魔法使いたちの骨肉相食む血筋争いが見たい 作:reverofllaF / 永遠下降
七日休みの二日目。皆が繁華街でショッピングを楽しんだその日──の、夕刻。
寮にほど近いその場所で、珍しい組み合わせの二人がこそこそと言葉を交わしていた。
「わかってる。マナー違反っつーか、掟破りなことくらいわかってる。けどアリスだって本気で頑張ってたんだよ。だから……」
「悪いけど、流石にこの件へ他家の口を挟ませる、なんて愚は犯さない。……って、言いたいところだけど。……アンタはおかしいと思わないワケ? ケニス」
エンジェ・エレメントリー。ケニス・デルメルクラン。
同じコミュニティに属し、共通の友人を持つ……本来関わることのなかった二人。とはいえ今は友人同士であるから、繋がりが薄いというわけではないのだが……どうしても他と比べると見劣りする関係値の二人だ。
「おかしい、って……アイツが落第点取ったことは、けど仕方ないだろ……俺は、俺だって劣等生だから……頑張ったってできねえことくらいあんだよ。だからアリスの気持ちはわか──」
「違うでしょ。アンタは頑張った。みんなに割いてもらった時間に報いようと、どうやったって伸びない魔法まで特訓して……その上で、座学はほぼ満点に近い。確実な努力の証だし、勉強会の意味を理解した数字を取ってる」
「だから」
「それに、私だってわかってる。座学の方はどうしても無理なことがあることくらい。基礎力。効率の良し悪し、生来の考え方の違い。どれだけ詰め込んだってできない人はいる。アンタはむしろ詰め込めばできた側……だから、分類としては"こっち"なワケ。でも、あの子は違う」
そうだ。ケニス・デルメルクランは劣等生ではない。
魔法が伸びない──だからやる気が出ない。そういう理由で最下級クラスにいただけで、もし聖護魔導学園の評価基準が座学オンリーであれば、元からエリートクラスにいたっておかしくない。
努力ができるかできないかさえ才能なのだから。
でも。けれど。
「
「それだって……その日のコンディションとか……」
「そもそもあの子が最下級クラスにいたのは、自身の扱う魔法の威力調整ができないから。常に最大威力しか出せないから、という理由であそこにいたの。あの子があのクラスで最も家格の高い"御令嬢"だったことくらい、アンタだってわかってるでしょ」
「……ああ。最初……会った時は、なんでこんな偉いヤツがいるんだって思ったよ」
「本家と分家の違いは、出力の差じゃない。できることの広さだけ。そしてアリスの魔法威力はアンタも知ってる通り、高い魔法抵抗を持つ甲殻系の魔物ですらぶち破れるほどの火力。実技も実戦も、勿論コントロールのテストはあるからそこで点数を落とすのは仕方ないにしても、威力で失点することはあってはならないの」
あの時にエンジェが皆の前でした説明を、さらに詳しく言っているだけ。
それは……ああ。ケニスにだって、わかっていたことだった。
「故意に手を抜いたか、みんなの足を引っ張るためだけに勉強会に参加していたか。それ以外考えられない。それ以外であってはいけない」
「けど……じゃあ、エンジェは、アリスがそんな奴に見えるってのかよ」
「見えない。不透明。でも、事実は事実。私だって決めつけだけで動いてるワケじゃないの。採点で忙しい教師陣にも、アリスのテストで不正や不穏な動き……あの子の足を引っ張って得をする誰かがいた可能性とか、全部洗った。洗って、でもいなかった。当然よね、聖護魔導学園でそんな不正行為、学園長に見つかるに決まってるし」
「……仮に。仮にだ。本当に仮にアリスのやつが……そういうことをしたとして、動機はなんだよ。勉強会に時間を割いた、程度でどうにかなるお前たちじゃないだろ。俺は……どうにかなるかもしれなかったけど、特別体験入学生の五人ですら少し足を引っ張られた程度でどうにかなる実力じゃなかった。そんな力の差くらいアイツにだってわかってるはずだ」
「わかってたってやるでしょ。邪魔したいだけなんだから」
「それが決めつけだって──」
