モンスターハンタライズサンブレイクなんてやってないよ
すぐ始めるよ
多分
きっと
maybe
……ハンターハンターなんて見てないよ
「練習はバッチリ、薬も飲んだ、煙草も入れた......よし。あとは心の準備だけだな」
ゲヘナ学園パーティー会場控え室
そこでアルトはデカグラマトンに指事されつつモチャモチャとなれない手つきでネクタイを結んでいた。
身にまとうは飾り気のないシンプルなグレーのスーツ。穏やかな雰囲気のある表情のアルトと絶妙にマッチしたよく似合うスーツだった
『何度も言わせるな、その次は右に回して首元の輪っかに通せばいい』
「み、右ってどっちだっけ......?」
『お茶碗を持つ方だ』
「あ、こっちか」
『そっちは左だ』
スーツを身に纏い、落ち着いた雰囲気の『大人』としての風格を纏うように見えるアルトは実のところかなり緊張していた。
文字通り右も左もわからなくなっている
その緊張した姿に、アルトの頭の中の相棒は珍しく呆れでため息をついていた。
『開演までまだまだ時間はある。緊張する必要はない』
「って言っても怖えもんは怖えよ......ミスってヒナちゃんに恥かかせたらどーしよ......」
焦りと緊張を覚える中でも、アルトは指や爪先で曲のリズムを取っていた。
これもまた、緊張を紛らわせるためと本番に向けて心の調子を整えているのだ
「......ふー......あーくそ......頭いてぇ......」
ストレス性の頭痛も起こり、アルトのコンディションは現在絶不調へと落ち込んでいた。
『最後にそこの輪を通して......そうだ、あとは塊になった部分を上に上げろ』
「お......おお!できた!うっしゃーこれで俺もいっぱしの大人〜」
前世でもネクタイを結ぶ機会なんて学校とか結婚式くらいしかなかったからなぁ、なんか新鮮
......ん?
「んだこれ......?」
鏡に映る自分を眺めていると、自分の前髪に違和感を覚えた。
「......俺髪とか染めたっけ......?」
鏡に顔を近づけてよくみると、もともと純日本人カラーの真っ黒の髪の毛の毛先が淡い紫に変わっている
もしや、と思いながら後頭部の髪をめくってみると......
「うわうわうわうわうわ......なんだこれ......」
俺はめくった後ろ髪のインナーカラーを見て驚愕した。
「えー......?自販機、何これ......」
『原因は不明だが、おそらく秤アツコの神秘を短いスパンで大量に取り込んでいる影響だろう』
......なる、ほど?
『もともと体の構造は兄妹なのだから当然似ている。それが急激な変化によって視覚的に現れたのだろう』
......心当たりは、まあ有る
『...............』
「...............」
俺と自販機は、気まずくなって押し黙る
ま、まぁ!別に病気ってわけじゃねぇんだし気にする必要ナッシング。
「と、とりま散歩散歩〜」
気まずい沈黙に耐えきれず、俺は控え室から出る。
まぁまぁ、ポジティブに考えればアツコとおそろだし?ウチテンション爆上げ〜......
「......ふふっ......」
ちょっと嬉しくて、なんだか幸福感が込み上げてくる
俺とアツコは、兄妹だけれども似ていない
頭髪、目の色
案外、揃っている特徴が一切なかったりする
まぁ、兄弟なんてそんなもんだ。と思っていたけど
「ふんふーん♩」
俺、やっぱりアツコのお兄ちゃんなんだなぁ〜って
ニヤけてみたり
「っと......せっかくだしヒナちゃんに挨拶しにいこーっと」
そう思い、俺はヒナちゃんの控え室へと向かう
真隣、というわけではないが部屋は近く、行こうと思えばずぐに手が届く距離にあった
「それではオーぺん......なんて失礼なことするわけないだろ?俺はよくある展開を廃してちゃんとノックをするぜ⭐︎社会人の基本だぜ⭐︎」
謎の小芸を挟みつつ、ヒナの部屋の扉をノックする
こんこんこん、と軽い音が響くと中からパタパタと何かが歩く音が聞こえた。
「えっと......先輩?」
「よくわかるね......時間はまだまだあるんだけどさ、一緒に会場見てまわりたいなーって......お迎えに上がりました」
扉越しにヒナちゃんの声が届く。うん、なんかこれ、ちょっとドキドキするな......
