魔法使いたちの骨肉相食む血筋争いが見たい   作:reverofllaF / 永遠下降

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Stop1-1.「始祖たちの茶会」

 こと、とティーカップが置かれる。

 何も無い空間──ではない。少しずつ、少しずつ。

 カタチが作り上げられていく。ティーテーブルに始まり、クロスやカトラリーまでもが形成されて……。

 

「毎回思うんだけど、食事もしないのになんで食器まで?」

「趣き、というものです。必要であれば食事も用意しますよ、ディアナが」

「幻覚でいいなら~」

「本当に必要であれば持ち込むことも可能と言えば可能ですが……」

「あはは……イーリシャちゃん、本気にしなくていいよ。アンジェリカちゃんはお腹空いてるわけじゃないだろうし……」

 

 現るるは五人の少女。

 年頃はまちまちだけれど、皆少女の域を出ない──そして同時に、見るものが見ればそれだけで卒倒しかねない魔力を保有する五人。

 はじまりの五家。はじまりの始祖。

 

 ここは次元空間(デルメルサリス)の魔法によって創り上げられた異相空間。各々遠い場所にいる始祖らが集合できる理由はここにあり、一般に言われている「数十年に一度集まって会合を開いている」なんて頻度ではない回数の茶会が開催されている。

 とはいえ此度は緊急の集まりだ。議題は勿論。

 

「『愚者』さんが、出現しました」

「白スーツさん……真っ先に会いにいったんだけど、使い魔を殺されちゃった上に、あんな優しい笑顔で手を引いてくれるかい、なんて言われたら……断れないよぉ~」

「イーリシャ、あんたの未来視には映ってたんじゃないの?」

「前にもお話ししましたが、『愚者』さんに関する情報を未来視することには強い制限がかけられています。ですので、広域を未来視し、ノイズの走る箇所を断片的に蒐集、そこから動向を割り出す、ということしかできません」

 

 彼女らの起源。少女らの根源にいる青年、『愚者』。

 白スーツにモノクル、わざとらしいハットと白手袋。そしてキャリーバッグにステッキという……()()()のファッションセンスとしては些かどころではなく古めかしい姿をしていた青年だ。幼かった彼女たちが彼を警戒したのは、そういうコスプレ感が強かった、というのも二厘くらい含まれている。

 

「あたしに会ってこなかったのは、あたしがまだお化けとか怖がると思ってるからなのかなぁ」

「……まぁ『愚者』さんの考えを予測する、などというのは無駄な行為に数えられるでしょう」

「『戒律機関』にいた時は頻繁に会いにきてくれたのに、なんでやめちゃったんだろう……白スーツさん、あの時は黒スーツさんだったけど……」

「アイツ、あんまり人界に関わりたがらないからでしょ。それにしては今回かなり出張ったみたいだけど」

「え、アンジェリカちゃんも『愚者』さんに会ったの?」

「私自身は会ってないけど、家の子達がね」

 

 彼の行動を予測することはできない。

 できないけれど、対策を取ることはできる。

 

「樹殻へのアプローチ……行っている研究者、及び機関は把握していますか?」

死霊病毒(ネクロクラウン)の端っこがなんかやってるみたいだけど、わたしはしーらない」

次元空間(デルメルサリス)に関しては全てを把握しています。そういった研究は見受けられませんでしたが、その"死霊病毒(ネクロクラウン)の端っこ"と共謀、あるいは協力関係を結んでいる分家がいることは確認済みです」

「あたしたちは大丈夫、って言いたかったんだけど、今回の事件の首謀者が首謀者なだけに……ちょっと詳しく調べてみるね」

「私も、分家を広げ過ぎたのは悪いって思ってる。この事件で相当数が減ったとはいえ、私の把握しきれていない部分はまだ残っているから……調べ尽くさないと」

 

