アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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大変ながらくお待たせいたしました

アルトくんが過去に決着をつける様を、どうぞ皆様ご覧ください


決着

 

「シャインシステム並びにクラスターセルを並列起動、負荷は限界まで掛けろ」

 

『了解。データアップロードを開始する』

 

 

アリウス自治区教会廃墟

 

そこで少年は________________秤アルトは右腕を上げて自らの力を最大限に酷使する

青白いクリスタルのような浮遊物が多数飛び回り、銀の刃と共に教会の壁を喰らい尽くしてゆく

 

 

アルトだけでなく、アツコたちと共に過ごした空間が粉々に崩れてゆく。

見ていてあまり気分の良いものでもないだろう

 

 

「......問題なし。そのまま射出モードに切り替えろ、制御はこっちでやる」

 

『構築を開始、脳内ICEを稼働』

 

 

床材、壁、その全てが崩された後、アルトはクラスターセルを回収してシャインクリスタに意識を集中させる

 

 

「さぁて、改築工事と行きますか」

 

 

アルトが徐に両手を振り上げると、シャインクリスタはそれに呼応するように旋回し、まるでさっきまで建っていた教会の形をとるようにビームを発射する

 

 

「ICE異常は?」

 

『異常なし。全ての動作が許容範囲内で収まっている』

 

「このまま続けるぞ」

 

 

そうしてしばらく指揮者のように腕を上げて、下げてを繰り返していると________________

 

 

 

「......よし、完成だ」

 

 

ボロボロで、ただの射撃訓練場に成り下がっていた教会はアルトの手によって綺麗な形に整えられていた。

 

 

『では行くぞ。あのゲマトリアがこちらの存在を感じ取っていない確証もない。時間は有限だ』

 

 

「わかってるって。でもこれだけはやらせろ」

 

 

アルトは片手に持った鞄から物を数個取り出し、教会の机に置いた

 

 

「さて、待たせて悪いな」

 

『......終わったのなら、良い』

 

「なんだ?急にデレたなお前」

 

『ふざける気力があるのならばお前は正常だ。行くぞ』

 

 

脳内に響くデカグラマトン(相棒)の声に耳を傾かせながら、アルトはゆったりとした足取りでもはや廃墟とは呼べない教会を後にした。

 

そして、アルトが机に置いたものというと________________

 

 

 

『あんな物を置く意味がわからない。どうせ2度と戻って来ないのだろう』

 

「ゲン担ぎってもんがあんの。これだから人の心がわからんやつは......」

 

 

 

机には、日の差し込む大地で燦然と笑顔を向けて写真に収まった、五人がいた。

無論、アリウススクワッドの『5人』が

 

 

________________________________

 

 

 

「酷い姿ですね、ベアトリーチェ」

 

 

「う“......うぅ.........黒、服......ッ......!」

 

「だから言ったのです、彼に......彼らを不用意に傷つけることはお勧めしません、と」

 

 

「黙れぇ......あなたに......何が分かると.........次こそ......次こそはあの舐め腐った子供に......罰を......ぉ......!!」

 

 

赤い光で染め上げられた会議室のような空間に、ゲマトリアは集合していた。

 

 

「......次などない。仮に次があったとしても貴様は秤アルトに勝利することはできない」

 

「マエストロ......貴方に......貴方がアレを足止めしなかったせいで......!」

 

 

ベアトリーチェは満身創痍だった。

すでに激戦を終えて何日、何週間と経っているのにも関わらず池を這いつくばりながら惨めったらしく生き延びていた。

おそらく自分の意志では死ぬことすらできないのだろう。

 

当然の報いである。

秤アルトの神秘は『願いを叶える原初の神秘』、それを多量に取り込み、『生きたい』とでも願ったのだろう

 

紛い物であろうが、確かにベアトリーチェの願いは叶えられた。

 

 

最も最悪な形ではあるが

 

 

「私は私の芸術を彼と擦り合わせただけだ。貴様との約束事など、覚えるにすら値しない」

 

「最初から......最初から裏切るつもりでぇ......!」

 

 

「耳が聞こえていないのか?私は今言ったつもりだ。貴様に協力する気など、最初からさらさら無かったということだ」

 

 

マエストロはキィキィと軋轢音を鳴らしながらベアトリーチェを見下ろした。

 

 

「貴様は最初から負けていたのだ。龍の逆鱗を殴りつけながら、虎の尾を踏み続けたのだ」

 

 

マエストロの目にあったのはただただの軽蔑であり、その中には一種の嘲笑すら混じっていただろう

 

 

 

「貴様は、ただ化け物を飼い殺せると思い込んでいた被食者に過ぎない。現に貴様はその罰を受けるだろう」

 

 

「チィっ......いいでしょう......確かに、確かに今回は私の負けです......ですが、次は.........次こそはぁ......ッ!!」

 

 

 

ベアトリーチェはそう慟哭して立ちあがろうとした瞬間________________

 

 

 

「次なんて無い」

 

 

 

こつ、こつと。軽くとも重たい足取りの音がベアトリーチェの背後に迫った。

 

 

 

「......お前のお遊びは、ここで終了だ」

 

 

