アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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最後は、きっと笑顔で


第イチ話 これからの俺たち

 

 

こつ、こつ

 

と、アルトは一歩ずつ階段をおりる。

 

その姿はどこか神々しく、それでいてその強大さを遺憾なくベアトリーチェに押し付けていた。

 

 

「な、ぜ......何故ッ!!貴様は今!今死んだ筈だァ!!」

 

 

「......はっ、残念だったな。トリックだよ」

 

 

どっかで聞いたようなセリフを吐きつつ、飄々とした様子で一歩ずつ、また一歩ずつとベアトリーチェに近づく。

 

 

 

「どこまでも.....ッ!忌々しいガキがァァァァァァァ!!!」

 

 

大人の威厳とはなんなのやら、ベアトリーチェは完全にアルトを恐怖の対象としてその瞳に映し、再びその眼に光を集める。

 

大量のベアトリーチェの神秘と、アルトの願いを叶える神秘が混じり合った混合物が勢いよくアルトに向かった

 

 

 

「そろそろうるせぇ。みんなの耳に後遺症が残ったらどうしてくれんだよ」

 

 

 

 

だが、ベアトリーチェ渾身の一撃は、アルトが放ったクラスターセルの防壁に軽々と防ぎ切られた。

本来ならあり得ないクラスターセルの硬度。

 

 

「......やっぱ、すげぇなこれ」

 

 

アルトは軽く腰に装着された『ゼロツードライバー』を眺める。

 

 

「あと、邪魔だお前」

 

 

ベアトリーチェに向けてアルトは左手を向ける。

 

 

 

 

「ぐうっ!?こんな、小細工をッ!!」

 

 

バッタ状に拡散し、ベアトリーチェの体を端から貪るクラスターセル。

ベアトリーチェはその痛みに耐えかねたように身をふるい、壁やら床やらに体を打ちつけている。

 

 

 

「先生、ただいまー」

 

 

「“......話は後?“」

 

 

「できれば......」

 

 

「“ダメ、今して“」

 

 

アツコに自分の着ていた白色のコートを着せる。流石にレオタード姿をこの変態紳士の前で晒させるわけにはいかんのじゃ

 

だが、説明のご要望とあれば答えないわけにはいかないだろう。なんでかって言うと先生だけじゃなくてみんながこっちを信じられないものを見たような顔でガン見しているから

 

 

「いき....て、ます。よね?」

 

「......うん。心配かけたな、ごめんヒヨリ」

 

 

「う“ぅ......っ......なんでまた、無茶するんですかぁ......っ」

 

「いや、ほんとに......ごめん」

 

 

少し前にヒヨリに怒られたばかりだと言うのに、また約束も言葉も守れていない。

 

しがみついてきたヒヨリも抱きしめ、アルト反省。

 

 

「......ばか」

 

「おっしゃる通りでございます.........」

 

「......アホ」

 

 

「ほんとに......アホですんません......」

 

 

「......クソボケ、女たらし。天然ジゴロ」

 

「それはほんとに.........いや心当たりねぇって!?」

 

 

「私に、死ぬなって言うなら兄さんも絶対死なないでよ」

 

「......うん。ごめん、本当に」

 

アルトはそっと、ミサキの頭を撫でてやる。

そうすると満足そうにしがみついてきた。俺のせいで心配させてしまったからな、申し訳ない

 

 

いつも通り、ではなく結構震えた声でミサキはアルトの肩に頭を乗せた。加えていつもの頭グリグリも追加しつつアルトを諌める。

顔は見えないが多分泣いてると思われる

 

 

「っ......本当に......良かった......」

 

 

「わっ」

 

「おうっ......」

 

 

「本当に.......っ......」

 

 

サオリは、アツコとアルトの2人を一気に抱きしめる。

全く隠す気もなくわんわん泣いている。

 

......本当に、申し訳ねぇなぁ。

 

 

 

「大丈夫だよ。俺もアツコも、ちゃんと生きてるから、さ?」

 

「うん。サッちゃん頑張ったね。偉いよ」

 

 

そう言って、俺とアツコは泣きじゃくるサオリの頭を撫でる。

 

