これからも鏑丸と仲良くしてやってください!
……願わくば一緒にリアイベとか行きたいです、二年後のブルアカふぇすとか
「これが君の望んだ結果かい?」
「......正直、まだわかんない」
狐耳の少女の問いに、対岸の席に座った物憂げな少年はいつも通りの柔らかな声で答えた。
2人きりのその空間で、なぜか2人は離れて座っている。
「......私がすることは、これでよかったのかい?」
「......うん、というか、俺的には無事でいてくれればそれでよかった。ごめん、利用するような......というか、利用して」
長机の反対側に座った少年は、いつものような弱々しい微笑みで問いを返していく。
その少年の腰には、バックルのようなものが付いていた
「.........そうか............君は、あくまでもこれを自分のせいだと?」
「それ以外の何者でもない」
少年はすっかり冷めてしまった紅茶に視線を落とし、声を一瞬詰まらせる
「俺がこんなことしなければ、こんなことにならなかった」
見れば少年の服には大量の煤が付着している
「俺が、誰かを利用しようだなんて考えたから」
見れば、少年の体には血が滲んでいる
「......みんなじゃなくて、あんなやつを、信じたから」
わなわなと震える手を頭に持っていき、少年は思い切り髪の毛を掴んだ
「.........だが、君は結果として誰も傷つけなかった.........身体だけは」
狐耳の少女もまた、悲しそうな表情をして視線を落とす。いつもなら楽しい茶会も、今の2人には言葉を発する気にすらなれない。
「......だからこそ、君はこの現状をその目に焼き付けなければならない」
少年の瞳はすでにその光を失い、元の黒色へと変化していた。
「さぁ」
百合園セイアは秤アルトに手を差し伸べる
「次の夢で、また逢おう」
「ミメシスを大量投入し、巡行ミサイルまで与えたというのに......任務を全うできないコマに意味はありません」
「ふーん......?わざわざお兄ちゃんやサッちゃん達に当たるように二発目を撃ったくせに」
ベアトリーチェはその言葉を聞き流しながら、フルフェイスのマスクを装着したアツコに向かって歩き出す
その表情には、どこか嬉しそうな笑みが宿っていた
その表情を見たアツコの率直な感想は、ただただ気色悪いだけだった
「あの男にはあなたに喋らせないようにと命令をしておいたはずですが.........まぁ、命令違反はよくあることでしたね」
ベアトリーチェは手に持った扇子でアツコの顎を持ち上げ、目を合わせる。
最も、マスクが遮っているせいで目線が合っているかどうかすら分からなかったが
「ええ、確かに私はあの場所に再びミサイルを放ちました」
「......開き直ってどうしたの?それで次は?命乞いか謝罪でもするつもり?」
その大人に対して、アツコは恐怖を感じていないわけではない。
だが、それ以上に怒りを、憤りを感じているだけである。
自らの最愛の家族を、兄を、傷つけた目の前の大人を今にも殺してやりたいくらいには憤っている
だが、アツコは1人だけで目の前の大人に勝てない事を重々に理解していた。
だってそれができるのは、世界でたった1人、自分自身の兄に他ならないのだから
「まさか、あなたの言動も随分とあの男に似ています......もっと純粋に私の命令を聞けばいいものを.........最初から私が教育するべきでしたかね......」
その未来が訪れることがなかったと、本気で安堵する。
「私の親代わりも、先生代わりも、全部お兄ちゃん。貴女じゃない」
もはやマスク越しでもわかるような、怒気に塗れたその言葉。
その声色すらベアトリーチェは楽しそうに聞いていた。
「スクワッドメンバーは彼を慕っていますが......あなたは実妹というだけあって特に.........ふふっ、面白いですねぇ......今なら黒服が言っていたことにも賛同できます」
喉から気色の悪い笑い声を上げ、ベアトリーチェは漸くアツコの顎から扇子を退けた。
「ですが......今あなたが私の前に現れたのは、それこそ命乞いでしょう?そうでなければ、それこそ敬愛する家族のもとに行っている筈です」
「..........うん」
アツコはマスクを取り外し、今度こそベアトリーチェに向き直った。
これ以上、お兄ちゃんに
お兄ちゃんだけに背負わせたりしないから
「私が貴女の駒になるから、みんなを.........お兄ちゃんを、解放して」
これは私の覚悟
これは私の選択
そして
「ふふっ.........いいでしょう、その願い、私が聞き届けます......」
