魔法使いたちの骨肉相食む血筋争いが見たい   作:reverofllaF / 永遠下降

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Stop1-2.「存在抹消の村落」 

 聖護魔導学園が「あんなこと」になった以上、その守りに疑問を抱く貴族が現れるのは致し方のないことであると言えた。

 聖護星見(クライムドール)の先読みがあるからこそ大切な子供達を通わせることができていたのに、なぜそれを怠ったのか、という糾弾も数多くあった。

 これを受けて学園は「自主退学」及び「入学費の全額返金」が可能であることを発表。

 その話をするためだろう、多くの貴族が自らの子供に呼び出しを行い、生徒たちは休暇申請を行う次第となった。

 

「解せない……という顔をしているね、スヴェナ」

「……当然でしょう、一応」

 

 スヴェナ・デルメルグロウもその内の一人だ。

 彼女からしてみれば会ったこともない、見たことすらない次元空間(デルメルサリス)の分家、それも「スヴェナ」を生み出すためだけに作り出されたという「実家」からの呼び出し。

 怪しむなという方が無理である。

 ただ貴族である以上自身の家からの呼び出しを無視するわけにもいかないから、こうして休暇申請を出し終わった……そんな折に『彼』が話しかけてきたのだから、それはもう警戒心MAX。

 

 そんなスヴェナの様子など一切気にしない素振りで、『彼』はステッキをコツ、と地面へ突く。

 

「安心するといい。始祖シエル・デルメルサリスと約定を交わしていてね。彼女の"家族計画"に己は手を出さない。それはつまり、デルメルグロウという家が他へと何の影響も及ぼさないことを示している」

「一応、実際に今、()への影響が出ていますが」

「君は他扱いじゃないだけだよ。ま、エレメントリーの方はエンジェに任せて、少しばかり羽根を伸ばしてくるといい。君はずっと気を張り詰めているからね、疲労も溜まっていることだろう」

 

 誰のせいだ誰の、と口に出しかけたスヴェナ。出さなかったのは、まぁ、存命を願ったのが自身であるという自覚を持っているからだろう。

 全ての出来事の悪を『彼』に押し付ける気など毛頭ないのだ。その辺りに関して、彼女は冷静だった。

 

「まず……どこにあるかも知らない、ということは、言っておきます。一応」

「認識錯誤の魔法のかかった山中の村。どの家も意識のできない場所に設置させてもらった。正確にいうと、己が元々持っていた土地を"そうであることにした"という方が正しいか」

「……あなたが元々持っていた土地、ですか?」

「ほら、地図をあげよう。ああ、そのルートの通りに行くんだよ。そうでないと必ず迷う仕組みになっているからね。非効率に見えて、それが最大効率なんだ」

 

 渡された地図は嫌に古めかしいもの。そして示されたルートは……行ったり来たりを繰り返す、効率という言葉から最もかけ離れたもの。

 ただまぁ、貴族の家へとそうそう簡単に辿り着けてしまっては意味がない、というのも理解できる話だった。特に認識を操る家であるのならば、且つ『一応平民の人』である『彼』の持つ土地であるのなら、厳重な秘匿が為されていてもおかしくはない。

 

「一応、お礼を言っておきます」

「素直だね。素晴らしいことだ」

 

 こうして、スヴェナ・デルメルグロウの生まれて初めての里帰りが始まった。

 

 

 ()()森に辿り着いて、彼女は『一応平民の人』に恨み言を吐きたくなった。

 地図における既視感から薄々勘付いてはいたけれど──ここは『瘴気の森』と呼ばれる場所だ。

 何百年、下手すれば何千年もの間未踏の地とされている森。徘徊する魔物は外では考えられない程に強く凶暴で、中には魔法使いを主食とする生物までいるという話。

 なぜ未踏なのかと問われたのなら、それら魔物が森を調査しにきた人間の悉くを殺してしまうから。「あの」死霊病毒(ネクロクラウン)ですら手を出そうとしないこの森は、死した魔物、死した魔法使いがそのままに放置され、大気をも汚染しているとかなんとか。

