アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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煙の中で戦うの大好き侍


第十八話 秤アルトの鉄煙(ノロシ)

 

 

ヒエロニムスがアルト達を凝視する。

 

すると、足元に金の天輪のようなものが浮き出た

 

 

「跳べ!」

 

 

アルトがそう叫ぶ前にはすでに全員跳躍姿勢をとっており、素早く天輪から離脱。

さっきまで立っていた場所には、クレーターが形成されていた

 

 

「あぶねー......」

 

アタッシュカリバーを壁に突き立て、一度体を固定する。

いくら防御力に定評があるメタクラでも連続で喰らったらヤバそうだな

 

 

「......やってみるか」

 

 

『了承。体内循環液を『鉄煙(ノロシ)』に変換、排出開始』

 

 

剣を壁から引き抜き、壁を蹴ってヒエロニムスに向かって跳ぶ

装甲の至る部分から赤黒い煙が吹き出した

 

 

「よっ」

 

 

十分接近したところで、クラスターセルによって空中に作られた足場に半回転しながら剣を持ったままの手を着き、慣性を利用して右手にのプログライズホッパーブレードで叩きき_________________

 

 

 

「るっ!?」

 

 

突然、アルトの片頬を何かが貫く

ギリッギリで顔を傾けられたおかげで直撃は免れたが、ほっぺちょっと持って行かれた

 

 

「っ......!アルト!」

 

 

 

「大丈夫......だっ!!」

 

 

少し勢いは止まったがそれでも十分な慣性!

 

痛くねぇんだからこのまま_________________

 

 

 

「押し切る!」

 

 

空中で鉄煙を剣に纏わせながらヒエロニムスのど頭をぶち抜く

 

 

だが

 

 

「実体ないタイプかよっ!!」

 

 

布で覆い隠された頭部はなんとなんの感触もない。

遠目から見ても分かる通り、布の中には文字通り何も無かった

 

 

再び小さな足場を形成、アルトはそれを踏んで大きく飛び退いた

 

 

「......なるほど、ねぇ」

 

 

「大丈夫か!」

 

「ああ、問題なし。ありがと」

 

再び煙を装甲から吐き出しながら二刀の剣を構え直す。

 

......おそらく、神秘以外の攻撃を無効化している

 

 

『ヒエロニムスの体のように見えるのはほぼ全て空気だ。物理的な攻撃は一部の神秘を込めたものしか通らないだろう』

 

「だろーな」

 

 

周りに湧く雑魚もなかなかに厄介。

こっちは物理が通るとはいえヒエロニムスが存在する限り無限に湧いて来るだろう

 

 

「クラスターセルの物量攻撃か、俺の神秘.......」

 

 

そもそもの量が少ないから、あんまり使いたくはない

だが、今はそんなことを言っている暇はあんまりない

 

 

『鉄煙の排出弁を二次開放、排出量の上昇を受諾』

 

 

なら、当初の予定通り______________

 

 

 

「短期決戦でぶち抜く」

 

 

再び煙の中に身を委ね、雑魚とヒエロニムスの視界を遮りながら地を蹴って跳躍

 

 

『ファイナルストラッシュ!』

 

 

 

素早くブレードのトリガーを5度引き、双方の剣にクラスターセルを纏わせてリーチを拡大。

 

 

広範囲攻撃で雑魚を掃討した上で今度は二つの錫杖を狙う。

雑魚の撃ち漏らしは三人が処理してくれているおかげで俺は攻撃に専念できる

 

 

 

「お、らっ!!」

 

 

足場を形成し、それを両足で踏んで高速で急降下しながら剣を振り下ろす

 

 

「......こっちもダメか......」

 

形成された刃の部分が見事に割れてしまっている。

クラスターセルによるその場凌ぎの強化はやはりうまく型にはまらない

 

 

というか......

 

 

「俺が近接戦闘苦手ってのが大きいだろうな」

 

 

ゆっくりと姿勢を正し、こちら側にゆっくりと向くヒエロニムスを見上げた。

 

 

秤アルトの弱点その3・近接戦闘が不得手

足技や拳での語り合いには定評があるが、剣を使った近接戦術となると途端に苦手が露見していく。

 

どちらかというと特撮作品のような派手な近接戦闘よりも、安全な場所から遠距離での攻撃、近づかれたら蹴りというルーティーンが一番安全で護りやすいと言う実戦的な癖が体に染み込んでいるからでもある

 

 

「.........じゃあ、やっぱりアレだよな」

 

 

攻撃手段と見られる杖は硬すぎ、本体には実体がない。

おそらく神秘を込めたサオリ達の弾丸が一番効力のある攻撃なのだろうが、これは俺の仕事だ。俺がやり切る

 

 

「ミサキ!ヒヨリ!時間稼げるか?」

 

 

対岸で雑魚処理をしている2人に叫ぶ。

『アレ』をやるには少々時間が掛かる、その間雑魚に邪魔されては本末転倒だろう

 

 

「30秒、安全にすれば足りる?」

 

「上々!パーフェクトだよ!!」

 

 

30秒もありゃ十分。

 

 

「サオリ!これ持ってくれ!!」

 

 

「___はっ......?っ、と.........これは.........」

 

 

