魔法使いたちの骨肉相食む血筋争いが見たい   作:reverofllaF / 永遠下降

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Step7-4.「残照回廊の狼煙」

 そこにはある種の感動と納得があった。

 無論、円輪の年代記(CHRONICLE)に接続したのならその識別番号までわかる話だけど、それはそれとして目の前の光景が面白い。

 

「よく来てくださいましたね、『エンジェの恋人』さん」

「よく来たな、『エンジェの恋人』」

 

 少女Aをそのまま老齢にしたかのようは母親Aと、その母親を性転換させたかのような父親A。

 ここまで似ているのは当然兄妹だからであり、その前の世代……祖父母も、曾祖父母らもこういう顔をしているのだろう。

 

「己を平民とは呼ばないのだね、アイシア・エレメントリー、そしてエンゲルグ・エレメントリー」

「娘の幸福を手伝ってくださる相手を身分で呼びかけることのできる親がいると、そう思いますか?」

「そも、我々は平民を大切な領民であると捉えている。その身分で呼んでも構わないが、そこに蔑視の意味は込められぬよ」

 

 ふむ。これは存外高く買われたものだね。

 この口調にも何の反応も示さないとは……筋金入りだ。

 

「……という格式ばった挨拶はこれで充分かしら」

「ああ、疲れたな。……アートヴァーラン、そう怒るな。身分に蔑視を込めるのならば貴族にこそ、だ。あれら堅物の前でならばこのような態度は取らぬが、『エンジェの恋人』のように貴族も平民も平等に見得る視点の持ち主相手に肩肘を張ってどうするというのだ」

「おや……己のことをよく知っているようだね」

「うむ。エンジェが大層楽しそうに話してくれるからな」

 

 へぇ。

 寮制だから、そこまで頻繁に家へ帰る、ということはしていないはずだけど……もしや風で文を届けているのだろうか。

 良いのかなそれ。情報漏洩じゃ。

 

「それじゃ、エンジェ? 彼の好きなところ、教えて?」

「あ、いえ、あの母さま」

「今この場で、が恥ずかしいのなら、使用人には全員下がってもらいましょうか?」

「己が言うのもおかしな話だがね、危険ではないかな、それは」

「あら……では貴方に、私達を害する気がある、というのかしら」

「無いよ。無いけれど、己は身一つでこの場にいる全員を制圧し得るんだ、当然──」

「害する気が無いのなら、良いではありませんか。さ、皆下がりなさいな。ここからは家族の……いいえ、未来の家族のお話、ですからね」

 

 強いな。当主は父親の方だと聞いていたけれど、実質的な支配権は彼女にあるのかな。

 まぁ少女Aとスヴェナを見れば、どういう性格をしているのかもわかる、というところだけれど。

 

 そして母親Aは、本当に使用人を締め出してしまった。

 さらには消音結界……いや、無音結界を部屋にかけて。

 

「そこまでする必要、あるのかな」

「ええ、これから先は、他家、及びアンジェリカ様以外の始祖には聞かれたくない話ですから」

「ああ──そういうわけだ、『エンジェの恋人』。隠す必要はないぞ」

 

 成程。少女Aが照れることを見越して、それを出汁に使用人を排除したか。

 思ったより貴族だな、この二人。

 

「隠す必要、とは?」

「アンフィの遺体をこの屋敷へと届けたのは君だろう。そして、最近のエンジェの様子からして……アンフィは今もエンジェの近くにいて、そういったことの全てがエンジェの恋心に繋がっている。どうかな、我の推理は」

「その推理の論拠を提示してくれるかな、エンゲルグ・エレメントリー」

 

 少女A''……アンフィ・エレメントリーの死体を届けたのは確かに己だけど、この肉体は使っていない。

 そして、認識錯誤の結界により、少女Aのどんな仕草からでもスヴェナの生存を確かめることはできないようになっているのだけど。

 

「……」

「兄さま、推理、だなんて格好つけるからそうなるのですよ? ふふ、『エンジェの恋人』さん、そんな怪訝な目で見ないであげてください。今のは直感を下地にした推測……兄さまは恐らく、なんとなくそう思っただけ、ですからね」

 

 ……いつから、だ?