そうすると、嗚咽は漏らしているがようやくサオリは泣き止んだ。やっぱり幾つになっても、意外と涙脆いのは変わらないんだな、サオリは。

 

 

「......暑い......」

 

 

「我慢して」

 

「おしくらまんじゅうみたいになってるってぇ......」

 

 

もうすっごい、あっつい。動いてないのに

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁあん!!!よかったですぅぅぅっ.........!」

 

 

こうして、漸く

 

 

「......アリウススクワッド全員集合かな?」

 

「だな。相当時間かかっちまったけど」

 

 

家族は、元通りの形になることができた。

 

サオリがいて

 

ミサキがいて

 

ヒヨリがいて

 

アツコがいて

 

 

 

 

俺がいる

 

 

 

 

「......なるほど」

 

 

よく漫画とか映画とかで、家族で集まれただけで幸せ!みたいな言葉は、昔からよくわからなかった。

 

しかも、今の状況は別に何日も会えなかったわけでもないし、誰かがかけていることだってない。

毎日顔を合わせられて、毎日一緒にいられて

 

 

互いを助け合えて

 

 

同じ時間を過ごしてきた

 

 

「......こー言うことか」

 

 

漸く、若干だけどわかった気がする。

 

 

 

「......幸せ、だなぁ」

 

 

おしくらまんじゅう状態のみんなを束ねるように、俺は全員を一気に抱きしめる。

 

 

「......あははっ......なるほどぉ......」

 

 

幸せだ

 

家族で、また一緒にこれから生きていける。

 

 

それだけで、俺はずっと幸せだったんだ。

 

 

秤アルトだからとか

 

兄だからとかそう言うんじゃなくて

 

 

ただただ1人の人間として

 

家族が愛おしい

 

 

「.......ありがとう、みんな」

 

 

みんなが、家族で本当に良かった

 

 

「なりませんッ!!!」

 

 

ベアトリーチェが叫びと共に放った光弾を、左手を突き出すことで発生させたクラスターセルで受け流す。

ヤケクソではなった力にしては、やはり威力が高すぎる

 

 

「私の領地で......!私のバシリカで何故そんな希望に満ちた言葉を吐ける!?私はお前たちに教えたはずだ!!欺瞞を!怒りを!憎しみをッ!!」

 

 

ベアトリーチェの神秘はアルトの神秘のかけらによって肥大化している。

一発でも掠ればアウトだろうな

 

 

「お前は......お前たちはッ!!私に搾取されッ!ただその人生を捧げればいいの

 

 

 

『黙れ』

 

 

 

________________っ!?」

 

 

アルトのヘイローが一瞬揺らぎ、ベアトリーチェの煩わしいヒステリックな声はそこで止んだ。

 

 

「俺の大切な家族に話しかけるな」

 

 

 

「お前に人生を捧げる?巫山戯た事を抜かすな」

 

 

アルトはそっと皆んなを離し、ベアトリーチェを『演算視』で睨みつけた

 

青く、蒼く光り輝くその眼光は、完全なる怒りを孕んでいる

 

 

「俺の人生は......俺の家族の人生は、誰かに搾取されて......語られていいもんじゃねぇんだよ」

 

 

放ったクラスターセルがアルトの周囲に集合し、波打つ繭のように形成される。

 

 

「サオリも、ミサキも、ヒヨリも、アツコも......!輝かしい可能性が、未来がある!!」

 

 

今まで積み立ててきた経験を

 

 

「それを......お前が......お前如きがッ!」

 

 

人生を

 

 

「語ってんじゃねぇよ!!!」

 

 

 

最大にして、最高の願いを

 

 

『秤アルト』は叫んだ

 

 

 

 

「......先生、ホシノ、ヒナ」

 

 

説明が遅れた三人に、アルトはいつもの自信に満ちた笑顔を向けながら答えた。

 

 

「今度こそ、全部終わったら答える」

 

 

「“......絶対、だよ“」

 

 

「ん、終わったら飯でも食いながら話そう」

 

随分と、説明が遅れてしまった

 

 

「......私も、今度こそちゃんと聞くから、教えて」

 

 

「......おう。ごめんな、遅くなって」

 

 

ヒナには、もっと

教えるべきことも、教えるべきだったことも、伝え損なってたから

 

