アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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ただの説明回やで!!


第−1話 秤アルトは転生者

 

八月三十日

俺は死んだ

 

その日は、俺が好きな仮面ライダーの最終話の日だった。

せっかくだから最終話を見る前に、グッズを買おうと思って早起きした日だった。

 

ソワソワしながら駅のホームに立ってたっけ。

 

そして、ホームから突き落とされた。

 

 

背中に軽い衝撃が走ったと思った瞬間には、顔面に強い痛みが流れて、目の前が真っ暗になった

 

 

ここからが問題。

俺、赤ん坊だわ。

 

突然広がる視界に驚き、絶句した。

 

なぜかって、目の前の人間?達は全員俺が知るような人間の姿じゃなかったから。

 

全身真っ黒のスーツを身に纏ったやつだったり、誰かの遺影を抱えているコートの男だったり、木の人形みたいなやつ。

 

果てには、全身が紅く染まった化け物がいたりした。

 

 

恐怖はあったか?

 

当たり前だ。だが、驚きと恐怖で声も出せなかった。

 

 

俺の身を引き取ったのは、よりにもよって赤い化け物。

名前はベアトリーチェと言っていた。

 

そして、俺の地獄の日々は始まった。

物心つく様な年齢になった頃には毎日拷問とも思える量の訓練、毎日意識を失いかける量の採血

 

だが、次の日には体は回復していて、傷跡すら無かった。

 

極め付けには俺の頭の上に浮かんでいる歪な形の輪

 

 

 

その時初めて、俺は足が竦んだ。

 

どれだけの苦痛にも耐えられた。どれだけの疲労にも耐えられた。どれだけの屈辱にも耐えられた。どれだけの空腹にも耐えられた。

 

だけど、これだけはどうしても耐えられなかった。

 

 

自分は、人間じゃない。

 

違う生き物になっちゃったんだと、初めて自覚したんだ。

 

 

その日のことはよく覚えていない。

 

 

ただ吐いて、吐き続けた。

胃の内容物などそもそも無いからずっと吐いていたのは胃液。

そのせいか、食道が焼けてしまって飯をあまり食べられない体になってしまった。

 

でも、一度自覚してからは逆にスッキリした。

謎の身体能力の高さも、耐久力の高さも、異常なほどの治癒力もこれで説明がつく。

あとは痛覚がなければいいな、と子供ながらに考えたっけ。

 

 

そのことを考えた次の日、俺から痛みが消えた。

ベアトリーチェに叱咤され、鞭で叩かれた時に気がついた。

 

痛覚がない。

 

 

怖くなった。

もしかすれば、この輪っかが何かしたのではないか。

あの時、痛みがなくなればいいと考えた。

 

それでも一瞬だけだ。一瞬だけの願いをまさか叶えた?

 

また、俺の人間の部分が一つなくなった気がして、また泣いた。

 

 

初めて希望が持てたのは、俺が四歳になった時だろう。

ベアトリーチェが俺に赤ん坊を押し付けてきた時だ。

 

 

どうやら、俺の血縁者つまり妹だと言うことだった

 

命令は一つ。不用意な発声を避けさせろ

 

これだけだった。

 

 

初めてだった。誰かに対して、愛しいと思ったのは

 

赤ん坊ながらに美形と思わされた。一種の芸術作品にも等しい整った顔立ち

こんな俺にも、妹ができた

 

嬉しくて、嬉しくて

 

その日のうちに名前を考えて

 

今思えば浮かれすぎだと思うが、冗談抜きで死ぬほど嬉しかった

 

アツコ

 

 

秤アツコと名付けた。

 

 

誰かを重んじて、誠実でいてほしいと

 

ありきたりな名前をつけた。

 

 

 

その名を呼ぶたびに俺の存在意義が浮き彫りになる感覚だった。

 

 

 

それと同時に、恐怖が俺を襲っていた。

 

 

俺と同じことを、あの女はさせるのか?

