何もかも間違えてて草生える
「邪魔するなら、撃つ」
「実力行使で行く」
ホシノとヒナが低く呟き、それぞれ銃のトリガーを引いた。
2人の広範囲攻撃によって雪崩れ込んでくるユスティナを掃討するが、母数が大きすぎるためあまり変化はなかった。
「いやぁ......これまたキリがないねぇ」
「ぜ、全然前に進めないです.........」
先輩との合流地点に向かおうにも、数が多すぎる
先輩の兄妹ちゃん達を向かわせることくらいはできそうだけど、それをやったところであまり意味もないだろうなぁ
「どうする?風紀委員長ちゃん?」
「どうもしないわ、小鳥遊ホシノ」
その問いに対して、ヒナは正面を見据えたまま銃を構えたまま返答する
「誰1人かけることなく秤先輩のところまで行く」
「......強いね、委員長ちゃんは」
「きゅ、急に何?」
ホシノは短く切り揃えられた髪を耳の後ろに掛け、背中の盾を展開する
ユメ先輩が使っていた盾。
『俺のモットーは一撃必殺だけど、盾を否定する気にもなれないんだよなぁ』
先輩が、私にくれた盾
何かを倒すための力じゃなくて、何かを守るための力
『何かを守れるってのは、それだけで素敵なことじゃん?』
先輩が、私にくれた言葉。
いつの間にか、私の心の中で響いていた言葉
「じゃあ、早く合流しないとね」
たくさん助けられた
たくさん迷惑をかけた
だからこそ
『だから、ホシノはたくさん後輩ちゃん達を守ってやってくれよ』
約束、守るよ。先輩
ホシノは展開した盾でユスティナを押し返す
その小柄な体躯からは想像もつかないほどの筋力によって群体を押し返し、バランスを崩した敵を正確に撃ち抜く
この間、約0.2秒
「これなんてどーかなぁ」
先輩の戦い方を見ておいて良かった
この化け物も、やっぱり視覚に頼ってる
「はい、おしまい」
そのまま愛銃の『Eye of Horus』のトリガーを引き、ショットガンというにはあまりにも大きすぎる放射線を描いた弾道がアンブロジウスを貫く。
「ちょーっとまずったかな」
だが、アンブロジウスはまだ活動を続けている。
そして、最後の力を振り絞って落下しているホシノに向かって蒼炎を放つ
「助かった。後は私に任せてくれ」
________________寸前、サオリが放った一撃によって炎ごとアンブロジウスのヘイローが砕かれた。
「ごめんね、おじさんももう歳かな」
「いや、早すぎてこちらが対処できなかったのが落ち度だ。申し訳ない」
ホシノに油断はなかった。
それどころか自分自身のポテンシャルをいつも以上に引き出せていたと思う。
......先輩の自己犠牲癖が、うつっちゃったかな
あの時の炎、確かに熱いだろうし痛いだろうと思った。
だけど、『この程度なら耐えられる』と自分が判断してしまった
「......今の動き、兄さんに似てる」
ミサキがそう呟く。
確かにホシノの動きはアルトの戦い方と酷似していた。
煙幕を放ち、視界を奪い、強力な一撃を叩き込む。
それも銃を使った遠距離攻撃ではなく、盾と肉体をふんだんに使ったCQB
「......まぁ、ね。一番近くで見てたから」
先輩と過ごしたあの頃は、今でも思い出す。
戦い方は、たくさん教えてもらった。
今でも、ちゃんと覚えてるよ
「......私が一番近くで見てたけど」ボソッ
「ん〜?なんて言ったのか聞こえなかったからもう一回言ってくれるかなぁ〜?」
嘘である
「秤先輩はゲヘナに半年ずっといてくれた」
「それを言うならアビドスには一年じっくり来てくれたよ」
「でも、先輩の名前も教えてもらえなかったそうじゃない?」
「そ、それは......」
「それに、私は半年間ずっと一緒にいてもらった......朝起きる時も、寝る前も」
「......わ、私たちは、ずっと一緒でしたけどね......えへへ......」
「「ん?」」
「ヒエッごめんなさいぃっ!!?」
すでにこのマウント合戦は3回目である。
『どちらがどれほど長く一緒にいたか』
『どんな料理を作ってもらったか』
『してもらった一番すごいこと』
など大小さまざまではあるが、結構ヒートアップしてきてだいぶすごいことになっている。
「私は先輩に何回も寝かしつけてもらった」
「うぐっ!」
う、羨ましい!
私も先輩の子守唄とか聞きたい!
先輩の声優しいから、いつもよりスッと眠れるのかな......
「お、おじさんは先輩と背中合わせでいつも戦ってたよ?まさに『相棒』って感じで」
「っ......」
う、羨ましい......
私も先輩の背中を任されたい......!
私だって先輩と肩を並べて戦いたかった!