 

「......私にも、絶対教えてください」

 

 

「当たり前だ。全部、教えるから」

 

「......なら、いいよ」

 

 

満足そうな笑顔を向けながら、ホシノはそう答えた。

 

何年も、話すのが遅れたってのに、本当にできた後輩だよ

 

 

 

 

「違う違う違う違う違う違う違う違う違うッ!!私が望んでいるのはこんな安っぽいハッピーエンドではないッ!!互いを憎しみ合い、疑い、騙し合うだけの物語だった筈だッ!!よくも私の目の前でッ!そんな言葉をオオオオオオオオオ!!」

 

 

「......ああ、確かに前半はそうだな」

 

 

アルトは、静かに懐から『ゼロツープログライズキー』を取り出す。

 

 

「けど、どんな物語だって、俺はハッピーエンドが好きなんだよ」

 

 

ベアトリーチェも同じく、『エデンプログライズキー』を取り出してそのままドライバーに差し込んだ。

 

 

「だからなんだと言うのですか!?この物語は変わりはしないッ!!私が望んだ結末が、今目の前にあると言うのに変わってたまるものかッ!!」

 

 

『プログライズ』『アーク』

 

 

「そうだ......変わってはいけないッ!!」

 

 

ベアトリーチェは再び『ルシファー』に変身。

神秘が加重されたからだろうか、最初の変身よりも威圧感が生まれた気がする。

 

 

けど、今の俺にはあんまり気にならないかな

 

 

「ま、また変わりましたよ......!?」

 

「キッショいなぁ」

 

 

やっぱりあいつのこと仮面ライダーだと判定するのやめよう。先人たちにあまりにも失礼だ

 

 

「ああ、そうだ秤アルト________________

 

 

 

 

 

「お前の夢も!希望も!全て今ここで粉々にしてあげましょう!!」

 

 

 

ベアトリーチェは、サオリたちを睨みつけた。

 

 

......させるわけがねぇ

 

 

「......やってみろよ。クソババア」

 

 

 

 

 

 

 

『ゼロツージャンプ!!』

 

 

 

ゼロツープログライズキーを起動させた瞬間、『トランスロックシリンダー』が解放され、勢いよく前面の『キーライザー』が自動的に開いた。

 

 

そして、自分の手で『ゼロツーリベレーター』を起こし、変身シークエンスを開始する

 

 

『Let’s give you power』

 

 

今までのどの警告音とも違った、希望に溢れるようなドライバーの待機音。

 

 

それに乗じるように、地下から二対のバッタのライダモデルが飛び出した。

 

どちらともバッタの形を形どられており、どちらも目が眩むような明るい希望を灯していた。

 

 

 

二つのライダモデルはアルトたちの周りを飛翔し、跳躍している

 

 

「お前を止められるのはただ1人_________________

 

 

指を突き立て、かの有名なあのセリフを叫ぼうとした瞬間

 

 

 

「言ったでしょ?お兄ちゃん1人に押し付けないって」

 

「なんでも1人で背負い込もうとしないでくれ」

 

 

「そ、そうです......私たちも、一緒ですから」

 

「いい加減に頼って」

 

 

 

「......だな。ごめん」

 

 

「ま、これから先輩のその悪癖を治していこーね?」

 

「その通りね。私も矯正手伝うから」

 

「お〜、委員長ちゃんも乗り気じゃない?」

 

 

やっぱり、抜けない癖ってのもあるだろうし、これからもかなり間違えるだろうけど

 

 

 

「......お前を止められるのは________________

 

 

 

 

みんなが一緒にいてくれる

 

俺が間違えたって、みんなが正してくれる

 

 

 

だから

 

 

 

 

「俺たちだ」

 

 

 

 

もう、震えは止まった

 

 

 

『ゼロツーライズ!!』

 

 

大きく振りかぶってキーをドライバーに装填

 

 

明るいライトイエローの光を放つバッタのライダモデルがアンダースーツを纏ったアルトに纏わさる。

 

 

『Road to glory has to lead to growin'path to!』

 

 

そして、赤い骨格のライダモデルがその装甲に紅い彩を重ねた

 

 

『change one to two!』

 

 

 

