アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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次回、ヒナちゃん編終了でございます


七曲;グラツィオーソ

 

 

「は、秤アルトだァァァァ!!!」

 

 

「逃げろーーーーい!!!」

 

 

 

まっ金金に塗られた変な像を抱えた不良たちを、アルトはまるで空を駆けるように追う

 

だが、その瞳に犯罪行為を犯す不良たちなど最初から写っていなかった

 

 

 

 

.........どうしよう

 

 

昨日からマジ一睡もできなかった!!!ヒナちゃんのこと考えてて!!!

 

 

あれぇ!?まじ......なんだ!?なんだこれ!?

 

 

 

 

「ギャーッス!!!!」

 

 

「AIBOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!」

 

 

 

さ、作業は身につく!なんならいつもより数倍調子がいい

 

鉄煙の展開速度、クラスターセルの制御、部分変身。その全てが俺の予測しているスペックを超えている

一睡もできなかったくせにバチバチに調子が良すぎる

 

 

 

「せ、せめてAIBOの遺志をッ......!」

 

像を背負って逃げようとする不良を、アルトは容赦なく像ごと叩き切る

 

 

「ぐええええええええッ!!」

 

 

不良が地に伏し、アルトもほぼ同時に地面に足をつける

そして、自分の手のひらに握られた剣を見つめる。

 

 

「......いかんいかん仕事だ仕事!」

 

 

信頼して仕事を任せてくれるヒナちゃんにだって申し訳が立たなくなる

 

現を抜かしてみんなに迷惑をかけたりしたらそれこそ本末転倒だ

 

てかなんだこの気持ち悪い金の像は、マコト(バカ殿)の形をしてやがる

 

 

......とりあえず全部ぶっ壊しておくか

 

 

 

 

 

 

と、まあ午前中は

 

 

 

 

「な、なんですってえええええええええええ!?」

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!!」

 

 

 

よりストイックに!!

 

 

 

「ひ、ひええええええええええ.....!!!」

 

「また温泉開発失敗ー!!」

 

 

よりクールに!!

 

 

「ぎいやァァァァ!!!?」

 

「またマコト様の像がああああ!!!」

 

「許すまじ秤アルトぉオオオオ!」

 

 

追跡!

 

 

「ぱ、パンちゃんそっちにいっちゃダメですーー!!」

 

 

「な、なんでいっつもこうなっちゃうのよーッ!」

 

 

撲滅!!

 

 

「私また何も食べれてないのにィー!!」

 

「うわぁーん!チョコミントバーガー落としちゃったぁー!!」

 

 

いずれも!

 

 

「あ、アルトさん、一度考え直してはいただけないでしょうか、え、ええしました、二度と飲食店は爆破しないと誓いましたいえ、あの、あれは飲食店側の対応も悪く野放しにすれば一般の方にも被害が被るかと......え、爆破すれば否応なしに迷惑がかかる......確かにそうとも言えますわねあああいえあのまずはその物騒な煙をしまっていただくことは________________

 

 

 

マッハァ!!

 

 

 

__________________________________________

 

 

 

「う、うーむ......予定より秤アルトの動きが早いのでは......?」

 

 

「もともと単体制圧能力は群を抜いてると思っていましたが、なんだかいつも以上に調子が良さそうですね!!」

 

 

パソコンの画面でアルトの活躍を見張るのは万魔殿の長であるバカ殿.....ではなく、眉間に皺を寄せている羽沼マコトだった。

 

その隣でその顔を覗きながらパシャパシャとシャッターを切るのは、同じく万魔殿で広報員を務める『元宮チアキ』

同じくアルトの活躍を目を輝かせながら眺めている

 

 

「これでは空崎ヒナと秤アルトを一塊にしつつ協力させない形をとった意味がなくなる......計画が......っ!」

 

 

「こうなったら......私のNKウルトラ計画でアルト先輩を......!」

 

「そ、それだァサツキ!!」

 

 

マコトと同じく手に汗握りながらその手に糸に繋がれた5円玉を持っている少女は『京極サツキ』

 

 

「はぁ......多分精神攻撃の類も効かなそうな先輩に、催眠術なんて効くわけありませんよ」

 

 

「な、何ぃ!?」

 

 

寝ているイブキを膝枕しながら本のページを捲るイロハはいつも通りの様子に、全く......とため息をついた

 

 

「しかも広報用に作らせた私の像が......!」

 

 

「やっぱりテメェの仕業かバカ殿」

 

 

「んぎゃっ!?」

 

 

「イブキが起きるだろーが、静かに」

 

 

いつの間にか......というより、マコトがただ気づかなかっただけのアルトが万魔殿執務室のドアの前に立っていた。

 

 

 