 少女Aだけが特別なのだと思っていたけれど……二人兄妹を必ず産んできたエレメントリー本家の片方にだけこの説明できない直感が現れるのだとしたら。

 そして今代においてのみ、姉妹が生まれ……けれど直感は変わりなく少女Aに宿った、というのなら。

 ここの法則性は、なんだ。いつから異物が混入した。

 

 よくわからない……接続、は……するべきか。だとしても今じゃないけれど……。

 

 とりあえず──指を鳴らす。

 それだけでこの部屋の位相が別次元へと跳んだ。勿論指を鳴らしたことに意味はない。

 

「……あら」

「やはりか」

「ちょ……何してんのよアンタ! っ、ああ、ここに入った瞬間に全部思い出すこれ、毎回毎回慣れないけど……!」

 

 ここは少女Aのストレス発散空間と同じような場所だ。

 ここで起きたことは覚えてはいられない。だから──引き摺り込む。

 

「は?」

 

 椅子と机ごとになってしまったけれど、何やら読書をしていたらしいスヴェナを。

 

「……ここは、一応……え、父さまと母さま?」

「む。……ふむ。ふむふむ」

次元空間(デルメルサリス)の魔法にも似ていますが……魔力が感じられませんね。アートヴァーランから只者ではないと聞いてはいましたが、こういう意味だったのでしょうか?」

「いやっ、その……違うの、母さま。えっと……っていうかなんでスヴェナまで呼んでるのよ、これじゃあ」

 

 ポン、と手を打つは父親A。

 

「──久しいな、アンフィ。我はそなたの遺骸を見て泣き散らしたものだが……壮健なようで何よりだ」

「……一応問います、『一応平民の人』」

「己はなにも。ただ、どうやら君の家系は調べるに値するものであるようだね」

「そうではなく……ここは、始祖に捕捉されない空間ですか、一応」

「ん? ああ、勿論」

 

 言葉を聞いた瞬間、スヴェナは本を放り出して──母親Aへと抱き着きにいく。

 母親Aはそれを、何の驚きもなく受け止めた。

 

「母さま……っ!」

「あらあら……年齢が上がるにつれて、こういった甘え方はしてくれなくなっていったのに……その身体と同じくらいの年齢にまで戻ってしまったのですか、アンフィ」

 

 直感持ちは父親Aだけ。しかし、経験則なのかな。母親Aもその言葉の一切を疑っていない。

 ……どうしても、だ。

 虫は去ったし、星の意志は彼方へと追いやられたはずなのに……こういう光景を見ると疑ってしまう。

 

「まさかとは思うけれど、君達は"マグヌノプス"ではないよね?」

「マグヌノプス?」

「ふぅむ……?」

 

 知らない……か?

 いや、知らなくて当たり前なのだけど……。

 

 関係ないなら無いで、それはそれで謎が残るね。

 

「いや、すまないね。少し過敏になっていただけだ。忘れてくれていいよ、エンゲルグ・エレメントリー」

「そうか。なんにせよ、そなたには礼をせねばな。アンフィの命を救ってくれたこと、そしてエンジェの命も救ってくれたこと」

「君をして、己は愛する娘たちを害する敵には……思えないのかな」

「ああ。我の直感は今見せた通り論拠のないものだが、よく当たる。その上で、そなたは我々の敵ではない。……だが、そなたを敵視する組織はいるのだろう」

 

 ……そうか、そういえばそうだった。

 生徒Eが己をそう呼んでいたじゃないか。『敵』と。つまり。

 

「『残照回廊(リメノンス)』が、新たなる星の意志、か。……はぁ、残念極まりないな」

「落ち込んでいるところ悪いのだがな、『エンジェの恋人』。こちらかも聞いておきたいことがある。この空間は……完全に隔離されている、という直感を前提にした問いだ」

 

 血筋争い促進組織だと思ったんだけどねェ。

 成程、だから『忘我の繭』なんて言葉を使っていたわけか。星の意志にとって樹殻は理解のできないものだろうし、何より幼体なのだろうね。上手く説明ができていないのだと見た。

 

 そう考えると未来でのあれこれにも納得が行くけれど……。

 

