こっちとあっちで往復しながら書きますので前より頻度落ちます申し訳ありません焼いてください
ザク、ザク
広い広いトリニティ総合学園の校庭で、土を掘り返すような音が響く
それは実際道路に溜まった土砂や溶けたコンクリートを掘り返している音で、絶賛奉仕活動中のアルトはスコップを地面に突き立てていた。
「動いてるから暑いぃ“......疲れたもォォォん!!」
アルトはそう慟哭し、着ている長袖の体操服に汗を滲ませていた。
そんなに暑いのならば、脱げばいいのにね
「そう?私は楽しいよ」
その点アツコは文句ひとつなく黙々と作業を続けていた。
「ん“ー......やっぱ俺みたいなのは肉体労働向いてないから......」
「はぁ、はぁ.........やっぱり......じんせいはっ......くるしいこと.........ばっかりなんですね......」
「騒いでないでそっち終わらせて」
ヒヨリもアルトも他三人より息を切らしながら地面に残っている戦いの残留物を片付けていた。
これがナギサから言い渡されたアルトたちへの『咎』
アルトたちがトリニティに対して侵略行為を行ったあの時、巡航ミサイルによりトリニティの一部が多大な被害を受けた。
なぜか怪我人は1人もおらず、行方不明者も出なかったため実際の被害自体は建物が瓦礫になった程度だった。
よって、今アルトたちがやっているのは過去の清算としても機能している
「......ま、文句言っててもしゃーないか」
地面に突き刺したスコップを引き抜き、再び作業を開始。
地面に残った薬莢や土砂を専用の機械に投入して分別する
『薬莢も弾頭も再利用できるものばかりですので、しっかり回収してくださいね』
「......相変わらず抜け目ねぇな」
作業をする前にナギサに言われた言葉を思い出しつつ、分別した薬莢を回収用ボックスに納品。
長い作業の賜物か、ようやく道路の肌が見えてきた
『納品数が一定に達しました!回収します』
やけに明るい声の納品ボックスはミレニアムのロゴをひけらかしながらその車輪で颯爽と道路を滑走していった。
「ほら、お疲れ」
「あ、ありがとうございます......」
「はぁ......確かに、暑い......」
五人はそれぞれ持ってきたペットボトルの水やらジュースやらの蓋を開け、それを乾いた喉に流し込む
「ああ。だがアリウスの生活よりはマシだ。何よりここは三食に寝床までついている」
「今日のお昼なんでしょうね......昨日はとんかつでしたから......カレーがいいですねぇ......ううぇへへ......」
「おかわり無限なのがいいよなぁ......」
じゅるり、とヒヨリとアルトは涎を垂らす。
アリウスでは温室で育てて細々ちまちまと食べていた食料も今は気にする必要がない
「あれ?そういやアツコは?」
「姫ならあそこだ」
サオリの指差した先を見れば、確かに体操服姿のアツコがしゃがんで何かを見ている
「......飲みもん一本貰うよ」
アルトは支給されたペットボトルを一本持ち、アツコの元へと足を向けた。
「あ、お兄ちゃん、お疲れ様」
「ん、お疲れ。水分補給忘れずにな」
しゃがんで何かを見ているアツコにリンゴジュースを手渡す。
アツコはそれを受け取り、再びしゃがみ込んだ足元に目を落とした
「......あ、それあれか、シラユリ」
「うん。瓦礫の隙間から綺麗に生えてるよ」
少し前に見たシラユリのように凛々しく咲くそれは、重い瓦礫を押しのけてその絢爛を遺憾なく見せつけている
アツコは優しげな瞳でその花を撫で、前と同じように微笑んだ
「......キレーだな」
「うん。お兄ちゃんみたい」
なぜか、少しデジャヴを感じた。
「こんな会話前にもしたような気が......」
まぁ、そんなことはどうでも良い。
せっかくこんな暖かいところに来られたのだ
苦しかった過去をわざわざ思い出すこともないだろうに
「......今日こそ、持って帰ろうか」
「いいの?」
「当たり前じゃん。せっかく好きに育てられる環境があるんだから」