「う、うん......開けていいよ」
ちゃーんと許可をもらい、俺は部屋の扉を開く
「失礼しまー......す......」
思わず、息を呑んだ
「......えっと......その......あんまり、見つめないで......」
びっくり、したよね
紫を基調とした幼さを残しつつも『空崎ヒナ』を引き立たせるドレス
いつもは結ってどうにかまとめている髪を頭にまとめる形で整えられた白い頭髪
そして、ヒナの性格を表すような控えめなアクセサリー
化粧っ気が抑えられたメイクも
露出の少ないドレスも
視界に入れた瞬間、思考の全部を奪われた
「......スッゲェ......綺麗......」
やばいこれ
直視できない
「そ、そんな大袈裟にしなくても......」
「......大袈裟にもなるって......」
アルトの弱点その4・いつもは飄々としていて全体を俯瞰できるアルトだが、予想外の出来事や自分のキャパを超えた出来事に対しては驚くほど弱くなる
それは、良い意味でも悪い意味でも機能してしまうが、今回は良い意味で機能したようだ
「あ、アルト先輩も......スーツ......すごく似合ってる......」
「う“っ...!ありがと......」
少し前から変わった『アルト先輩』という単語がアルトの胸を貫く
ここまで破壊力のある単語だとは夢にも思わなかっただろう
アルトは自分の真っ赤になった顔を隠す。
それはヒナも同じくで、どちらとも双方の顔を直視できないでいた。
「え、えーと......その......行こっか......」
「う、うん......」
なんでだ!?俺の想定していた対応なら
『おお〜!すっごい似合ってる!!可愛い!美人!!』
とかみたいな対応するはずだったのに!?ぜんっぜん声も出ないし肩も震えるんですけどォ!?
さらにはいつもなら手を差し出すはずのアルトがヒナとの距離を意識的に取っている
いつものクソボケには考えられないよそよそしい態度である
その距離感に、ヒナも気づいたのだろう
「............先輩」
「な、なーに.........ぃい!?」
いつまで経ってもよそよそしい距離感のクソボケの手を、可愛らしく握ったのである
なんと、ヒナからである
「ご、ごめんなさい......嫌.....?」
「ん、んや?全然全然......」
握られた手を振り払えるアルトではなく、熱った顔を隠せぬままヒナの手を握った
……身体中熱い……
ドキドキする……
風邪、早く治んないかな……
__________________________________
「うん、できた」
「......やっぱり、似合わないし......」
ところ変わって来賓室。そこではアツコたちもドレスやスーツに身を包んでいた。
「“みんなすごく似合ってる!!“」
「お世辞とか別にいいから......」
赤を基調としたドレスに身を包んだミサキに対して、これまたシャーレのスーツとはまた違ったスーツを着た先生がにこやかに褒め言葉を送るが、当人のミサキは不機嫌そうな表情をしていた
「サッちゃんはドレス着なくてもよかったの?」
「わ、私なんかには似合わない......私は、このスーツがいい......贅沢なくらいだ...」
サオリは髪を後ろにまとめ、スタイリッシュなスーツを身に纏っていた。
雰囲気はどことなく、アルトのような雰囲気を醸し出している
「“ヒヨリは......“」
「パーティってまだ、始まらないんですか......?え、えへへ......私、お腹すいちゃいました......」
緑白色のドレスと、整えられた髪がいつもとはまた違った雰囲気を演出していたが、テンションは全く変わらず先生はどこか安心していた。
「......お兄ちゃん、遅いね」
「ギリギリまでパトロールするって言ってたし......まぁ、ピアノ演奏までには来るんじゃない?」