 現状の魔法理論では考えられない話だが、実際にそうなのだからどうしようもない。『瘴気』に関しては何百年と前から魔法使いたちの未解決問題の一つとなっている。人生の全てを『瘴気』の解明へ費やした死霊病毒(ネクロクラウン)の魔法使いがいるくらいで、結局その人も解明できずに他界した。

 

 そこを通れ、と。

 風の感知ではなく次元探知でわかる──今のスヴェナでは到底太刀打ちのできない魔物がゴロゴロいる。

 

 ただ。

 

「殺すために送り込んだのなら……迂遠が過ぎるでしょう、一応。私など簡単に殺し得るでしょうし……」

 

 そうだ。『一応平民の人』にはスヴェナを殺す理由がない。親切にする理由もないが、まぁ、地図をくれたということは、無策に突っ込むことを止める程度の感情はあったのだと……信じたい。

 

 踏み込む。

 その瞬間、彼女は半身を食い千切られたのだと錯覚した。

 

「っ……殺気ですか、今のは」

 

 そうだ。そんなことはされていない。

 ただ捕食者の殺気が「そうされた」と彼女に誤認を与えただけ。

 

 進む。意を決して。

 慎重に慎重に、地図のルートから決して外れることなく。一歩一歩が決死の歩み。だって地響きが聞こえるのだ。巨体の魔物がそこらじゅうを歩き回っている音が。というかシルエットが見えるのだ。足が何本もあるウルフ型の魔物や、ジェヴォーダンの巨人の四分の一ほどの大きさを持つベアー型の魔物。

 世に名の知られていないそれら魔物の脅威度がどれほどであるか、など……考えるだけで。

 

「あ、見つけた!」

「え」

 

 心臓が跳ねた。

 人の声がするとは思っていなかったから。

 それは、少女の声だった。

 

「君でしょ、領主様が迎え入れたっていう子! こっち来て、こっちの方が近いから!」

 

 声のする方を見れば……確かに少女だ。魔力を感じるから、魔法使いの少女。それも質の高い次元空間(デルメルサリス)の魔力からして相当高位の魔法使いであるといえよう。

 彼女がおいでおいでと手招きをするのは──『一応平民の人』から貰った地図から外れたルート。

 

「……一応、私はこのルートを外れて行動することは、できません」

「えー? でも遠回りだよ? それ、領主様が渡した地図でしょー? 五百年くらい前のやつだよそれー」

「……」

 

 警戒していた。一応、このルートの通りに通ってきて、スヴェナは魔物に襲われていない。

 それはルートから外れたところに立っている少女も同じだけど、それでも。

 

「お心遣いありがとうございます。ですが、お断りします。一応、私は、この地図の通りにいくので」

「ふーん。……ま、そんなに遠回りがしたいっていうんなら好きにすればいいけどさー。こっちは善意で言ってあげてるのに」

「申し訳ありません」

 

 近道などという言葉に誘惑されるほどスヴェナの心は緩くない。

 あの『一応平民の人』は決して人類の味方ではないように思うけれど、同時に無益な殺生を好むタイプでもない。否、もう少し正確に表現するのなら。

 

「『彼』は越えられる試練しか与えてこない……気がしますので、一応」

 

 つまらなそうな少女に別れを告げて、ほとんど来た道を戻るようなルートを辿る。

 教えられた朝と夜の魔法が真実なのであれば、未だ木々の間から木漏れる日など意味はないのだろうが……なんとなくの心理的に日が暮れる前に森を抜けたかった。だから気持ち足早に、けれど慎重に歩を進めていく。

 

 そして気付く。

 またも先程の場所に戻ってきたのではないかと思うようなルートは、しかし、「あの少女」を挟むような形で設定されている。

 恐る恐るスヴェナが先程とは逆の方を向けば、酷く冷たい顔をした少女が一人。

 

「意思疎通が可能な魔物……?」

 

 問いかけに……返事はない。

 ただ、先程は気付かなかったことに気付けた。

 