 あの青年はこの世界を覆う樹殻への研究、及びそれに干渉し得る者に大きな興味を示す。

 次元空間(デルメルサリス)が始祖、シエル・クローヴィーだけの知る情報……血筋争いが見たい、という幼稚な願いは勿論本音なのだろうけど、大枠で見たのなら樹殻への興味も十二分に含まれているのだと予測できる。

 同時。

 

「『愚者』は、本当に樹殻を抜けられないわけ? 私ずっと気になってるんだけど」

「それに関しては……結論は出ない、でしょうね。私達の魔法ではあれの破壊はおろか、近づいただけで魔力が消失する、というところまではわかっています。もし『愚者』さんもこの法則に縛られるのなら、出られない。ただし、彼が魔力を使わない超常現象を起こし得ることもまた観測済みですから、そうであるなら……出ない理由がある、とか」

「白スーツさんは出られるけど、わたしたちを連れていけないとか? あ、だから研究に研究を重ねてくれてるんだ! わたしと一緒に世界の外へ行きたいから……!」

 

 彼が現れるのは決まってその周辺だ。シエルでさえも「血筋争いが見たい」というのは方便で、本来の目的はそちらだと思っている。

 つまり。

 

「聖護魔導学園の内外周辺に樹殻へアプローチできる魔法使いがいる可能性がある、と。……そうなりますね。死霊病毒(ネクロクラウン)の研究者たちをどうでもいいと思う程度の逸材が」

「どうでしょうか。今回の事件を鑑みるに、聖護魔導学園周辺にいれば全ての可能性が寄ってくると判断した、ということもあるのでは? 実際、これからも沢山の事件が起こるのでしょう、イーリシャ」

「……ええ、残念ながら。『愚者』さんのせいで細部はわかりませんが、数多くの災難が聖護魔導学園に降り注ぐことでしょう。そしてあの学園で熾った火は次々と外側へ引火し、やがては魔法世界全体を混乱に陥れる混沌を呼び寄せる、と……そう出ています」

「それは『愚者』さんが下手人なの?」

「わかりません。他の誰かが発端となる可能性は十二分にあるでしょう」

 

 ふと。

 会話の流れで流されていたけれど、彼女は──少女ビアンカは、あることに気付く。

 

「え!? 待って、『愚者』さん聖護魔導学園にいたの!?」

「……」

「……」

「……素晴らしいですね、本当に」

「ビアンカちゃんは可愛いよね~」

「あたし今回の件で子孫に呼び出されてたから、聖護魔導学園にいたんだよ! そこであたしより強い平民の子に出会って……」

次元空間(デルメルサリス)の本家まで来た平民ですね。確かに彼は凄まじい強さでした」

「そう、その子。……今後の脅威になりそうだから勝負を挑んだんだけど、返り討ちにされちゃって……」

 

 意図的であるシエルを除いて、少女三人がビアンカを見る目は生暖かい。

 彼女は昔からそうだ。鈍感で天然で、まっすぐで、けれどどこか冷酷で。

 

 腹黒いシエルと何をどこまで知っているかわからないイーリシャがいるからだろう、お茶会はどことなくピリピリとした雰囲気になりがち……なのだけど、その空気を緩和するのがビアンカ。基本的に一人の世界へトリップしているディアナは除外して、「割合普通の人」であるアンジェリカは彼女の存在に助けられていた。

 

「あ……それで思い出したけど、彼、魔力に頼らない次元歪曲現象を引き起こす術を持ってたよ。シエルちゃん、あれの解析ってできた?」

「お恥ずかしながら。映像証拠を解析している最中ですが、魔力を計測できなかった上、光自体も歪曲していたために正確な情報が得られず……」

 

 次元や空間といったものへの専門家がシエル・クローヴィーだ。

 彼女にわからないとなれば、他の四人が手出しできる領域ではない。ただ同時に。

 