はぁ、とミサキはため息を吐きながら立ち上がった。
「......ドレス、見せたかったのに......」
アツコもまた、ため息をつく。
アツコのドレスは、そのアツコの持つ清楚さを引き立たせる優しい色の白。
露出は少なく、飾り気のないシンプルなドレスは、完全にアルトの好みを貫いている
大好きな兄に自分の一番可愛い瞬間を見てほしいと思うのは、その兄が大好きな妹の必然的な思考だろう
「......お手伝いもしたいし、先に会場に行っておこうか」
「賛成だ。私にできることがあるなら、したい」
そんなサオリとアツコに賛同するように、ヒヨリとミサキも部屋を後にした。
「“......さて、私も......“」
「キキキッ、待たせたな。先生」
自分にもできることをしようと立ちあがろうとした先生の頭上から、無駄に堂々とした声が響き渡った。
「“あ、マコト“」
来賓室頭上の螺旋階段を降りてくるマコトもまたドレスを着ており、豪奢な装飾は彼女の堂々とした立ち振る舞いと素晴らしくマッチしていた。あとは性格を治すだけである
「なんだ?このマコト様のドレスに見惚れて声も出ないのか先生?」
「“うん、すごく綺麗だよ“」
「っ.....!?ま、まぁいい......先生の審美眼には一切の曇りがないということがわかったからな......」
先生の間髪入れない褒め言葉に珍しく動揺し頬を染めるマコト。
やはりこの天然ジゴロもあのクソボケオオバッタに負けず劣らずの火力である。
「“あ、ところでマコト、ヒナとアルトのこと知らない?“」
「“2人ともいつもは早すぎるくらいに来てるから......“」
やはり先生自身も心配だったのか、マコトに質問を投げかける。
だが
「空崎ヒナも秤アルトもここには来ないぞ?」
「“......へ?“」
帰ってきたのは、斜めすぎて一周した回答であった。
「キキキッ!先生、なぜ私があの厄介な2人を一塊にしたか分かるか?」
「“.........まさか........“」
そう、そのまさかなのだ
「キキキキキキッ!!ここまで私の想定通りにことが運ぶとは思わなかった!」
いつも通り高笑いを上げるマコトの姿に、先生は思わず頭を抱えた。
「いや、多少計画には差異があった。もともとあの2人に恥をかかせることが目的だったのだが......まさかこの短期間であそこまでピアノの腕を上げるとは思わなかった......だからこのマコト様は考えた!!」
「“これ......どう考えてもアルトに怒られるやつじゃ......“」
「キキキッ!面白いことを言うな先生!その怒る本人がいなければ私に危害が及ぶこともない!勝ったァ!ついにマコト様の勝利だァ!」
「“.........それで、その代替案っての言うのは......“」
先生のその問いに、マコトは手に持ったグラスを高々に上げながら答えた。
「空崎ヒナと秤アルトを一塊にし、その行動を塞いでパーティへ参加できなくさせる!!天下の風紀委員長と皆から慕われる者が同時に遅刻でもすればその信用はガタ落ちするッ!」
「“......うわぁ......“」
あの先生ですら、その言葉に拒絶反応を表して顔を顰めている。
恐るべし羽沼マコト。恐るべしバカ殿である
「“......というか、天下の、とか慕われるとか......普通に褒めてるけど.....“」
「ああ、あの2人の実力は認めている。そうでなければここまでのことはしないだろう」
「“......意外と2人のことに詳しいんだね“」
「敵を知り、己を知ればなんとやらと言うからな!キキキッ!」
なんとやらの部分を覚えてないのはマコトだからなのかゲヘナだからなのかは定かではない。おそらくマコトだからなのだろう
だがそのマコトも2人の実力は誰よりもよく知っていた。