「学園襲撃事件。アリスは下っ端だったとはいえ、元敵よ。彼我の力の差で言うなら、どうやったって学園長に制圧される運命にあったはずの『ジェヴォーダンの魔物』を学園に放ち、その混乱を以て学園をどうにかしようとした集団の一員。アンタの言う"彼我の力の差"とかいうどうでもいいもので動くことをやめる人間性じゃないってコト」
アリス。アリス・フレイマグナは無知で無邪気で、馬鹿で純粋で。
だから──厳しいの処罰の下った分家連合の中で、唯一「完全監視下のもとであるのならば」という条件付きで元通りの生活に戻ることができた人物。
つまり、仮にアリスが「そんな奴」でも「そんな奴ではない」としても──無理なのだ。
エンジェではもう庇いきれない。彼女の執行猶予は終わった。彼女がどちらであったとしても、エレメントリーにとって、そして魔法世界にとって害ある存在でしかないことが証明されてしまった。
あとは処罰を待つだけ。
「だから、再度問うわ、ケニス。アンタはおかしいって思わないワケ? 庇うだけじゃなくて……同じ教室で過ごしたクラスメイトとして、何よりあの子の友人として。今回の結果は、あの子の限界だ、って。本当にそう思う?」
「……。……思わ、ねぇ」
思えるわけがない。
だって、ケニスはアリスの頑張りを……一番近くで見てきたのだ。
ともすればエンジェよりも、『彼』よりも長く。同じ劣等生として、同じ目線の高さを共有してきた。
だから……だから。
「手を抜いていた……っていうのか。……クソ、なんで……」
「そう。正直、話の肝はそっちよ、ケニス」
「え?」
「なんで、の方。事実は事実として変わらないから、私は処罰を下す気でいる。アリスの属していたコミュニティを考えればそういう人間性でも納得がいく。……けど、あの子はちゃんと変われた、って……私だって信じたい。アンタがそうであるようにね」
「……だよ、な。そう……そうだよな」
「で。……その"なんで"を知ってそうなのがアイツで、その"なんで"が存在しないものではなく、確実にあることを確信できたのが今日のアリスの態度。このネックレスを見た時、あの子、これを欲しがったでしょ? 私達全員で精査して、なーんにもわからなかったコレを、もうすぐ死ぬからー、なんて理由で落ち込んでショッピングに興味を示さなかったあの子が欲しがった」
「『英雄平民』がお前に渡したものを、か」
そうだ。『彼』が勝負に負けてまで渡したそれ。
そこに価値を見出したということは、『彼』とアリスにしかわからなかった何かが存在するということ。一芝居を打つように仕向ける、なんてことを『彼』がするはずないとエンジェは知っているから、そこで確信した。糾弾の時から何かを匂わせていた『彼』。そして彼女の姉……あるいは友人のスヴェナも何かを察しているようだった。
エンジェは自らの直観に自信を持っている。
けれど、アリスにはそれが働かない。先程も述べたように、不透明だ。
何かがあるのだとすれば確実にそこであり──昼に述べたように、エンジェが試されていることであるようにも感じられる。
一応を述べるのであれば、スヴェナがアリスを庇うことはないだろう。彼女はエンジェ以上にリアリストだから。
「それが私の判断を変えることになるかはわからないし、アリスのどんな秘密が暴かれることになるかもわからないけど……現状を少しでも変えたいと思うのなら、手伝って。……私だって、積極的にアリスを殺したい、なんて思ってないんだから」
「……そうだよな。ごめん、考えを改めてくれ、とか言って……」
「アンタが友達思いだったってだけでしょ。……で。でよ。……どこから着手すべきだと思う?」
アリス・フレイマグナの真実を暴く。
そのために必要な、第一のステップ。
「チビ……は、頼れねえんだよな。何かを知ってる側っぽいから」
「ええ。そして、私達がこの問題解決のために動いている、調べまわっているってこと自体もあんまり外部に漏らしたくない。……今、五家の緊張、結構でしょ」
「
ここでもし、エンジェが……