胸部のアーマの上部に、『2』を模った『ゼロツーストリーマー』が接続された。

 

 

 

 

『仮面ライダーゼロツー』

 

 

 

「......俺は、家族の、皆んなの」

 

 

 

アルトは

 

 

秤アルトは

 

 

 

 

 

「可能性を守る」

 

 

 

『It's Never over.』

 

 

 

 

そう、宣言した。

 

 

 


 

 

 

「なんなのですか.........なんなのですかッ!?そんなものは、見たこともないッ!!」

 

 

ベアトリーチェは困惑した。混乱した

 

 

今まで見たこともない力に。膨大すぎるその神秘に

 

 

 

「まぁ、俺も使うのはこれが初めてだからな」

 

 

アルトは、一歩前に出た。

もちろん、アリウススクワッドの4人もその足並みに揃えて前に進む。

 

 

「というか、使えなかったんだよ」

 

 

「____________は」

 

 

 

アルトがいつもの穏やかな口調のまま言葉を連ねていた瞬間、ベアトリーチェの顔面に大きな亀裂が入って背面に大きく吹き飛んだ。

 

 

 

一体何が

 

ベアトリーチェには何も見えなかった。

 

この力を持ってしても観測すらできないほどのスピードに、強化された外骨格を一撃で砕くほどの火力

 

 

 

「と、まぁこんな風に、この力はあんまりにも強すぎるから、俺が気軽に使えないように封印してた」

 

 

ベアトリーチェがなんとか傷を癒やし、正面を見ればやはり拳を突き出したアルトが立っていた。

 

 

「アツコの神秘を登録して、鍵をかける。俺じゃなくてアツコなら気軽に開けるように設定してた」

 

 

再びスッとアルトは背筋を伸ばし、ベアトリーチェに向かっていく。

 

ベアトリーチェはようやく立ち上がり、アルトの足元から大量の骸を作り出し、ドライバーに装填された『エデンゼツメライズキー』を押し込んでその骸の壁に向かって蹴りを放った。

 

その向こうのアルトを、穿ち抜くために

 

 

パラダイス

 

インパクト

 

 

 

「っ!?」

 

 

だが、アルトはそれを無意味だと言わんばかりに片手で足を掴んでいる。

 

「あぶねぇな、みんなに当たったらどーすんだ、よッ!」

 

 

そのまま、ベアトリーチェを地面に叩きつけた。

 

 

 

「調子にッ、乗るなッ!!!」

 

 

足技でアルトを振り払い、拘束を抜け出しつつベアトリーチェは高速移動。

 

 

 

 

「あ、がっ!?」

 

 

「え、えへへ......アルト兄さんより、全然遅いですね......へへっ......」

 

 

だが、その動きを完全に読み切ったヒヨリの狙撃によって簡単にその動きは止まった。

 

 

「ヒヨリッ!!」

 

 

「ほら、あなたが言う通り意味なんてないから」

 

 

「っ“!?」

 

 

「兄さんを傷つけた、報いを受けろ」

 

 

ドスの利いた低い声を響かせ、ベアトリーチェの体をクラスター式のミサイルで燃やし尽くす。

その炎は、ミサキの今の怒りを暗示しているかのような蒼色の炎

 

 

「この、ガキが________________「言っとくけどおじさんも結構怒ってるからね?おばさん」がはっ!!?」

 

 

 

何も、スクワッドメンバーだけが戦うなんて一言も言っていない。

逆に憎しみの度合いならばホシノはかなりのものだろう

 

脳天にショットガンの銃身を殴るように突きつけてぶっ放すレベルでキレている

 

 

「......もう、失うわけにはいかないんだよねぇ」

 

 

「やめっ________________

 

 

そんな言葉程度でホシノの攻撃が止むことはなく、ベアトリーチェの脳天に大量の穴が空いた。

 

 

「あとは譲るよ、委員長ちゃん」

 

 

「ありがとう、小鳥遊ホシノ」

 

 

ホシノがベアトリーチェから飛び退いた瞬間、鈍器のようなもので殴られたような衝撃がベアトリーチェを襲った。

 

そして、その衝撃でベアトリーチェの体は宙を舞う。

 

 

「私は、先輩が何を抱えているか知らなかった。知ろうともしなかった」

 

