「ただいまー......って借りてる俺が言うのもあれか......」
「別に気にしないわ、逆に先輩が言ってくれると私も帰ってきた、って感じがしてその......好きだから」
夕焼けが差し掛かる頃、俺はヒナの部屋にいた。
久しぶり、というには通い詰めすぎたな
「......にしても、また散らかしてるねぇ〜」
ヒナの部屋を見渡せば、書類書類書類書類
あとは朝からほったらかしにされているであろうペットボトルや携帯食料のゴミが机に放置されていた。
不潔、と言うよりはただ汚い
ヒナは仕事はできるが身の回りの世話が苦手...と言うより自分に割く時間がないんだろうな、許すまじバカ殿
「きゅ、急に先輩が部屋に来ると思わなかったから......」
「まぁ......今回もバカ殿には煮湯を飲まされたな」
さて、なぜ俺がヒナの部屋に来ることになったか、ここから説明しよう
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「いや、待て!?」
「んだよバカ殿、こっちはこっちでピアノの練習も________________」
「まずは周りをよく見ろ!さっきの一撃だけで議事堂が......!」
マコトのいう通り、アルトのはなった剣撃によって議事堂は真っ二つに割れていた。
「......ヘェッ!!」
「何が『ヘェッ!!』だ!!バカにしているのか秤アルトォ!!」
ふざけて誤魔化そうとしたアルトに、マコトは盛大にツッコミを入れた。
側から見ればいいコンビに見えるだろう
「貴様のせいで私の作戦が......ッ!一体どう責任を取るつもりだ!?」
「お前がカスミ達に依頼したのが悪いんだろ」
「責任転嫁にも程があるでしょ......」
アルトはもとより、ヒナも今回は本気で呆れ顔である。
「それで?それはもう終わったことだろう!」
「「.........」」
アルト、ヒナ、絶句
「とにかく風紀委員会と秤アルトのせいだ!」
「ハァン?俺に責任被せるのはまだいいとしてヒナにまで迷惑かけようって魂胆じゃあねぇだろうなマコトォ」
「ぐっ......だ、だが!貴様らのせいで貴重な人員とお前が滞在する宿が吹っ飛んだのも事実!!さぁ!責任をとってもらうぞ秤アルト!!」
アルトに威圧された影響か、マコトはターゲットをアルトに移し替えた。
言っていることは相変わらずメチャクチャであるが
「そりゃそっちの都合.........って、は?」
今こいつなんて言った?
宿が、吹っ飛んだ?
「......ごめん、ほんとに」
「いや、ヒナちゃんのせいじゃねぇから......ほんとに」
さらに嫌なことに、疲れ気味のヒナちゃんと俺の顔を見たマコトが『何か思いついた』と言わんばかりにニヤけている
「そうだ......そうだ!!空崎ヒナ!責任を取って秤アルトを風紀委員会の寮舎に拘束しろォ!」
「テメ......あんま調子に乗ってっと......」
流石に鉄拳制裁の刑に処そうと意気込んだ時、俺の体の前にヒナの腕が伸びた。
「わかった」
「......ん?」
「......こうもすんなりいくとは......」
「いや......今回のことに風紀委員会の非は......」
「これは風紀委員会だけで事態を鎮圧できなかった私の怠慢、それに、先生の仕事を邪魔することになったのだから私にだって責任はある」
なんだ、ヒナちゃんが急に饒舌に...
「いや、いつものバカ殿の戯言......」
「私の責任」
「いや......議事堂ぶっ壊したのも......」
「私の責任」
「......あn「私の責任だから」
と、いうわけで、秤アルト拘留生活でございます
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「しかも......俺には仕事も追加かよ......」
「来てもらったのに手伝わせることになってしまって......ごめん、先輩」
マコトが俺に支持したのは、拘留期間中のゲヘナの治安維持
これに関しては俺は言うまでもなく参加しようと思っていたが......