都合の悪いことに、このコミュニティにはそもそも
「ってぇなると……俺は俺で動いた方が良い、か? 『英雄平民』も知ってる側だから聞けねえし。何か知ってる、あるいは掴めてる可能性があるとすりゃシャニアかシェリーだろ。あの二人なら情報漏洩も心配ない」
「じゃあ、私はアンジーに協力を求めるのと……本家に帰って、フレイマグナについて調べてみようかしら。もしかしたら記録のほとんど残ってない魔法大戦時代に何かがあった、とかかもしれないし」
「あー、そういう歴史書関係は……
先行きは見えない。一寸先は闇。
けれど、最初よりも確実に明るい顔と声色のケニス。
できることがある、というのは。
彼にとって……あまりにも。
「んじゃ早速明日から行動開始だな。……流石に今の時間から女子寮に行くのは気が引ける」
「ええ。くれぐれも見透かされないようにね」
「わーってるって!」
こうしてここに。
アリスの正体暴き隊が発足したのである。
ということらしいよ、なんて言葉を投げかける。
「……これ、本音ですけど。……ケニスさんって余計なことしかしないっていうか。もう……音沙汰を待つだけにさせてくれたら……良かったのに」
「でも君は死にたくないんだろう?」
「それはそうですよ。だから……私は、逃げる気でいたんです。家に帰っても殺される。お姉さまにも殺される。なら、顔を隠して旅に出て……どこか辺境の地でひっそり暮らします。それでいいじゃないですか」
「ま、それが確実な道だねェ」
空中。天上の地ではないけれど、遥か高空に敷いた結界の中でのお茶会だ。
創り変えたテーブルとコーヒーカップにコーヒーを注ぎ、"馬鹿なアリス・フレイマグナ"をやめた少女A'……いいや、"虚構のアリス"と会話をする。
「ちなみにどう思ってますか」
「君の正体が誰かに暴かれるかどうか、かい?」
「はい。……イリスに気付かれてることは、わかってます。けど、『とんでもなく強い平民さん』が何かしら交渉してくれたのも察してます」
「素晴らしいね。なら、君側からはどうかな。特別体験入学生の五人にはそれぞれ秘密があるけれど、それについては」
「どうせ始祖とかでしょう。故意に手を抜く魔法使いの癖は私が一番見慣れてますから」
「ヒュウ、正解」
つまらなそうに。
ガレットを齧りながら、砂糖もミルクも入れていないコーヒーを飲んで……不機嫌そうな声を出すアリス。
「嘘吐きばっかりですね、この学園」
「貴族なんてそんなものだろう?」
「あなたも含まれてるので、貴族に限らないと思いますけど」
それを言われちゃおしまいだ。
「……どういうつもりなんですか、あなたは」
「ん?」
「風の感知でも使えば……私とあなたが学園の敷地内、いいえ、周囲のどこからも姿を消していることはお姉さまに伝わります。シャニアさんとか、感知や検知に長けた人になら、簡単に。……そんなの、"馬鹿なアリス・フレイマグナ"に何かがあるって思わせようとしているようなものじゃないですか。結局敵なんですか、あなた」
「エンジェの直観が君に働かない理由を知りたくてね。こうして君の力の効果範囲から彼女が抜け出した時にどうなるかを見たい。それだけだよ」
「私の力の効果範囲……?」
虚構の神。かつての名をフレイメアリス。
その欠片を宿すアリスにも、彼の神と同じ性質が宿る。
つまるところ、対象者が「嘘である」「存在しないものである」としたことを本当にする力。……ただしアリスに宿る欠片は微小なものであり、そんな過去改変はできない。彼女にできるのは彼女自身に作用する強力な自己暗示と、彼女が吐いた嘘を己にさえも見抜かせない不透明性の装備。
そして──今のところ仮説でしかないけれど、
己でさえ"馬鹿なアリス・フレイマグナ"には開花の兆しなど無いと信じ切っていたのだ。それは恐らく彼女の近くにいたからであり、且つそれほどまでに強力なものだったから。
よって、こうして物理的にアリスをエンジェから引き剥がしてしまえば……その催眠のようなものは解けるのではないか、と。
「お、早速動き出したみたいだ」
