アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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第二十五話 兄と妹

 

 

「やはり子供というのは、脆く......そして愚かしい」

 

 

ベアトリーチェは、サオリの頭を踏み付けにした。

 

 

「あ......が、ぁ......っ」

 

最初からかなりの重症だったサオリの体は、すでにボロ雑巾のようになっている

 

 

「なぜ、ここまで抗う必要があるのですか?」

 

「なぜここまで、盲目的に希望を信じられるのですか?」

 

 

「私には、何一つだって分かりはしませんよ」

 

 

そして、ベアトリーチェは磔にされたアツコと、力なく仰向けで倒れているアルトを交互に眺めた。

 

 

「どんな希望も、どんな願いも、ただ私に搾取され、踏み躙られるために生まれたのです。秤アルトも、ただその一部でしかありません」

 

 

まるでそれが当然かのように、ベアトリーチェは語った。

 

 

「“......そんな、はずが、あっていいわけがない“」

 

 

「ふむ.........ですが、そのような理想論を奏でられるほど、貴方は強くも何もないのですよ?先生。現に________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ.........ゲホッ!!」

 

 

「今度、こそ......ッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生徒を、盾にしたではありませんか」

 

 

 

 

 

ベアトリーチェの言う通り、ホシノとヒナは先生の前に立ち塞がって先生とアルトを守るための肉壁となっていた。

 

キヴォトスでも最強クラスに位置する実力者2人でも、覚醒したベアトリーチェの攻撃を耐え切ることはできなかった

 

 

「何もかも意味はありません。この力の前では全てが無意味......私の願いを叶え......私を上位の存在へと運んだこの力の前では......」

 

 

 

低く、ベアトリーチェは笑い声を上げた。

 

 

 

「秤アルトには、感謝を述べなければなりませんねぇ......」

 

 

 

花弁のように開いたその眼球に再び光が灯った。

 

 

 

「先生ッ......!先輩を連れて、逃げて......!」

 

 

「ここは、私、たちが......!」

 

 

ホシノとヒナは満身創痍の中、2人を逃がそうと再び立ち上がる。

もうすでに戦闘を行うどころか、立つことすらままならない

 

 

「“そん、な“」

 

 

だが、先生は動かない。

 

 

ホシノとヒナ。

 

サオリにミサキ、ヒヨリ

 

 

様々な要素が複雑に絡み合って、先生は判断を鈍らせた。

 

 

 

「では、さようなら。秤アルト」

 

 

 

 

そして、ベアトリーチェは

 

 

 

 

 

 

光線を________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アルティメットストラッシュ』

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........あ“ああああ!?」

 

 

 

 

 

放つ寸前で、その多すぎる瞳に亀裂が入った。

 

 

それも、大量の刃物で切り付けられたように

 

 

 

 

 

「一体何をしたァァァァァ!!!これ以上私を苛立たせるなッ!!」

 

 

その骨のような長い腕をぶんぶんと振り回し、無様に血を撒き散らす。

 

さっきまでの勢いはどこへやら、再びその醜態をベアトリーチェは晒している。

 

 

 

「なぜ傷が回復しないぃ......!?この力なら、私は不死身の筈......!」

 

 

ベアトリーチェに入った傷の数々は、まるで()()()()()()ように細かく亀裂が入っていた

 

 

 

 

「......この、煙って」

 

 

ヒナはさっきから足元で流れていた赤黒い煙に触れる。

 

 

「これ、って」

 

 

その黒煙を、ここにいる全員は知っていた。

 

 

 

「ありえない.........ありえないありえないありえないありえないッ!!!貴様のヘイローは確かに砕いた!!力も全て......なのになぜぇっ!!」

 

 

 

ベアトリーチェは、特段煙の濃いアツコが磔にされていた祭壇の方を勢いよく向く

 

 

「秤......アルトォォォォォォォ!!!!!」

 

 

 

そして、一気に煙が晴れた

 

 

 

 

その先には

 

 

アツコを抱えた、アルトが立っていた。

 

 

 

まるで燃えるように輝くヘイローを、携えて

 

________________________________

 

 

 

 

 

 

『止血開始』

 

 

アルトから抜け出た血液は、あの瞬間『鉄煙(ノロシ)』に変換された。

 

 

そして、みんながわんわん泣いてた時にアルトの止血は大体終了していた。

 

危なかったことには変わりはないけど

 

こう言う時のためのチャートを用意しておいて良かったよ

 

 

 

 

 

「......よーやく、たどり着いた」

 

 

そして、ベアトリーチェの演説中にライジングホッパーの装甲を足だけに纏わせ、一気にアツコの元まで接近。

 

その合間にベアトリーチェを辻斬り。

プログライズホッパーブレードの刀身はあくまでもクラスターセルを効率よく稼働させるための『マーカー』その特性を利用して、ベアトリーチェに気づかれずアツコを回収した後にクラスターセルを起動。

 