「......その治安維持活動に風紀委員会は参加しないこと......マコトが考えそうなことだな」
ダルイ
限りなくダルい
まだ始まってもいないのに
「今からでも万魔殿に送り返して......」
「......いんや、これはもう約束しちまったことだ、約束破ったらまた揚げ足を取られる」
こう見えて、仕事はどんな仕事でもきっちりこなすタチだ。
それがたとえ無茶だろうがなんだろうが、ヒナだけに責任と仕事を押し付けるわけにはいかない
「......それに、久しぶりにヒナちゃんと暮らせるっぽいし......役得ってやつ?」
最近は家族とか、ちょっと理由ができてホシノとかにつきっきりだったからな......
そう思いながら俺はヒナちゃんのことを撫でる
やっぱり、撫でてて一番しっくり来るなぁ
「えっ......あ......それって......!......でもっ......えぇっ......!?」
いやぁ、可愛い
俺ですらこんな反応してもらえるんだ、アコ達はほんま役得だろうな
「ぁ......その......えっと......」
荷を置こうとヒナの頭から手を離すと、離した手にまたヒナが寄ってくる
「......もう、少しだけ.........」
うん、ヒナちゃん
可愛すぎるのを自覚しようか
この後めちゃくちゃなでなでした
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「うっま!?何これ懐石料理!?!?」
「大袈裟だな.......ただのかき揚げとうどんだろうに」
ゲヘナ風紀委員会寮舎・食堂
「嗚呼......最近栄養バーしか食べてなかったからなぁ.......」
「休みだって全然無かったし......」
「パンデモパンデモパンデモパンデモパンデモ」
「そいつ直してやれ、いつものだ」
「アイヨォ」(ストック殴り)
うん、なんというか.....
この子達もヒナと同じくらい苦労してんだなぁって......
「ほんま、お疲れ様やで」
「最近は本当に忙しかったからな......先輩がいなくなった途端にこれだ......」
「それに、先輩が不調だと言うことを餌に温泉開発部や美食研究会が暴れ回りましたからね......」
隣で皿洗いを手伝ってくれているイオリとチナツも、目の下にクマができている
.....やっぱ、腹は満たせても心ばっかりはどうしようもねぇか
「ま、大丈夫大丈夫、俺がなんとかしてやっから」
「......本当に腹が立ちますね、特にその顔」
「ええ......」
唐突に俺のことを罵倒しながら食器棚の整理をしているのはお察しの通り天雨アコ、今日も言葉の刃がキレッキレである
「ほんと、兄さんはそう言うところしかないから」
「何人女の子を落としてきたと思ってるんですか?」
「そんな覚えはないしコンビネーションすげぇなおい」
追加でもミサキのジトッとした目線を食らいながら、手元の食器を片付ける、俺氏
「こんな美味いもの毎日食べてるなんて良いなぁ〜」
「えへへ......しかも甘いものも食べれたり......」
「女子より女子力高くないかあの人」
「アルトは昔から手先が器用だ、料理だけでなく銃器類の整備や組み立ても物凄い」
「そういえば昔手伝いしてくれた時も捕まえた不良の銃一瞬で解体してた」
......平和だ
好きなものを、みんなに好きな分だけ作って、友達とか家族と一緒にその片付けをする
少し暗いくらいの電灯、木造と大理石のキッチン
少し眠気が走る程度の暖かさ
平和そのもの
「あ、そういえばお前ら明日からパーティの準備だけ出れば良いからな」
「え、委員会の活動はどうすれば......」
「治安の維持と不良の確保、その他諸々の書類処理は俺がやる」
「はぁ?あの量を1人片付けられると思ってるんですか?」
心配から怒ってくれるアコを半分無視
ありがたいが、お前の目の下だってクマが染み付いてる
「明日からは八時以降に起きること!書類仕事に手をつけないこと!勉強に励むこと!十一時前には寝ること!銃声や爆発音が聞こえても無視すること!」
キッチンから、食堂へ向けて俺は声を通らせる
驚愕の目線を向ける者、心配の念を向けてくれる者、うどんを啜る手が止まるほど困惑する者と様々
「それと......俺の家族をいろんなところに連れてってやってくれ」
最後に深々と頭を下げて言葉を締めくくる
「良き休暇を!!」
ピアノ練習率;20%
パーティー準備;二日目
ピアノって難しいよね