魔法使いたちの骨肉相食む血筋争いが見たい   作:reverofllaF / 永遠下降

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Sin18-4.「魔法大戦の兆し」

 揉め事は沢山あった。

 アリスのこと、ケニスのこと、二人の前世の話。

 フレイマグナの籍を捨て、新たな姓を受けること。

 デルメルクランの名を捨て、ディンドコンゲンスを名乗ること。

 蟠り、憤り、説明説明説明説明……そういった「揉め事」の全てがようやく解決し。

 

 魔法大戦が、開幕の音を告げるのである。

 

 

 結局の話、ということだ。

 アリス・フレイマグナのことが無くとも魔法大戦は起きていた。それを勘違いしたままに母親Aと父親Bが会合へ臨んだことは間違いないが、次元空間(デルメルサリス)肉体強化(フィジクマギア)の間には最初から修復不可能な亀裂ができていて、四大元素(エレメントリー)から何を切り出しても切り出さずとも……肉体強化(フィジクマギア)側が宣戦布告を行うつもりだったのである。

 始祖からの脱却運動により、始祖への同調を行う本家の声は小さくなっていて、分家の血の気は盛んも盛ん。

 そして次元空間(デルメルサリス)肉体強化(フィジクマギア)のどちらもが自身の魔法を、強さを過信しているが為に、他家の動きを気にしない。四大元素(エレメントリー)の癒着。死霊病毒(ネクロクラウン)の諫言。それらすべてに頓着なく魔法大戦の開戦を宣言した。

 

 驚くべき、あるいはそうであると思うべきであったことが一つ。

 このメリットの無い戦いに静観を決め込むと思われていた聖護星見(クライムドール)が声を上げた。──肉体強化(フィジクマギア)と対峙する、という形で。

 完全な孤立無援となって尚肉体強化(フィジクマギア)は言葉を取り下げず。

 

 第五次魔法大戦はここに始まりを迎えた──。

 

「と、いうわけらしいね」

「簡単に言うわね……かなりの割合、アンタのせいに聞こえてならないんだけど」

「アリスとケニスの件は確かに半分ほど己のせいだ。でも、アリスたっての希望でもあったし、ケニスの覚醒は彼自身が克己したこと。そしてそのきっかけを作ったのがカナビ……もう君も正体を理解している始祖ビアンカ・フィジクマギアだ。つまるところ、今回の魔法大戦に始祖は一切の関わりを見せていないし、己も聖護魔導学園内で起きたことにしか関与していない、ということだよ」

「釈然としない……」

「戦争なんてそんなものさ。そこに大義名分なんか存在しないのだからね」

 

 当然ながら、聖護魔導学園からはかなりの数の退学者が出た。

 戦力として家に帰る者、聖護星見(クライムドール)の傘下たる学園に居させるわけにはいかないという意向によるもの、他様々な理由はあったけれど、前回前々回の事件に比べて学園側に非が無いため、教師陣が信頼回復に奔走することも無し。どころか教師陣もかなりの数がいなくなり……という状況。

 本来であれば、戦争開始時点で聖護魔導学園は休校になるべきだ。

 けれど。

 

「……このまま四大元素(エレメントリー)本家に帰ったって、私のユメは叶えられない。それは、わかるでしょ」

「ああ。君は単なる次期当主……エレメントリーの一戦力に数えられるだけだ。アイシア・エレメントリーやエンゲルグ・エレメントリーがそうさせるかはわからないけれど、君の王になるユメは遠のくだろう」

「つまり、よ。……この戦争、私が終わらせようと思うのよ。それについて、アンタはどう思うワケ?」

「大言壮語甚だしいと、他の誰か相手であれば言うだろう。だけどエンジェ、君にならできる。加えて言うなら──君に協力する者がこれでもかといると、己はそう見ている」

 

 だろう? と目を向ける先にいるのは、今回の件に関わった面々だ。

 

次元空間(デルメルサリス)が次期当主、シャニア・デルメルサリス。現当主及び私の意思を無視しての会合、交渉決裂について、断固たる意思を以て分家を糺す必要アリと見ています。よってここに、あなた……エレメントリーの御令嬢、次期当主、エンジェ・エレメントリーの覇道へ正式に参加することを宣言しましょう」

「もう正体が明かされている、という前提で話しますが、脱却運動によって私の手を離れた次元空間(デルメルサリス)の子供達が何をしようと何をしなかろうと……関係が無い、とは言っておきます。今の私はシェリー・クローヴサリス。次元空間(デルメルサリス)が分家の一つであると同時、未だ"一度も過ごせていない青春を謳歌する"という目的を戦争に阻害された一生徒として……この戦争の早期解決を望みます。それがエンジェ先輩、あなたの王道によって成されるものであるというのなら、多少は手も貸してあげますよ」

「スヴェナ・デルメルグロウ。一応次元空間(デルメルサリス)の一員として言葉を発しますが……エンジェ。あなたがその道を進むこと自体を止めることはありません。ですが、最中において道を(たが)えそうになった時、『一応平民の人』はあなたの支えとはなってくれないでしょう。ですから、私もあなたの側にいます」

