公爵令嬢アリアドネの(世界が)破滅(するかもしれないSCP)配信 作:[Brrd_Kakeruは存在しません]
御機嫌よう、わたくしの大切な友人の皆様。公爵令嬢アリアドネでございます。今宵は、SCP-318-JPという、恐るべき力を持つ存在について、お聞かせいたしましょう。
とある収容サイトの地下深く、そこには傍目にはごく普通のものにしかみえないレコードプレイヤーと、レコード盤が厳重に保管されています。ただし、見かけに騙されてはいけませんわ。実験以外でこれらに触れることは固く禁じられており、もしもその封印が解かれてしまえば、恐るべき現象がわたくしたちを襲うでしょう。
SCP-318-JPのうえでひとたびレコードが回り出せば、その曲に関する記憶が音とともに溶けていくのです。あの日の夕暮れ、家族と過ごした時間、或いは生涯の愛を誓った瞬間でさえも、出来事にその楽曲が絡んでいれば、再生された音に触れると、消えてしまいます。この忘却は、本人からは異常なものであると感じることができませんの。ただ、その現実を受け入れるしか無いのですわ。
わたくし、ある日このSCP-318-JPの実験を見学させていただく機会がありましたの。防音室の外から、被験者がレコードを再生し、かつて愛した曲を聴く様子を見ておりました。被験者の記憶が消える瞬間は、見ている側からすると、まるで魂の一部が抜け落ちるかのような、それは、それは、恐ろしい光景でした。
実験の記録では、楽曲が思い出せなくなった被験者も、再びその曲を知り、記憶することが出来ました。しかし、この記憶は長くは続かず、時がたつと再び忘却の闇に飲み込まれてしまうのです。更に驚くべきこととして、影響を受けた人物は、齢を重ねるごとに、音そのものに対する認識能力を徐々に喪失してゆく現象が確認されています。
とある日、収容サイト内で小規模な収容違反が発生しました。避難指示のサイレンが響く中、一人の管理者はその意味を理解できず、ただ混乱し、狼狽える姿が発見されたのです。彼もまた、以前SCP-318-JPの影響を受けたことがありました。人々を守るために全力で働いていた男は、ついには音に対する認識を失い、世界と対話する力を奪われてしまう結末となりました。
SCP-318-JPの存在は、我々が何を覚え、何を忘れていくべきなのか。そして記憶と認識が我々の存在にどれほど重要なものであるか問いかけています。わたくしは、このアノマリーを通じて、知識と経験がいかに脆弱なものであるか、深く意識させられました。記憶は我々の存在を確立するものであり、これを失うことは、自己の存在そのものの喪失に等しいものでしょう。
しかし、すべて悲観するばかりではいけません。SCP-318-JPの研究は今後も継続され、影響を受けた者の記憶をどうやって守るか、あるいはこのアノマリーをどうコントロールしていくか、模索が続いています。わたくしはこの物語を通じて、人間の記憶と知覚の尊さ、そしてそれを奪う存在と日々戦う職員の責務とを、理解していただければと願っております。
さて、皆様。この恐るべき音楽と記憶の物語は、どのように感じられましたでしょう? SCP-318-JPが我々に何を伝え、どのような警告を発しているのか、深く考えていただければ幸いです。
以上、SCP-318-JPについて、公爵令嬢アリアドネがお送りいたしました。ご清聴、ありがとうございました。