アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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誕生回ィィ!!


忘れないでと願うように

 

 

九月三日

 

 

それは、俺にとって戦いの日である

 

 

 

「こちらα、対象がこちらに近づいている」

 

俺は手元のトランシーバーに小声で声を吹き込む

 

『こちらγ、安全なルートを確保した。そのまま進んでくれ』

 

了解(オーバー)

 

 

無線からは抑揚が抑えられた少女の声が同じく小声で鳴り、無線は終了される

 

 

俺は対象が通るルートを全て躱し、顔を隠しながらショッピングモールの中に入る

 

今日はいつも着ているコートを羽織ることは絶対にできないため、黒色のおしゃれーなワイシャツにタイトではない動きやすいパンツというカジュアルなコーデで挑んでいる

 

まぁ、俺にとって服装などさほど重要なものではない

 

 

「こちらα、A地点に到着した」

 

『了解、引き続き誘導する』

 

 

再び無線を切り、アツコからもらったバックの中から新品の財布を取り出す。

中には今まで一切使っていなかった自分専用の資金がぎっしりと詰まっている。ぱっと見でも50万は入っているだろう

 

 

これぐらいあれば、計画の成功には十分

 

 

 

「......行くか」

 

 

 

俺は必ず____________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サオリに誕生日プレゼントをするんだよォォォ!!!

 

 

 

 

 

 

______________________________________________________

 

 

 

 

 

 

4時間前

 

 

 

 

 

 

 

 

「.........よし、金は十二分に引き落とした」

 

「バックと無線は持った?」

 

 

「そりゃもうバッチしよ」

 

「ふふっ......それにしては襟立ってるよ?」

 

「オーマイぱすた」

 

 

アルトはいつものアリウスのコートを羽織った姿ではない若干ラフな服装でアツコに襟を直されていた

 

 

「じゃあ私たちはケーキ用意して待ってるね」

 

「お願いするわ、ヒヨリが食い過ぎないように見張っといてやって」

 

 

「わ、私も流石に誕生日ケーキをつまみ食いなんてしませんよ!?」

 

「おっ、じゃあ目の前にイチゴが乗ったふわふわのケーキが鎮座していたらどうする?」

 

 

「た、食べますよね.....?」

 

「よーしヒヨリ、お前はこれよりケーキの前に立つことを禁ずる」

 

 

「うえええええっ!?そんなぁ?!」

 

 

ヒヨリを諌めつつアルトは玄関で靴紐を結び、玄関から出発しようと________________

 

 

「まさか素顔のまま行こうとしてる?」

 

 

「なんかダメだったか?」

 

 

アルトのぶかぶかのパーカーを着たミサキはアルトのその返答に溜息をつく

基本何事も気にしないタイプの兄を持つ妹は必然的に苦労人へ変わっていくのだろう

 

 

「まだ私たちは許された訳じゃない。下手に素顔を晒して外に出たらまた撃たれるよ」

 

 

そう言ってミサキは顎まで下ろしていたマスクを取り、そのままアルトに手渡す

 

 

「ほら、それあげるから」

 

 

「......あげる、とは?」

 

 

「今付けていきなよ」

 

 

「......流石にでは」

 

 

「何?嫌なの?」

 

「俺じゃねぇってミサキが嫌だろ」

 

 

「は?勝手に決めつけないでよ」

 

「......うい」

 

 

渋々、と言った形でアルトはミサキのマスクを自身の口につける

 

 

 

「ん、ミサキの匂い」

 

「っ......!本人の前でそういうこと言うとか......」

 

 

アルトとしても家族とのスキンシップは嬉しいのだが、なんだか最近距離感がおかしくなっている

 

 

 

「ほんじゃ、アリウススクワッド作戦開始」

 

 

「「了解」」

 

「りょ、了解です」

 

 

そしてアルトは________________

 

 

 

「行ってきます!」

 

 

 

そう告げて、家を後にした

 

 

 

「......ねぇミサキ」

 

「......何」

 

 

「決まった?」

 

 

なぜか軽い圧を出しているアツコの問いに、ミサキは軽く頷く

 

 

「くすっ.........じゃあ、準備しておこっか❤︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

_______________________________

 

 

 

 

「ではコードネームγ、今回の作戦目標を提示する」

 

「了解、大船に乗ったつもりで任せてくれていい」

 

 

外に出た俺が合流したのは、現トリニティ総合学園の生徒であり、俺のかっわいい家族

 

白洲アズサ〜!

