「ヤァヤァ、この前ぶり〜」
「ひゃっ......あ......秤先輩......」
雪降る季節、俺はゲヘナにいた。
目的はもちろん、この前出会ったもふもふの子......空崎ヒナちゃんだ
この前、と言ってもすでに出会ってから半年が経過しようとしている
「えっと......私に何か用......?」
「今日は調子を聴きにね、最近はどう?怪我とかない?」
「う...うん、たまに先輩が、見にきてくれるから......」
「ほんなら良かったよ。情報部はキツくない?」
他愛のない話をしながら、俺はヒナちゃんの部屋の椅子に座る。
うん、いつもの定位置だ。
ヒナちゃんは俺の目の前のベッドに座った。
「最近は、それこそ先輩が来てくれるから、だいぶ楽になった......でも、忙しいのは変わらないし...寝る時間も、減っちゃったし......」
「睡眠不足は乙女の敵だからなぁ......」
見れば、確かにヒナの目の下のクマが少し濃くなっている気がする。
「しかも......最近はなぜか風紀委員会への勧誘を受けてる......」
「まぁじ?あそこってかなりの激務で有名じゃん」
「別に私、強くないし......事務作業も得意じゃないし......めんどくさいし......」
「ヒナちゃんの嫌いな三拍子全部揃ってんじゃん...」
定期的に毒抜きをするためにヒナの話を聞いているが、話を聞くだけでもその忙しさが伺えた。
「まぁでも、言うてヒナちゃんは順応能力高いし、きっとどこでもやっていけるよ」
「どうかな」
そう言ってヒナはそのままベッドに寝転がった。
もふもふの髪がベッドに広がって模様を作っている。綺麗だ
「......秤先輩と一緒なら......楽しい、かも」
「まぁ......俺もサポートできたら良かったんだけどさ......学校も違うし、何より俺と一緒にいても特段楽しくないよ?」
「......楽しいもん」
「どこがさ〜」
「......一緒に映画見てくれたり、ご飯作ってくれたり......」
「そんなの、いつか俺の代わりに......いや、俺よりもっとヒナちゃんのことを大切にしてくれる人が現れるよ。料理も映画も、俺は片手間で相手してるだけだもん。......なんだろ、逆に申し訳なくなってきた」
「......先輩のばか」
「ええ......」
なぜか寝転がりながらぶーたれている後輩を宥めながら、俺はその隣に座った。
「まぁ、それはさておきさ、ヒナちゃんは偉いよ。こんな状態でもどうにか順応してやりくりできてる。それって、誰でもできるわけじゃない」
ケサランパサランを撫でつつ、俺はヒナちゃんを褒める。
「......先輩の手、あったかい......もっと......」
「はいはい、撫でられるの好きね、君」
なんでこの時、俺は事を深刻に捉えなかったのだろうか
そんな後悔も知らぬまま、思い出はふけていく
________________________________
「あっ.......ぶねぇなぁ!!」
『プログライズホッパーブレード』
爆発の余波を俺は捌き切る。
俺1人ならただ避けるだけで良かったのだが、俺の後ろには今先生がいる。
この人に怪我をさせる訳には行かない
「......って、またオメェらかよ......」
「は、秤アルト!?」
「流石に早すぎでは」
俺の目の前に出てきたのは、温泉開発部の部員だった。
「また温泉開発か?やるなら他所でやれ!今回はマジで洒落になんねぇんだよ」
「えー、でも生徒会長がやっていいって言ってたしー」
「仕事しただけっていうか」
「あんのバカ殿がァ......どーせ議事堂に温泉を作るなんて要求したんだろ」
あいつのやりそうなことは把握しているつもりだったが、思った以上に突飛な行動をしやがる。
またヒナの仕事を増やしがやがって......