前のように我慢する必要もない。
もう何かを我慢するのも、我慢させるのも懲り懲りだ
「はい、どうぞ姫様」
クラスターセルで地面を掘り起こし、ゼロツープログライズキーで周囲の瓦礫を小さなプランターに再変換
シラユリが植えられた小さなプレゼントが完成した。
「......ありがとう、お兄ちゃん」
めいいっぱいの笑顔をアルトに向け、もらったプランターを力一杯抱きしめた
「大切にする」
「うん、そうしてやってくれ」
アルトはなんの気無しにいつも通りアツコの頬を撫でた。
「.........は」
「あれ、んだこれ」
なぜか、アツコの頬に赤い手形がついている
しかもくっきりと
「あ、指切ったのか......最近制御が乱れてしゃーないな......」
ゼロツーに変身した弊害か、最近クラスターセルの制御が鈍ってたまに指を切ってしまう
「アツコの可愛い顔に血が......ごめんよぉ......」
アルトは小慣れた手つきでアツコの頬をハンカチで拭った。
だが、拭った先のアツコは________________
「ぇ.........なん、で............いや、だよ」
幸せそうにしていた表情を一瞬にして引き攣らせていた。
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頬にべっとりとついた血が、生暖かい
「............は」
声を、出すな
取り乱すな悲鳴をあげるな
「は、っ......はあっ......」
お兄ちゃんの血を見た瞬間詰まった耳がキーンと音を立てて耳が詰まったように何も聞こえなくなった
なんで、血が
嫌だ
もうあんなボロボロのお兄ちゃんを見たくなんて
痛みがないからって、血を流していい理由に足りえないから
「ぇ.........なん、で.........いや、だよ」
頬をハンカチで拭ってくれたというのに、私の体の震えが一向に止まらない
どうして、お兄ちゃんだけが、こんな
「しんじゃ.........やだ.........っ」
震える声で、必死に悲鳴を押し殺して私はお兄ちゃんの体にしがみつく。
さっきまで持っていたユリのプランターは地面に落ちてしまった
アルトは突然自分にしがみついてきたアツコを不思議に思っていたが、
「アルトッ!!」
「ヒヨリ、止血剤出して」
「は、はいっ」
「んえ?」
他三人も2人の様子がおかしいことに気がついて駆け寄り、アルトの流血に気づいてすぐに処置を開始した
指を切った、と言っても彫刻刀で抉ったぐらいには流血している。が、それだけと言えばそれだけの怪我
こんな大人数が駆け寄るほどの怪我とは言い難い
「ッ..........はぁ、はぁ.........」
「もう、止血終わったよ姉さん」
急遽取り出した包帯で一気にアルトの出血部を抑え、出血が終わった今もサオリはアルトの手を握り続けていた
ミサキもあまり心配していないように見えるが、この程度の怪我に貴重だった止血剤をなんの迷いも無しに使用したところを見れば、おそらくかなりの心配を抱いていただろう
実際今アルトの体操服の裾をちゃっかり掴んでいたりする
「痛い、ですか?」
「んや、痛覚ないしあったとしても絆創膏で足りるくらいの怪我なんだけれども......」
「で、でも......もしも、そこから病気になったり、したら......苦しいですよね......」
ヒヨリもまた怪我をした方の手をじっと見つめ、自身の手を細かく振るわせながらアルトの手首を軽く握った。
おそらく脈があることを確認しているのだろう
「.........んー」
なんか、みんな心配症になってね?
「......ごめん......」
「いや、俺が勝手に手ェ切っただけでしょ......」
アツコは変わらずアルトに正面からしがみついたまま、つまりいつものおしくらまんじゅう状態が形成された
「“アルト〜、差し入れにきたよ.........どういう状況?“」
「俺もわかんない」
やっぱりね、アルトくんは死にかけてるんだからみんなに心配されちゃうだろうね!!