魔法使いたちの骨肉相食む血筋争いが見たい   作:reverofllaF / 永遠下降

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Sin10-4.「巡る思惑の献花」

 己は出戻りの形になるけれど、死霊病毒(ネクロクラウン)が本拠地たるこの暗い島へと辿り着く。

 浮かせていた教師D'を降ろしてやれば、彼はわざとらしく「わ、わぁ~」なんて言ってよろけてからバランスを取る。

 

「隠す意味がなくなったから、とはいえ、どの家の魔法にも属さない魔法を体験するのは不思議な気分だねぇ~」

「似たようなことであれば四大元素(エレメントリー)ができるだろうに」

「風と誘引力の違いくらい僕にもわかるよぉ~」

 

 緩慢な動作で、しかしあまりにも自然体に……教師D'は煤で作ったのだろう黒い剣を右手に生成する。

 反対の手には……鍵、だね。

 

「これ、僕の研究室の鍵だからねぇ~、場所はどうせわかってるだろうしぃ、わかってなくてもわかるだろうから、まぁ、これを使って開けて入ってねぇ~」

「今渡す意味は?」

「既に死地だよぉ。君、僕を助ける気なんかサラサラないだろぉ~? 他の皆はもしかしたら君を責めてくれる……僕のことを想ってくれるのかもしれないけれど、エンジェクンも僕が死んだところでなぁんにも思わない。そして、エンジェクンが君を責めない限り、君の心が動くこともない」

「生徒の恋仲にそこまで詳しいのはどうなのかな、教師ドクラバ・アッシュクラウン」

「これは教師の立場から見た話というより、単純な研究対象の観察結果だねぇ~。……僕は魂を感じ取れない。そこにあると知っているし、どこにあるかも調べに調べたけれど、結局感知できなかった。折角死霊病毒(ネクロクラウン)の分家に生まれたっていうのに、悲しいことだよねぇ~」

 

 鍵を受け取る。術者が死したとしても形を保つように細工の施された鍵だ。

 同時に……一度使えば崩れる鍵であることもわかる。巧妙に偽装された自壊の構築式が内側に仕込まれている。……違法合法の話を前にしたけれど、ここまでしないといけないものを飼っているとしたら……相当だねェ。

 

「剣、扱えるのかい?」

「まぁ、多少はねぇ~」

 

 ならば、と。

 鍵を虚空へしまい、教師D'の隣へ立つ。いつものステッキを突いて……ハットを被り直して。

 

「……鍵を受け取った以上、君は僕を看取る理由は無いんじゃないのかなぁ~」

「君が交渉を成立させなかったら、天上の地の教師生徒は助からない。あるいは無理な手段での施術により人格がゆがめられる。その際のバックアップが己だからねェ、見届けることくらいはするよ」

「そうかいそうかい。……あくまで僕を一人にはさせてくれないか、『執行者』クンは」

 

 パチ、と。

 青雷が走る。パフォーマンスだったのか、剣も雲散霧消する。

 

「それじゃ、これ以上を隠す意味もないねぇ~」

 

 教師D'の身体から噴出するは煤。ただし元のヒトガタに収まる量を遥かに超えた……今生成しているにしても多すぎる量が吐き出され、あたりを覆っていく。

 反対に、どんどん小さくなっていく教師D'の身体。小さく、そして……希薄になっていく。

 

 これは。

 

「気付いたついでに一つ、良いことを教えてあげよう、『執行者』クン。僕達死霊病毒(ネクロクラウン)の分家は、本家から見向きもされていない……にも拘らず、死霊病毒(ネクロクラウン)に沿った……次元空間(デルメルサリス)に似たネーミングであることが多い、と思わなかったかいぃ~?」

「……そういえば、そうだね。けれどそれは、君達が本家に対して強い焦がれを持っているからだと……己はそう聞いたのだけどね。違ったのかな」

「そう思い込んでいる家が多数派だろうねぇ~。……けど僕は、どうして僕自身が魂を感じ取れないのか、というところから……そもそも人間とは、生命とはなんなのか、というところまで、調べに調べ尽くしたことがあってねぇ~?」

 