「確かに、あの2人が手を取りパフォーマンスを出し切ることができればキヴォトス最強の名をほしいままにできるだろう。だが、空崎ヒナはその責任ゆえにメンタルを崩しがち、秤アルトも同じくメンタル面にはこのマコト様に遠く及ばない」
この世界でマコト以上のメンタルを持った人間がいるのならば見てみたいものである
「キキキッ!!この完璧な作戦により!!マコト様は名実共にゲヘナのトップへと躍り出るのだッ!」
「“えっと……2人のピアノ演奏がなくなっちゃったら、それこそパーティーが台無しになっちゃうんじゃ……“」
先生はいつも通りその事実が抜けていそうなマコトに注釈を入れようとするが……
「クククッそんなことか先生」
先生の予想に反し、マコトは得意げに笑った。碌でもないことが起こる兆候である
「パーティーの成功よりも、あいつらの恥をかくところを見る方が愉快に決まっている!!」
「“..........うわぁ.........“」
先生はもう一度、うわぁと言った。
さっきの子供のいたずらを許容する大人の言葉ではなく、一瞬本気で引いたのである
「キキキッ......盛大に遅刻して顔を真っ赤にする奴らの到着が待ち遠しい!」
「“......アルト、すごいよ“」
先生は目の前のじゃじゃ馬を三年も制御していた己が教え子を本気で尊敬した。
それと同じほど、空崎ヒナにも
「キキキッ、では先生、会場に参ろうか」
「“いや、流石に2人を……“」
流石に看過できないマコトをどうにか説得しようとすると……
『電話がきたよ〜!』
マコトのドレスのポケットから、快活なイブキの声が響いた。
おそらく着信音だろう
「む……もしもし。どうした」
スマホを上品に耳に当て、マコトは相槌を打っていた。
だが、
「……は!?そ、そんなハズはない!!」
何やら様子がおかしい。
何か予想外の出来事が起こったようだ
「も、もう『宣伝』だってしてしまったと言うのに!?ままま、まずい……全員そこから退避し……おい?どうした!?」
「“……マコト?“」
「……………」
マコトは電話を切ったのち……
「よ、予想の範疇だとも先生!!!」
「“何も信用できない言葉が出てきた!?“」
__________________________________________
現在 アルト視点
「よし......これで最後の練習も終わりかな、と」
「うん、お疲れ様」
ヒナとの最後の練習を終え、ピアノの蓋を閉じる
このピアノにも、かなりお世話になったな
「欠けたところとか壊れてるところを直してやりたいのは山々だが......」
俺はそう言いながらピアノを撫でる。これは、俺が直していいものじゃないだろう
何年も、何年も使い古されてボロボロになったピアノ
椅子も、何度も使われたであろう古さ
でも、それと同じくらい大事に大事に使われてきたのが分かる
「......よし、このままにしておこう」
幸い、雨風はちょうどよく凌げるように壁も天井もある。俺が何かしなくたって、こいつはちゃんと動くだろう
まぁ、ピアノの弦や内部構造はちょうどよく補強してある。調律さえすればいくらでも......
「って、結構時間ギリギリ......そろそろ行くか」
俺とヒナは立ち上がり、その場を後にしようと________________
「......あ」
旧音楽室の入り口に、手帳のようなものを見つけた。
古ぼけた、革の手帳
ちょっとした好奇心だった
この手帳はこの部屋を見つけてからずっと認識していた。だけど、人のモンだし触れるのもなーって知らんふりをしていたけど
「......なるほど」
今日初めて、その手帳の内容をこの目で確認した。
内容は省くが...
「ヒナちゃん、みてみこれ」
「?......あ......ふふっ......」
「俺たちが一番乗りじゃなかったみたいだな」
俺もヒナちゃんも、結構あったかい気持ちになった
ドカァァァァァァァァンッ!!!