お兄ちゃんだけに背負わせた、私の贖罪
ごめんね
________________
「......漸くお目覚めですか?アルト先輩」
小綺麗なベッドが備え付けられた伽藍洞の病室。
その部屋では両手に手錠をつけられたアルトが呼吸器をつけて横たわっていた。
「.........セナ.........?」
「はい。貴方の後輩で、アホでバカでクソボケでどうしようもない貴方を慕っている後輩です」
「そ、そこまで言う.........?」
アルトは呼吸器を外し、ゆっくりと起き上がる。
幸い痛覚が無いお陰で身体は無理矢理にでも動く。
「手術痕は痛みますか?」
「いや......快調。ありがとう」
ピントが合わない視界を目の前の後輩に向ける。
なんでか分からないけど、ぼやけてしまってよく見えない
「快調、じゃありませんよ。今貴方はそうやって起き上がることすらできないはずなんです」
「いや、俺は大丈夫。ところで先生達は________________
パンッ
「.........これで少しは頭が冷えましたか?」
頬を叩かれた。それも結構な力で
いつも鉄面皮で表情が読めないセナの表情が今は悲痛な物に歪んでいた
「.........何だよ」
アルトはその意図を理解しているにも関わらず、セナに向かって冷たい声を出す。
「そうやってすぐに取り繕わないでください。私はこれでも先輩の心情は読める方なので」
「......わかんないさ」
「いえ、分かります」
「わかんねぇって」
「分かります」
「.........近いって.........」
すでに眼前にまで迫っていたセナの肩を押して少し離す。
「......失礼しました」
セナはいつもの無表情のまま顔を遠ざけ、さっきまでの距離感に戻る。
その表情はどこか朱に染まっていたように見えたが、アルトはいつもの如くそれを見逃していた
「あ、あの〜......そろそろ、いいですか?」
不意に、アルトのベッドの反対側でずっとアルトの手を握っていたその人物が声を上げた。
「......ヒヨリ!良かったっ、怪我は!?」
「い、いえ......兄さんが守ってくれたので.........」
その言葉と、自分とは違って怪我ひとつないヒヨリの姿にアルトは安堵する。
「よかった......ほんとに.........」
「.........よかった?」
その言葉を口にした瞬間、ヒヨリに握られていた右手に力が込められた。
「何もっ、よくなんてないです........っ.........なんで、そんなに笑顔なんですかぁっ.........ぐすっ.........もう、やめてくださいよ......ぉっ.......」
いつもの喚くような泣き声ではなく、押し殺すように涙をこぼすヒヨリ
「っ......これじゃあっ、アルト兄さんが.........っ兄さんだけが......苦しむじゃないですか.........ぁ......やですぅ.........こんなのっ、理不尽ですぅ、ひどいですぅっ.....!.......うぁ......っ.........」
.........俺は何をしている?
「いやです.........っ.........アルト兄さんがいなくなったら.........私、死んじゃいます............」
いつの間にかアルトの胸に顔を押し付け、アルトの着ている病院着を涙と鼻水で汚し始める。
「生きて、行けないです.........」
ヒヨリを、妹を悲しませて、恩師と友達にあんな言葉を吐いて
信用を失って、信用してくれた人をこの手で裏切って
だと言うのに
「ごめ、ん......ヒヨリ.........」
俺は、よかったと思っている
「ほんとに、ごめん......っ」
みんなが無事で、ヒヨリが生きていてくれて
先生や、ヒナ達が俺のことを嫌いなままでいてくれればいいなって、なんで思ってるんだ
「俺、なんで、こんな」
今になって後悔が押し寄せてきてる癖に
「ごめん、ごめん......っ」
なんのための謝罪なんだ
何に対しての謝罪なんだ
俺が、したことに比べればなんの価値もない言葉を吐いて
やっぱり俺は、クズで、嘘吐きだ
「.........今日は面会の方がよく来られますね」
そんな彼に、一筋の光があるとすれば
「あ、アルトさん.......お見舞いにきたよ〜......?」
彼に、希望を魅せた彼女だろう
「......ミカ......」
「え、えへへ、きちゃった」
自分の過ちはわかってるはずなのに、やっぱり自分だけを責める。
今目の前に、その理不尽を怒ってくれた子が居るというのに