 教師D'の身体から、肉体と呼べるものが消える。

 心臓も脳も血管も、そして血も。全てが煤となって……こだまするような声だけが響く。

 

「僕は僕の肉体の中に、あるいは戦場で死した同胞の肉体の中に、刻み込まれた文字を見つけたんだぁ~」

 

 己の眼前に現れるは骨。恐らく頸椎周辺の骨。

 捉える。この眼球は、その骨の片隅に()()()()文字を見る。

 

「code:ashclown……」

「これに気付いた時、僕は禁忌を犯したよぉ~。……即ち、墓荒らし。先祖代々の墓地の全てを掘り起こして、同じ場所を見たんだぁ。そうしたら、その全てに文字があってねぇ~? 先の魔法大戦において、若くして死した魔法使いも、母体と共に死してしまった赤子にも、全て全て、全てに彫られていたんだよぉ~」

 

 言いたいことは、つまり。

 

「そもそも本家筋が無いのになぜ分家があるのか。簡単だよねぇ~、僕たちは始祖ディアナによって、そうあれとデザインされた生命だったってだけ。似たような()()次元空間(デルメルサリス)もしているみたいだけどぉ、正しく実験動物なのは僕たちの方だぁ~」

「ふむ。そうだとして、己にそれを教えた理由は?」

()()使()()()()()()()()()()()()()()()……死ぬ前に答え合わせをしておきたかっただけだよぉ~」

「答え合わせ、とは。まるで己が答えを知っているとでも言いたげな口ぶりだね、教師ドクラバ・アッシュクラウン」

 

 貌の無い煤がニタリと嗤う。

 ヒトの質量はゆうに超え、この島を覆い尽くす程となった彼は──哂う。

 

「そう言っているんだよぉ~、『執行者』……いいや、『愚者』クン」

「……」

「どんな記録にも残っていない、誰の記憶にも残されていない呼称。始祖たちが躍起になって消したその名前。けど、故意に消そうとすればするほど痕跡は遺りやすくなるものでねぇ。始祖たちは賢く強いけれど、周到さ、という点においては見た目通りだったんだぁ~」

 

 煤の中に、ぽつ、ぽつと……人影が現れ始める。

 一人や二人じゃない。十人、二十人、百人……いや、もっとだ。

 

「彼女らはもっともっと丁寧に消すべきだった。そして考えるべきだったねぇ~。まさか魂を感じ取ることもできない魔法使いが、五千年前に死した人間を復元し、剰え彼らが何を話していたのか、というところまで掘り起こせるとは考えていなかったんだぁ~」

 

 人影は人影だ。人の形をしているだけで、魂を持っていない。

 ただ……その見た目は、いつかどこかで見たことのある者ばかり。

 

「始祖ディアナの傀儡、死霊病毒(ネクロクラウン)の本家筋と呼ばれている自動人形(オートマタ)。それと同時代を生きた、他四家の人間たち。始祖らが『愚者』の名を後の世に遺すまいとしたのは魔法世界が始まってから百六十年ほどが経った頃合いからで、それ以前は普通に話されていたみたいでねぇ~、証拠はこれでもかと見つかったよぉ~」

「後学のために教えてほしいな。どうやってそんなものを発掘したんだい?」

「だから、痕跡だよぉ~。ヒト、魔物……生命というものは生きている内に必ず痕跡を残すものでねぇ~? それは単純な足跡もそうだけど、大気に満ちる魔力にも影響を与えるものだぁ。そして、大気中の魔力は、増えることはあっても減ることはないからねぇ。所有権の変更が為された魔力までは追えないけれど、そうではない魔力も残っている。そして所有権の変更が為された魔力であっても形跡とでもいうべきものは魔力そのものへ刻まれ続ける。僕はそこから復元を行ったに過ぎないよぉ~」

 

 教師D'。いいや、ドクラバ。

 君はそれがどれほどの偉業か理解しているのかな。

 

 君が言っていることはつまり、ナノマシンを独力で見分け、「一度使用された後は初期状態に戻る」という性質を持つナノマシンに残る僅かな変更履歴を辿った、ということになる。