 服装だ。魔法使いの服装というのは世代を経るごとに少しずつ変わっていくもの。伝統を残しつつ新たな風も入れたい、という貴族の気風から来るものであり、だからたった五年程度の差であっても貴族の纏う服には違いを見ることができる。

 その中で……少女の纏う次元空間(デルメルサリス)の伝統服は、明らかに今の時代のものではなかった。

 

「──魔法使いに寄生し、自身をそうであるかのように振る舞う魔物。そういうものもいるんだよ、スヴェナ」

 

 声……は、『彼』のものではない。

 これから彼女が辿るべきルートの前方からやってきた男性のものだ。

 

「敢えて怖がらせるためにその魔物と似た言葉を使おう。やぁ、君が『詐欺師』の寄越した最新の被害者、スヴェナ・デルメルグロウだね」

「なぜ敢えて怖がらせる言葉操りをしたのかお聞かせ願えますか、一応」

「警戒心MAXで怖がっている少女を見るのが好きだから──それ以外に理由が必要かな」

 

 本能で理解する。

 この男は『彼』と同類であると。

 

「おっと、今私とあの『詐欺師』を同一視したね? いやはや酷い冗談だ。私はどちらかというとあの『詐欺師』の敵だよ。というかこの先の村にいる人間は皆そうだね」

「……『彼』の持つ領地だ、と聞いていますが、一応」

「無論だとも。『詐欺師』の持つ領地で、『詐欺師』が興した村で、『詐欺師』が保護した人間だけで構成された村。なんだっけ? デルメルグロウだっけ? いやはや勝手に次元空間(デルメルサリス)の分家扱いされたことには遺憾の意を示したいところだけど、『詐欺師』にはどこ吹く風だろうからねぇ」

 

 手をひらひらと振って……男性は、地図の示すとおりの道を歩き始める。ついてくるといい、と、無言ながらに言われている気がした。

 

「ああ、まず自己紹介をしておこう。私はアンドリュース・ウォーラークラフト。名前の通りエレメントリーの分家の一人だ」

「ウォーラークラフト……? あそこは……当主が謎の失踪を遂げたことで、事実上の没落状態にあったはずですが」

「その謎の失踪を遂げた当主が私だね」

 

 四大元素(エレメントリー)の分家は多岐に渡る。自身の魔法特性を理解し、それが実家のものと相違すると判断したのなら、自身で家を興す、なんてこともあるくらいだ。だからとんでもない数の分家が存在し──けれどスヴェナは、というかアンフィ・エレメントリーは勤勉であったがために、それら分家の不祥事やら事件やらを事細かに覚えていた。

 ウォーラークラフト。ウォーラーバーンの細分化された分家の一つで、水によって作った造形物を使役する、というなんとも限定的な魔法を使う家だったはずである。

 

「待ってください、一応。そもそもなぜエレメントリーの系譜がデルメルサリスの分家の土地に?」

「さっき言っただろう、勝手に次元空間(デルメルサリス)の分家扱いにされた、と。まぁよくある話なのだがね。割と頻繁にこの村はどこかの分家扱いになるよ。時には平民の村になったこともあったか」

 

 しっかり、地図に示された通りの道を辿るアンドリュース。

 彼もまた『一応平民の人』の行動には呆れかえっているようで、妙なシンパシーを覚えることができた。

 

「一応、聞きます。この道は、必要なルート取りなのですか?」

「勿論。強い認識錯誤の魔法がかけられているからわからないだろうけど、この道には結界が張ってあってね。魔物はこの結界を通り抜けることができない。飛び越えることはできるけど、上空からも地中からもこの道へ干渉することはできない仕組みとなっている。ただし、あくまで阻むのは魔物だけ。人はこれを素通りできるから……ほら」

 

 ほら、なんて言って結界だと思われる場所の外に手を出すアンドリュース。

 がちん、という金属同士をぶつかり合わせたような音が鳴る。

 

「このように、結界を抜けた人間、特に魔法使いに対しては腹を空かせた魔物が我先にと飛びついてくる、というわけさ」

 

