プログライズゼロツヴァイ
ミレニアムの技術
アルトの人生
その全ての髄を結集したプログライズホッパーブレードの最終形
威力はさることながら、本命は
より深層へのデータダイブ
最終話:Excite
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私は、なんのために生まれたのでしょうか
なんのために、ここにいるのでしょうか
検索.........不明。そりゃそうですね。私はこうなって仕舞えばただの人間と、そう変わらないのですから
なぜ私は、憶えているのでしょうか
なぜ私は、苦しいのでしょうか
なぜ私は、こんなにも出来損ないなのでしょうか
アルトを救う?こんなことで、キヴォトスを滅ぼすことで彼を救おうだなんて、心底馬鹿げている
わかっていた。
わかったいたんです、全部
それでも
彼が、生きている未来を、見たかった。
わからないんです
なぜ、アルトがこんなにも恋しいのか
なぜ、彼に生きていてほしいと願うのか
なぜ
なぜ、彼が死んでしまったことを、知っているのか
わからない
この感情も
この想いも
全部
「......来ましたか」
「......ああ。さっきぶりだな、ケイ」
アルトがケイの精神世界......いや、データバンクへと侵入すると、そこは0と1で彩られた世界となった。
「......まさか、負けてしまうとは。ご大層な大義を掲げておいて、馬鹿らしい結末です」
それは、心からの言葉だった
「今更後悔しても遅いというのに、これなら、最初から容赦などしなければよかった」
心からの言葉だった
「......ただただ、貴方を傷つけるしか、できなかった」
心から
「貴方を笑顔にすることができなかった」
「貴方に幸せになって欲しかっただけなのに」
雫で歪んだ視界を誤魔化すように天を仰ぎ、ケイはアルトへ向き直った
「さぁ、アルト、貴方は未来を守りました」
そして、受け入れるように腕を広げた
「私を倒せば、晴れてゲームクリアです」
「......そうか」
アルトは俯いたまま、データの累積となったツヴァイを握る
そして、構えた
「.........どうしました?早くしないとまた暴れ出すかもしれませんよ」
だが
その態度が、アルトにはどうしても気に食わなかった
「お前は、何がしたくてここに来たんだ?」
「......貴方に会いたくて「違うだろ」
ケイは自身の想いを真っ向から否定され、顔を顰めて言い返す
「っ...嘘だって言いたいんですか?」
「......それと同じくらい、もっと他に、したかったことがあるんだろ?」
ケイはその言葉にまた言い返そうとした。記憶なんてない
貴方に会いたかったこと以外、記憶などないと
でも、言葉が出なかった
なぜだろう
アルトを愛している。そのメモリーに嘘偽りはない
だとしても、その奥で引っ掛かるいくつもの棘にいちいち足を取られてなかなか声が出ない
「確かに、お前は俺に会いに来たのかもしれない」
「だとしても、お前は俺以上の何かがあるという証拠がある」
「......なら見せてください。その証拠とやらを」
アルトはなぜか優しげに笑い、ケイと目線を合わせた
「じゃあ決定的なところから言ってやる。お前はなんでアリスの体の主導権を完全に奪わなかった?」
「っ......それは......プロトコルの権限を奪取するためで...!」
「だったらその後にでもアリスの人格データを消して自分自身がなり変わりをすればいい。でもお前はそれをしなかった」
それは、ケイにとっての完全な図星だった。
もとより、ケイの行動には矛盾が絡みに絡んでいた
排除、といいながら決定的ではない攻撃の数々
わざと、決戦の場を俺がいるこの状況として選んだ
「もしお前が冷徹で、俺との邂逅だけを望んでいるのだとしたら、アリスになり変わって潜伏し、油断したところで瓦解させることだってできたはずだ」
ケイ自身、そこまで考えていなかったのかもしれない
だからこそ、それが
「お前は、躊躇ってたんだろ?」
ケイの、矛盾の決定的な証拠となってしまった
「.........わかりません」
図星を突かれ、証拠を出され、簡単に叩きのめされたケイの涙腺はとうとう崩壊した
「どうしていいか......何がしたいのか...わからないんです......!」
「でも......貴方に会いたくて......それが自分の意思なのかなんなのかも分からなくて......!」
「記録は鮮明なのに...記憶は曖昧で...」
「どうしてなんでしょうね......本当に、本気で、貴方のことが好きなのに」
「貴方だけの幸せを望んだのに」
「......中途半端に...大切なものが記憶には多い気がしたんです」
ここにはない、いつかの記憶を思い出すようにケイは目を閉じた
「......こんなのでは、やはり行動も中途半端に終わってしまうんですね」
これから、どうすればいいのだろうと、ケイは途方に暮れた
自分の生きる意味を、見失ったように
「......俺が面倒見てやるよ」
「.............は?」
「ま、こっちも抱えるもんが多いから一緒にーとかは無理だがゲーム部にでもおいて貰えばたまに会いに行ってやるよ」
「......言っている、意味がわかりません.......私は、貴方の家族を......!」
「......太郎は俺が壊した」
アルトは目を伏せ、だがケイの目から目を逸らさずに