先に仕掛けたのはヒナだが、どちらともそれぞれダメージを受けている
「......でも結局、わかってくれないんだよねぇ......」
結局はそれである。
稀代のクソボケであるアルトはここまでわかりやすい好意を向けられながら、その好意に一才気がつかない。
前世の年齢を今世の年齢とプラスで加算しているため、もはや子供を子供としか見られなくなっているのもあるが、ここまでのクソボケはもはや脳機能の疾患を疑うほどである。
さまざまな疾患を抱えるアルトだが、脳だけは綺麗さっぱり障害なしである。
「......そろそろ、いいか?」
火花を散らす2人の間に入りづらそうにしていたサオリがそろそろ移動を開始しようと
「あっと、ごめんね」
ホシノはクルクルと短い髪を指先でいじり、ふとアルトのことを想う。
先輩、大丈夫かな
もしも、
......いや、違う
私が、させない
絶対に
「そろそろこの地下道も終点だ。ここさえ抜けられれば後はアルトと合流できる」
「な、長かったです、ね」
「気を抜かない方がいい。兄さんがいつも警告してるでしょ」
ミサキの言う通り、全員警戒を怠ることはない。
ヒナとホシノは特に気を張っているように見えた。
「なんだ......?」
「......やっぱり、準備しておいて良かった」
奥で蠢くユスティナの群。
警戒を怠らなかったことで早期発見することができた。
ミサキが『セイントプレデター』からクラスター式のミサイルが飛び出す。
着弾点には大きく炎が上がり、ユスティナが黒煙によって見えなくなる
「......最後の仕事だ」
「うん。じゃあ、気合い入れて________________
ガゴン!!!
「っ!?ぐっ!!」
瞬間、煙の中から人型の何かが飛び出し、片手で持った大型の銃のようなものでホシノを殴り飛ばした。
幸い、長年の経験と勘によって殴られる瞬間に盾を展開したおかげでクリーンヒットは免れた。
「あれは......!」
地面に銃を擦りながら、煙の中からその人型は姿を現した。
「ユスティナ聖徒会の......聖女......」
聖女バルバラ
聖徒会の最も偉大な聖女であり、戒律の最後通告者
アリウスを弾圧した元凶
「全員跳べ!!!」
サオリによる鶴の一声のおかげで全員はバルバラの左手にある大型のガトリングガンからの攻撃をかわすことができた。
「っ......こんな化け物、相手にできるの......?」
ガトリングガンが着弾した地点は大きくえぐれており、もろに食らえばどうなるかなどと言う未来は明白だった。
「前座のユスティナはブラフ......随分粘着質なやり方」
だが、ヒナは誰よりも先に攻撃を開始。
「だとしても、こっちが止まる理由はない」
バルバラの高威力型らしき右腕のランチャーを軽々と避け、茈の弾幕を張る
「っ!!」
だが、空中に飛び出したヒナを今度は両手を使って武器を放つ。
ガトリングによる高密度の弾幕、ランチャーによる爆破
ヒナはそれを壁を走ることによってなんとか回避しているが、1人では時間の問題だろう
「い、『一撃、必殺』です!」
言霊を乗せるように、ヒヨリは『アイデンティティ』をバルバラに向けて撃った
「ひゃっ!」
ぐるり、とバルバラはヒヨリに狙いを変更。
まるで人間ができるポーズではない形の姿勢から繰り出される弾丸を、ヒヨリは走り回ることでなんとか避け切る。
「沈、め!!」
サオリも負けじとバルバラの脳天に神秘を補填した弾丸を撃ち出す。
「っ......なんて耐久を......!」
ヒヨリのライフルが効いていなかった時点であまり期待できなかった
サオリも着地し、スモークを焚いて再び駆け回る
だが________________
「ぐっ!?」
サオリは、自分より二周りも大きいバルバラによって体を掴まれる。
それも、片手だけで
ギリッ
「あ、がっ!!」
人間の握力からはかけ離れた圧倒的なほどの握力。
いくらキヴォトス人の強靭な肉体を持ってしても、万力に握りつぶされば脱出は困難だろう
「姉さん!!」
ミサキが助けに入ろうと拳銃を向けた。
ミサイルを使えばサオリにも被弾する恐れがあるため使えない。
だが、ただ拳銃ではバルバラの体が揺らぐことすらなかった
「っ“!!」
バルバラはノールックでガトリングを構え、ミサキに向かって放つ。
どうやらすでにサオリの排除に行動を移しているようだ
「このっ!!」
至近距離で弾丸を押し当てるが、それが効いている様子はなかった
「づぁっ......!」
体の軋む音を聞きながら、サオリの意識は薄れていく。
こんな時、アルトならどうする
最後まで、諦めないはずだ
その圧倒的な力が、私にもあれば
それに、今から抵抗したところで私の結末は変わらない。
やはり、人生は
全ては
......違う!!
その考えを捨てろと、何度言われた!
そんなことを考えてる暇があるのならもっと頭を動かせ!考えを止めるな!
「けし、て......諦める、なんて........!」
サオリは再び銃のトリガーを弾き続ける。
「ねぇ、おじさんは仲間はずれ?」
突然飛来したホシノがサオリを掴んでいるバルバラの右手を蹴り飛ばし、サオリを解放。
その隙を見逃さずバルバラに総攻撃
さらに空中で身を捻って頭を地面に向けながらショットガンの三連射
「後は、頼んだよ。委員長ちゃん」
そして、ヒナがホシノの後ろから仁王立ちで銃を構えていた。
「任せて」
いつものような広範囲の攻撃じゃなく、一点に攻撃力を集中
繊細に、それでいて力強く
先輩がやってたことを、私も思い出して
地面に翼を刺してアンカーのように体を固定。
そして、ヒナは銃口に神秘を込めた
「これで、終わり」
『終幕:イシュ・ボシェテ』
一糸乱れぬ弾丸が、聖女を貫く
アルトくんがどんどん食われやすくなってて草生える
アルト「こっちは笑い事じゃねぇんだよ」
あっすいません