このお話を見る時は『第ゼロ話 秤アルトはヘイロー無し』を見るとちょこっとだけ面白くなるかも、しれない。
多分、ならない
「芸術とは、そのものとそのものの間に存在する表裏だと考えている」
「けれども芸術とはその表裏を同時に見ることはできない......」
ギィ、ギィ
木の軋む音が小さな部屋に響く。
「その表裏をどう表現し、どう作り上げるか......それこそが......」
「「
アルトは横で創作活動を続けている木の人形の話を合いの手を混ぜながら聞いている。
「......これで、完成だ」
「......素晴らしい」
キャンバスからその腕を離し、書き上げられたその創作物をじっくりと見つめる。
アルトのプログライズホッパーブレードを模した、鍵のような形の剣。
芸術家は......『マエストロ』はまた一つこの世に芸術を生み出した
「いやぁ......毎度毎度ありがとうございます、マエストロさん」
「礼を言われるようなことをした覚えはない」
人間には程遠い外観、木製の人形に無理やりスーツを着せ、さらにもう一本首を生やしたようなその歪な形は、見るのすら憚られるような造形だった。
この造形こそ、ゲマトリアを語る上で重要となるものなのかもしれない。
「だが、私の生み出したそれが形を保つ日が今から楽しみだ」
だが、その見た目からは想像できないほどソワソワしている。
トリニティ総合学園『通功の古聖堂』
その地下に位置するカタコンベで2人は話し込んでいた
「まぁ、キーブレード二本も要らないような......」
「芸術とは必要不必要を考え、合理を求むものではない。信じ、思考し、惑い、創り出す。意味のない行動だが、それを形にするのが我々の求むものだったのではないのか?」
「......ロマンを求めよ、と?」
「端的に言えばその通りだ。だが、お前の言うことに全くの賛同がないわけではない.........剣を」
マエストロはアルトに向かってその木の腕を差し出した。
「......どぞ」
そっとホッパーブレードをマエストロの腕に乗せ、剣を握るのを確認する。
軋む腕がマエストロの目と思われる場所に剣を持っていき、その造形にマエストロは感嘆の声を漏らした。
「お前の言う浪漫と、私の思う芸術は相違点が数多く存在する。利用できるか、使用できるかを考え、それを形にしていくのがお前だ。だが、私の思う芸術はその利用性を考慮しない」
「まぁ、結果的に使えるやつもいれば、全くもって使えないやつとかも結構ありますよね」
アルトは丁寧な言葉で語りかけながら、背後に広がる残骸の山を見据える。
まだ使えそうなものもあれば、なにかもしれない死骸のようなものまで存在する。
「私はただ、自分の思う芸術を形としたい。ゲマトリアの考えに賛同したのは、その道を極めることを崇高と呼ぶことに賛成したからだ。そして、お前のような教養深き子供にも出会うことができた」
満足そうに目?を細めてアルトと向かい合う。
「だからこそ、お前をあの地獄に押し留める彼女の意図を読むことができない。芸術に敬意を払わず、思慮が浅く傲慢で阿呆だ」
「もともとあのババアはアホですからね。しゃーないですよ」
「そして、お前の考えも今、読めなくなったところだ」
マエストロの背後から、キィキィと音を立てながら出現した『異形』
犬のような形のものもあれば、頭部の存在しない人形に、もはや形容し難い形状まで様々。
「芸術に敬意を払い、思慮深く、そして信心深いお前が________
その異形達は、アルトに向かってその牙を向ける。
「このように、浪漫を、芸術を、軽んじるような行為に出た?」
地上から、音が響く。
爆発音、悲鳴、瓦礫が崩れていく音。
「まぁ、仕方なかった、ってやつですよ」
マエストロが持っていた剣をそのまま手元に戻し、異形達を意に返さずマエストロに近づいていく。
「これ、デザインありがとうございます」
キャンバスに書かれた剣の絵をタブレットに取り込み、アルトはマエストロに背を向ける。
「アツコ、あと頼んでいい?」
「わかった。気をつけてね」
アルトはそう言ってアリウスのコートを羽織り、別のカタコンベに入っていく。
アツコはフルフェイスのマスクを装着しており、その表情は読めない。
「......では、始めよう」
マエストロは部屋の奥へと歩き出す。
「エデン条約が奪還された瞬間に彼女らは呼び覚まされる。その調印にはロイヤルブラッドの片割れであるお前が必要だろう」
「......協力してくれるんだ」
マエストロは変わらずギィギィと音を立てながら歩いていく。
「芸術の上に成り立つ信用、信頼は少なからず存在する。秤アルトはその信用を裏切ったわけではない」
アツコもそれに続いて部屋の奥へと歩を進める。
変わらず頭上では爆発の重低音が響き渡っている
「......それも、3番目か」
『楽園の存在証明』
彼がどれだけ他人にその姿を晒そうとも、その真意を知ることは誰もできない。
だが、それを可能とするのが彼の言う『家族』なのだろう。
結局のところ、『秤アルト』と言う人格すら作り物なのかもしれない。
だが、彼が向ける言葉、表情は紛れもない真実の上に成り立つ。
誰も秤アルトを証明できない、だが、誰も秤アルトを否定できない。
だからこそマエストロは
「私は彼を1人の芸術家として信頼する」
マエストロは秤アルトを信頼し、信用している。
彼の今までは1人のゲマトリアを信頼させるに至っている
「.........お兄ちゃんを信じてくれて、ありがとう」
「......何度も言うが、礼をされるようなことはしていない」
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『ゼロワンドライバー』
アルトは赤く照らされたカタコンベの通路を歩き、ドライバーを装着する
「状況は?」
「一発命中被害も想定通り広まってる」
「で、でもなぜか聖堂だけ被害が少ないです......」
通路の中でミサキとヒヨリと合流。
双方とも大型の対物ライフルとロケットランチャーが目立っている
「スゥ.........はぁー.......ミメシスは?」
今日は忘れなかったライターで煙草に火を着け、死ぬほど苦いその煙を肺に吸い込む。
「『人形』の方は準備はできたらしい」
いつものメカニカルなマスクを装備したサオリも三人に合流。
サオリもその手に持ったアサルトライフルのチャンバーを引く。
『JUMP』
ベルトのチェーンに引っ掛けてあったプログライズキーを起動させ、舗装された道を出る。
「んじゃ________________」
硝煙と火に塗れたその惨状を見据え、彼は呟く。
「アリウススクワッド、作戦開始」
最近ピアノ練習してるの。
だからね、投稿遅れても許してクレメンス