アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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今日明日合わせて六話書く(目標)


第十九話 秤アルトと2丁の拳銃

 

「うえぇ.........気持ちわるぅ.........」

 

吐き気に眩暈、それにプラスで咳も出てくる。

 

 

「大丈夫?」

 

「だいじょぶじゃない......」

 

アルトは今度はヒナに背負われていた。

 

いや、最初はサオリに背負われる予定だったのだが、どうしても自分が背負うと念押しされては、ねぇ?

 

 

「“顔色がすごく悪い......何かの症状?“」

 

「......さっき使った黒い煙みたいなのの副作用。アレさ、俺の血ぃ使ってんだよねぇ.....」

 

 

クラスターセルを流用して作られた拡張武装『鉄煙(ノロシ)

 

血液を体内で巡っている『体内循環液』と混ぜることによって生成される粉塵型の煙幕。

その使用方法は煙幕だけにとどまらず、スラスターのように装甲から吹かして加速や、武器に纏わせて質量を増すこともできる

 

 

「だから......もう、一回戦うだけで貧血が........あ、そこ左......」

 

 

貧血でクラクラする。それに体内の神秘の流れがぐっちゃぐちゃになって体調もすこぶる悪い。多分熱も出てる

 

だが、どうにかこうにかアツコの神秘の残穢のようなものを追うことはできた。

おそらくそろそろカタコンベを抜けるだろう

 

 

『フルで演算を使用しているが、未だカタコンベ内を見通すことはできない。おそらくお前の勘違いだろう』

 

んなことねぇって。現に、ほら

 

 

「......漸く抜けたな」

 

 

「“思った以上にスムーズだったね“」

 

 

ユスティナとの度重なる戦闘、それに加えてあのヒエロニムスとか言う化け物との戦いで疲弊してはいるがアルトは漸く________________

 

 

 

 

 

「......帰ってきたな」

 

 

 

廃墟のような建物が連なり、空もないのに頭上からは冷たい雨のような雫が降りしきっている。

それにせいで、昼夜問わず真夜中のような暗さを保っていた。

 

側から見れば、多分不気味な場所と見られてしまうだろう。

 

だけど、ここが俺の.........

 

 

俺たちの、故郷

 

 

ここで生まれて、そこから最近までずぅっとここで暮らしていた。

 

 

俺も、サオリも、ミサキも、ヒヨリも________________

 

 

アツコも

 

 

 

「あいつは.......ベアトリーチェは『バシリカ』に居る」

 

 

ヒナに背負われたままと言う不恰好ではあるが、アルトは道の奥に鎮座している教会のような大きな建物を指差す。

 

 

「......休んだ方がいいんじゃ......」

 

「大丈夫、って言っても体調最悪だけどさ......」

 

 

だからと言って、ここで立ち止まっている暇も余裕もない。

出立からすでに6時間半経っている。アツコが無事という確証もない

 

 

「だから、行こう」

 

 

体調は悪くても気合いでどうにかなる。多分

 

 

「“......わかった“」

 

 

「先生......!」

 

「あんまり無理させるのも良くないんじゃないかなぁ?」

 

 

渋々といった様子でそれを了承した先生に少し反抗するようにホシノとヒナ両名は声を上げた。

2人のアルトへの心配は相当なものであるし、できれば無理などこれ以上してほしくもないのだろう

 

 

「“でも、終わったら絶対の絶対に休むこと“」

 

 

その約束に、アルトは笑みを返すことで答えた。

 

 

『まだ生ぬるいです。一定期間先輩を拘束するレベルでないと』

 

「“アコ!?“」

 

「お、やっぱり聞いてたか」

 

 

ヒナの通信端末からアコのホログラムが投影され、呆れ顔のアコが映し出された。

 

どうやら通信自体は通じていたようで、これまでの会話やら情報やらは聞かれていたし見られていただろう。

まぁ、風紀委員会の行政官として情報を管理しなければならないと言うのは分かる

 

 

