憤怒
「面白いもんって?」
「“ふふ...それは見てからのお楽しみ......と言っても私も今ヴェリタスに呼び出されたから、わからないけどね“」
「な、なんだこいつ〜〜!!」
先生に呼ばれ、アリスとおてて繋ぎながらとある部室に赴いていた
「あ、みんなが来てます!」
「みんな......ああ、噂のゲーム開発部の子たちか」
アリスちゃんは廊下の向こうにいた三人娘たちに手を振る。
噂はかねがね聞いていたが、なるほど。確かに個性的なメンツが揃っていらっしゃる
「こ、こんにちは...先生」
1番後ろに立っていた気の弱そうな子が恐る恐ると言った感じに先生に手を振る
「ヤッホー!先生......って、そっちの人誰?」
「お姉ちゃん、初対面の人に指刺さないで......ごめんなさい」
それに釣られるように、先生に大きく手を振り、俺を物珍しそうに眺める子と、おそらくその妹さん
「......あの、もしかして、最近アリスが話してる人なんじゃ......」
「あ!ってことはアルトさん?」
「初めまして。秤アルトと言います。みんなのお噂はアリスちゃんからかねがね」
「私モモイ!それで、こっちが妹のミドリ!」
「どうも......ミドリです」
「花岡ユズ、です......よろしくお願いします...」
うーん、全員礼儀正しくて素晴らしいなぁ......
少し前の俺か、アルト社長本人なら一発ギャグを捩じ込んでいたのだろうが、さすがの俺も初対面の子達にトラウマを植え付けるようなことはできなかった
なんか最近ふざける場面を探せない......ふざけてこそ俺のアイデンテイテイなのに
「ってそうだ!先生たちも早くいこ!マキが面白いもの見つけたって!」
「もしかしたら、インスピレーションになるかもしれないから......」
「アルト!これはすごいことです!ユズが自発的に外に出るのは激レアイベントです!」
「す、すごく大変だったけど......」
「本人の前でそれ言う?」
テンションの上がったアリスに手を引かれ、やってきたのはヴェリタスの部室。
「あ!きたきた!」
「ちょうど間に合ったみたいだね」
全員で部室の中に入ると、待っていたのはこれまた三人の生徒たち
またどれも面識のない________わけではなく
「よ、コタマ」
「お久しぶりです、アルト先輩」
その場で唯一の三年生である、『音瀬コタマ』
彼女とはこれまた奇妙な縁があり、面識がある
「えっと......その人って?」
「私の先輩です。なんと、先生と違いどんなに良い盗聴器を仕掛けても一度の盗聴にも至ったことがない強者でもあります」
「コタマ先輩のアレを掻い潜れる人がこの世にいたとは.......」
本来ならコタマだけでなくもう1人......まぁ、厳密に言えばヒマリも元はここの部長だったんだが、それを抜かしてももう1人面識がある
だが、あっちはあっちでなかなか表舞台に姿を現さない曲者でもある。人格者だけどね
「秤アルトって言います。おおきによろしゅう」
「すごい簡略化された挨拶......!えっと...小勾ハレです」
「小塗マキだよ、気軽にマキって呼んでね先輩!」
おお〜俺が知ってるハッカー系統のやつがだいぶ擦れた奴らだからこう言うエネルギッシュな子がいると......
「“さっきも同じことしてたからね......“」
先生がフォローを入れつつ、俺は再びコタマに目を向ける
「んで、面白いもんってのは?」
「そう言われると思い、もうすでに準備済みです」
むふー、と言った感じでコタマが取り出したのは、奇妙な形をしたロボットだった。
「......なんだコレ」
「ロボット......ですか?」
コタマからそれを受け取り、アリスと2人で眺めてみる
まるでクラゲのような......にしては、どこか嫌悪感を覚える見た目
「"......これは、どこにあったの?“」
「............」
先生もなんらかの嫌悪感を覚えたのか、少し表情を顰めた
「これらは全て、ミレニアムの郊外にあったものです」
「これで全部じゃなくて、少なくともあと二十体はあったよ!」
部室にあるのは、見える限りで五体
よくこんな気色の悪いものを持って帰ってこれたと逆に感心する......
「......なんつーか......だいぶ人を選ぶ......」
「かなり個性的な見た目です。それに、こんなものを作った記録はミレニアムにはありませんでした」
「ってことは、外部で作られたもんか......それとも......」
真面目に眺める先生や俺とは対照的に、モモイちゃんたちはまるでサッカーボールのようなこのロボットを『ホラーだ』と言って興味津々で眺めている
「起動は?」
「できません。それどころか、電源ボタンはおろか接続ポート......果てには、表面に繋ぎ目すらない」
「割ってみる...ってのも気が引けるしなぁ......」
なんとい言うか、このロボットが『動いていない』という現状が俺にとってはいちばんの『ホラー』だ
こう言うのは大体なんかのはずみで動き出すのが相場で決まってる
『自販機、こいつらのこと調べられるか?』
『........................』
『......自販機?おーい、ついにぶっ壊れたか』
『............』
おかしいのはもう一つ
なぜかデカグラマトンが返事を返さない
たまに頭ん中でスリープモードになって何回か呼ばないと起きない......ってなことは何度かあったが、ここまで無反応なのは初めてだ
「......なんというか、あまり面白味のないもんだったな。アリス、戻って腹筋崩壊ギャグ見に____________」
アリスが
「...............アリス.........見たことあります」
そっと、そのロボットに触れた
「......アリスちゃん?」
ゲーム部のみんなや、先生もその姿を見ているしかできなかった
その瞬間動けたのは
「これ、は」
『【悪意】』
「先生ッ!!!アリスに触らせるなッ!!!!!!!」
秤アルト、ただ1人
<<<私の>>>
『コワセ』
<<<『大切な』>>>
『起動開始』
「へんし_________________________」
<<<私の大切な>>>
「“これ、は“」
先生は、無限とも思えるように引き延ばされた時間の中、その光景を見ていた
アルトに一喝されてなお
『コードネーム「AL-1S」起動完了』
その光景を、見ているしかなかった
天童アリスが
『プロトコルATRAHASISを実行します』
秤アルトを、傷つける様を
生徒が、傷つけられる様を
生徒が、生徒を傷つける様を
「ぼさっとすんなッ!!!!」
「“ッ......!!ごめん!ありがとう!!“」
だが、秤アルトに再び奮い立たせられ、先生は戦線を復帰した
「......有機体の生存反応を確認」
「何が起こってんのかは全くわかんねぇけど......!止めるぞ!」
「“アリス......!“」
先生とアルトの目の前に立ち塞がったのは、紛れもなくさっきまでアルトと手を繋いでいたゲームが好きな少女
だが、その立ち振る舞いはその少女を想起させることすらなかった
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『ぐ......ああっ!!?!?!?」
「しっかり...!どうしてだ?さっきメンテナンスを明けたばかりじゃ......!」
同刻、エンジニア部の部室
そこでも、『何か』は確かに芽吹いていた
『づ......っプロトコル......あとら、はシース...........」
『コワセ』
腹筋崩壊太郎に、絶え間なく降り注ぐ謎の命令
『ワタシ......の......仕事は......!」
『コワセ』
コワセ
コワセ
コワセ
コワセ
コワセ
『人の笑顔を......!!!!」
『コロセ』
『............プロトコルATRAHASISに接続。命令を受諾し、行動を開始します』
崩れ始めた
あまりに脆く_________________________
次回
『All delete』