「「ッ!!」」
何かはわからないが、校舎外から爆発音
俺とヒナは瞬時に武器を構える
『はーっはっはっは!!!』
『マコト様の像を運搬しろーッ!!』
『さぁ!遮りなく美食の道へ!!』
外は冗談抜きの地獄絵図
なぜか俺が捕縛したテロリストやら馬鹿どもが外へ逃げ出している
「クッソあいつら逃げ出しやがった!!」
「でもなんで今のタイミングで......!」
「みんなパーティー楽しみにしてたってか!?」
爆音に遮られないよう大声で会話をしつつ、目に映る敵を的確に鎮圧していく
「な、なんで風紀委員長と秤アルトが!?」
「と、とりあえず攻撃ーッ!!」
当てずっぽうに投げられた手榴弾をアルトは空中で身を翻して避ける
この程度弾丸の速度だろうが......
「ッ!?ヒナッ!!」
当てずっぽうだからこそ狙いが狂ったのだろう
手榴弾はアルトの横を通り抜け、ヒナへと向かう
「オッラァ!!」
ヒナの前に躍り出て、手榴弾を片手で掴んだ
そうすれば
「ッ!!」
そりゃ、爆発する
「せん......ぱいッ!!!」
アルトは爆ぜた手榴弾を体で受け止めたせいで重症________________
「あっぶねぇ!!」
にはらなずギリギリのところでクラスターセルの防御が間に合う。
だが、細かい傷や綺麗に整えられたスーツは煤や傷で人の前に出せるものではなくなってしまった
「うっそお!?」
「当たったと思ったのに!?」
手榴弾を投げた不良2人はすでにスクーターに乗って逃走を始めていた。
まぁあのくらいなら逃してもそう影響は.........
「先輩!!」
「うぎっ......」
手についた血を払おうとした瞬間、いつもの如くヒナが横っ腹に飛びついてきた
「怪我っ......ごめんなさい......私がもっと、ちゃんとしてれば......」
「全然全然、逆にごめんね、また心配させちまった」
ヒナは優しく怪我をした方の手を握ってくれる。
軽く手からの出血はあるが、傷はもう塞がっているし動きにも支障はない
「っ......よかっ、た......」
「ってかスーツが......まぁ、ヒナちゃんのドレスの方じゃなくてよかった」
俺のスーツは別に汚れたっていいけど、ヒナのこのクッソ可愛いドレスが汚れでもしたらワイ氏ハラキリもんよ
「.........ってか......その..........汚れちゃうから......手.........」
アルトはまたもや頬を赤めながらヒナの手をそっと下ろした。
「あ.........ごめん、先輩......もう少しこのままでも......いい?」
ズギュウウウウウウンッ!!
そんな上目遣いで見つめないでなんかめっちゃ動悸起こるからッ!!
「あ......電話だ」
胸ポケットに仕込んだ携帯を取り出し、ヒナの手はそのままに電話に出る
「しかも......バカ殿かい......もしもし」
『秤アルトッ!!』
「うわうるっさ......てかすまんそっち遅れるかもしれんわ、不良が湧いて湧いて......」
『そんなことはどうでもいい!!早く暴動を鎮めて会場に来い!!そこからならすぐ________________』
「......テメェなんで俺の居場所を知ってる」
『ッ......!そ、それはだなその......』
「しかも俺はまだ不良が湧いた、としか言ってねぇ。なんで鎮圧に向かってるって知ってんだ?」
妙に勘のいいアルトの詰めに、電話の向こうのマコトは口ごもった
「......どーせ、お前のことだから俺たちのこと遅刻でもさせようって魂胆だろ?」
『ギクっ』
口からその言葉が出るってことは、まるっきり図星を突かれたんだろう。
もう3年の付き合いだ、この程度のこと何回も経験してる
「んで、不良どもが湧き出て会場にも危害が加わる前に鎮圧しろってことだな」
『わ、わかっているのなら早く「テメェそれが人に物頼む態度かバカ殿」うっ......た、頼む......この通りだ......』
「どの通りだ電話だから見えねーよ」
相変わらず、バカすぎてほとほと愛想が尽きそうだよ......
