アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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お久しぶりです。大変お待たせいたしました。

書きますッ!


第六話 相互共感 否定論理

 

 

 

 

「ヒナはいつか、きっと俺の何倍も強くなる」

 

 

 

昼下がりのリビングで、パジャマ姿のヒナを撫でながら少年は優しくそう言った。

 

 

「それのせいでめんどくさいこととか、嫌なことだってたくさん起きると思う」

 

ヒナはその言葉に耳を傾けながら、自信を撫で続ける少年の手のひらの暖かさを感じていた。

 

 

「......だから、今のうちにお願いしたいことがあるんだ」

 

 

 

どうすればいいの?

 

私は先輩のお願いなら、なんでも聞くから。

 

 

 

 

「.........いつか、俺が誰かを傷つけそうになったら」

 

 

なんでも、聞くから。

 

 

 

 

 

 

「俺を殺してくれ」

 

 

 

 

そんな、悲しそうな顔をしないで

 

 

 

 

_____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大義の為の、犠牲になってくれ」

 

 

冷徹なその一言を皮切りに、双方は銃と剣を構える。

アルトの演算視がヒナの行動先を読み取り、アルトに最適解をデカグラマトンが伝える。

 

 

ヒナもその攻撃を黙って喰らうわけがない。身の丈ほどの大きさの銃身を振り回し、アルトの接近を妨害、そのガラ空きになった胴体に弾丸を放とうとして、また止める。

 

 

 

「“ヒナッ!!左だ!“」

 

「っ!!」

 

 

狙撃は、先生がどこから来るか教えてくれる。私はただ、先輩の行動を全て封じればいい。

だから、何発か撃って無力化を________________

 

 

「......っ、でき、ない.........」

 

 

また、すんでのところで引き金を引き損ねる。

ヒナは必死に食らいつき、アルトの猛攻を掻い潜る。

 

攻撃力、防御力共に現在はアルトが格下。

だが、そのアルト相手にヒナは攻めあぐねいていた。

 

 

なぜか?

 

 

「あー......ヒナ、温情をかけてるつもりならやめてくれ」

 

「温情、なんて......!」

 

 

無理矢理自分に言い聞かせようとヒナは声を出そうとするが、冷ややかな視線を向けるアルトを目の前にして、ヒナは声が出せなくなった。

いつも向けられていた優しい綺麗な黒色の瞳は、敵を見据える蒼い瞳に変わっていた。

 

 

「温情だよ。今だってヒナは引き金を引かない、それにそっちから全く攻めてこない。先生だってサポートしてくれてんだから、ちゃんとしてくれ」

 

 

ずきん

 

 

その言葉に、ヒナは耳を疑った。

 

ちゃんと、してくれ

 

 

そんな言葉を、彼から聞いたことなど一度もなかった。

 

 

そのままでいい、弱いままでいいと

 

 

弱いままの『空崎ヒナ』を肯定してくれた恩人から出た言葉とは、到底思えなかったその言葉は

 

 

 

 

 

「.........ちが、う」

 

 

 

 

ヒナの心を

 

 

 

 

「先輩の声で喋らないで!!!!」

 

 

 

 

深く、深く抉った

 

 

 

___________________

 

 

 

「.........そろそろか」

 

 

「......兄さんが空崎ヒナを沈めたら退却、か」

 

 

警報が鳴り響く空の下、ミサキとサオリの2人は静かに佇んでいた。

 

生徒はほとんど避難してしまったのか、辺りからは人の気配は全くなかった。

 

 

「......私たちがここにいる意味ってある?」

 

 

「アルトが空崎ヒナに敗北すれば、バックアップとして私達が出る」

 

「......わざわざ別行動にするんじゃなくて、最初から全員で攻めた方が効率いいんじゃ......」

 

 

ミサキは布地の黒マスクを顎まで下げ、遠くで響く銃声に耳を傾けていた。

その表情はどこか、誰かを心配するような表情だった

 

 

 

「......他でもないアルトが決めたことだ。私はそれに従う」

 

その一言に、ミサキは若干の違和感を抱えていた。

 

 

「命令すれば、兄さんだって楽なはずなのに」

 

「アルトがそれを嫌っているのは、ミサキも知っているはずだろう?」

 

 

サオリはその発言を少し諌め、再び腕を組んで瓦礫にもたれかかる。

だが、サオリ自身もその考えがなかったかと聞かれれば、それは否である

 

 

逆にサオリこそ最初はそう考えていた。

 

『命令』と言う言葉を使えば私たちはそれを聞く。だがアルトはそれをしたことが一度もない。

楽な行動に逃げたことは一度もなかった。

 

 

少なからず、サオリがアルトに対して何らかの恩と償いをしたいと言う思いもあったが。

 