「いや……結界敷かれてるせいで風の感知ができないので、見えませんけど。この距離があって目視してるんですか、あなた」
「今更だろう? ……けど、君自身に関わることだし……そうだな」
虚空に手を突っ込み、取り出すはレーザーポインターのようなもの。
それのスイッチをポチっと押せば、テーブルの上に立体映像が映し出される。商品名『PROJECTOR』。いつでもどこでもお手軽に立体映像が楽しめる優れもの。映像を取り込み得る機構や商品と共に使えば、リアルタイムでの描写も可能であり、さらにナノマシンの揺らぎから音も再現できる──『COMPANY』の主力製品の一つ。
一般家庭から軍事利用まで幅広いニーズに応えた機能付きだ。お値段も想像の二十分の一ほど。かなり安価。
「魔力……に、似てますけど。違いますね。……『とんでもなく強い平民さん』、結局あなたは……ああいや、変なこと知って変なことに付き合わされるの嫌なので、訊かないでおきます」
「素晴らしい危機察知能力だ。己に薬を盛る時に発揮できていれば最高だったねェ」
「あの時もわかってましたよ、成功しないことなんて。ただ、"馬鹿なアリス・フレイマグナ"は流されるべきですから」
「ロールプレイが自分の首を絞めるんじゃあ本末転倒だけど」
「返す言葉はないです。面倒なので」
ドライもドライなことで。
さて、映像に映っているのは生徒Cである。
彼は早速、といった様子でシェリーを訪ねたらしい。シャニアの方へ行かなかったのは……本家の人間には「首を突っ込むな」と言われそうだとでも思ったから、とかかな?
肩で息をする生徒C。
明らかに全力疾走してきた様子の彼に、シェリーは怪訝な目を向けた。
「……なんですか朝っぱらから。夜這いの時間はとっくに過ぎていますよ」
「夜這っ!? ば、ん、んなことするわけねーだろ!」
「はいはい、揶揄っただけです。……あー、何か悪巧みですか。防音結界か遮音結界張って中で話しましょうか?」
「お、おう。すげぇ察しが良いな」
「悪巧みならよくやるので」
明け透けなことだ。
そうして、さも当然の顔をして生徒Cを部屋に上げるシェリー。
そこにはさらに当然の顔をして、アンジーがいた。
「っ……ちょ」
「あれ、ケニスじゃない。おはよ」
「あ、えーっと」
「大丈夫です。アンジーちゃん、朝は弱いので」
「いやそういう問題じゃないだろ……」
「加えて言うと、私はアンジーちゃんに、アナちゃんはカナビちゃんに
「え……いやお前らって結局どういう関係なんだ……?」
防音結界も遮音結界も関係ない。
ナノマシンが作り出す大気中のゆらぎを音に変換しているので、何の障害もなく音を拾える。ちなみにこれはMr.カランコロンのアイデア商品だ。開発当時、彼は複数人の女性社員から「変態」だの「最低」だのと罵られていた。
当時は己の中にいた意識の欠片でしかなかったアイリポデパルが親指を立てていたようないなかったような。まぁ、真っ先に思いつく用途がそれ、という話。
ちなみにMr.カランコロンにそういう意図はなく、敵対組織や国の情報を抜く目的で作ったとかなんとか。それはそれで過激だよね、彼。
「まぁ……あまり言いたくはないですけど、私とアナちゃんは五人の中でも悪童的立ち位置なので。学園でそういうことをしないようにそれぞれ監視がついているとかそんな感じです」
「へぇ、そりゃ意外……って、のはともかく……その」
「それと、問題ないと思いますよ。アリス先輩の件でしょう?」
「!?」
「そこまで驚かれなくとも。あなたがアリス先輩のために何かをしようとしていたことは明白で、その期待感に溢れる顔を見たら誰だって思いつきますよ」
まぁねェ。
彼、そもそもがわかりやすいし。……チラっとアリスを見れば、彼女はぷいと顔を背けた。
「アリス先輩の話なら、私もアンジーちゃんたちと話していますから。情報共有やらすり合わせやらを兼ねて、一度話すべきだと思っていました。丁度アリス先輩も『先輩』もイリスちゃんもいないみたいですし」
「ん? アリスと『英雄平民』はわかるが……イリスも関わってるのか?」