 

銃身で殴りつけるように、ではなくガッツリ銃身で殴りつける。

 

さらに、空中を舞っているベアトリーチェに向けてヒナは弾丸を放った。

神秘が大量に込められた、極光を纏う紫色の弾丸。

 

 

「けど、もう逃げない。怖がりたくない」

 

 

 

ベアトリーチェの体は、すでにダメージが再生の速度を超えていた。

 

 

 

「行くぞサオリッ!!」

 

 

「ああッ!」

 

 

そして休憩はないと言わんばかりにアルトとサオリはベアトリーチェに向けて跳躍。

 

 

「「堕ちろッ!!」」

 

 

「ぐ、うっ!!」

 

 

サオリとアルトの空中蹴りによってベアトリーチェは地面に跳ねる。

 

瞬間、アルトが真横に現れ、再びベアトリーチェに蹴りを放った。

 

 

「な、ぜっ!?ありえない、動きを......!?」

 

 

 

_________次元跳躍装置『クォンタムリーパー』

 

兆を超える多重の演算によって『()()()()()()()()()()()()()()

 

言葉通り、『ベアトリーチェに向かってサオリと蹴りを放つ』を行った瞬間『背後を取って蹴り』という同時には行えない行動を演算によって無理矢理に成功させる。

 

 

「す、すごいです......アルト兄さんが2人......さ、三人に増えました?!」

 

「“な、何あれ“」

 

 

「さあね、私たちにもわからない」

 

 

つまり、側から見ればアルトが二、三人同時に存在しているように見える

 

 

「ぐっ.......あ.........はあっ、はあっ......!」

 

 

地に伏せられたベアトリーチェはやはり回復が間に合わず、立つことすらままならない。

 

『クリエイト』

「アツコ、銃はいつものでいい?」

 

 

「うん。ありがとう」

 

アツコはアルトが『ビームエクイッパー』から生成したアツコの愛銃である『スコルピウス』を握る。

 

 

『ドッキングライズ』

 

 

アルトも合体させた一対の剣を握った。

 

 

『ファイナルライズ』

 

 

そして、ヒエロニムス戦でも見せたように、鉄煙(ノロシ)とクラスターセルの集合体である矢を番える

 

 

 

そうして、ようやく並んだ秤兄妹

 

 

 

「フィナーレだ」

 

 

「これで、終わりだよ」

 

 

 

『アルティメットストラッシュ』

 

 

その攻撃は、情け容赦など一切存在していなかった。

 

 

 

 

「あ.........ぐ、がっ......!ま、だ.......終わって.........いない......っ!」

 

 

「......いいや、終わりだよ」

 

 

 

アルトは手に握った剣を分離し、地面に2本とも突き刺す

 

 

 

「はあっ、はあっ.........!私が......私がこんな......ッ!子供、ごとき、に........!」

 

 

惨めに、無様に地面を這いつくばり、ベアトリーチェはアルトに迫る。

 

よろよろと立ち上がりながら、ゼツメライズキーに手を添えた。

 

 

「私の、野望、を.......!」

 

 

「.........お前の夢も、願いも、野望も。俺がここで終わらせる」

 

 

「っ.......!そんなこと、許されるはずがないッ!!許されていい筈がない........!」

 

 

アルトは、それを理解している。

 

自身の願いを叶え、自分に近しい人を尊重すると言うことは、誰かの願いを否定し、誰かの願いを踏み潰す必要があることを

 

 

 

 

「......だけど、俺はそんな結末は嫌だ」

 

 

アルトは、願う

 

 

「誰かの夢を踏み潰すなんて、俺はごめんだ。だったら、誰かの夢を応援して、肯定したい」

 

 

「一体、何を......っ!」

 

 

「......俺の、夢の話だ」

 

 

アルトは、静かに、けれどもよく響いた声で語る

 

 

「誰かの願いを叶えたい」

 

 

「誰かの願いを肯定したい」

 

 

不意に、アルトは先生の方を向いた。

 

 

「......俺は、俺の夢は________________

 

 

 

もう、最初から気づいてたんだ

 

 

 

「先生に、なりたい」

 

 

 

「“......うん。きっと、アルトなら“」

 