居る

 

 

ベアトリーチェ()の最大の敵が、今すぐ後ろで喋っている

 

 

「よぉベアトリーチェ。一ヶ月ぶりくらいか?随分惨めな様相になってんな」

 

 

 

「......秤、アルト......!!」

 

「それ以上喋るな、お前のその声はもう2度と聞きたくない」

 

 

アルトはベアトリーチェの頬のすぐ横に剣を突きつけた。

勿論、彼らの未来を切り拓いた『プログライズホッパーブレード』

 

 

「なぜっ.......なぜお前がここに......ぃ」

 

 

「優秀な相棒のお陰だ。いくらゲマトリアの中心部とはいえ、俺とあいつの目を誤魔化せるなんてよく思ったな」

 

 

アルトの声は重く、そして低い

いつもの家族や友人に向けられるような明るく弾んだ声など想像もできないほどの。

 

 

「......失礼、話してもよろしいでしょうか?」

 

「......ああ、好きにしろ。だが俺とこいつの邪魔だけはするな。邪魔すればお前ら全員の首を全て刎ねる」

 

 

その一言に黒服はクックック.......といつものように笑い、言葉を連ね始める

 

 

「ここに皆さんを呼んだのは他でもありません。少々前のことですが、「無名の司祭」の遺跡が観測されました」

 

 

「......無名の司祭?なんだそれ」

 

アルトの純粋な質問を喜ぶように黒服はまた笑い、説明を始めた

 

 

「貴方の妹......つまり、秤アツコを保護していたマスクです。そして古聖堂を破壊した巡航ミサイル________________」

 

 

黒服はアルトの腰に巻かれたゼロワンドライバーを指差して

 

 

「そして、貴方のそのドライバーやプログライズキーの技術を、そう私たちが解釈したものです」

 

 

「んー、するってーと、今の化学じゃ言い表せないような技術の結晶、ってことか?」

 

「いや、それとは少し言葉に差異がある」

 

 

マエストロも会話に参加し、アルトの方を向いた。勿論アルトはマエストロと目を合わせる

 

 

「そうだな......『彼ら』は端的に言うのなら、キヴォトスに以前存在していたこの世界の主のことだ」

 

 

「世界の主って......」

 

 

「名もなきk「「名もなき神」とそれを崇拝する『無名の司祭』、彼らはキヴォトスの神秘の下に堆積し、痕跡だけが残った存在です」

 

「言葉を被せるな、今私が説明していたところだ」

 

 

「失礼、より端的にまとめられる自信があったので......クックック......」

 

 

一瞬マエストロの言葉を黒服が遮った。

 

 

「名もなき神ってのは知ってる。このドライバーを作るときに一番最初に目をつけた」

 

アルトは自分の頭をトントンと叩いた。

ベアトリーチェから剣を離さずに

 

 

「んで、その無名の司祭ってのがどうしたんだ?」

 

 

「......『箱舟』が観測されたのです」

 

「箱舟?」

 

「一瞬だけですがね」

 

 

「つまり......どう言うことだこれ、頭おかしくなってくるぞ。3行でまとめやがれまっくろくろすけ」

 

 

「クックック......これは手厳しい......では、端的に端的を重ねてお伝えしましょう。これは貴方を呼んだ理由でもあります」

 

 

黒服は一拍置き________________

 

 

「________________箱舟は、一つの神秘にとてつもなく強く反応していました」

 

 

「......神秘に?」

 

 

「ええ、その他の現象、事象、数多ある神秘全てを無視して。かの箱舟はたった一つ、それこそ砂粒一つを砂漠から見つけ出すようにその神秘を凝視していたのでしょう」

 

 

「おんおん、んで?」

 

 

「その反応を示した神秘こそ、貴方なのです」

 

 

黒服は恍惚とした表情でアルトを見つめた

アルトはそれの何が大変で何がすごいのかはよくわからなかった。

 

 

「これは本来あり得ぬことだ。『色彩』がこちらを発見する前に箱舟が発見されることなど、我々が想定していた事柄を大きく逸脱している」

 

「つまり貴方は________________」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたはすでに何かによって見られていると言うこと。その箱舟に載せられた明確な『意志』によって」

 

 

 

「......よぉ、お前にも挨拶が未だだったな」

 

アルトは絵画を持ったコート姿のゲマトリアを笑いながら見やった。

 

 

「......『フランシス』」

 

 

「ああ、再び見えるとは思ってもいなかった」

 

「俺もお前とはできるだけ会いたく無かったがね。テメェの気持ち悪い絵画をこれ以上見たくねぇんだ。消えろ」

 

「こちら側から消えようと思って消えられるものではないと貴方も理解しているだろう。それともここで無意味な戦いを起こすのか?秤アルト」

 

 

2人はすでに睨みを効かせ合っている。仲は良好とは言い難いのだろう

 

 

「.......まぁまぁ、お二人とも。その辺にして話を戻しましょう。つまりこの現状は私たちにとってあまり好都合な_________________」

 

 

 

黒服が再び説明を始めようとした時

 

 

 

「秤アルト......お前さえ......お前さえ私の邪魔をしなければ......!!」

 