「心配して出てきてくれたのか?」

 

『は、はぁ!?なんで私がそんなことをしなくちゃならないんですかッ!』

 

 

「あはは、冗談冗談。ありがと」

 

 

若干茶化しながらそう言うと、アコは()()()()()()()()怒った。

 

『全く』と呟きながら蒼色の頭髪をいじいじしている。可愛い

でも可愛いって言ったら多分また怒るだろうし、言わんでおこっと

 

 

 

『それより、いつまで委員長の背中にひっついているんですか』

 

「いいじゃん......嫉妬は見苦しーぞぉ?アコちゃーん」

 

『ちゃん付けて呼ばないでください!!』

 

 

おそらくアコが敬愛しているヒナの背中にひっついている俺に嫉妬しているのだろう。

だけど今だけはこのあったかい背中もモッフモフの髪の毛も今だけは俺のだもんね〜

 

 

『はぁ......とりあえず、命に別状がないようで安心しました』

 

「やっぱ心配してくれてたんだ?」

 

 

『当たり前でしょう。あんな怪我をして死なれたら目覚めが悪いなんて話ではありませんから』

 

 

やっぱりアコちゃんは優しいな。

 

こんな俺でも、心配してくれる人がこんなにいるんだ

 

 

「大丈夫、死にはしないよ」

 

 

軽くでも安心してもらえるように、俺はそうアコに向かって言う。

 

 

「大丈夫。先輩は私が守るから」

 

「頼りにしてるよ、ヒナ」

 

 

おお......イケメン過ぎんかなぁこの子。

うちの娘に欲しいわ

 

『......では、これを』

 

 

すると、いつの間にか横で飛行していたドローンから小さなボックスが落ちてくる。

自由落下してくる固形物を手に取るのは若干手間取ったが、どうにかこうにか手に収めてその箱を開けてみる

 

 

「これは......」

 

「アコの拳銃に.......こっちは......」

 

 

ヒナの背中から一度降りて、ヒナと2人で箱の中を覗き込む。

 

ボックスに入っていたのは二丁の拳銃。

片方はアコが愛用する『ホットショット』

 

もう片方は

 

 

「“それって、カヨコの?“」

 

 

「うん......だな。コピー品でもないし......こんなもんどこで......」

 

 

カヨコの愛銃である『デモンズロア』が同封されていた。

 

便利屋家業を営む上でコレはカヨコの手から離れてはいけないもののはずだ。

 

 

『預かったんですよ。必ずあなたに届けろと......全く、相変わらず扱いが雑なんですから......』

 

 

箱から白を素色としたサイレンサー付きの自動拳銃。

 

「......ライター......」

 

 

さらには、いつもカヨコから借りていたライターまで入っている。

 

「無くしたのバレてーら......」

 

 

『カヨコさんの感は鋭いですからね......まぁ、あなたを知り尽くしているのもあるとは思いますが』

 

 

ライターのゼンマイ部分を回し、オイルに着火。

いつも通り、暖かな光が瞳に反射する

 

アルトは懐からネオシーダーを取り出し、先端に着火。

 

いつも通り、いつも以上に苦いその煙を再び肺いっぱいに吸い込んで、吐き出す。

 

その煙の色は何処か赤黒く、アルトに纏うように漂っていた

 

 

「スゥー............はぁ〜......ぺっ。ありがとな、アコ。届けてくれて」

 

 

煙と一緒に痰を吐き出し、コンコンと喉を鳴らしていた咳は漸く治った。

 

『......さっきも言いましたが、私にお礼はいりません。お礼なら、カヨコさんと委員長にお願いします』

 

 

少しそっけない雰囲気を醸し出しながらホログラムを消す後輩。なんだかんだ言って心配してくれてんの優しいんだよなぁ

 

 

『......言い忘れていましたが』

 

「ん?」

 

 

タバコを咥えて大きくその煙を吸い込みながら、通信機に向き直る。

 

 