あの瞬間アルトは、誰にも気づかれることなくアツコの元まで辿り着くことができたのだ。

 

 

 

「俺、さ......やっぱりアツコがいないとダメみたいなんだよ......」

 

 

磔にされていたアツコを下ろし、そっと抱きしめる。

 

そして、アツコのマスクを取った。

 

 

 

「......エゴかもしれない。全部俺の自己満足でしかないのかもしれない..........けど」

 

 

『クリエイト』

 

 

そして、そのマスクに向かってゼロツープログライズキーと自身の神秘を織り交ぜる。

 

 

「......生きて、ほしい」

 

 

すると、マスクは二つの指輪に変わった。

黒色の、少し輪郭が太い二対の指輪

 

 

 

 

 

「生きていて、ほしいんだよ......」

 

 

そっと、アツコの左手の薬指にその指輪を通した。

 

 

同じくして、自分の薬指にも

 

 

そして、その二つの指輪が重なるようにゆっくりと手を結んで、優しく絡める

 

 

「俺の全部をあげるから」

 

 

そして、指輪を仲介するように神秘がアツコに流れ込む

 

 

「目を、開けてくれ......」

 

 

 

 

 

 

 

アルトはただ願った。

 

誰のものでもない

 

 

誰かのためじゃない

 

 

誰かに否定されるものじゃなく

 

誰かに肯定されるためのものでもなく

 

 

 

ただ、兄から

 

 

 

妹へ向けられた願い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『生きて』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........うん。わかった」

 

 

 

 

「......えっ......?」

 

 

 

 

結果から言おう

 

 

 

 

秤アルトの願いは、今まで通り叶った。

 

 

 

 

 

「んっ.........」

 

 

「.........むっ!?」

 

 

アツコのヘイローが、アルトの瞳に映った

 

アツコの体温が、すぐそこに感じられた。

 

 

ふわりと、アツコの髪の匂いが鼻腔に通った。

 

 

いつもそばに感じていて

 

いつだってアルトを支えた全てが、そこにあった。

 

 

 

そして何より、一番強く感じたのは

 

 

 

 

 

 

「ちゅ............ふっ............んぅ.........」

 

 

 

「ちょ.........あつ......こ.........何、を.....!?.........まって.........んうっ!?」

 

 

 

 

アツコの、唇

 

 

何を言っているかわからないと思うが、俺も何があったかまるっきりわからない

 

 

 

「「.........ぷはっ」」

 

 

 

長く続いた口付けが、ようやく終わりを告げた。

 

そして、アツコとアルトの視線が交わる。

 

 

「えへへ.........もらっちゃった」

 

 

「いや.........一体何を.........」

 

 

突然目を覚まし、突然アルトの唇を奪ったアツコ。

そして、アツコは混乱しているアルトの頬を撫でた。

 

 

「......ただいま」

 

 

「っ.........うん......ッ.........おかえりぃ.........ごめんなぁっ......遅く、なって.........」

 

 

アルトも、アツコを強く抱きしめる。

 

涙脆いのはいつもの如く。今回もボロボロと大粒の涙をこぼしていた。

 

 

「ありがとう.......っ.........生きてて、くれて......っずぅっ!」

 

 

大きく鼻水を啜りながら、嗚咽を漏らして泣きながら笑う。

ただただ、嬉しかった。

 

アツコが生きていたことが

 

 

それだけが、ただただ嬉しかった。

 

 

 

ありがとう

 

 

 

 

それ以外の言葉が見つからないくらい。

 

 

 

「生まれてきてくれて.........ありがとう.........」

 

 

 

 

 

「......うん。大丈夫、私は大丈夫だから。泣かないで」

 

 

「だってさぁ.........」

 

 

 

いつもなら見せない、情けないところも

 

今なら全部曝け出してしまえそうだった。

 

 

「......ごめん......まだ、最後に仕事がある」

 

 

でも、今は、まだ終わってない

 

 

 

「......うん」

 

 

アツコは名残惜しそうに、アルトのコートから手を離そうとして

 

 

再び、強く握り直した。

 

 

「頑張れそう?」

 

 

もう、2度と離れないように

 

2度と見失わないようにと、強く強く握りしめる。

 

 

もう、2度と諦めたりしない

 

もう2度と一歩引いたりしない

 

もう誰にも譲ったりしない

 

お兄ちゃんは、私の。

 

一番愛してる人だから

 

 

 

「.........いやぁ......結構ロマンチックな表現は、苦手分野なんだけどさ」

 

 

 

コートを掴み続けるアツコに、アルトは自信満々な表情で答える

 

 

 

 

 

 

「俺、今結構無敵......かも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゼロツードライバー』

 

 

 

 

神秘は混じり合い、アルトのヘイローは輝きを増した。

 

まるで、燃え盛る炎のように

 

 

 

 

 

「さぁて......お兄ちゃんとして、いいとこ見せねぇとな」

 

 

 

 




次回アリウスクソボケオオバッタ

『第イチ話 これからの俺たち』
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