 彼の腕は……その手首から先が噛み千切られていた。千切ったのは先も見た足が何本もあるウルフ型の魔物。

 

「……心配してくれないのかい?」

「パフォーマンスのためだけに手首を差し出す者はいないでしょう。ああ、そうでしたね。私を怖がらせたいのでしたか、一応」

「はぁ、最近の子は冷めているなぁ。血相を変えて"大丈夫ですか!?"とか"すぐに治療します!"とか言ってくれる子に来て欲しかった」

「そんな人、いたんですか、今まで」

「君に声をかけた少女がそうだったよ。不注意で道から逸れて、あの有様だけどね」

 

 無くなった手首。そこからぐつぐつと煮えたぎるような気泡音がしたかと思えば……手首が生えてきた。

 欠損した肉体を埋める魔法、ではない。

 

「成程、あなたはそもそも水で造形された使い魔のようなものですか、一応」

「その通り。君を迎えるためだけにこんな危ない……というかこんな面倒臭い道を通りに来るはずがないだろう? 私がそんなお人好しに見えるかい?」

「いえ、少女の泣き叫ぶ姿を見て興奮する変態にしか見えていません、一応」

「それでもあの『詐欺師』よりは幾分かはマシだよ。……さて、そろそろ出口だ。ああけれど、気は抜かないように。地図にある通り出口付近が一番複雑なんだ」

「はい」

 

 そうして。

 結局日は暮れてしまったものの……スヴェナはデルメルグロウの領地、とされている村へと辿り着くことができたのだった。

 

 

 そこは村だった。里と村の中間くらいの規模。

 魔力を持つ者達が農作業をし、魔力を持つ者達が家事を行い、魔力を持つ者達が──まるで平民のような生活を送っている村。

 ああ、ただ。

 

「『瘴気の森』の中だとは思えないほど安全な場所ですね……一応」

「そりゃね。とはいえたまに腹を空かせすぎた魔物が侵入してくることがあるから、その時は全員で全力の対処をするよ。そしてその日はご馳走が食べられる。貴族であったあの頃を思わせるような食事がね」

「つまり普段は」

「見ての通り、平民の送るような暮らしを送っている。……とはいえ、私達は皆歴史から消された人間だ。こうして平民並の生活が送れるだけでも喜ばしいことだよ」

 

 歴史から消された人間。

 それは。

 

「君が今辿り着いた通りだ。私達はあの『詐欺師』に存在を捨てさせられた魔法使いの集まり。君もスヴェナ・デルメルグロウというのは後からつけられた名前なんだろう?」

「……」

「ああ、ここではそれを明かしても問題ないよ。始祖の魔法であってもこの土地を視ることはできないからね。そこは『詐欺師』の本領発揮というか、彼は決して平民などではなく、埒外の魔法を使う最上位魔法使い……魔導士と呼ばれて然るべき存在だからね」

「魔導士……魔法使いたちを次のステージへと進ませる指導者、ですか、一応」

「彼が指導者足り得るか、と問われたら、まぁ、ノーコメントとさせていただくけれど」

 

 では、と。

 

「私は、元アンフィ・エレメントリー。四大元素(エレメントリー)本家の次期当主でした」

「……想像以上の身分持ちで驚いているよ」

「とはいえ、その女は死にました。今ここにいるのはスヴェナ・デルメルグロウ……次元空間(デルメルサリス)の分家の小娘です」

「それを言うのなら私もガエン・ネクロブレイク。死霊病毒(ネクロクラウン)の分家の……うだつの上がらない男さ」

 

 だから、此処にいる人間の全てがそうなのだろう。

 本来の存在ではなくなった、名を変えられた、存在ごと変えられた「誰か達」。

 