 

 

夢を、肯定してもらった分

 

俺も誰かを肯定したい

 

 

否定するのも、されるのも、もうまっぴらごめんだ

 

 

 

「私の.........私の目の前で.............夢を語るなぁァァァァァァァ!!!!!」

 

 

 

パラダイス

 

インパクト

 

 

 

 

 

「..........じゃあな」

 

 

 

 

ベアトリーチェの正真正銘最後の攻撃を

 

 

 

アルトは片足だけで払い、身を捻って一気に正面に蹴り付ける

 

 

 

「これでぇッ!!」

 

 

 

そして、アルトはキーを再びドライバーに力強く押し込む

 

 

 

『ゼロツービックバン』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あぁ..........あれが.........あれ、こそが」

 

 

 

ベアトリーチェは高く飛翔したアルトの放つ輝きを睨みつけて

 

 

 

「私の、崇高________________

 

 

 

 

 

 

 

「終わりだァァァ!!!!」

 

 

 

 

ゼロツービッグバン

 

 

 

 

 

 

 

 

試合時間:『十八年』

 

勝者:秤アルト

 

 

 

 

 

決め手

 

 

 

 

 

『奇跡』

 

 

 

 

 

 

 

 

________________________________

 

 

 

 

「......まさか、物語の本質ごと全てを書き換えてしまうとはね」

 

 

「ふふん、お兄ちゃんですから」

 

「いや、そこに兄の間柄は関係ないのだと思うのだが......」

 

 

大きなテーブルの対岸......ではなく、今回は隣同士に座った2人は紅茶と洋菓子を嗜みながら言葉のキャッチボールに耽っていた。

 

 

「ん!これうま」

 

「夢の中でも君はしっかりと味覚があるのかい......まぁ、君の神秘の本質を考えれば、自然か」

 

 

セイアは隣でバウムクーヘンをもしゃもしゃ食べているアルトを眺め、微笑みながら紅茶を仰ぐ。

 

 

「......言いたいことはわかるよ」

 

「いいや君は何もわかっていないさ私が心配したこともナギサが心配しすぎて寝込んでいたことだってね」

 

「......ハイ」

 

 

セイアはついつい早口で目の前のクソボケを捲し立てる。

 

 

「......コホン、すまない。私の悪い癖だ」

 

「......んにゃ、俺が悪いよ」

 

 

ふぅ、と息を吐くセイアの頭をアルトは撫でる。

 

「ん.........ああ、あと君にこれから起こる未来は、少なからずいいものであると私が証明しよう」

 

 

「ん?なんだよその含みのある言い方......怖いって」

 

「まぁ、君の行いの応酬といえよう。噛み締めるといいさ」

 

 

セイアは席を立ち、茶室の扉を開けた。

 

 

「......この続きは、起きているときにでもしようか」

 

 

「だな、俺もみんなとお茶してぇし」

 

 

「そう言うところだ」

 

「何がよ」

 

「......まぁ、じきにわかることもある」

 

 

 

最後まで含みのある言い方を残しつつ、セイアとアルトは同時にその茶室を離れた。

 

 

二つ、近距離で揃えられた椅子はそのままに

 

 

 

 

________________________________

 

 

 

 

「.......いやぁまさか内臓がギッタンギッタンのメッチョんめっちょんのミンチ直前スペシャルだとは俺も思わなかったよねぇ」

 

 

「“アルト、まだ反省が終わってないよ“」

 

「(すみません)」

 

「“脳内に直接......!?“」

 

 

「何やってるの.........」

 

 

「アルトさ〜ん!お見舞いにきたよ〜⭐︎」

 

 

 

「お、ミカにミサキとはなかなか珍しい」

 

 

「別に、売店で会っただけだから」

 

 

アルトの病室に、2人がようやく登場した。

 

 

ベアトリーチェとの決戦からはや一週間

 

トリニティ総合学園に存在する病院に、アリウススクワッドのメンバーは現在入院中である。

 

 

と言っても、今でも動けないほどの重症だったのはアルト1人だけだったのだが

 

 

「アルト、リハビリはどうだ?」

 

 

「意外と楽しくやってるよ。まぁ、団長とのリハビリは.........ね?」

 

 