「そなたの本当の名前を教えてほしい、『エンジェの恋人』」

「……? ()()()()()()()()だよ?」

「いいや、違う。我々はそなたの名前を知らない。恐らくこの世にいる誰もが、だ。我々は敬意を以てそなたを名で呼んでいるつもりだが、それは強烈な認識錯誤によるものだろう。……そういう意味では、アンフィはそなたにとって異端だったのやもしれないな。『一応平民の人』、だったか。この子の口癖のように見えて、この子は意識的にその呼び名を使っていた。名前を知らぬし、知らないということを意識できないと知っていたが故に」

「そうかい。いや、いいよ。確かに己には名前がたくさんあるからね。どれがいいかな」

「本当の名を、と。そう問うたぞ、『エンジェの恋人』」

 

 マグヌノプスでもないのなら……なんだ、この直観力は。

 虫がこの星を去る前にあった『暴風金属』の時代。あの頃の、というかあの時代に至る前のマグヌノプスですらこの直感は持っていなかった。父親A、少女Aの持つそれは、最早直感というより直観だ。未来視に近い。

 まさか……無意識のうちに円輪の年代記(CHRONICLE)へ接続している?

 

 ……あり得ない話じゃない。

 なんせ円輪の年代記(CHRONICLE)の基礎システムを作ったのは己じゃなく虫の方だ。己はそれを扱いやすくしただけ。

 もし……彼が余計な置き土産をしていたとしたのなら。むしろマグヌノプスの後継機が生まれることを予期して、カウンターの何かしらを用意していたのなら。

 

「……己の本来の名前は、君達には発音できない。だから今みたいに呼んでいるつもりになってもらうしかない」

「え、何言ってるのアンタ。アンタの名前は『ルリアン(LULLIAN)』でしょ?」

 

 さらっと言われたその言葉に……流石に警戒する。

 そんなはずはない。今、彼女は正確な発音をした。今のは……魂の言語だ。

 

 ただ、周囲の人間……父親Aにさえも聞き取れていない。

 

「おお、エンジェ。そなたは『エンジェの恋人』の名を発話できるのだな。流石は恋人か」

「当然じゃない。名前も知らないやつを好きになったりしないでしょ」

「ううん、全くわからない会話内容だけど……ね、アンフィ。あなたはわかるのかしら?」

「……少しは、わかります。一応。……知覚を切って、空間を響かせる風にだけ集中してみてください。理論上、そこにはあり得ない振動がありますから、それで気付くことができます、一応。……というか私の翻訳された言葉もこれで知覚できますね。失念していました」

 

 まずいな。

 話が変わってきた。

 

 あの時『天使』クンは「絆された」だのなんだの言っていたけれど、ああ、流石は己だ。

 真っ赤な嘘にも程がある。……肉体の檻を有している状態で魂の言語を習得しているのなら、確かに己の恋人は少女A……いや、エンジェになる。

 いつか必ず己はこの少女を愛するだろう。それこそが己の目的であるのだから。そして、そうなった時……どのような選択肢があったとしても、己はエンジェを守る方向に動く。

 

「なに、みんなアイツの名前知らなかったワケ? 毎回毎回話してるのに」

「本来は聞き取れないはずなんだよ、エンジェ。少なくとも魔法使いには聞き取れないはずだった」

 

 ナノマシンで身体を強化した者達でも無理だったんだ、それを、己がデザインした魔法使いが軽々越えてくるとは思わないだろう。

 

 ……とりあえず、『残照回廊(リメノンス)』は潰しておく必要性が高まったか。エンジェを狙う者を放ってはおけない。

 スヴェナも完全な保護対象になった。いや、エレメントリー本家全体が、かな。

 

「『ルリアン(LULLIAN)サークレイス(CIRCWLEITH)』。それがコイツの名前だけど、本当に聞こえないの?」

「そこまでにしてくれないかな、『エンジェ(ANGEL)エレメントリー(ELEMENTLY)』。あまり呼び慣れていなくてね、いつも通りの呼び方でお願いするよ」

「……何今の呼び方。心の中……というか心の表面を直接撫でられた、みたいな……」

「さっきから君が己に対して行っていることだね」

 

 いやはや。

 愛情というのは、疲れるね、これは。

 君もこんな感覚を味わっていたのかい?