 

 

「今日はサオリの誕生日だ」

 

「ああ、確認済みだ」

 

 

「と言うことは、プレゼントが必要だろう?」

 

 

ふっふっふ、とまるで悪役のような笑みを浮かべるアルトを不思議そうに見つめるアズサ

 

 

「ハッピーバースデイ!!!素晴らしいッ!!」

 

 

サオリを祝いたいというこの私の欲ぼ「アルト、声が大きい」「あっはいスミマセン」

 

 

はい、ふざけるのはここまでにします

 

 

「......ここからが本題だγよ」

 

 

サオリの誕生日プレゼントを買いに行くだけならば簡単だ。

だが、一つ懸念点がある

 

 

「今回の最大の懸念点はサオリ本人だ」

 

 

「サオリが......?」

 

 

これは順を追って説明しよう

 

サオリは基本俺が外出する時いつもそばでボディガードをしてくれている。

だが今回ばかりは兄心ってものがある、サプライズにしたい

 

 

それで昨日普通に『明日はちょっと個人的に出かけるから護衛なしで大丈夫だよ』って言って見たんですわ

 

 

 

『だ、ダメだ、アルト1人で出かけてもし変身前に撃たれでもしたら......』

 

 

『いや、そもそもアルトが出かける必要すらないのでは......』

 

 

『用事は私に任せて家でゆっくりしていてくれ、明日はアルトの誕生日でもある』

 

 

 

そう、なんとこの子俺の行動を制限し始めたのである

俺のことを心配してくれているのはわかっているのだが、ここまで来ると俺何もできなくなってしまうわ

 

 

「んで、今日はサオリの目を盗んで来たわけで。恐らくそろそろ朝練が終わる頃だからサオリが俺を探しに来るはず」

 

 

「なるほど理解した。つまりアル......αがサオリに見つからないようサポートすればいいんだな?」

 

 

「正解。この無線機でサオリの進行方向から俺を遠ざけてくれ」

 

 

 

と、言う感じで

 

 

 

 

冒頭へ戻る

 

 

 

 

 

 

「.........クックック.........すでにサオリの好きなものはアツコからリサーチ済み......我ながら完璧すぎる作戦だァ......」

 

 

 

もはやアルトを超えた神ィ!!

 

真・秤ですッ!

 

 

「ヴェハハハハハハ!!(小声)すみませんこれください」

 

 

「はい、リップが一点ですね、プレゼント用ですか?」

 

 

「ですね、梱包お願いしても......」

 

「それはよろしいのですが......女性の方へのプレゼントでお間違い無いです、よね......?」

 

 

「そっすね、今までこう言うの買ってこれなくて________________「でしたら、こちらもおすすめですよ!」

 

 

 

 

 

 

「うえっ......?」

 

 

にっこりと微笑みながらアルトの目の前にもう一本のリップのようなものを取り出す店員さん

 

 

「実はリップスティックだけではツヤが乗らずにすぐに色落ちしてしまう方もいらっしゃいまして、そんな方にお勧めしている『サミュエラ』の『リップグロス』!」

 

 

「......???」

 

 

アルトは膠着

口紅、と言うものは塗るだけだと思い込んでいたようだ

 

 

「それと!今まで買う機会がなかったとおっしゃっていましたがそもそもお化粧をしたことがないのでは?!」

 

「よ、よくわかりまし「わかります!!私も学生の頃は化粧品が高くて高くて......ろくにお化粧したこともなくっ!」

 

 

急に声に熱が入り出した店員さんを前にして、さらにアルトの脳内は混乱を起こす

 

 

「でしたら!こちらのお肌に透明感を持たせてくれる『BBクリーム』と言うものもございましてっ!」

 

 

目をギラッギラに輝かせながらカウンターに商品を載せていく店員さん

 

完全に勢いに押されてタジタジのアルトなど、店員さんのそのキラキラと光る瞳には映っていなかった

 

 

「________________と、なっております!」

 

 

「......それ......全部で......」

 

 

 

アルト、疲弊の末全て購入

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ“ー......女の人って大変なんだなぁ......」

 

 

アルトは大量の紙袋を腕から下げ、顎までマスクをおろして水分補給

買い物なんてそもそもこの十八年間まともにしてこなかったからなんだか不思議な感覚だった。

 

 

「......ふふっ.........喜んでくれっかなぁ」

 

 

だが、なかなかどうして悪くない

 

 

『......買ったのなら早く帰るといい』

 

「.....珍しいな、お前のことなら『余計な出費だ』とか平気で言いそうだったのに」

 

 

『......余計な会話こそ不必要だ』

 

 

自販機は短く会話を切り上げて頭の奥底にさってしまった。

 

 

なんだアイツ、口調も変わってるし

 

 

 

「......ふぅ、あとは......ケーキ食べて......お祝いして.........」

 

 

 

そこで、ふと思った

 

 

 

俺、必要なくね?

 

 

だって、俺がいなくたってサオリ達はこれから卒業する

 

学校という概念自体から脱した影響でそんなものが可能なのかは分からないが

 

 

 

そして、卒業すれば

 

 

俺は不必要だ

 

 

 

俺は分からない

 

キヴォトスの仕組みを

 

そしてその外の仕組みを

 

 

じゃあ、俺は何を知ってるんだ?