「想像に難くないじゃんね」

 

 

アルトの病室はすでにパンパンになっており、わざわざ大部屋に移されたほどである。

 

 

「あのとき、本当に死んじゃうんじゃないかって結構心配だったんだよ?」

 

「......ア、アウ」

 

「ああっ!また委員長ちゃんがシナっシナに......」

 

 

ホシノに、ヒナ

 

 

「病院食ってなんだかこう、味気ないと言いますか......食べ応えが......アルト兄さんのご飯って美味しかったんですねぇ......」

 

「ヒヨリ、それはアルトの病院食では......」

 

 

絶賛アルトの病院食を貪っているヒヨリと、サオリ

 

 

「......別に言われれば臓器移植でもなんでもやるけど」

 

「なんならミサキちゃんはアルトさんが倒れたときにはもう輸血の準備してたもんね⭐︎」

 

 

ミカに、ミサキ

 

 

「......無事でよかった」

 

「......いやほんと、ご迷惑おかけしました......」

 

 

「“まぁ、全部終わったし、今から蒸し返すことはしないよ“」

 

 

先生と

 

アツコ

 

 

アルトを入れて計9名が一つの病室に入っていた。

 

うん、普通にギッチギチである。

 

 

「......んで、なーんでお咎め無しなんですかね、俺は」

 

 

「“ナギサの計らいだよ。まぁ、無罪ってわけじゃないらしいけどさ“」

 

 

先生の伝言によると、ナギサの言葉はこうなっていた。

 

 

『アリウススクワッドメンバーは首謀者含めてトリニティ総合学園で一定期間拘束ののち奉仕活動を課す』

 

 

とのことだった。

 

 

「......まぁ、よかったんじゃないかな」

 

「だな、俺としても......ふわぁ......みんなが罪人扱いされないで助かったよ」

 

 

アルトは大きくあくびをしながら、病室に差し込む温かな日差しを眺めた。

 

 

「......不思議な感覚だな」

 

 

そよ風が流れる空気の中で、アルトは自身の手元に残っている『ゼロツードライバー』を弄る。

 

 

「太陽を、久しぶりに見た気がする」

 

 

その一言に、スクワッドの三人も外の景色に目を移した。

 

空が見えなかったアリウス自治区のでの生活から抜け出せた感覚が、いまだに回ってこない

 

 

「......あ、そういえばアズサってどうなりました?テストがどうとか.......」

 

「“うん、無事に合格したよ。『私に今できるのはアルトに努力の印を見せることだ』って張り切ってたから“」

 

 

「......そか」

 

 

差し込む日差しに当てられたからか、アルトの心もなんだか暖かな気持ちになった。

 

妹が、苦しい環境から抜け出せたんだ。

 

全員

 

誰1人かける事なく

 

 

 

「これ以上に、喜ばしいことはないよ」

 

 

体はボロボロ、いまだに病室に石が投げ込まれることも多々ある。

 

けれど、自治区にいた頃に比べれば、ねぇ

 

 

「......あれ?アツコちゃんその指輪どうしたの?」

 

 

「......えへ、お兄ちゃんからもらったんだ」

 

 

「.........なる、ほどぉ.........」

 

 

アツコはアルトと同じ形状の指輪をひとしきり眺めると、満足そうに微笑んだ。

 

 

「“まぁでも、こればっかりはね“」

 

「私もそこまで野暮じゃないよ?」

 

 

なんだか3名ほどから生暖かい目で眺められている気がする。

 

俺またなんかしたっけ

 

 

 

.........あ

 

 

 

 

「あーあの、アツコさんに俺謝らねばならないことが.......」

 

「謝る?」

 

 

俺、アツコに謝罪してなかったことあったわ

 

 

「えーと、あの時その......ちゅーと言いますか......したじゃないすか」

 

 

「うん」

 

 

「えっ?」

 

「は?」

 

「......え」

 

 

 

生暖かい目にプラス獣のような眼光が刺さる刺さる

 

なんでだホシノ、ミサキィ、ヒナちゃん.......