 

「ふふふ、よくわからないですけれど、仲が深まったようですね」

「ああ……アイシア・エレメントリー。己はエンジェに告白されただけの間柄だったのだけどね。生まれ持った使命として、エンジェを守る必要が出てきた、ということだ」

「ということは、今までは使命というものに関係なく守ってくださっていた、ということよね?」

「まあ、確かに、そうなるかな」

「素敵じゃない。けれど……今の貴方にエンジェへの恋心はない。そうでしょう?」

「……直感、かい?」

「いいえ。これは経験則で、母親の勘かしら。こんなに必死になっているエンジェは初めて見ましたもの。気付いていないかもしれないけれど、この子、今でさえ貴方をどうやって振り向かせるか、どうやって引き留めるかを悩んでいるのよ?」

「ちょっと、母さま!? そ、そんなこと一言も言ってないでしょ!?」

 

 言われなくとも振り向く必要ができたし、拒絶されても愛する必要ができたのだけど。

 まぁ……虫の経験を羨ましくは思っていたから、己が本来の意味で愛を覚える、というのは、楽しみな話でもあるね。

 

「言ってなくてもわかります。母親ですから」

「一応言うと、私にもわかりますよ、エンジェ。……ふふ。名前に関しては自分の方が知っていてうれしい。けれど、状況に関しては父さまの方が把握しているようで悔しい。そんなところでしょうか、一応」

 

 かあ、と紅潮するエンジェの頬。

 そこまで恥ずかしいことだったかな、今の。

 

「私達は家族ですから、家族のことはわかります」

「うむ。我はこのような直感をこそ持っているが、それよりも家族である方が大事だ。そして、『エンジェの恋人』よ。貴族間における無意味で無駄な血筋争いに娘たちを巻き込ませたくはない。エンジェの気持ちと、我の過保護。この二つを以て、どうかエンジェを愛してやってほしい」

 

 その無意味で無駄な血筋争いを見たくてこの世界を作ったんだけどね、己は。

 けど……保護対象になったのなら、そうだね。彼女たちは完全に外す必要がある。

 

「……いいよ。ただし、今話したことのほとんどを君達は覚えていられない。直観を以てしても意識から外れる。……それでも、約束しよう。己はエンジェを守るよ」

「ありがとう」

 

 今度は指を鳴らすこともない。

 未だ母親Aに引っ付いているスヴェナを引き剥がし、元の椅子に座らせて、本も回収して、元の場所……彼女の自室へ送り。

 誰に何を言わせる間もなく、この空間を閉じた。

 

 

 

 帰りの馬車。

 当たり障りのない会話をして、「娘をどうかよろしく頼むよ」と言われた……ということになっての帰路だ。『ROUGE』からは相変わらず凄い目つきでねめつけられたけれど、他の使用人からは思ったより好感触。本当に平民に対して偏見というか蔑視が少ない家らしい。

 

「ね、アンタ」

「なにかな」

「なんかしたでしょ」

 

 ……。

 まぁ、それくらいはわかるか。

 

「したよ。けど、害のあることじゃない」

「あ、そ。……言っておくけど、アンタは私が振り向かせるんだから。勝手に振り向かないでよ?」

「唐突だね」

「なんとなく……あ、頭の撫で方が、行きと違うから……」

「当然のように膝枕を強いている現状への説明はないのだね」

「え? 恋人はこうするのが正解なんでしょ? シャニアからそう聞いたけど」

 

 成程、犯人は少女Cだったか。

 ……ま、いいさ。こうしていく内に、愛というものも芽生えるだろうし。

 

 今日中に寮へと帰る必要があるから、こうして早めの帰還になっているけれど……まぁ、本当は、エンジェもスヴェナも……もっと家族と共にいたかったのだろうね。

 その辺りも考慮していくべきかな、これからは。

 

 と。

 馬車が……止まる。

 

「……なに? まさか盗賊?」

「いや、『リーズポイントの悪馬』が引いている馬車を襲おうなんて存在はいないと思うけれど……」

 

 コンコンコン、とノックされるは御者窓。

 瞬時に居住まいを正すエンジェ。「大丈夫よ」と彼女が返答をすれば、そこが開く。

 

「お嬢様……私には判断できません。どう、しましょうか」

「何があったの? 盗賊?」

「いえ──聖護魔導学園が」

 