「あの子はあれを大勢が見ている場で使ってた。隠す気は無い、ってことだよね」

「……直接聞いてみますか? 聖護星見(クライムドール)の現当主が学園長をしておりますので、彼女経由で詳細を聞く、というのは択としてありかもしれません」

「あぁ、あの吸血鬼の子? まだ生きてたんだ~」

「ええ、あなたが放った見境のない吸血鬼のせいで吸血鬼となってしまった子です」

「それは責任のなすりつけが過ぎるかなー。わたし、分家とか興味無いしぃ。そもそもわたしが釣り上げたかったのは白スーツさんだし! ……まんまと引っかかってくれたけど、よくわからない手段で消滅させられちゃったんだよねぇ。あの時最高素材の使い魔も消されちゃったしぃー。あぁ、わたしってなんて健気……貢ぎ癖は悪い事だってわかってるけど、それで白スーツさんが振り向いてくれるなら……」

 

 始祖はオーバーパワーだ。何をするにしても、どこに現れるにしても。

 だから基本呼ばれない限りは、正当な報酬を払われない限りは動かない。ビアンカが出向いたのも正当な手続きがあってのこと。

 

 故に始祖たちは駒を打つ。別にボードゲームをしているつもりはないけれど、今を生きる者達を盤上に置く感覚は抜けきれない。

 

 此度置かれる駒は、聖護魔導学園学園長イレイア・クライムドール。少なくとも三人の始祖から期待を寄せられた──憐れなりし三百歳の少女である。

 

 

 

 

 その当事者は、『通達のスクロール』と呼ばれる文を開いて、それを放り投げていた。

 

「お嬢様?」

「えーんえーんフィニアン、始祖たちが私をいじめるよぉ~」

「お嬢様を虐める者は始祖であっても、と言いかけましたが、始祖たち、ですか」

「……イーリシャ様に、アンジェリカ様、ビアンカ様の署名がある。文面的に多分シエル様とディアナ様も同意してる」

「それは……私に止める資格はありませんね。どういった内容かお聞きしても?」

「あの子……『平民初学生』に、あの時使った技の原理を聞いてこい、だって。教えてくれるわけないじゃん……」

 

 未だ復興作業中、というか血肉の片付け中の聖護魔導学園。

 再生する魔物であっただけに、血肉の一片、一滴でも残っていたら危険であると……綿密な清掃作業が行われているそこで、少女が嘆きを喚き散らかしていた。

 少女の名はイレイア・クライムドール。由緒正しき聖護星見(クライムドール)の現当主であると同時、三百年の時を生きる吸血令嬢(ジュノ・ヴァンピール)である。そんな彼女になんとも言えない視線を向ける男性。彼はイレイアを守るためだけに生まれ、そのためだけに生きる騎士フィニアン。

 

「あの『平民』ですか。……確かに……直接見てこそいないとはいえ、生徒たちが口々に言っていましたね。魔力を使わずにあり得ない戦果を出した、と。私の剣を涼しい顔で受け止めたこと、そして私を剣ごと投げたこと。その後に見せた各種魔法……」

「一応釘を差しておくけど、私を煩わせるから~、とか変な理由つけて突撃しないでね……?」

「その辺りはもう弁えておりますよ。彼我の力の差も思い知りましたし。何よりお嬢様と交わした契約において、彼は単なる『平民』となるのでしょう。そのような者へと斬りかかることは私の騎士道精神に反します」

「あれフィニアンって普段から奇襲とか不意討ちとかザラじゃなかったっけ」

「そういうこともあります」

 

 ほのぼのとした会話は……やはり『通達のスクロール』に目が行くことで、現実へと引き戻される。

 

 基本的に始祖からの言葉は絶対だ。始祖の意向や始祖の行動によるあれそれは割合無視されがちだけど、こういう直接的な言葉は命令に等しい。

 やらねばならない。ただやりたくない。

 

「……今年度の初学生に聖護星見(クライムドール)は何人いたっけ~」

「本家筋の男子生徒が二名いたかと。分家であれば女生徒が四名。いずれも武に長けるとは言い難い方向性ですが」

「うぅ……原理を聞くだけなら本人の武術とかは関係ない……よね?」

「失礼ながらお嬢様。私も剣を修めている身として言わせていただきますが、武の理を理解していない者には達人の技は理解できないものかと」

「つ……つまり」

「私が行くべきであるかと」

 