「しゃーない。俺の家族やらパーティー楽しみにしてたイブキのために今回は許容してやる」
『ほ、本当か!?やはり貴様はあまちゃ......よくわかっている男だ!』
「でも全部終わったらてめーの顔面俺の拳で整形してやるよ。無駄に整った顔をな」
ヒナも携帯に顔を近づけ________________
「......覚悟しておいて」
『ヒッ________________』
無情にも、アルトはそこで電話を切った。
「ってことで、今度こそ行くかっつっても......」
今度は移動のための足がない。ここから会場までは微妙に離れているためバスやタクシーを使うはずだったが、こんな状況じゃバスなんて出てねぇし......ライズホッパーはドレスのヒナが乗れないし......
「何やら、お困りのようですね?」
どうするものかと悩むアルトの後ろから、何やら美食を追い求めそうな少女の声が聞こえた。
「ハルナ......いや、今テメェに構ってる暇は......」
「ふふっ、今この状況でアルトさんと戦うほどいい状況とは言えませんし、そもそも戦う意味がありませんので」
「じゃあ何しにきたんだよお前......」
給食部、と書かれたジープの上に立つハルナはアルトを見下ろしながら髪を撫でる。
「言ったではありませんか、困っている先輩を助けにきたのです」
「どーいう風のふきまわしだ」
「もちろん、タダで助けるわけではありません。私は美食を求めるためにアルトさんと取引をしにきたのです」
そして、ハルナはアルトに手を差し出した。
「パーティー会場で提供される料理の品々......私たちはアルトさんに投獄されていたためそれを食べるための整理券を手に入れられませんでしたので......私からは移動のための足を、そちらからは......」
「パーティーの整理券か.........」
アルトは一瞬だけ悩んで________________
「会場でドタバタしねぇってんならくれてやる」
「ふふっ......では交渉成立ですわね♩」
差し出されたハルナの手を取った。
するとハルナはアルトを片手でジープに引き上げ、アルトはそのままヒナを引き上げた。
「つっても、フウカのこといちいち捕まえに行くのやめろよ美食バカ」
「ふふっ、そこは契約には含まれていませんので」
「ぷはっ!!た、助かった......」
「それでは、出発しますね⭐︎」
風化の拘束を解きつつ、アカリの運転する給食部のジープが軽快に走り出す
「......ねーねーアルト先輩!」
「ん?どしたのイズミ」
なぜか前の席からこっちを見てくるイズミの質問に答える。
「委員長と先輩って、すっごく仲良しなんだね!」
「?まぁそりゃあね、いつものことだと思うけど......」
「でも今日はもっと仲良しなんでしょ?」
「今日に限定したことじゃ......「だって!」
「委員長と先輩、ずっと手繋いでたから!」
「………あっ」
アルト、ようやくの気づき
「え、えっとヒナちゃん……そのね、みんないるからその、手を……ああ力強い……」
ヒナはアルトの手をしっかり握って離さない。
それも、美食研やフウカがいる場面で、だ。
「結構風紀委員長も大胆なんですね〜」
「とにかくお腹すいた〜、昨日からお菓子食べられてないもんー……」
「あ、あのねぇ?ちょっ……助けてぇ!?」
「まぁ、先輩もそろそろ責任をとったほうがいいって言いますか……」
「フウカまで?!」
なんらかの甘い雰囲気になった車上で、ハルナの胸中は________________
(なんでしょうこの甘い雰囲気は、まるでスイーツ店にきたようで気分が上がりますね)
また、甘い雰囲気に取り残されていましたとさ
_____________________________________
「ッ!!来たか!」
