しぶり。ミカもセイアもナギサも元気そうでよかった」
お兄ちゃんのよく女の子を堕としてるそのにこやかな笑顔を向けられ、三人の羽虫は全員赤面している。
「ほ、本当に久しぶりじゃんね!最後に来たのなんて一年位前で......」
「まぁ、私は夢の中で会っているわけだが」
「またセイアちゃんの妄想出ちゃった?そういうのアルトさんにも迷惑だからやめた方がいいじゃんね?」
「ふっ」
「なんで鼻で笑ったの?」
「弱い犬ほど良く吠える、という言葉があってだね」
「折るね⭐︎」
テンプレのように2人はじゃれあっている。
「はぁ、申し訳ありません先輩......お呼びした立場だというのに......」
「いやいや、元気な2人が見れてよかったよ」
......うん。
完全に私そっちのけだ。
さっきからお兄ちゃんの死角になる席に座らせられて視界に映ってないだろうし、会話のバトンが回ってこないから全然喋れない。
「ねぇ、お兄ty「うわぁーん!セイアちゃんがまた小難しいこと言ってくる!」
「そうやってアルトにすぐ隠れるのは少しずるいんじゃないか?」
「ベーだ」
また、ミカちゃんに言葉を遮られた。
これで通算3回目。
ぎりっと、アツコが握るティーカップが軋んだ。
可愛らしい笑顔を貼り付けたままだが、その目の奥は全く笑っていない
「......そろそろ説明させていただきますね」
「ふぅ、今日はこのくらいにしておいてあげるね⭐︎」
流石にフォックスは賢者には勝てなかったようだ。
アツコの表情も若干穏やかになり、話をする雰囲気に戻った。
「先輩をこちらにお呼びしたのは、他でもありません」
「『エデン条約』......だろ?」
アルトの口から放たれたその言葉に、ナギサは一瞬硬直し、ふっと表情を柔らかくした。
「知っていましたか」
「これでも毎朝新聞は読んでるくちなもんで」
「......エデン条約?」
アツコは耳馴染みのない言葉に困惑する。
度々アルトが調べているのは記憶にあったが。
「おや、そちらのお嬢さんは初対面だね。さっきは見苦しい場面を見せてしまって、申し訳ない」
セイアはアツコに向かって謝罪した。
「私は『百合園セイア』トリニティ総合学園の生徒会『ティーパーティー』のホストを務めている」
「アツコちゃんは久しぶりだね!」
「久しぶり、ミカちゃん」
「ちゃん、かぁ......えへへ」
一年生であるアツコは親愛を込めてミカのことをちゃん付けで呼んでいる。
その響きが、ミカは好きだった。
「エデン条約というのは、これからトリニティとゲヘナ間で結ばれる和平条約のことだ」
「そうそう、今まで睨み合ってたこれまでの関係は辞めて、仲良くしようねっていうルール?みたいなやつ」
ミカの説明はかなりざっくりとしたものだったが、わかりやすい文言だった。
「先輩にも、祭典に参加していただけないかと......招待状を......」
おずおずとナギサは招待状を取り出した。
「おー......でもごめんな、その日ちょっと予定があるんだ」
アルトはその招待状を受け取らず、ナギサの前まで戻した。
「そうですか......」
目に見えてしょぼくれるナギサ。
「ごめんな、でも埋め合わせくらいはするよ」
アルトはそんなナギサの頭を優しく撫でる。
ちなみにいつも行っているこの行為に下心などは一切ない。お父さんが娘を撫でるのと同じ理由である
「あ、ありがとうございます......」
ひどく赤面したナギサはさっきとは別の意味で顔を俯かせた。
ああ、この子もか
「......ふーん」
少し、モヤモヤとした感覚だった。
お兄ちゃんの魅力に気づけるのはいいけどさ。
「......ナギちゃんばっかりずるいなぁ」
だけど流石に、こう
「はいはい、ミカもごめんな」
「え、えへへ......しょうがないなぁ......」
なんというか......見せつけられるのは、少し
「......そろそろお暇しようか、お兄ちゃん」
「まだ早く「ホテル」
アツコのその一言に、三人は息を呑んだ
「「「っ!?」」」
「チェックイン、遅れちゃうよ?」
「まぁ、早く行っとくに越したことはないか」
アルトはアツコと共に席を立つ。
「んじゃね。紅茶おいしかったよ」
アツコはアルトの後ろを歩き、部屋の扉に立ったところで一度振り返る。
「紅茶、ご馳走様でした......ふふっ」
妙に艶やかな表情を三人に向け、アツコとアルトは去っていった。
「......井の中の蛙、ってやつかな」
「器が違ったね」
ティーパーティー三人、見事に敗北。
「.......渡せたら、よかったのですが......」
ナギサはアルトに渡す筈だったチケットを眺めながら、ロールケーキと紅茶を仰いだ。
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「いい部屋だね、眺めもいいし」
「トリニティで最もスウィートで、最もプリミティブなオシャンティーホテルやで」
プリミティブの意味はわかっていない。
2人は早々にチェックインを済ませ、部屋でくつろいでいた。
「サッちゃん達にも写真送っていい?」
「送ったれ送ったれ」
そう言われると、アツコはカメラのシャッターをアルトに向けた。
「お兄ちゃん」
「ん?」
パシャリ、と短いシャッター音が響く。
その撮れた写真を見て、アツコは満足げに微笑む。
「いい顔、撮れた」
いつもの制服を纏ったいつも通りのアルト。
だが、カメラが捉えた場所がいつもと違った。
「ねぇ、お兄ちゃん見てこれ.......って、もう寝てる......」
写真を見せようとカメラをアルトに向けるが、いつの間にかアルトはベットに突っ伏して寝ている。
移動の疲れが祟ったのだろう。
「......おーい、お兄ちゃーん」
「......んごっ」
「......おそっちゃうよ」
特に理由はないが、兄の耳元で囁いてみるアツコ。
「んにゃ......」
だが、アルトが起きることはない。
完全に熟睡している。
「.........可愛い」
サラサラの前髪に指を通してみる。
驚くほど端正に整った顔が、無防備にさらされている。
「......甲斐性なし、クソボケ、女たらし」
「失礼だな.........純愛.........だよ......サマーオイル............」
寝言を言うアルトの頭を、アツコは優しく撫でる。
「あ、そっか」
......そうだ、もやもやしてたんだ、私
お兄ちゃんがあんな綺麗な人たちに囲まれて、話してるのを見て嫉妬したんだ。
私のだぞって、私のお兄ちゃんなんだぞって
取られたくなくて、怖くなって
「......大好きだよ」
あなたの手も、瞳も、声も
全部全部大好き。
「............ふふっ」
また、そっと触れて、想いの分だけ抱きしめる
冗談も、誇張も抜きに一生一緒にいたい。
「愛してる」
今はまだ、面と向かって言えないけど
いつかお兄ちゃんが他の女の子なんて見れないくらい、視線を釘付けにしてやる。
だから、もう少しだけ、このままで。
次回 アリウスクソボケ『オオカミ』
『ズベン・エル・ゲヌビ』