 

「.........」

 

「.........ふん」

 

 

「ベアトリーチェ、この物語の舞台が『文字』である以上彼に勝つことなど、それこそこの世界のルールに反する________________

 

 

 

 

 

「物語の作法など、どうでもいいでしょうに!!」

 

 

「......急に叫んでんじゃねぇよ、真っ赤ババァ」

 

 

「あぐっ!“?」

 

 

アルトは叫びを上げたベアトリーチェに一太刀入れ、さらに地べたを這いつくばらせた。

 

 

「ぐ、あ......ふふふっ......!どうせ殺されるのです......最後に一ついいことを教えてあげましょう.........」

 

 

「......もううるせぇ、そろそろ________________」

 

 

ついに息の根を止めようとアルトは剣を振り上げ________________

 

 

 

「貴方たちは勘違いしている......色彩はすでに此処を発見しているのですよ!」

 

 

「......は」

 

 

「!?それは一体......!」

 

 

いつも冷静で大局を見据えるだけの黒服が唸った。

マエストロも軋轢音を大きく鳴らした。

 

 

「より正確に言うのなら......私が伝えました、色彩は今すでにキヴォトスに、いや、秤アルトお前に向かっている......!」

 

 

「テメェ......」

 

「すでに貴方を見ていますよ?あの深淵が!あの暗闇が!もはやお前が家族を守ることなどできやしません!!なぜならキヴォトスはもう終わり________________

 

 

 

 

 

『アルティメットストラッシュ!!』

 

 

 

 

「あ“ぁっ!?」

 

 

 

「もう、いい」

 

 

ついにアルトは剣を振り抜いた。

 

 

 

「こいつを今度こそ殺す。異論はないな?」

 

 

「......ええ、私は何も」

 

「同じく」

 

「.........」

 

 

黒服とマエストロは肯定、フランシスも特に何も言っていないが、アルトは肯定と捉えた

 

 

実際、肯定などされていなくともベアトリーチェを処刑するのは最初からアルトの中で決まっていたことなのだから、アルトが止まることなどない

 

 

 

「ッ!!お前がそんなことを!!」

 

「できるんだよ」

 

 

ベアトリーチェが伸ばした蔓をクラスターセルで軽々と弾き飛ばし、ゆっくりと剣のトリガーを引きながら歩む

 

 

「こんなことが......私がこんなところでッ!」

 

 

「そう言うセリフは、もう聞き飽きた」

 

 

そしてアルトはトリガーを引き切り________________

 

 

 

「......さよなら、俺の過去」

 

 

 

 

 

剣を________________

 

 

 

 

 

 

「.........んだ、これ」

 

 

「ぐあっ!?なんなのですか!!?一体________________」

 

 

 

 

突然ベアトリーチェの体が、『沈んだ』

 

 

「......逃げたのでしょうか?」

 

 

「いや、違う。あいつの力じゃねぇ、もっと大きな何かが________________」

 

 

 

『秤アルト!!今すぐそこを離れ

 

 

ブツリ、と嫌な音を鳴らしながらデカグラマトンの声が消えた

脳内CPUの誤作動ではない。何かによって断絶された

 

 

「......てか、もうこれ『違う』な」

 

 

さっきまでアルトの周りを取り囲んでいたゲマトリアたちが消えている、いなくなったのではなくアルト自身が別の空間に飛ばされたのだろう

 

 

 

「一体何が________________」

 

 

 

「先輩」

 

 

 

アルトの真後ろから、声が聞こえた。

 

どこか様変わりしたように聞こえるが、紛れもなく________________

 

 

「.........シロ、コ?」

 

 

「......そう、だよ。うん、私は、砂狼シロコ」

 

 

だが、その『砂狼シロコ』はアルトがよく知る様相とは大きく異なっていた。

 

膝まで伸びている長い髪、真っ黒に染め上げられたドレスと銃

 

 

そして、そのくすんでしまった瞳

 

 

「......やっと、やっと」

 

 

「一体どうした......何が何だかさっぱり________________

 

 

 

 

「やっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっとやっと」

 

 

その『砂狼シロコ』は顔を手で押さえ、狂ったように同じ言葉を発した

 

 

「やっと、見つけた」

 

 

そして、ゆっくりとアルトに歩み寄る

 

 

「せんぱ________________」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぶづっ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........まだ、触れられる距離じゃないんだ」

 

 

「......大丈夫だよ、シロコ」

 

 

 

ノイズのようにその空間から消え去ったアルトのいた場所を手で手繰り寄せるシロコに、1人の『女性』が訪れる

 

 

 

「.......『先生』」

 

 

「きっと、本当にあと少しだから」

 

 

 

『先生』と呼ばれたその女性はシロコと同じくアルトが存在していた空間を見つめながら

 

 

「もう私たちを遮るものはほとんど無くなった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーカイブ記録:失敗

 

 

 

 

 

 




次回予告!!


「大丈夫だヒナちゃん!俺もピアノとか一切弾けない!」


「……何が大丈夫なのか、わからないのだけれど……」


次回より、イベントストーリ
『陽ひらく彼女たちの小夜曲』


乞うご期待!!
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