 だよねぇ、と溜息を吐くイレイア。

 行かせたくない。それが本音だった。無論自身の守りが手薄になるから、とかではない。……単純にフィニアンがイレイア至上主義の危険人物だからである。

 普段の彼は教頭としてよくやってくれている。仕事の出来も良ければ他者からの評価も高い。ただイレイアのこととなると……暴走する。

 

 それを、あの殊更危険人物な『平民初学生』の元へ赴かせ、技の原理を聞き出す、なんてお使いが務まるのか。

 

「……とりあえず一回、派遣する。けど問題を起こしたら私が行くから。一人で!」

「成程、私の一挙手一投足がお嬢様を危険に晒す可能性と連動している、と。承知いたしました。──では」

 

 そんな風に言って学園長室を出ていくフィニアン。

 心配でいっぱいだった。それはもう。なんなら『通達のスクロール』が来た時以上の緊張感があった。

 

「だ……大丈夫かなぁ。流血沙汰とか、それで教頭やめさせられるとか……大丈夫かなぁ!」

 

 仮にその任命権があるとしたら彼女なのだけど、イレイアの中には心配の文字しかないのであった、とか。

 

 

 さて、そんな心配をされているとは露知らず、フィニアンは──まず教職棟へと向かう。

 あの少年がどのクラスにいるかを知らない、とかではない。

 

「ドクラバ先生はいますか」

「んん? やぁ……フィニアン教頭先生。珍しいな、イレイア学園長のそばを離れてるなんてぇ」

「私はそれなりに単独行動をしていますよ。それより少し作ってほしい薬品があるのですが」

「……ははぁ、わかったぞぉ? 惚れ薬だねぇ、とうとうイレイア学園長に──」

「ドクラバ先生?」

「ひゃあ、怖い怖い。それじゃ人目につかないところへ行きましょうかぁ。薬の製作依頼なんて、大抵は──」

 

 

 望んだ薬を手に入れたフィニアンは今度こそ生徒たちのいる棟へと向かう。

 教師ドクラバ曰く、「コーヒーなんかの味の強い飲み物に混ぜるといいよぉ~。ああでも分量を間違えると言語能力が無くなるから気を付けてくださいねぇ~」らしい薬を手に、彼はその教室へと手をかけ──。

 

「『催眠香』に『自白剤』、加えてテミスキュラ原産の薬膳茶か。素晴らしいまでの尋問セットだね」

 

 背後を、取られた。

 咄嗟に伸びかけた手。しかしフィニアンは思い直す。彼がするべきはそれではない、と。

 

「丁度良かった、『平民初学生』。お前に用があったのだ」

「その三点セットを持っての"用"。良い予感が全くしないねェ。まぁ教頭フィニアンに話しかけられた時点で大抵の生徒は良い予感などしないのだろうけれど」

 

 彼が振り返れば、そこにいたのは……当然、少年だ。

 初学生の少年。最下級のクラスで授業を受けている──つまり教室内にいるはずの少年。さらにいえばその授業内容は教師ドリューズによる夢幻空間での実践演習のはずなので、全てが簡単に進むはずだった。

 まず一手目をくじかれて、けれどフィニアンは諦めない。

 

「『平民初学生』。お前は次元空間(デルメルサリス)によって平民であると認定されている。だが、あの魔物を倒した時に見せた技は……魔力こそ感知できなかったとはいえ、些か魔法的過ぎる現象だった。よってそれが魔法ではなかったことを証明してほしい。原理の説明をするでも、実際にやってみせるでも構わない」