「てかあの像、気持ち悪い形してるがところどころ金が使われてっけど、お前、パーティだけじゃなくんなもんにまで金かけて破産しねぇのか?」

 

 

「し、仕事はどうした!?書類仕事だけでもとんでもない量を......」

 

 

「色々終わらせて今は休憩時間。んで?金の出所はどこだ。どうせお前が出したんじゃ無いんだろ?」

 

 

アルトが特段怒っているわけじゃないと気付いたからか、マコトはいつもの調子を取り戻しながら語り出した。

 

 

「も、もちろん風紀委員会名義で________________

 

 

 

 

 

 

 

「あ“?」

 

 

 

 

 

 

 

「キヒッ......」

 

 

「っと......イブキが起きたらダメだな」

 

 

 

 

いつも朗らかに接しているアルトからは想像もつかない......いや

 

この威圧感を、マコトはすでに知っていたはずだったというのに

 

 

 

「忘れてるようだからもう一度言ってやる」

 

 

アルトは鬼気迫る表情のまま、静かに青く光る瞳でマコトを睨みつけた。

 

見下ろされたマコトは、まるで鳩が豆鉄砲を喰らったように冷や汗を垂らすのみで声も出ない

 

 

 

「俺にはいくらだって迷惑かけろ。だが、ヒナにこれ以上心労がかかることしてみろよテメェ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度こそ、絶対に許してやらねぇからな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

_________________________________________

 

 

 

 

「あ、お兄ちゃん」

 

 

「気づくの早いなぁ......さすがお姫様」

 

 

バカ殿への説教を終えた俺は、仕事の合間を縫いつつパーティー会場へと赴いていた。

 

まぁ、警備とパトロールって考えりゃぁ仕事とも捉えられるけど......

 

 

「パーティーの準備、色々とお疲れ様」

 

「お兄ちゃんもお仕事お疲れ様。おかげで特に何もなく進んでるよ」

 

「ほんなら上々」

 

 

会場の飾り付けに勤しむアツコを見ていると、心が落ち着いた。

 

やっぱり、アツコがそばにいると安心感が違うな。ええ子や

 

 

「......アツコ」

 

「どうしたの?」

 

 

「ちょっと......あの......撫でてみてもいい?」

 

 

......ヤッベお願いの仕方結構キモいなこれ

 

 

 

「......ふふっ、いいよ」

 

可愛らしく上目遣いで頭を差し出してくれるアツコ。

少し不思議そうな顔をしていてとても可愛い

 

うん、可愛い

 

 

「......なでりなでり」

 

 

うん、ホワホワする可愛さ

 

こう、ヒナちゃんを撫でたときみたいな体が沸騰するような感覚がない

 

安心する

 

なんというか

 

 

「アツコ、その......好き」

 

 

「......うん、私も」

 

 

あ、でも

やっぱり手とか握られると......ちょっとドキッとしたり......

 

 

「......悩み事?」

 

「あー......うん。実はねー」

 

 

アツコになら、やっぱり言葉にブレーキをかけずに話せる

 

安心、する

 

 

「その......最近、眠れないのにすごく調子が良かったり......気を抜くと余計なことが頭の中に入ってきたり......なんか体があっつくなったり......」

 

 

「んー......」

 

 

アツコの作業を手伝いつつ、自分の体の不調を訴えてみる

 

 

「......風邪かな」

 

「......あ、なるほど」

 

 

そうだ!風邪だ!!

 

まだ本調子じゃねえのにこんなに作業してたらそりゃ体調も落としますわ

あーあぶねー、体調崩してんのにヒナちゃんにべっとりじゃなくて良かった〜

 

 

「今はどう?」

 

「アツコと話してたらなんか治ったし、大丈夫」

 

 

でも、やっぱりアツコはすげぇや。近くにいるだけで心が安らぐと言いますか、気持ちがさっぱりとすると言いますか

 

 

 

 

「アルト先輩......あ、いた......ピアノの練習をしたのだけれど......」

 

 

「っ!?!?あ......わ、わかった〜!すぐ行く!」

 

 

 

ん!?!!?!?!?

な、なんか再発したぁ!?

 

 

 

 

 

 

 

____________________________________

 

 

 

 

「......ふーん......」

 

 

 

風紀委員長さんと一緒に歩いていくお兄ちゃんの姿を眺めながら、私は目を細める

 

 

『なんか......体が熱くなったり......』

 

そっか......お兄ちゃんはまだ、そういう『好き』は経験したことないんだもんね

 

 

お兄ちゃんは優しいから、絶対私のところに最後は帰ってきてくれる

それに、今だって私に好きだって言ってくれた

 

 

「でも......」

 

 

 

ちょっとだけ

 

 

 

 

 

「......妬けちゃうなぁ......」

 

 

 

ピアノ熟練度85%

 

パーティ準備;五日目




次回、最終回
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