「おう、来てやったぞ。ついでに玄関前付近で騒いでた奴らもゲンコツしてきた」
「やはり貴様は仕事が早いッ!万魔殿に「ってことでゲンコツ」うげっ!?」
会場に入り、ドレス姿のマコトにアルトは軽ーくゲンコツを落とす。
「ヒ、ヒナ……」
「…………」
「ヒ、ひぃっ!?や、やめろぉっ!!無言で脛を蹴るのはやめろっ!」
ヒナはマコトの露出した脛にローキックを入れる。おそらく結構痛いだろう
「遅かったね」
「んあ……ごめんなミサキ…」
「別に、謝って欲しいだなんて言ってない」
「その……うん……あ、あとドレスすごい似合ってる、やっぱ参加した甲斐あるわ」
「ッ!?ああもう!さっさと姫のところ行って服直してきたら!」
やはり急に恥ずかしいことを言ってくるアルトの背中を押し、アツコの方へと案内する
「あ……ヒナちゃんすまん!舞台裏で!」
「う、うん!わかった……」
手が離れたヒナは、向こうで少し怒られながらアツコにスーツを整えられるアルトの姿を眺める。
「ごめん用意してくれたのに……」
「大丈夫だからちょっとかがんで見せて」
そして、さっきまでアルトの熱を感じていた右手を見つめる
「はぁ……私に挨拶もしないで行ってしまいましたね」
「あ、アコ……ごめん、遅れて」
「いえ、委員長のせいではありませんので……どれもこれも、あの万魔殿のたぬきが……!」
ヒナの隣に立つアコは少し表情を顰めるが、メイクが崩れないようにその表情を柔らかいものに戻す。
アコもやはりドレスを着ており、そのドレスはいつも露出の多いアコの露出をさらに増やしていた。
「委員長、体調は大丈夫ですか?先ほどから顔が赤いようですが……」
「だ、大丈夫……大丈夫だから……」
ヒナは緊張と早る鼓動をアルトからもらった熱で抑え、舞台裏へと足を向ける
「それじゃあ……行ってくる」
「はい!委員長なら大丈夫です!」
アコが落ち着かせてくれた
「肩の力抜いていこう、委員長なら絶対できるから」
イオリが力付けてくれた。
「大丈夫です、何かあっても先輩が隣にいてくれます」
チナツが再認識させてくれた
………もしも
もしも2年生の頃、あそこで風紀委員会をやめていたら
この景色が見れなかったかもしれない
「……うん」
本当、先輩にはいろいろなものをもらってばかりだね
「いってきます」
いつか、きっと私も________________
____________________________________
「ぶああ……緊張する……」
「ふふっ……先輩がそんなに緊張するところ、初めて見た」
舞台裏はシン、と静まり返っていた。
それと同じくして、きっと表舞台も静まり返っているだろう
「……先輩」
「は、はいぃ?」
極度に緊張する先輩の手を、私は握る
先輩の手を握った瞬間、先輩の息を呑む音が聞こえた。
「……うん、行こう」
「っ………だな……ありがとう」
先輩の手を引いて、私は舞台に出る
ステージの上には綺麗なグランドピアノが置いてあって、私たちは一礼してその席に座った。
私と先輩の距離が、すごく近くて
触れようと思えば、全部に触れられそうで
そして
目と手をいつものように鍵盤に下ろした
「「……せーの」」
小さな声で示しを合わせて
鍵盤を、弾いた
先輩
ずっと信頼してくれて、ありがとう
私を、ここにいさせてくれてありがとう
あの時、私を許してくれてありがとう
先輩はいつも、自分よりいい人が現れて私を支えてくれるなんていうけど
……やっぱり私、先輩じゃないと嫌
先輩と、私の音が重なる
先輩が
アルト先輩が
秤アルト先輩が
私は大好き
きっと、一生
大好きだから
終曲
『夢路の花』
________________________________
「はー……疲れたンゴねぇ……」
「お疲れ様、委員長さんもすごく上手だった」
「ありがとう……あれは、先輩がミスとかをフォローしてくれたから…」