「ふむ? ……君や学園長イレイア・クライムドールがそのようなことを気にするとは思えない。既に約定は結ばれたのだしね。であれば彼女の上にいる者達。学園長イレイア・クライムドールはクライムドールの現当主だから、彼女に命令できる者は限られてくる。……ふむ。始祖ビアンカ・フィジクマギア、そして始祖シエル・デルメルサリス。加えて始祖イーリシャ・クライムドール……この三名による己の調査命令と見た。どうかな」

「正直に答えてやる必要はないが、こちらが頭を下げている身だ。開示しよう。始祖シエル様は関わっていない。イレイア様に命令を下したのはアンジェリカ様だ」

 

 ほう、なんて余裕ぶった息。

 そして……『平民初学生』はクツクツと笑う。

 

「調べてもわからないから、直接聞きにきた、か。効率重視の遠回りというやつかな、これは」

「回答は?」

「NOだ。己は平民。魔法が使えない以上、魔法ではないことの証明は難しい。観測者が必要になるからね。そして君では己の使う技が魔法であるか否かを判別できない」

「そうか」

「こういうことを聞くのなら、"魔法使い"を呼んできたまえよ、騎士クン」

「含みがあるように聞こえるな」

「無論だとも。己は君達騎士には興味が無いんだよ」

 

 瞬きよりも速く抜かれた剣は、ステッキの先端によって阻まれていた。

 それは()()()魔力を使っていない衝突。弾ける衝撃波がそのあり得なさを物語っているけれど、今廊下にいるのはこの二人だけだ。

 

「彼我の力の差が理解できなかったのかな、騎士フィニアン」

「教頭先生と呼べ、『平民初学生』」

「おっと、そうだったね。──して、剣から力を抜く気はないのかな、()()フィニアン」

 

 騎士。騎士。

 そうだ。最初の騎士フェルナンに始まった彼の家系は貴族の一部とされているけれど、魔法を有していない。

 魔力は持っている。ただ魔法を発露することができない。だからはじまりの五家にも入っていないし──『騎士』という称号は蔑称に使われがちだ。

 貴族モドキ。平民紛い。

 

「良いだろう、『平民初学生』。原理を聞くことはしない。だが、見せてはくれるのだろう?」

「無論だよ。技術とは遍く広がっていくべきものだからね」

「であれば」

 

 大きく距離を取るフィニアン。

 静かに呼吸を広げ、己の中の魔力を練り上げる。

 

 魔法として発露しない。発現しない。

 しかしそれは、使えない、ということではない。しっかり貴族モドキである理由がある。

 

「『この身は聖護の礎たらん』」

 

 言葉と共に、白い魔力が揺らめきを……まるで炎のような揺らぎを以て彼の身に巻き付いていく。

 対する『平民』は、優雅な礼を一つ挟んで、フィニアンへと杖を向けた。

 

歪曲収斂(コントル)

 

 合図などあるはずもなし。

 自身の持てる最高速度で()を切り伏せに行った彼は──。

 

 

 学園長室で、目を覚ます。

 

「もう! 問題を起こしたら私が行くっていったでしょ! 生徒への違法薬物所持未遂、及び私闘行為の露見! あの子が許してくれたからいいけど、懲戒モノだから!」

「……感覚としては、次元空間(デルメルサリス)聖護星見(クライムドール)の魔法に似ていた、かと。どちらも食らったことがあるが故の結論で──」

「聞いてない! ……私が行くから、ついてこないように! 教頭としての事務を全て終わらせて、ついでに私の雑務もちょっと手伝っておくこと!」

 

 怒り心頭と言った様子で学園長室を出ていくイレイア。

 

 彼は……フィニアンはその後ろ姿を眺めて、思う。

 

 多分あなたの交渉技術も私とそう変わりませんよ、と。

 

「……雑務を手伝えと言いましたが、お嬢様。……今日の分、何も手を付けていないように見えるのですが? もしやそのために……私が失敗すると未来視で視えていての誘導? だとしたらクソガキロリババ……まぁいいでしょう」

 

 騎士フィニアン。イレイア至上主義ではあるものの、彼女がいない場では結構辛辣だったり毒舌だったりしたりしなかったり。

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