アリウスクソボケオオバッタ   作:カブライニキ

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第−4話 秤アルトは依存先

 

「あーあー.......やっちゃったなぁ......」

 

「..................」

 

 

アルトは自室兼研究室でミサキの問診を行っていた。

結果は見事にアウト。

 

せっかく綺麗になりかけてた腕がズタズタになっていた。

見れば切り傷だけでなく銃創のよう跡も見られる。

 

「どしたの?なんか嫌なことあった?」

 

ミサキは昔から自傷ぐせがあって定期的に問診を行なっているが、最近は大丈夫だったので普通に心配になる

 

 

「............ルト兄さ......が......」

 

 

ボソボソと何かを呟いているが、俺には聞き取れない。

 

 

「ゆっくりで良いからさ、教えてくれんか?」

 

手を優しく握り、どうにか話してくれないか打診する。

 

 

「............アルト兄さんが」

 

 

「うん。」

 

 

 

「......この前ミレニアムに出かけた時.........眠れなくて」

 

 

なるほど......

 

うんなるほど......

 

 

俺のせいやないかい!!!!

 

 

「ウゴゴゴゴごめんな!?」

 

「.........別に」

 

 

ミサキの閉所恐怖症が勝手に治ったと思ってほったらかしにした俺が全面的に悪い。

しかもミレニアムに行ってたから寝る前の問診とか寝かしつけとか全然できてなかった。

 

 

「ほんまごめん!!なんでもするから許してっ!」

 

ただでさえミサキは他のみんなと違って少々不安定なところあるから一倍気をつけようって思ってたのにこれだ。

ここで秘伝奥義『なんでも一個言うこと聞く』を発動。ここで切らずいつ切る

 

 

「.........なんでも?」

 

 

「おう!俺ができる範囲ではあるが」

 

 

そっぽを向いてしまったミサキはその提案に興味を示す。

 

「.........じゃあ今日は一緒に寝て。」

 

「了解でございます」

 

土下座の姿勢を解き、とりあえず傷だらけのミサキの腕に手当てを施す。

そのままにしとくと前みたいに傷が膿んで悪化するかもしれんからな

 

「これについては本当にごめんだけど、できれば自傷はやめてほしい。せっかく綺麗な肌なんだからさ」

 

少し前からちゃんと飯が食えているからか、少なからず血行が良くなった血色のいい肌。

血管が浮き出ることなくハリのある肌。

 

これがアザだらけになってしまうのは世界の損失と言ってもいいだろう。

 

だからこそ俺は『治れ〜治れ〜』と思いながら手当てをする。

 

 

「.........綺麗とか、そんな嘘つかなくていいから」

 

 

「俺嘘つかんもん。」

 

自己肯定感が低いのは変わっていない。

 

 

「見てよこの可愛いお顔。凛々しい、可愛い、かっこいい。三拍子揃った黄金比率。足も見てこれ、なっが。なっが!いい匂いもする」

 

「きゅ......急に何......」

 

 

「な?俺はミサキのいいところいくらでも出てくるから。嘘じゃ無いだろ?」

 

 

だからこそ、褒めちぎって自己肯定感を高める。

だってミサキが可愛いのもかっこいいのも、足長さんなのもいい匂いもするのも本当だもん

 

 

「......私みたいなのをそうやって褒めても、いい反応できない。」

 

「お兄ちゃんは妹たちを平等に愛するものだ。いいところを見つけるのは当たり前のこと」

 

それに対して喜んでほしいとか、反応が欲しいというのは傲慢だろう

 

 

「......やっぱり、アルト兄さんは変だね」

 

「変人ですから」

 

 

処置が終わり、丁寧に綺麗な包帯を巻く。

ベアトリーチェが補充してくれた分の新品だ

 

「っ!?そんな貴重なもの......!」

 

「いいから。」

 

ミサキは少し拒んだが、それを押し通す。

昔は古いガーゼをめいいっぱい綺麗にして使っていたけど、今はそれを気にしなくていい

 

 

「いい加減にしないと怒るぞ」

 

 

「......わかった」

 

渋々、と言った感じで包帯を受け入れるミサキ。

 

 

「しっかし、本当に綺麗になったな」

 

包帯をしていない方の腕を摩り、少し感慨に浸る。

少し前は自傷痕ばっかりで肌の色を見つける方が難しかったというのに、今では年齢相応の肌。

 

よかった。と安堵が生まれる

最近は忙しくてこうやってミサキに構えなかったのがダメだった。

 

「ちゃんと道具のメンテナンスはした方がいいよ。兄さんはただでさえ鈍感なんだから」

 