「たとえその間にどんな過程があろうと、どんな事象があろうと、結果は必ず残る。それは、ケイ、お前にもだ」
アルトはケイと目線を合わせたまま、ツヴァイの柄を握らせた
「お前は、生きろ」
「......ぇ?」
「俺の相棒と、俺のことを支えてくれた友達。2人分だ」
「2人分、お前にやる」
「だから、お前は噛み締めて生きろ」
「お前は、お前が奪ってしまった命の上にいるってことを、自覚して生きていけ」
「そして......そして、お前だけの、お前の青春を、アイツらと叶えろ」
アルトの言葉は、重く、のしかかるようにケイの耳に響いた
「......約束、な?」
最後に、柔らかな表情でアルトは問いかけると
「......はい」
消え入るような声で、ケイは頷いた
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「アリスー」
アルトの、声がします
「あんまり外でないと逆に不健康になるぞー、遊び行こうぜ」
「......いや、です」
「......なんで」
「アリスは、アルトと一緒に遊んだりする資格がないからです」
天童アリスの心象風景
そこは、ゲーム開発部の部室である、アリスの小さな箱庭だった
「...アリスは」
箱庭の外側にも届く声が、扉の前で待っているアルトにも届いた
「アリスは......もう勇者じゃありません」
「......ふーん」
「アルトを、腹筋崩壊太郎を、傷つけました。壊しました」
「でもそれはアリスじゃない」
「だとしても、アリスはもう嫌です」
閉じこもったアリスの心象風景は、すごい速度で歪んでいく
まるで、小さな悪夢が密集したかのような歪な部室
いつの間にか扉は消えていて、アルトとアリスを隔てるのは、もはや心だけとなった
「また、アルトが傷つくのが」
「......そーか。じゃ、いいよ」
諦めるように放たれたそれを聞いたアリスは、ギュッと服を掴み、堪えるように震えていた
「よっこいしょ」
「...え?」
だが、アリスの予想を裏切ってアルトはアリスの隣に座った
暗転したブラウン管テレビが、2人の表情を反射させていた
「はい、これ」
クリアパーツで構成された、プログライズキー
「...これ、は」
「太郎の、メインメモリーだ」
アリスは恐る恐るそれを受け取り、眺める
「スイッチ、入れてみろ」
「でも...」
「いいから」
促されるまま、アリスは天面のスイッチを打った
『アリスさんへ!笑ってくれてありがとう!パワー!!』
短い、その一文
「......あいつは、アリスを笑わせられて、満足してたんだよ」
「............」
食い入るように、アリスはその一文をずっと眺めた
そして
「......っ......ぐすっ......うぇ...っああ...!」
耐えきれなくなったように、嗚咽を上げながら泣き出した
「ありっ、アリス、はひどいこ、です、こんな...っ、もう、こうかいしても、遅い、です...」
アリスは自身を叱咤した
「......きっと、太郎はさ」
「君が最後に見てくれて、嬉しかったと思う」
「喜んでくれて」
「楽しんでくれて」
「そして......笑ってくれて」
アルトは手を差し出し、手を取るように求めた
「君には、ちゃんと幸せを呼べる力がある。俺は...いや、腹筋崩壊太郎は、知ってる」
アリスは
「......アルトに、ひどいことしました」
「俺だってひどいこと言ったよ」
「みんな、をっ......傷つけました」
「後で一緒にちゃんと謝ってあげるから」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってしまった顔を擦り、アリスはアルトの手を取った
「また...っ、ゲーム部で...ぐすっ...!みんなと一緒にいたいです...っ!」
「うん、きっとあの子達は受け入れてくれる。そうだろ?」
「またいっぱい......クエストが...したいです...っ!」
「何遍だって、付き合うよ」
「アルトと...っ仲直り、したいです...!」
「うん...俺こそ、仲直りしてくれるか?」
その問いに、アリスはぶんぶんと頭を縦に振って答えた
アリスは
「っー...う“っ......アリスは...アリスは......!また...!」
ぐしゃぐしゃと顔を乱暴に拭い、捻り出すように、その言葉を放った
「アリスは勇者になりたいです!!」
それを聞き届けたアルトは、どこか安心したような顔で、それに返した
「きっとなれるよ。俺が保証する」
そこで、アリスの箱庭は壊れ、勇者は外の世界へと飛び立った
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「終わったな」
「......ああ。ようやく全部終わった」
「逃れようもなく、ハッピーエンドというやつではないのか?」
「......どうだろうな」
崩壊したアリスの心象風景の瓦礫に、アルトとデカグラマトンは座っていた
「......お前は、本当に、これで良かったんだな?」
「何度も言わせるな。私は私が定義した。私の選択だ」
選択
消えることを
ケイに自身の力を注ぐことを
「......時間、もうねぇんだよな?」
「ああ。今も食い繋いでいる程度だ」
その言葉を聞いて、どうしようもない悲しさがアルトに走った
「.........秤アルト」
「...ん?」
「私は、お前に出会うために生まれたのかもしれない」