 

 

 

「......きっと、邪魔になるよなぁ」

 

 

みんな、みんなが幸せに生きてほしい

 

誰にもその望みを、奪われることなく

 

 

尊厳を、踏み躙られることなく

 

 

 

「卒業、か」

 

 

 

 

そう言いながら、アルトは思いふける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アルトッ!!」

 

 

と、そんなセンチメンタルになりかけていたアルトの元に

 

 

「サオリ......?あっやべっ!」

 

 

アルトはサオリの目から逃れていたことを一瞬忘れていたが、サオリを認識した瞬間紙袋を背中側に隠す

 

 

 

「はぁっ、はぁっ......大丈夫、か?」

 

「あー......うんごめん、心配かけて」

 

 

「いや......私は、大丈夫だ」

 

 

大丈夫だ、と言っておきながら肩は震えているし声も若干震えている。

 

 

「あー......サオリ、帰ろう」

 

 

「ぁ......すまない......顔を隠すのを忘れていた」

 

「大丈夫だ。逆にごめんな、俺のせいだ」

 

 

 

サオリはマスクもつけないまま外に出たことで辺りは少しざわついていた。

アルトはサオリに自身のマスクをつけさせ、紙袋を持って家路につく

 

 

やはり、俺は、俺こそが不必要だったのかもしれない

 

 

 

 

 

________________________________

 

 

 

「こ、こんなにもらえない......!」

 

 

「だいじょーぶだからもらってくれ!」

 

 

家に着いたのち、パーティー開始

本来ならばシークレットなパーティーにしたかったのだが、俺の油断でサオリにバレてしまった

 

 

「こ、こんなに可愛いもの......私には......」

 

 

「似合う!絶対似合うんだよ!!店員さんも言ってたから!」

 

 

さっきまでのセンチメンタルな雰囲気はどこへやら、プレゼントをサオリに押し付けるアルトがいた。

 

 

「それとも、俺からの贈り物は嫌か?」

 

「い、いやっ......そう言うわけでは......」

 

 

アルトにプレゼントを押し付けられながら、サオリは罪悪感を覚えている

 

 

「俺がさ、サオリにあげたいんだよ」

 

 

「っ.........本当に......いいのか......?」

 

 

「おん、誕生日おめでとう!サオリ」

 

 

サオリに紙袋を渡し、袋を開けさせる

 

 

 

「こ、これ雑誌で見たやつです......!」

 

「随分小さいな、これじゃあ爆薬も銃弾も忍ばせられないんじゃ......」

 

 

 

そうそう、仲良く遊んでくれ

 

 

「......ありがとう、アルト......本当に」

 

 

「んにゃ、お兄ちゃんとしてとーぜんのことだよ」

 

 

 

俺はわいわいと遊んでいる3人を横目に、下拵えした料理を取ろうと冷蔵庫に手をかける。が

 

 

 

 

「......ごめん、ちょっと体調悪いから寝るわ。料理は作るからほんのちょっとだけ待っててくれ」

 

 

 

そのまま、俺は誰の返答を聞くこともなく自室に籠る

 

 

 

 

「......っ“......あ“あ......くそっ......」

 

 

 

違う

 

違う

 

違う違う違う違う違う

 

 

 

 

 

俺は、もっとみんなと一緒にいたい

 

異常だと言われても

 

 

邪魔だと言われても

みんなと、一緒に未来を見たい

 

 

 

「大丈夫だよ、大丈夫」

 

 

 

どうしようもなく涙が滲み出した頃、俺の背中に暖かな感覚が浮かんだ。

 

 

「お兄ちゃんとずっっと一緒にいる。約束するよ」

 

 

「逆に、道具の責任も取らずにいなくなるつもりだったの?」

 

 

アツコと、ミサキが俺のそばにいてくれた。

 

 

「今日はサッちゃんだけじゃなくて、お兄ちゃんの誕生日でもあるんだよ?」

 

「ほら、寂しいなら寂しいって、さっさと言いなよ」

 

 

寂しい

 

死ぬほど寂しい

 

いつか、こうなって支えてくれる2人も俺を忘れてしまうんじゃないかって

 

 

 

「......寂しいよ。忘れないでよ」

 

 

「忘れたくたって忘れないよ。ほら、ぎゅーってしてあげるから」

 

 

アツコは、俺の体を抱き止めてくれた。

このままじゃ不安でどこかに飛んでしまいそうな心を

 

 

「寂しいくせに、自分も辛いくせに弱音吐かないんだね。私たちにするみたいに撫でてあげるから、顔、上げなよ」

 

 

俺は一瞬恥ずかしさを感じたが、涙でぐしゃぐしゃになった顔を2人に向ける

 

 

 

 

その表情見た2人は________________

 

 

 

 

 

 

 

「......ふふっ......かわいいね、大好きだよ」

 

 

「大好き、愛してる」

 

 

いつかやったゲームのように、2人の声が耳元でこだまする

 

 

 

「愛してる❤︎」

「愛してる」

 

 

 

 

 

 

 

「......あ......」

 

 

 

 

 

 

忘れたくても忘れられない思い出が誕生日プレゼントになったそうな




なんか………アルトくんを苦しませるだけ苦しませただけの回の気がする
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