 物質が完全に元に戻る、というのは人為的でない限りあり得ない。というか己のようなこの星由来ではない力を使わないと行えない。だからナノマシンの初期化も「初期化を行った」という形跡は残ってしまう。ただし、それ以前のことは綺麗さっぱり消える。

 そう設計されているのに……その初期化前のデータを発掘する術を編み出した、と。

 

 ……それは、対象が違うだけで……円輪の年代記(CHRONICLE)へ接続することとほぼ同義だ。

 

「けど、こんなことをしてみせても始祖ディアナには遠く及ばない。僕は結局研究分野の人間で、戦闘者じゃない。……生徒たちと、僕の同僚のこと、任せたよぉ~。僕の役割は、少しでもディアナ・ネクロクラウンが頷きやすくするよう、魅せることだけ。君の負担が少しでも軽くなることを願うよぉ。なんせ」

 

 大軍を率いて──ドクラバは始祖Dのもとへと進む。進軍する。

 

「『執行者』だろうと、『愚者』だろうと、君は僕の生徒だからねぇ~」

 

 そうして──。

 

 

 

 静かになったそこへ降り立てば、酷くつまらなそうな顔をした始祖Dが一人。

 

「……あれ、白スーツさん。こんな頻繁に会いに来てくれるなんて……もしかしてわたしのこと、好きになっちゃいましたぁ?」

「いいや。今君のもとを訪れた彼の意志を継ごうと思ってね」

「ああ……ヒトの魂が必要なんでしたっけ。……本来なら何か要求するべきなんでしょーけどぉ、いいですよぉ」

「どうしたんだい、随分としおらしいじゃないか」

「いやぁ……わたし、白スーツさんが欲しくて、白スーツさんを創ろうとしたことがあったんですよぉ」

「唐突に剣呑だね」

「それが死霊病毒(ネクロクラウン)の分家です。あれらを全部合わせてかき集めれば、白スーツさんの代替品になる……そういうコンセプトで設計した、わたしの血を混ぜ込んだ実験動物たち。それが分家……だったはずなんですけどねぇ」

 

 成程、ヒールクラウンの彼の再生もそうだけど、やけに己を意識していると思ったらそういうことか。

 

「今わたしに喧嘩売ってきたコ……ashclownは、白スーツさんの『遠くのものを自在に動かす力』の劣化品としてデザインしましたぁ。……結果、最後のashclownはわたしのスタイルに似ましたねぇ。なんというか……子育てって、上手くいかないものですねぇ」

「育てているのかい?」

「だって今の世界は白スーツさんの思い通りになっているじゃないですかぁ」

 

 良い切り返しだね。

 ……そうだね。己も育ててはいない。だけど、己の子育ては上手く行ったかな。

 

「情報を規制したことが岐路だったのかなぁと今更ながらに反省してますよぉ」

「どうだろうねェ。己から見ても彼は天才だったのだと思うよ。……コルリウムといいドクラバといい、一時代に天才が二人も生まれたとは……確率とは偏るものなのか、あるいは……」

「そんなに気に入ったのなら、彼の魂もおまけで上げましょうかぁ? わたしには必要ありませんしぃ」

「いいのかい?」

「はい。……それに、しばらくはナイーブな日々が続くと思うのでぇ」

 

 ふむ。

 こういう時、口を出すべきではないとは思うのだけどね。

 

「気付いてしまったから、かな。君の作った実験動物が……その行き着くところが、己ではなく君自身だ、ということに」

「そーですねぇ。……わたしの五千年間の一部は、無駄でしたねぇ。他の家の血を集めて、私の血と混ぜて分家として成立させて……そうして血の収集とデザインを続けていけば、いつか白スーツさんを生み出せるかもしれない、と思ってやってきた五千年間ですけどぉ、まさか……わたしが答えを出す前に、実験動物の方から答えが出てくるとは思わないじゃないですかぁ」

「もっと続ければ、新たな可能性が、とは考えないのかな」

「白スーツさん自身が言った通り、今のコは天才でしたよ。行き着くところまで行き着いた実験動物。稀代の天才。それをして無理なら、辿り着くところがわたしなら、それに劣る全てがどう頑張ったってわたしにしかならないでしょう。……これで、コルリウムさんももうすぐいなくなって……はぁ」