演奏後、ヒナとアルトは会場を抜け出して外のベンチで休憩をしていた。
もちろん、アルトの面倒を見にきたアツコも一緒である
「……みんなは特に大丈夫だった?トラブルとか無い感じ?」
「うん、ヒヨリがモテてたね」
「あいつ、物食わせればいい反応するもんな〜」
あったかいお茶を喉に流して、今日の疲れを流す
「……先輩?」
「っ……ぬぅん……」
ヒナの横顔があまりにも美人だから、つい見てしまう
けど目が合うと風邪が再発しそうになる……
「体調悪い?お薬飲んだ?」
隣のアツコからも心配される
側からみれば両手に花なのだが、今のコンディション的にそんなふうにふざけてる暇じゃない
「いやっ……その……ね……」
「先輩……本当に大丈夫……?」
「体調は大丈夫なんだけど……その……」
ああっ顔を覗き込まないで可愛いから
アツコさんもそんな可愛い顔をしないでくれワイの妹よ
「……その……自分で答え、出してみたんだけど……」
今回のことで、気づいたことがあった
「俺……2人のこと好きだわ……」
手を前にだし、2人との距離を取ろうとするアルトの顔は、今までに見せたことのないような表情をしていた。
「俺……ヒナちゃんのこと最近までちっちゃい妹くらいにしか見てなかったんだけど……この前からなんかヒナちゃんを前にするとドキドキしちゃうし……でもアツコのこともすごい好きで……でも、そんなのぜんっぜん不純だし……でも……ほんと……だいすきで……うぅ……ごめんまじ……自分でも何いってるかわかってない……」
今にも泣きそうな顔をしているアルトを、2人は________________
「……へぇー……そっかぁ………そう、なんだ……❤︎」
「先輩も……私のこと………」
「へっ……?ちょ……どこ行くのこれ……」
2人は無言でアルトの手を引く
その力は強く、アルトの力程度では振り払うどころか引くことすらできない
結局のところ
アルトは最善択であり最悪択を引き続ける
おそらくそれは、きっとこれからもなのだろう
えー皆様
落ち着いて聞いてください
どうか、落ち着いて
えーまさかね、ヒナちゃんに本気で恋しちゃうアルトくんを描くことになるなんて私もつゆほどにも思っておりませんでした。
私はもともとラブコメが好きでね、いつも妹みたいに思ってた子に初恋奪われちゃうあのシチュ、大好きです
ですがアルトくんにはすでにアツコサァンというメインヒロインもおり、私としてはアルトくんには何に対しても誠実でいてほしいなって気持ちがありまして
じゃあアツコさんも交えて食わせたらよくね?と私の心がまぁ叫びましたね。
アルヒナのいちゃらぶとアルアツの純愛。同時に摂取できるのはカブライニキだけですよみなさんお買い得ですよみなさん
ってことでアルトくんの貞操を危ぶみつつお開きとさせていただきましょうかね。
では、今回も予告をご用意しておりますので、よければご覧ください
それでは、今回もカブライニキでした
……絵結構上手くなったお(小声)
予告
「天童アリスは」
「俺が処分する」
アリウスクソボケオオバッタ 第五章
「このロボット、USBポートどころか繋ぎ目すら見当たらない……」
「秤アルトとは敵対するな」
「この天才美少女ハッカーの真髄、久々ではありますが先輩にお見せいたしましょう」
「腹筋パワーッ!!!!」
「アリスは勇者になりたいです!!」
「きっとなれるよ、俺が保証ssssasssdjkfjsalkjkdjaskjkls
「私の、大切な」
あllllllllirijfiiiaifiアリ…………す
『恐らく、次の変身が最後となる』
「俺は守るよ」
「先生たちの未来も」
「これからの、奇跡も」
「変身」
次章メインストーリー;『忘れ時の花と終わりなきゲーム』
第一話『ミレニアムのfactor』