「合図したら投げてくれ!」

 

 

ヒエロニムスが放った光弾を片手の剣で弾きながら地を駆ける

喰らったらヤバそうなのは適宜回避しつつ、クラスターセルを大きく展開。

 

そして、剣をヒエロニムスの後方に佇んでいるヘイローに投げつけた。

 

 

 

 

________________キヴォトスの、いや、神秘を持った者は必ず頭上に『ヘイロー』を浮かばせている。

 

そして、それにはどの例外も属さない絶対的な条件が存在する

 

 

 

「弾いたな?」

 

 

祈るような姿勢を取り続けていたヒエロニムスが二本の腕とは別で存在していた錫杖を握るてによって剣が防がれた。

 

 

 

ヘイローを砕かれたものは『神秘』を失い、その命をおも失う

 

正式にはその『死』に準ずるようにヘイローが砕けるのだが、それは逆説的にいえば『死』は『ヘイロー』の喪失と連動している

 

 

どうやらそれは、このバケモノにも有効な手段だったらしい。

 

 

「漸く必死になってきてくれたじゃねぇか」

 

 

仮面の下で、アルトは犬歯を剥き出しにして嗤う

 

 

「ふんっ!」

 

 

足から鉄煙をスラスターのように吹き出し、空中で踵蹴りを右手に握られた錫杖に喰らわせる

 

 

 

 

バキッ

 

 

 

やっぱり、砕けた

 

 

「ははっ!そう来なくちゃなぁ!!」

 

 

だが、二本目の杖によって追撃は阻止される。

 

 

 

そのままヒエロニムスは錫杖を大きく振り翳し、鋭い石突きでアルトを貫こうと振り下ろした

 

その様子は、表情が存在しないヒエロニムスがアルトに恐怖しているように映っただろう

 

 

「......稼いだよ。時間」

 

 

アルトが石突きに貫かれた。

 

 

だが_________________

 

 

 

「いくらでも逃げ道は用意していくもんなんだよ」

 

 

アルトはすでに、ヒエロニムスのヘイローに足を掛け、弾き飛ばされた剣を握っていた。

 

 

ヒエロニムスが貫いたのは、クラスターセルによって形成されていたアルトの分身

 

 

 

「サオリ!!」

 

 

「ああ!!受け取れッ!!!!」

 

 

 

どいつもこいつも、仕事が早すぎて助かる助かる

 

じゃあ、今度は俺がそれに報いる番だな

 

 

 

サオリによって投げられた、プログライズホッパーブレードをノールックで受け取り、それを逆手に持ってアタッシュカリバーの下部に接続

 

 

『ドッキングライズ』

 

二対の剣が、大型の諸刃の剣となった。

 

 

 

「おっ、と......暴れんな、ッて!」

 

 

もちろんヒエロニムスもただやられるわけにはいかないだろう。

大きくその巨大な体躯を揺らし、アルトを振り落とそうとするが_________________

 

 

 

「せっかく稼いでもらった時間なんだ」

 

 

逆に、支柱のようにして伸ばされたクラスターセルによってヒエロニムスは地に伏せられる。

 

 

 

「無駄にするわけにはいかないんでねぇ!!」

 

 

『メタルライジングインパクト』

 

 

 

キーを再びドライバーに押し込み、クラスターセルを剣に纏わせる.........と言うよりこれは

 

 

 

「“......弓矢?“」

 

 

武器ではなく、アルト自身の近接戦闘の脆弱性。

それを補うために、アルトはあえて合体剣をそのまま剣として運用するのではなく、大型の弓として使用している

 

 

銀色の群体が美しい螺旋形を描き、それをアルトが矢としてそれを番える

 

 

クラスターセル、そして鉄煙が螺旋形を描く矢に集中し、その鋭さを増していく

 

 

「『此の矢、絶対に当たる』『一撃必殺』」

 

 

いつしかヒヨリに教えたように、その神秘を矢に流し込む

 

 

マエストロさん。あんたの作品はやっぱり最高だよ

 

 

美しくて、神秘的で

それで、面白い

 

 

だから、俺も

 

俺自身が

 

 

あんたの芸術に、浪漫に。全力で応える

 

 

 

 

「これでッ!」

 

 

 

 

 

 

「フィナーレだ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

掘削機のように放たれた矢が、ヒエロニムスの脳天ごと_________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘイローを貫いた

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ...........」

 

 

 

 

未完成のまま、私の作品が崩れていく

 

 

 

「ああ.........!」

 

 

 

それとは対照的に、私の興奮は収まるところを知らずに増していくばかりである

 

 

 

「嗚呼ッ!!!」

 

 

アレほどの力を、私に奮って見せてくれた。

 

 

全てを覆して、圧倒的な力の差を見せつけられたようだ

 

 

「.......ただ今は、お前に感謝する..........」

 

 

敬意を払い、私にその全力を見せつけてくれた

 

 

その事実に私は深く感謝する

 

 

「......いつかまた、何処かで」

 

 

 

そう呟き、マエストロは後ろに広がる暗闇に進んで行った。

 

 

 

 

キィキィと、どこか嬉しそうな木の軋む音がただそこに残っていた。

 

 

 





今までヒナの固有武器の名前を勘違いしていました。私を殺してください
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