 

 それがナイーブの理由か。

 ……なら、そうだな。これはあの虫に似ていると言われる部分だからあまり好ましくは思っていないのだけど──計画性の無い提案、というものをしてみたくなってしまった。

 

「樹殻のことや、『残照回廊(リメノンス)』周りのことが終わったら……君も学園生活してみないかい?」

「はい?」

「実際、『賢者』が世界を滅ぼした頃、君達のコロニーにいた子供達は学校というものには通っていなかったよね。一度すべての記録を見たから覚えているよ」

 

 そもそも学校というシステムが旧世代のもの扱いされていた、というのもあるし、大人の居なくなったあの時代ではもう何かを学ぶなんて機会はなかったと思う。

 勿論その後自分たちで自分たちにできることを模索していた時代はあったのだろうけど、それが学校であるかと問われたら首を横に振るだろう。

 

「偽装は己がやるよ。そうだ、始祖五人とも、己たちの後輩……初学生として入学してきたらいい。君達がそれぞれに何を望むのであれ、やったことのないことを経験する、というのはいい刺激になるだろう?」

「……わたし、白スーツさんのことはなんでもかんでも肯定してきた覚えがありますけどぉ、それは……色々な相手に対して不義理なのではぁ? あなたが大切にしているエンジェちゃんにも、スヴェナちゃんにも」

「エンジェは受け入れるだろうから良いとして、確かにスヴェナは君を復讐対象に見ている。もしバレたら殺し合いは必至だろうねェ。でもバレなければ大丈夫だろう?」

「いやそうじゃなくてぇ……」

「義理とか不義理とか、感傷とか倫理とか、そういうものを己に見ているのなら、まだまだ理解が甘いよ、ディアナ・ネクロクラウン。そんなものは己には無い。そうあるように見せかけているし、そう見えるように振る舞ってはいるけれどね。結局のところ己と君達は違う生物だ。相互理解とは最も遠いところにいるんだよ」

 

 あるいは彼らの口にしていた「英雄価値」と似たようなものだ。

 己にも己の価値観があり世界観がある。その点で言えば……ドクラバ・アッシュクラウンは回収すべき魂であるし、己が目に付けた始祖……いや、少女ら五人は、「己が己の意思を以て孤独に仕立て上げた存在」だ。だから未来送りにされることも「面白くない」し、彼女らがナイーブになって行動力を欠いているところを見るのも「面白くない」。

 それをされるくらいならば、どんな感情も無視しよう。たとえそれが己の大切にすべき存在の感情であっても。

 

「……考えておきますよぉ。とりあえず人数分の人間の魂とashclownの子の魂、返しておきますねぇ」

「ああ、前向きに考えておいてほしい。……ところで、コルリウムがいつ過去へ赴くのか、については知っているのかな」

「具体的な日程は何も。ビジネスパートナーですからねぇ、そこまでの信頼はないんじゃないですかぁ?」

 

 そうなのか、と呟いて──彼女をこちらへ引き寄せる。

 

「きゃ……!?」

 

 そこに突き出てくるは、空間の槍。……いや、ほとんどナノマシンの槍だな、これ。

 

「驚きだ。それは想定外だった。守るのか、君」

「君の言葉を使わせてもらうのなら、当然に」

 

 暗がりから出てくるはコルリウム。存在の感知ができないあたり、ブルーシールを有しているのかもしれない。要注意だね。

 

「やっぱり……わたしのこと、殺す気だったんですねぇ」

「当然だろう。君はこの美しい世界の病巣だ。私はこの世界が好きだからね、『残照回廊(リメノンス)』含めて、生き残るべき人間の選別はしたつもりだよ」

「けれど、わたしを殺してしまえば、あなたの魂を『忘我の繭』から引っ張り出す人がいなくなっちゃいますよぉ?」

「それは問題ないよ。君の魔法はもう()()()()。君にお願いしたかったのは私の魂を引っ張り出してもらうことではなく、魂へのアプローチを行ってもらうことそのものだった。私は研究者で技術者だからね、目視さえしたのなら、あとは勝手に解析して勝手に機構を創り上げる。当然、君の近くにいた数年間と、そして先程の青年との戦いで……死霊病毒(ネクロクラウン)の魔法の全てを掌握した。そうである以上、君は用済みだよ、ディアナ」