「お前らはとりあえずここでそこにいる先生とでも遊んで待ってろ、今お前らのリーダー連れてきてやっから」
「わーい」
「バイセンキュー」
「“とりあえず2人は任せて“」
やっぱりこう言う緊急時は頼りになってくれる人なんだけどなぁ
「じゃ、ちょっと行って________________
「先輩!!」
________________ぬぶら」
なんかが横から飛びついてきた。
「先輩ッ、大丈夫......!?」
「おあ......ヒナ、この前ぶり〜」
「怪我はない......のね......?良かった......」
どうやら飛びついてきたのは我らが風紀委員長のヒナちゃんだった
「はーっはっはっは!!さぁ諸君!!今回は大義名分を得ている!存分に開発だーーーッ!!」
いつもの出会いを喜ぶ時間も与えられず、またゲヘナの歓迎を受ける俺。
もはや爆発とあいつの高笑いがセットになっているんじゃないかこれ
「うおっ......あぶな!」
爆弾が四方八方に散らばされ、それが容赦なく起動する。
その余波が俺の後方とヒナに当たらないようにクラスターセルとシャインクリスタで防壁を重ねる
「よっ、とォ!!」
そのままホッパーブレードを片手に立ち上がり、爆炎を断つ
「んー?あー!秤先輩だー!!」
「は、秤アルト!?ひええええっ!?」
爆炎の先からは、やはり爆発コンビがいた。
「ヒナ委員長もやほやほ〜」
「ヒナまで!?」
「あ、あと先生もいるよ〜」
「あっ......せ、先生......思いがけない、出会いだな。ふむ」
「“うーん、態度の差が......“」
今更言うまでもないが、ゲヘナにとっての秤アルトはすでに空崎ヒナを超える脅威なのだ。
いつものカスミの反応を見れば分かりきったことではあるが
「わ、私たちはこのマコト議長から仕事を受け持っただけだが......!?」
カスミの目線は先生に向いている。
正確にいえば、先生の背後に
「......かくれんぼのつもりか、マコト」
「な、何を......私はただ、先生の後ろにいただけだが......」
「ハァ......お前らもどうせ、いつもの温泉の勘が働いていらんとこまで爆破しだしたんだろ」
「そ、そうだ!だから私は仕事を依頼しただけで「どこの世界にテロリストに建築業を依頼すんだよバカ」
もう、なんか......こいつらのバカさ加減には頭がおかしくなる
「......ごめん、先輩。来てくれたのに......」
「いや......いつものことだ、うん。家族の面倒まで見てくれて、ありがとな......」
「「ハァ......」」
俺たちは2人でため息を吐く。
得てしてゲヘナというのは、こんな奴らばかりで飽きない
ここでいう飽きない、という言葉は、いつも以上に疲れるという意味である
本当に、飽きない
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「それで、遅れたんだ」
「いや......ごめんって......ほ、ほらぁ〜、先生連れてきたから「誤魔化し?」滅相もございません」
「......怪我は、ないのか?」
「ナイデス......」
風紀委員会の執務室に連れられた俺は、即刻ミサキとサオリからの詰めを受けていた。
「え、えっと......このお菓子ってまだあったり......」
「よく食べるな......」
「こちらでよければ、まだたくさんありますよ」
ヒヨリはチナツとイオリから餌付け
「ほんっっっっっとに!!なんであそこまでクソボケを極められるんですか!?」
「うん、私も兄妹だけど、そこだけ全然わかんない」
アコとアツコは紅茶片手にクソボケについての女子会を楽しんでいた。
「“......アルトって、家だとあんな感じなんだ“」
「基本的に危ないことしかしないから、いつもミサキとサッちゃんに詰められてるよ」
「“アツコはあれに参加しなくていいの?“」
「んー......私はいいかな」
先生はアツコの様子を不思議に思ったが________________
「私は、別の方法で詰めるから❤︎」
先生は、それ以上追求しない事を心に決めた
それはなぜか?よくよく見れば表情は笑っているが、瞳が全く笑っていなかったからである
「ハァ......まぁ、今日はこのくらいでいいよ。ホテルのチェックインもしなきゃないし」
「あ......そのことなんだけど......」
まだ何かあるのか、とミサキが顔を顰め________________
「諸事情で......俺ヒナちゃんのとこ泊まらにゃ無くなって......」
「「は?」」
前言撤回
アツコの貼り付けられた笑顔も消え失せた。
実はね、このイベントシーズンって意図的に派手な描写全部廃してるんだよ。
語彙力のない言い訳にしか聞こえないと思うんだけどさ。
あとたまにR18版も公開しようかなって思ってる今日この頃