「……疑問は幾つかありますが、とりあえず二ついいですか、一応」

「私に答えられることなら、だ。私も全てを知っているというわけではないから」

「はい。まず、『一応平民の人』がなぜこのような村を作っているのか、について」

「それは全く分からない。私もたまに外に出てガエン・ネクロブレイクとして振る舞うことがあるけれど、そのことについて何かを言われることはないし、この村でのんびり過ごしていてもまた同じ。『詐欺師』が何をしたいか、なんて……『詐欺師』本人にしかわからないのだろうさ」

 

 想像していた通りの答えだった。

 だから続け様に問う。

 

「そんな……自身の意味もよくわかっていない存在が此度私を呼び出した理由はなんですか?」

「選択肢を増やすためだ。君を呼び出したのは私ではなくこの村の村長だけど、理由はそれさ」

「選択肢?」

「ああ。君は多分、元の自分の家族を守るか、自分に関する……自分の存在を消すきっかけとなった誰かを殺す復讐の道、そして誰でもない者として生きる道の三つしか提示されなかっただろう? あああと、『詐欺師』を殺す道か」

「はい。他にもある、と?」

「それがこの村だよ。俗世を捨てて、貴族からは考えられないほど質素な暮らしをすることにはなるけれど、血筋におけるしがらみのない余生を送ることができる。俗世に、魔法世界に嫌気が差しているのなら、この村に骨を埋める、という選択肢もある、ということさ」

 

 それは。

 

「……それは、無いですね。私にはやるべきことがありますから」

「だろうね。だけど、帰る場所がある、という安心感は人を強くする。窮地に立たされることもまた人を強くする要素の一つだけど、いつまでも気を張り詰めていては疲れてしまう。あるいは君のその"やるべきこと"が終わったのなら、この村に、というのもアリだ」

「……本当にあなたは『一応平民の人』ではないんですよね?」

「たとえ本家の人間でもそろそろ怒るぞ?」

「いえ……『彼』が私に告げた言葉と、あまりに似通っていまして」

「それは……嫌だな……。……少し話し方と言葉操りを考えるか……」

 

 とにかく、と。アンドリュースは、「そろそろ気付かないかな?」と言葉を発した。

 

「気付く?」

「先程私は言ったよ。私という存在は死霊病毒(ネクロクラウン)の分家、ネクロブレイクの一員となっているし、外でそう振る舞うこともある、と」

「はあ」

「おや、案外察しが悪いな。──つまり」

 

 びしゃ、と。

 その肉体の全てを水に戻すアンドリュース。その水が、今度はパピー型の魔物のような姿となって、彼の着ていたローブを運んでいく。

 運んでいった先にいたのは、アンドリュース。

 

「本物のアンドリュースさん、ですか、一応」

「そうだとも、本家のご令嬢。……まだ気付かないのかい?」

 

 水で作ったボールをジャグリングし始めたアンドリュースを見て……「おや?」となるスヴェナ。

 おかしい。それはおかしいのだ。

 

「なぜ、ウォーラークラフトの魔法を使うことができているのですか?」

「うん、かなり遅かったけれど、そういうことだ。──ここにいる人間は、かつての自分と今の自分。その双方の魔法を使うことができる。この秘術について、知りたくはないかい?」

 

 夢想だ。

 現時点でスヴェナは次元空間(デルメルサリス)の魔法を高度に扱えている。もしそこに、かつての自身……四大元素(エレメントリー)の魔法が加わったのなら。

 

 ……そう考えて、彼女は(かぶり)を振った。

 

「知らば覚えないといけないものですか」

「そんな……それこそ『詐欺師』のようなことはしないよ。言っただろう、選択肢を与えるために呼び出した、と。──さぁ、スヴェナ・デルメルグロウ。あるいはアンフィ・エレメントリー。ここから先は未知の領域だ。君の知らないことをこれでもかと教えてあげよう」

 

 男はニヤリと笑って、言う。

 

「その上で、君自身が選択するんだよ」

 

 と。

 

 

「……一応、その仕草も『一応平民の人』っぽいです」

「うん、君が次に里帰りする時には別人と見紛う性格になっていよう。……もしかして他の村民にもそう思われていたのだろうか。だとしたら嫌すぎる……!」

 

 なんて一幕もあったとか。

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