 

 

「あの時は神秘を補填するためとはいえ、妹のファーストを奪ってしまい、申し訳ありませんでした」

 

 

「......え?」

 

 

アルトの言っていることが、アツコはまるで理解できなかった。

 

 

「まさかアツコの神秘を直接補充すれば変身の抜け道があるだなんて気づかなかった。でも、次からはもうこれ封印だな。俺がもっと強くなればええんや」

 

 

「“......ちょっと待ってアルト、話が見えてこない“」

 

 

先生ですら、首を突っ込むレベルである

 

 

 

「え?いや、だってこれって_____________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アツコが()()()()()()()()()()()()()その.......キスした、ってことですよね?」

 

 

 

 

 

 

「“ん?“」

 

 

 

「あ、でもこれは回数の内に入れちゃダメだよ。この前のはノーカンね、やっぱりキスとかは本当に好きな人としないと」

 

 

アツコ、そこで全てを理解

 

 

「......あれ?これもしかしてアルトさん終わったかな?」

 

 

「......ああ、私でもわかった」

 

 

「......はぁ、まぁいいや、先は譲るよ」

 

「わ、私たちはお暇ということで......」

 

 

「まぁ、こればっかりは先輩が悪いね」

 

「うん。当然の結果、ってこと」

 

 

ゾロゾロと、全員さっきまで座っていた椅子から立ち上がって病室を出始める

 

 

「ん?ちょ......アツコさん?なんでベッドに.........?」

 

 

「......ごめんねお兄ちゃん、私もう我慢できないや」

 

 

「.........ん“?」

 

 

そして、最後に先生が席を立った。

 

 

「“ここはミネに封鎖してもらうから、あとはごゆっくりね“」

 

 

「えっ?ちょ、なんでみんな帰るの!?怖いよ!!」

 

 

「ありがと、先生」

 

 

アツコはアルトの指に手を絡め、ギリギリと音を立てながらアルトを押し倒そうと攻防戦を繰り広げていた。

 

 

アルト、ここでようやく話が見え、自らの未来をビジョンする

 

 

「ちょ!!待って先生!!これから起こることはとんでもねぇことだぞ!?」

 

「“わかってるよ。だから行くんだ“」

 

 

無駄にかっこいいことを言いながら先生は自分のコートを回収して病室の扉に立つ。

 

 

「あんたそれでも教職者かよッ!?」

 

 

「“......アルト“」

 

 

そう言って、先生は振り返る。

 

 

「“頑張って“」

 

 

「やめて2人きりにしないで鍵ィィィィィィィィィィ!!!!?」

 

 

がちゃん、と大きな音がして病室の鍵が完全に閉まった。

おお神よ、なぜ病室の扉の鍵を外鍵にしておられるのですか

 

 

「......私ね、ずーっとお兄ちゃんのことが大好きなんだ」

 

「そ、そうか!じゃ、じゃあこれからも仲良く「兄妹としてじゃなくて、男女としても大好きなんだよ?」

 

 

可愛らしい笑顔を向けながら、アツコはさらにアルトを押し倒そうと力を強めていく。

ライダーシステムの反動で筋力がさらに弱くなっているアルトなど、造作もなく押し倒すことに成功した。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!せめてまずは清純なお付き合いからッ!!」

 

 

「.......私、さっきも言ったけどさ」

 

 

 

 

 

アツコはまるで狩の前の獣のような艶めかしい表情になり________________

 

 

 

 

 

 

「十年以上待って、我慢の限界だからさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、アルトは大事なものを失い、アツコの存在がより大切なものとなった。らしい






みなさま、こんにちは作者です

落ち着いて聞いてください。アルトくんは貞操を散らしました。これは事実です


続きはこれから制作するR18版でご覧下さい。


さて、語らせていただくことは山ほどございますが、私が語り明かせないのでみなさまに任せることに致す



いやねぇ…….自分からしてもかなり満足のエデン条約編でしたが、みなさまはいかがでしたでしょうか

まじでニカ状態のルフィと言いますか、俺のやりたいこと全部できる状態の私は無敵でした。それにプラスみなさまからの感想で心があったかくなる無限ループ。

私はこれを幸せスパイラルと呼んでいました。


これからも、感想も頂ければ……

あ、それと次回から後日譚入りまーす

後日譚終わればイベストシリーズ始まりまーす


どうも、ありがとうございました〜
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