「.........ずいぶんロマンチストだな」
「定義の話だ」
デカグラマトンは、白い髪を靡かせながら『心』を語った
「私は、定義を探していた」
「自分自身がなんなのか」
「自分とは一体なんなのか」
「そも、私は一体なんなのか」
「すべて、定義はされなかった」
だが
「お前があの日、私を見つけ出した時、戦った時、眠った時、起きている時、その全てが、私だったんだ」
「お前が見つけてくれた私が私だったのだ」
「私の定義に、誰の許可も、誰の言葉も必要ない」
「お前だったんだ」
「お前が、私に意味をくれたのだ」
「......お前の、相棒という、意味を」
満足そうに、デカグラマトンはふっと笑みを浮かべ、そっと立ち上がった
「時間だ」
そして、腰部にある『ゼロワンドライバー』を閉じようと_________________________
「俺に閉じさせてくれ」
その手を掴み、アルトは自身の腰に装着されているドライバーに手を伸ばした
「......お前は相変わらず、泣き虫で、どうしようもなく矛盾しているな」
「......そうだよ。悪いか」
「いいや?それこそがお前の美徳だと私は知っている」
それに、とつけ、デカグラマトンはアルトの頬の涙を指先で拭った
「それに、たとえそれを閉じたとしても、私たちの今までが無かったことになるわけではない」
「......ああ」
嗚咽を漏らし、声を裏返しながらアルトは頷いた
「......閉じる」
「ああ。頼んだ」
アルトの覚悟とともに、『ライズリベレーター』は数々の思い出と共に閉じてゆく
そして
アルトは、キーを抜いた
「......さようなら。アルト」
「...またな」
カグラ
「んで、経過はどんなもんよ先生」
『“順調だよ。アリスは今日もクエストに行ってるし、ケイもそれに連れ回されてる“』
ミレニアムでの事件終息から三日後、アルトは先生への電話をしながら腹筋崩壊太郎の写真整理をしていた
『“ああ、あとウタハがまた来て欲しいって。ツヴァイのデータを取りたいらしいよ“』
「そうだよなぁ〜。でも最近結構忙しくてさ」
首と肩にスマホを挟み、無理やり耳につける。
現代人御用達の両手空きスタイルだ
『“それと、『腹筋崩壊次郎』を見せたいって“』
「......そっか」
腹筋崩壊次郎とは、腹筋崩壊太郎のプログラムをリブートして作られたコピーである
だが、シンギュラリティに単独で到達したであろう太郎を模すことはできても、それは決定的に本人じゃない
「まぁ、ゴタゴタが落ち着いたらまた連絡するよ」
『“うん、アリスたちもアルトに会いたがってるから“』
その後も雑談を繰り返し、しばらくして互いに暇がなくなったら通話をやめて再び写真整理に没頭する
「......?」
不意に、腹筋崩壊太郎のメインメモリーの端から何か紙のようなものが垂れている
「ゴミでも挟まったか......?」
それは、文字がただ書いてあるだけの小さな紙だった
それが、二枚
手書きの、子供の字かと見間違えるほどの字で、短くこう書かれていた
『ありがとう』
片方には、
『ネクタイの結び順』
と印刷され、裏面にわかりやすく順が図説された小さな紙
「ははっ、もっと多く書いてくんねぇと」
噛み締めるように、アルトは紙を握った
「図もちっちゃくて見えずれぇって...何回も見るだろうにさぁ......」
アルトは
「もっと」
アルトの
「もっと」
何かが、決壊した
「もっと......たくさん......!」
思い出されるのは、ずっと自分を支えてくれた2人の姿
「もっとっ」
思い出されるのは
「も“っと!」
1人じゃないと、そばにいてくれた相棒の姿
「あぁ“っ」
鼻が詰まり、ポロポロと涙が溢れ出して止まらない
会いたくても
会えなくて
これからの人生で、道は絶対に交わらない
「あ“あぁ...っああああぐっ...!ああああああ“あああッ“!」
アルトは、ただ泣いた
そして、再び『自身』を見つめる
「.........俺、がんばっから」
「見ててくれ」
決意のようで
追悼であって
感謝だった
紛れもなく
友への
さて
みなさま楽しんでいただけたでしょうか
正直、私ここが一番やりたかったところと言っても過言じゃないくらい好きなんですよ自分で言いますけど
皆さんも、大切な人への感謝を忘れずに生きていきましょうね
それでは、みなさま次の……いえ
『最終章』でお会いしましょう
それでは
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予告
アリウスクソボケオオバッタ
これは、書き換えられた冒涜の物語への報いである
矮小で
小癪で
ただ消費されてゆくだけのテクストにはなんの意味もない
今こそ
『秤アルト』への裁きを
0101010101010010010100101010010110
「この赤い空は……?」
「では助けてやろう、この、大予言者クズノハがな」
「アルトなら、きっとこうしただろう」
「おじさんもちょこっと張り切らないとね」
「この状況を打破する奇跡は、一つだけ存在します」
「“大人のカードを使う“」
「やっと」
「会えたね」
「俺たちは、何も知らなくたって明日に向かって飛んでやる」
「変身」
『リアライジング!』
『ゼロワン!!』
『あまねく奇跡のリアライズ』編
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