「道具エェ......その呼び方やめてな.........」

 

 

この子自分のことを『道具』っていうんよ。しかも俺の

 

別に道具になって欲しいとかそういう趣味はない。

俺は普通にミサキが成人するまで『義兄(あに)』でいさせて欲しいだけだ。

 

 

こうなってしまった原因は、約二年前に遡る。

 

少し前のミサキの自傷ぐせは今の四倍は酷かった。

ベアトリーチェによる理不尽や

 

腕からは常に血が流れていたし、その傷が膿んで体調も悪そうな顔ばかり浮かべて、だいぶ心配だった

 

 

決定的だったのは“あの“一件。

できれば二度と思い出したくもない苦い記憶。

 

 

「ほら、そろそろ寝るぞ。」

 

「.........チッ」

 

「舌打ち!?」

 

舌打ちしながらもミサキはアルトと同じ布団の中に潜り込む。

暖かい兄の腕の中。

 

「電気全部消すか?」

 

「豆電球は残して」

 

「あいよ」

 

部屋の中は完全には暗くならず、淡いオレンジの光が部屋を暗くする

 

 

「.........手」

 

「はいはい」

 

一言だけ呟いた言葉を正確に拾い、ミサキの手を握る。

少し冷たくなった手がアルトの体温で解される。

 

 

何も言わずに、今欲してる行動をしてくれる。

 

やっぱり、私は兄さんが

 

「.........すき

 

 

「ん?」

 

「さっさと寝たら?」

 

「......はい」

 

 

2人は目を瞑り、静けさが流れる。

けれど、その静けさは冷たいものでなく、暖かく、2人を繋ぎ止めるように流れていた。

 

 

 

 

________________

 

 

 

「ミサキッ!!!!」

 

肩を掴まれ、一度も見ることのなかった兄さんの怒鳴り声。

 

さっきまで縄を首にくくりつけていたせいでジリジリと痛みが続いている。

 

 

「死んだらどうすんだ!!」

 

「..............なんで生きる必要があるの?」

 

 

姉さんは、教えてくれなかった。

ただ生きて欲しい。そう言われた。

この苦しみに甘んじて、幸運を諦めて

 

虚しい。

虚無だ。

 

どうでもいい

そう思って、首を括ろうとした。だけど、兄さんに止められた。

意識が失われる寸前に助け出され、死ぬには至らなかった

 

 

「この世界は苦しいのに。この世界は虚しいのに。この世界で生きることになんの意味があるの?」

 

生きていても苦しいだけ。生きていても痛いだけ。

兄さんだって。いや、兄さんだったらもっとわかるはず

 

 

「.........生きて、くれ」

 

ぽつりと、言葉が溢れる。

 

アルトは理由が出てこなかった。だって、自分だって同じことを幾度となく考えたのだから。

 

 

「頼む......」

 

だからこそ、アルトにできることは『懇願』のみ

 

 

さっきまでの怒りと焦燥はどこへやら、一気にアルトに哀しさと罪悪感が募る

 

「ごめん......身勝手でごめん......」

 

 

兄さんが掴んだ肩から、震えが伝わる。

 

「俺の、所為なのにな」

 

強く掴まれていた手が離され、そこに兄さんが頭を乗せる。

 

 

「...............」

 

 

「悪い......このままでいさせてくれ」

 

 

怖いのだ。

アルトはただ恐怖している。家族を失うことを

この世界で得られた、家族同然とも言える存在を

 

 

 

「俺が、いなくなってほしくないだけなのにな」

 

 

ごめん。と

くぐもった声で弱音を漏らす。

 

「だったら」

 

 

ミサキは、少しだけアルトを抱き寄せる。

理由が有った。

 

生きる理由が

 

 

死ねない理由が。

 

 

 

 

________曰く、人間がネガティブな行動を起こす、または起こそうとする理由は_______

 

 

 

「首輪でも繋ぎなよ。見失わないように」

 

 

どうでも良かった。

 

どっちに転んでも地獄ならば

 

 

 

「今日から、兄さんのことを充すだけの『道具』になってあげるから」

 

 

少しでも、良い方の地獄を選ぼう。

 

 

 

 

__________自分の存在意義を、証明して欲しいが故。

 

 




※一部規約違反に抵触するため、手直し

私事で大変申し訳ないのですが、私のディスコードサーバーを制作させていただきました。
そこで、もしも「しゃーないから相手してやるか」となってくれる優しい先生がおられましたら「メールボックス」にて連絡ください。リンクを送らせていただきます。
あと二月一日のアトレコラボにも行きましょう。
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