 要領を得ない回答。仕方なく、そして一応警戒しつつ馬車を降りてみれば。

 

 遠方。遠くに見える聖護魔導学園が、薄い青の結界によって囲われていた。

 

「……あれは、聖護星見(クライムドール)の陣地だね。……あそこまで……視認可能なほどにまで強度を高めているということは、襲撃にあったかな、また」

「一応、私も弾かれました。状況が把握できないのですが、どうせあなたのせいですよね、『一応平民の人』」

 

 ん……スヴェナか。

 空間を渡ってきたらしい。……しかし、己の返送を弾く陣地、となると……イレイアの陣地じゃないな。

 

「お嬢様……」

「貴方は家に帰りなさい。学園のことは生徒の私達がなんとかするから」

「……へい、お気を付けて」

 

 去っていく馬車。

 まぁ正解だね。あれは多分、近づくものを見境なく攻撃する。そこに『リーズポイントの悪馬』なんてものを近づけたら、御者クンごと抹消されておかしくはない。

 

「スヴェナ、状況はわかる?」

「自室で勉強していたら、いつの間にか学園の外にいました。……はあ、これは聞こえないのですか。……一応探知はしましたが、中で何が起きているかはほとんどわかりませんでした。ただ……シャニアさん、ケニスさんの両名から、次元空間(デルメルサリス)式の信号波が飛んできています」

「再生可能なやつ? 風の録音と同じ?」

「いえ、そういう高度なものではなく、咄嗟に飛ばしたものでしょうね、一応。……ケニスさんの方は、厳戒態勢の信号波。つまり、絶対に帰ってくるな、という意を示すもの。シャニアさんの方はそれより一つ下で、私が解決するまで帰ってこないこと、を意味するもの。どちらも私を気遣ってくれた信号波のようです、一応」

 

 ん……己の視覚素子まで弾かれるとなると、ナノマシンを完全遮断しているのかな?

 精神体になれば問題なく入れるだろうけど、いきなり眠るのも怪しいし……。

 

 仕方がないか。

 

「ジャーニー、マルコム、ヘルムホート。そこまで近づいているということは、何かを知っている、と捉えるけれど」

 

 声をかける。

 一瞬の戸惑いのあと……その三人が現れた。存在抹消の里出身の三人。名前の通り、平民として動いている三人だ。年齢も性別もバラバラの三人。

 風の感知に引っかからなかったからだろうか、それとも彼らの纏う異様な雰囲気からだろうか、当然警戒するエンジェ……を、宥めるはスヴェナ。

 

「大丈夫です、一応、知り合いです」

「あ、そ、そうなんだ。……うう、密の風と渦の風、使い分けが難しいわね」

 

 いつになく真剣な表情の彼らの口から出た言葉は。

 

「『創始者殿』。学園内にいる同胞より、残照回廊(リメノンス)なる組織が学園を占拠したとの報せが」

聖護星見(クライムドール)の裏切り者のせいで、出ることも入ることも適わないと。言葉はそこで途切れました」

「既に『戒律機関』、及び聖護星見(クライムドール)の聖護隊が動いているようですが、進展はなく」

 

 そうか。

 己がサイドストーリーになど期待していたから起きたことかな、これは。

 

次元空間(デルメルサリス)聖護星見(クライムドール)の現在および元家系のメンバーで突破を試してみてほしいかな。己はエンジェ、スヴェナと共に違うアプローチを目指すよ。ああ、肉体強化(フィジクマギア)は出さないように。よくて腕が、最悪全身消し飛ぶからね」

「承知」

「御意に」

 

 瞬時にいなくなる三人。

 エンジェはまた目を白黒させているね。密型の風にしたのにすり抜けられたから。ま、あの三人は元の血筋が……なんて、無駄話はいいか。

 

「行こうか、二人とも。己達の愛する学び舎へ不埒な行いをする不届き者を許してはおけないだろう?」

「……何が何だかわからないけど、今の言葉に欠片も心が籠ってないことはわかったわ」

「卒業する気もなかったクセに何を言っているんですか、一応」

 

 いや、そうでもないさ。

 エンジェが聖護魔導学園を愛するというのなら、己もそうするよ。

 共同作業こそが愛の始まり──そうだろう?





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