『私の銃もカヨコさんの銃もオーダーメイド品なので、絶対に壊さずに返しにきてください』

 

 

「......おう。りょーかい」

 

アルトは拳銃のマガジンを抜き、弾丸が正しく装填されていることを確認してスライドを引いた。

 

アコの拳銃はカヨコのようなスタンダードな自動拳銃ではないが、弾倉を引き抜いて確認、スライドを引いて装弾。

 

 

......両方とも、整備が行き渡っていてとても使い易い

 

 

 

 

 

『ゼロワンドライバー』

 

 

アルトは無言でいつものようにドライバーを腰に装着し、2人から借りた拳銃を両脇のホルダーに通す

カチッ、と小気味のいい音がしてホルダーに二丁の拳銃が格納された。

 

 

赤黒い煙を吐きながら、理由もなく己が育った街を見下ろした。

 

 

......ここに来るのも、もうコレで終わりかもな

 

 

ざぁざぁと降り頻る雨がアルトのコートに落ちていく。

アルト自身は、それを気にしている様子は全くなかったが

 

 

 

「“.........準備、できた?“」

 

 

後ろから先生によって差し出された傘が雫を遮って、先生と俺の視線が交わった。

 

 

「......うん。万端だ」

 

 

その傘を甘んじて受け入れて、そう答える

 

 

「.....先生」

 

「“どうしたの?“」

 

自分をがんじがらめにするのも、コレで最後だ

 

 

 

「信用した大人が、あんたで良かった」

 

 

俺1人だったら、きっと何もできなかったから

 

俺1人だったら、きっとみんなが差し出してくれた手に気づけなかっただろうから

 

 

あの時、信じてくれたアンタを信用して良かった

 

 

 

「“......うん。私も、良かった“」

 

 

その返答に、アルトは________________

 

 

 

「あはっ......ありがとな。本当に」

 

 

傘を受け返して、目指すべき場所へ再び歩を進める

 

 

「......こ、コレで最後なんでしょうか......」

 

 

「......ああ」

 

 

ヒヨリが不安そうな顔をしているから、撫でてやってその問いに返す。

 

 

 

「俺が、ここで終わらせる」

 

 

 

「私たちが、ね」

 

「やり遂げよう」

 

 

そっと、寄り添ってくれる家族がいるから

 

 

「もちろん、私たちもしっかりサポートするからさっ」

 

「うん。今度こそ、私が守るから」

 

 

強くて、優しい仲間がいるから

 

 

「......なんか、情けないなぁ」

 

 

自虐ではなく、今度こそ背中を預ける。という意味で放った言葉

 

 

それをちゃんと分かってくれる人がいるから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『随分と余裕ではありませんか?秤アルト』

 

 

 

 

突然響いたその声に、全員が身構える。

 

特に、スクワッドメンバーは素早く反応した

 

 

 

 

 

 

 

「.........ははっ、漸くご対面だなぁ」

 

 

 

そして、変身済みのユスティナが現れてその中心に映るホログラムをアルトは睨んだ

 

 

 

 

 

「......よぉ、久しぶり」

 

 

『来るのが遅かったですね.........フフッ』

 

 

一番会いたくない............いや、違うな

 

 

 

 

 

今だったら、2番目に会いたくて会いたくて仕方がなかったクソババア

 

 

アルトが吐いた煙が本格的に黒く染まり、軽くスパークを起こす

演算視が蒼い輝きを放ち、友達を騙す時にすら見せなかった獰猛な笑みを浮かべる

 

貧血の目眩なんて、気にもならないほどに

 

 

 

 

それを見据えるのは、幾つもの瞳。

 

赤い体表にそれに似合わぬ純白のドレス。

そして、にぃっと開かれた口内から覗く乱杭歯

 

 

 

 

「ベアトリーチェ......」

 

 

 

 

切られた火蓋は、より強く、その勢いを増していた。




カヨアコにアルトを挟む形になってしまったことを、今ここに謝罪いたします。


大変申し訳ありやせェェんっ!!
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