アリウススクワッドのリーダーは名実ともに秤アルトだ。だが、スクワッドメンバーの統率はサオリに任されている

 

 

 

「......兄さんのやることは、いつもわからない」

 

 

メンバーには『怪我をしてほしくない』と言って無茶な行動を諌める癖に、自分はいつも無茶をする。

それこそ、自分自身の体を、精神を、酷使して。

 

 

「......可笑しいね。この肉体(カラダ)はただの器だって、何回も抜け出そうと考えてたのに、今はその考えも浮かばない」

 

 

栄養失調で血色が悪くなっていた肌は人並みほどに綺麗で、傷だらけだった体は綺麗なまま。

 

 

「......こんな私が言うのも何だけれど、兄さんに死んでほしくない、って何度も何度も考えてる」

 

 

いつもボロボロになりながら、自分自身を守り抜いてくれる。

 

不安な時は隣にいてくれて、辛い時は優しく抱きしめてくれる。

 

 

暗がりが怖い時は手を繋いでくれて、寂しい時はそれを埋めてくれる

 

 

「......いなくなってほしくない」

 

 

蓋然性がどうだとか、指向性がどうだとか、そんなごちゃごちゃとした思考を全部抜きにして

 

 

座り込んだ体を丸めるように、膝を抱えて顔を埋める。

 

 

ミサキの独白を、サオリはただ黙って聞いていた。

 

 

「......私も、アルトにいなくなってほしくない」

 

 

償いや、負い目なんてちっぽけに見えるほどたくさんの恩をアルトからサオリは貰った。

 

罪を償うという感情が、いつの間にか感謝を返したいという感情に変わっていったのはいつだろう。

それこそ、自分の身体を捧げてもいいとすら思っている。

 

 

「......数え切れないほどの恩が、アルトにはある」

 

 

それを今すぐにでも返せないのが、サオリのモヤモヤとした感情の正体だった

 

 

少なくとも、彼女はそう感じている。

 

 

 

 

「.........そろそろ行こう」

 

「......ああ」

 

 

ミサキが立ち上がり、それを追うようにしてサオリも身体を動かす。

 

「作戦は成功。これより合流地点に________________は?」

 

 

 

 

 

空が、一瞬とてつもない光を帯びた。

 

 

それに続いて、耳の詰まるような感覚

 

 

 

 

 

 

記録:16時34分50秒

 

 

 

 

『二発目の巡行ミサイルにより』

 

 

 

 

『トリニティ総合学園の39%が陥落』

 

 

『負傷者:0名』

 

 

 

『重症者:一名』

 

 

 

 

 

_____________________

 

 

 

 

『シャイニング』『アサルトホッパー』

 

 

 

「づっああああ“!!!」

 

 

『終幕:デストロイヤー』から放たれる弾丸が装甲を纏ったアルトに容赦なく叩きつけられるが、その弾丸には集弾性が全くなく、アルトの演算機能によって軽々と躱されていく

 

 

「遅い」

 

乱射された弾丸が途切れたことを確認すれば、アルトは一気にヒナに肉薄し、オーソライズバスターの一撃を叩き込もうとする

 

 

が、

 

 

「“っ!!ヒナ!!“」

 

 

それを寸前で先生が指示を入れ、本当のギリギリでヒナもそれを回避する。

 

驚くべきヒナの戦闘能力に、脅威的な先生の指示。

 

 

絡繰(カラクリ)はおそらく先生が後生大事そうに抱えているあのタブレットだろう。

 

 

『ガンライズ』

 

 

「“うわっ!?“」

 

 

「やっぱり外れる......どーなってんだあれ」

 

 

いくら先生に攻撃しようとしても全て弾かれるか、あらぬ方向に逸れる。

おそらく無理に攻撃しようとすればこっちの武器がやられるだろう

 

 

「あ“あ“!!」

 

 

先生に意識を持って行かれたアルトの頭上に、ヒナがその銃身を叩きつける。

 

 

だが、それも軽々とアルトに躱された。

 

 

「......強くなったなぁ」

 

 

『アックスライズ』

 

 

再びヒナの銃撃が始まり、アルトはそれをオーソライズバスターの斧状態の側面でガード。

 

ガードが間に合わなかった部分の装甲は驚くほどの速度で削られていく。

 

 

これだから最強格のキヴォトス人は厄介極まりない。だって素の肉体でライダースペック出してくるんだもん

 

 

「......本当に強くなった、が」

 

 

『Shinesystem open rise』

 

 

『オービタルユナイト』の中心炉から『シャインクリスタ』が形成され、弾丸を一つづつ砕いていく。

これで被弾は無くなった

 

 

「隙だらけだ。それじゃあ得意の攻撃力と経験を活かせない」

 

 

若干の力を込めて、飛び蹴り

 

 

「う“あ”っ.......!」

 

 