「彼女は
「あー。……こういう偏見は無くした方が良いんだろうけど……確かに何か知ってそうだし、その上で言わないってことは」
「『先輩』が口止めしてるんでしょうね」
「お前らって『英雄平民』に従順だよな……。始祖イーリシャ・クライムドールに認められた、以外になんか共通点とか交流があんのか?」
「……まぁ、初めてを奪われた、みたいな」
「すまん、今なんて言った? 上手く聞き取れなかった」
「──……いえ、なんでもありません。……私でも解けない認識錯誤だか偽装だかがかかっているようで、どうしようもないので。……チッ」
シェリーもアナも、そういう系統の余計なことばかり口にするからねェ。フィルター機能をつけてあるよ。
「ま、そういうわけで……アンジーちゃん。アリス先輩の件でケニス先輩が来ました。起きてください。このまま寝惚けたままなら、喉に結界弁張って窒息させますよ」
「……気を付けなさいよケニス。シェリーのこれ、冗談じゃないから。こういうこと言われたら本気でやられるって思った方がいい」
「おはようございます、アンジーちゃん」
「もう少し物騒じゃない起こし方をしてほしかったけど、おはよ。ケニスもおはよ。……っていうか、なに? 朝っぱらから……そんなに溜まってるの?」
「下品ですよアンジーちゃん」
「いやお前が言えたことじゃねーけど……」
意外だな、と思った。
この二人、案外下ネタ言うんだな。己の前ではそんなことしないのに。
……己の前では猫を被っているのだろうか。何のために?
「本題、良いか。アンジーも……巻き込むことになるが」
「私は初めから巻き込んでもよかった、と。そうですかそうですか」
「話が進まねえから茶々入れるのやめてくれ。それに、なんつーか……勉強会でちょっとはお前の人間性みたいなものは把握してんだよ。案外っつーかかなり面倒見いいやつだってな。特に同系列の家の人間に対しては」
「……それ、誰かと間違えてませんか」
「自惚れじゃなければ、俺とシャニアに意見する時、何かを教える時、要望を聞くときは態度が柔らかいんだ。なんでかチビにだけはちょいと厳しいようにも感じるけど、他の……クラスの
へぇ。それも意外だ。
己では気付けない機微というやつだねェ。スヴェナはまぁ、本物ではないから、という理由だろうけど……『家族計画』なんてものをやっておきながら、同族には優しいのか。
いや、やっているからこそ、なのかな?
「やるじゃないケニス。シェリー、照れてるわよこれ」
「う、うるさいですね。本題に入るんでしょう! ……アリス先輩のこと。まずは情報のすり合わせからしましょう。いいですね!」
「おう。ありがとな、シェリー」
「録画できる系の何か常備しておけばよかった……全員に録って回したい」
「そこ! うるさい!」
安心しなよアンジー。
商品『PROJECTOR』の基礎機能に録画はあるから。いつでも見直せるよ。
「……意外、ですね」
「うん?」
「イリスには見抜かれているのはわかりましたけど、他の始祖が集まって会議? をして……見抜けなかったんですね、"馬鹿なアリス・フレイマグナ"のこと」
「ああ、だからそれが君の力なんだよ。ま、いいから続きを見ようじゃないか。エンジェの方は……書物庫で書物を漁っているだけのようだから、まだ動きが無いし」
「お姉さまも早起きですね……。朝一番で本家まで……しかも魔物車を使わずに飛翔して帰ったんですか。……はぁ、そんなに救う価値ありますかね、"馬鹿なアリス・フレイマグナ"は」
「己にはなんとも。持っている感情は無に近いよ」
「でしょうね」
あるいはそれで、エンジェが冷酷な魔王になるのだとしても。
スヴェナとイリスがエンジェを止めて、君を逃がそうとするのだとしても。
君が虚構の神であること以外、興味は無いからねェ。
──もう少しこの不穏を楽しもうじゃあないか、学生諸君。
お友達を救いたいのなら、ね。当人が一切を望んでいないのだとしても──それは美しきことだと思うよ。是非とも輝き、灼いてくれたまえ。