塵点収斂(フレッシュ)

 

 何の予備動作もない最速の突き。

 それはコルリウムの身体を捉え──る直前、杖先の消失を見て後退する。

 

「……何か、尾を踏んだかな、私は」

「思い切りね。──話は聞いていたのだろう? ディアナ・ネクロクラウンが分家の人間をデザインしたように、始祖五人は己がデザインしたも同然だ。人格は彼女ら由来のものだけど、こと魔法に関してはそう。……だから、その全てを掌握し、ディアナ・ネクロクラウンを用済みとすることは、己への冒涜に他ならない。少なくとも己はドクラバを見て驚きを得た。制限に制限を重ねられた身で世界の真相の一つに辿り着いた彼を褒め称えた。──君はそれを踏み躙ったんだ、コルリウム」

 

 杖先の断面は恐ろしいほどに平坦だ。

 どんな切れ味の刃物でもこうはいかない。……というより、今のは確実に……「未来送り」だった。

 コルリウムが使ったのか、彼の手下が使ったのか。

 

「成程、案外幼稚なのだね、君は」

「それは認めよう。己という種は発生から一切の進化をしていない。人間に例えるのなら赤子も同然だ。幼稚であるというのなら、正しくそうなのだろう」

「……ディアナ・ネクロクラウンを殺せなかったことは想定外だけど、私の魂を『忘我の繭』から引きずり出す役目はもう別の存在に任せられる。そうである以上、これ以降のやり取りは無駄だ。当然、私では君とやりあっても数秒と保たないだろうからね」

「勝手にするといい。どうやら君は堅牢に守られているようだから……己達はここで、君が過去へと赴くのをゆるりと眺めさせてもらうよ」

 

 己はナノマシンの縦軸挙動をまだ会得していない。ただ、超能力……サイキックの方の「未来送り」ならば知っている。

 その兆候を掴むことはできる。だから始祖Dにだけ細心の注意を払う。勿論、己にも。

 

 そしてもし次攻撃してこようとしたのなら──逆探知して殺しに行こう。「未来送り」は存在してはならない技術だから。

 

「──当然、余計な手出しはしないようにね。……では赴かせてもらおう。ああ、当然だけど、何も知らない頃の君に出会っても、何も知らないフリをしておくから安心してくれたまえ」

「好きにすると良い。己はもう君に興味はないよ」

 

 彼は。「アルター・コルリウム」はにこりと笑って。

 膨大なまでの魔力を吐き出し始めた。どの始祖にも勝る、エンジェにも勝る魔力量。あまりの濃度に空間飽和を起こした魔力の一部が視覚化され、輝きを放つ。

 そして、横軸挙動をし続けていた魔力は……しかし「アルター・コルリウム」の精密な魔力操作により、一定以上の領域から外へ出られなくなり、横軸挙動をする術を失い……次第に縦軸へと挙動を変化させていく。

 

 なんだ、そんな力業だったのか。

 ナノマシンの挙動の逃げ道を消す。ただそれだけで過去へ……運命の分岐へ。

 

 だとしたらやはり、元の過去へは戻れないね。

 行けるのはよく似た過去だけ。その世界で何をしようともこの世界が変わることはない。直線上で宙返りをした点は、同じ線の上には着地できない。

 

 そうして、その輝かしいだけの時空曳航は見事成功を収め、「アルター・コルリウム」をこの世から消し去り──。

 

 

「──おはよう、諸君。当然のように生き返った私だよ」

「んじゃまー、戦争と行こうかコルっち。オレっちたちを弄んだその頭蓋、叩き割って脳髄掻き出して、アンタの好きなこの世界に流してやるよ」

 

 

 雷鳴が如く再誕した「アルター・コルリウム」は、その背後に出現した魔法使いの集団によって鮮血の花を咲かせるのである。

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