それを銃身で受け止めたヒナは、その勢いを殺せず吹き飛ぶ。

 

 

「はぁっ、はぁっ.........!」

 

「“ヒナ......!大丈夫!?“」

 

 

「ええ.........何、とか......」

 

その言葉を信じられないほどにヒナの疲労は蓄積していた。もちろん先生はその脆弱な肉体でヒナの肩に手を回して自らを盾とする。

 

 

「.........はぁ、もうここいらにしておこう」

 

 

その様子を見てアルトはドライバーのスライド、『ライズリベレーター』を閉じて変身を解除する

 

 

「......あ、ライター無くした......」

 

症状が出始める前に懐から煙草を取り出して口に一本咥えるが、さっきまであったライターをどこかに落としてしまったようだ

 

 

「......ま、いいか」

 

 

咥えた煙草をまた箱にしまい、こちらに警戒を向けている2人に向き直る。

 

 

「“アルト、これ以上の攻撃は看過できないよ“」

 

「うん、わかってますよ」

 

 

珍しく表情を強張らせる先生に向き、アルトは落ち着いた表情で会話を続ける。

 

 

「......どうして.........どうしてっ!!」

 

 

ヒナは勢いよく立ち上がり、銃を投げ捨ててアルトに近づく。

 

 

「なんで、っ!!」

 

 

嗚咽を漏らし、誰かに見せることのなかった涙を流しながらアルトの肩を掴む。

 

 

「ねぇっ!本当は味方なんでしょ!?」

 

 

「残念ながら見ての通りテロリストだ。ミサイルを発射しろと指示したのも俺、ヒナと先生を取り囲んでる『複製(ミメシス)』をここに呼び出したのも俺」

 

 

淡々と、アルトは事実を述べていく。

その表情はいつものアルトを知っている人物ならば別人と見間違えるほどに、無表情

 

 

「何かまた考えてるんでしょ?!ねぇ“っ!!」

 

 

その小さな体躯では想像もつかないほどの力でアルトは揺さぶられる。

実際ぐわんぐわんと身体を揺さぶられている

 

「きっとっ、先輩、なら......っ」

 

 

ヒナは今までの『秤アルト』を思い出す。

 

いつも毎日が不安だった私を支えてくれて、ご飯を作ってくれて、一緒に眠ってくれて、一緒に遊んでくれて

 

 

「先輩、ならぁっ.........」

 

 

ヒナは目の前の『秤アルト』にしがみつく。

 

 

こうしてくれれば、いつも抱きしめ返してくれるから。

でも、いつまで経ってもその温もりが届くことはなかった。

 

 

「ねぇ......っ.........せん、ぱい.........っ」

 

頭を撫でてくれた、抱きしめてくれた。

 

そんなあなたが大好きだった。

 

 

「.........っ............あー、違うんだよなぁ」

 

 

 

だが、その温もりの駄賃として帰ってきたのは、冷たい声だった。

 

 

「ヒナを今まで支えてたのも、多分違うんだよ」

 

 

両肩に手を添えられて、しがみついたヒナをそっと剥がす。

 

 

「都合のいいようにヒナを使っただけなんだよ。何だっけこういうの、代償行為?」

 

 

ひどくいつも通りなのに、その蒼い瞳が冷たくて

 

 

「んー、まぁ、どうでもいいか..........だからさ、今までヒナが見てきた『秤アルト』は多分違ったんだと思う」

 

 

添えられた手が、あっけなく離された。

 

 

 

「......まぁ、簡単に言えば.........偽物?だったのかなぁ」

 

少しふざけたように、簡単にアルトはそう語った。

 

 

その瞳に、声に、安らぎを感じていた少女に向かって、その偽りを語った。

 

 

尊敬、敬意、敬愛

 

それこそ『秤アルト』に『恋心』を抱いてた少女にそんな真実は________________

 

 

「...............ぁ...............」

 

 

 

心を壊す、暴言にすら近しかった。

 

 

 

「なんか、ごめんね?」

 

 

 

ヒナは膝から崩れ落ち、その両眼から大粒の涙をこぼす。だが、アルトはそれを慰めるどころか、ただただ見下ろして他人事のように見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........12ミリ口径......あ、来たのか」

 

 

 

咄嗟に身を引いて躱したとはいえ、アルトの掌は真っ赤に血濡れていた。

 

そして、銃声の元には________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ.........それ以上、『先輩』を愚弄するなら、容赦はしませんよ」

 

 

 

愛銃である『ホットショット』を構えた天雨アコがこちらを睨んでいた。

 

 

 

『HIDENメタルズアビディ』

 

 

「まぁ、当然っちゃ当然か」

 

 

 

 

VS

 

 

「変身」

 

 

 

アリウススクワッドリーダー(秤アルト)




嘘をつくのが下手だなぁ、アルト君は
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