 

走らせ、飯を抜き、鞭で叩く

 

あの痛みを、あの虚しさを。覚えさせるのか

 

 

そんなバカな話があるか

 

 

 

アツコは

 

 

 

家族は俺が守る

 

 

 

 

 

そこから、俺は記憶の再現を始めた

 

 

 

 

幸いベアトリーチェの部屋は常に開放されていて技術的なものは揃っていたし、ほしいものがあれば自治区に落ちている。

お世辞にも潤沢とは言えなかったが

 

 

最初に目をつけたのは、武器

先ずは攻撃手段を見つけることだ

 

 

この世界での俺の耐久力はずいぶん高いようで、試しに銃弾を腕に撃ってみても軽く衝撃が伝わってきただけだった

ならば、と近接格闘(CQC)を採用。

 

せっかくなので特撮で見たような武器を作った

もしも日本の技術と同程度の世界だったら厳しかった。

 

自治区に落ちていた様々な『オーパーツ』それが技術革新の足がかりとなってくれた。

 

そうして完成したのが『アタッシュカリバー』

仮面ライダーゼロワンで登場したアタッシュケース型剣戟武装

 

 

これなら高耐久の盾としても使えるし、あとはキーを作れれば基本的に切断できない物はなくなる

 

だけど、これを作るのに実に4年の月日を費やしてしまった

 

次の目標はドライバーとキー。

 

アツコは五歳になり、簡単な会話ならできる様になった。 

 

ただの一般人の俺が勉強とか教えるのは難しかったけど、妹のためならば何のその

何よりアツコが賢い子だったのが助かった。

 

赤ちゃんの頃から全然泣かない子だなとは思ってたけど。

 

 

武器だけで四年。単純な機構でありながら。

こんな速度じゃドライバーを作る頃には二十歳を超えているだろう

 

 

だがそうはならなかった。

アツコはどうやら純度のいいオーパーツを探すのが得意なようで完全、それか純度の高いものがたくさん見つかり、ドライバーやプログライズキーの制作は思ったよりも早く終わった。

 

それでも、さらに三年かかった

 

俺、十一歳。アツコ、八歳

 

アツコの年齢が五を超えた頃からアツコの頭の上の天輪が見える様になった。

 

少し紫がかった、十字の連なる光輪

俺のものとどことなく似ていて、その日から俺の光輪に対する嫌悪感がなくなった

 

 

全てが順調。もしかすればあの女に勝てるかもしれないほどの力は手に入れた。

 

拠点に投影機も作った。ライダーシステムは順調に完成に近づいていた。

 

 

あとはアツコが成人するまで待つだけ

 

 

 

そう、思っていた

 

 

 

 

 

 

「これで私は......!『崇高』へ......!」

 

 

 

 

ベアトリーチェが、俺の目の前でアツコの腹を刺した。

 

しかもアツコから湧き出た血を啜り、気色の悪い形に変わった。

 

 

 

当時、俺十四歳 アツコ十一歳

 

 

アツコの悲鳴。ベアトリーチェの変貌

 

 

そして、原型を留めないほどに膨れ上がった俺の『神秘』

 

 

 

ベアトリーチェに、勝った。

どちらかといえば、運よく刺し違えを免れたと言ったところだろうか。

 

もしも全てのパターンのプログライズキーが完成していなかったと思うと今でも背筋が凍る。

 

 

アツコも幸い刺しどころが良かったようで出血も少なく、傷跡も残らずに済んだのが本当に良かった。

 

あのババアはこれからこき使ってやると、そう心に刻んだ瞬間であった。

 

 

ありがとう過去の俺よ。今では仲良くやってるよ(一方的利用)

 

 

と、まぁざっとまとめれば俺の人生はこんなものだろう。

今ではアツコも元気に成長し、高校一年生となった。

 

子供の頃と変わらず抱きついてきたりやたらとスキンシップが多いのが困りもんだ。

そう言うことはお兄ちゃんじゃなくて本当に大好きな人としなさい

そう言うと

 

「へぇー......わかった」

 

 

普通に無視されて抱きつかれ続けた。

あの時の笑みがなんかじめっとしててなんか怖かったのを覚えている

 

 




次回はアツコ目線のお話です
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