 

 次元空間(デルメルサリス)三人の意向。ちなみにシャニアは現当主へ同じことを伝えているらしいけれど、返答は「あなたの思うままにやりなさい。戦争が終わり次第、あなたに当主の座を譲る予定ですから、死ぬことだけはしないように」というものであったらしい。

 四大元素(エレメントリー)の二人のような特異性は持たないのかもしれないけれど、人の親としては優れているのかもしれないね。

 

死霊病毒(ネクロクラウン)が分家、アッシュクラウンが当主、ドクラバ・アッシュクラウンとしての発言をするよぉ~。……此度の戦争は僕たちにはあまり関係のないものだからぁ~、積極的には動かないつもりさぁ~。けど、エンジェ・エレメントリー。君は僕たちの生徒だからねぇ~。聖護魔導学園を安息の地と定めるのならぁ~、治療や手助けをしてあげようねぇ~。加えて降りかかる火の粉はちゃんと払わせてもらうよぉ~」

「ね、ネクロレアニーが当主、ドリューズ・ネクロレアニー。ど、ドクラバ先生に同意、す、するわ。あくまで私達は、静観。ただし、敵視されるのであ、あれば、やむを得ないこともし、します。加えて……ダルク・クロノミコナとい、いう、此度の戦争のきっかけとなったみ、身内の、処断。それについては、せ、積極的にやらせてもらうつもり、り」

「アナは『せぇんぱぃ』の後輩ですからぁ、『せぇんぱぃ』がエンジェ先輩のために動くのなら、わたしも追従しちゃいますよぉ。──あ、大丈夫だよー? 基本的にはネクログレイブとしての魔法しか使うつもりないからー」

 

 死霊病毒(ネクロクラウン)三人の意向。始祖Dはここにいる面々にとって、割合不俱戴天の仇……ではあるけれど、それはそれこれはこれらしい。監視を怠るつもりはないとかなんとか。ま、始祖Dの目的は死体集めだろうし、直接戦争を操作するようなことはしないだろう。

 

聖護星見(クライムドール)が当主、イレイア・クライムドール。そも、当主たる私を差し置いての会合への参加、及び私へ一報の一切を入れなかったこと、意図的に未来視の穴を作った痕跡があることなどから、私もまた分家への激しい糾弾を行うつもりです。私達はこういう戦いへは参戦してはいけない。にも拘らずのこれは、偏に始祖からの脱却運動が関連していると考えています。……まぁその始祖がここにいる、というのもおかしな話ですが、彼女は今一生徒ですし、信仰にも似た形で信頼していますし。私は始祖からの脱却運動自体に反対の意を示すと共に、この馬鹿げた戦争を止めんとするエンジェ・エレメントリーさんの意思を尊重します」

「私の基本スタンスは聖護魔導学園(ここ)を護ること。そして私の目的のために、エンジェ先輩たちから離れないこと。加えて……少しばかり()()()()()が見えましたから、今は何も言わず、動かず、黙って見ているつもりです」

「……ん、ああ俺そうか、聖護星見(クライムドール)の系譜扱いか。……ま、そうだな。俺は宣言通り、ガンガン前線へ行くつもりだ。アリスを護ることを第一に、だが。んで……所属する陣営は、どうせ両親も死んじまってるからな、ここ、聖護魔導学園を一陣営として見ることにする。そりゃそのままエンジェの嬢ちゃんの陣営でもあるのかもしれねぇが、立場を明確にするっていうんなら俺は聖護魔導学園所属だ」

 

 聖護星見(クライムドール)三人の意向。ちなみにイレイアが言った「未来視の穴」というのは、未来視の盲点、死角を複数の未来視者が意図的に作るノイズのことだ。グリーフィー以外の聖護星見(クライムドール)が己を正しく見ることができないのはこの原理に基づくものがある。彼女は全体を俯瞰しているから関係なく見ることができる……のだけど、普通は無理だからねェ。

 しかし、聖護魔導学園所属と来たか。それは中々面白い回答だ。

 

「意思表明なんてするまでもないけど、四大元素(エレメントリー)が次期当主、エンジェ・エレメントリーも……そうね。聖護魔導学園所属、ってことにしておくわ。父さまや母さまには悪いけど、私は四大元素(エレメントリー)のために戦うワケじゃないから。それに私だってまだまだ学生生活楽しみたいし。王様になりたい、ってユメはそのままに、私は私の道を征く。そのための拠点になってくれるっていうんなら、そんなにありがたいことはない。ってワケで、お世話になるから、よろしくお願いします、先生たち」

「私はまだ一応四大元素(エレメントリー)の誰か、って扱いで発言しますけど、今回の戦争のきっかけが私みたいなものですからね。肉体強化(フィジクマギア)に初めから開戦の気があったのだとしても、責任は果たします。あとはまぁ……ケニスと同じで、戦いたくてうずうずしている私がいるのも事実でして。感情を取り戻したら、死にたくない、が殺されるくらいなら打って出る、に変わったのは……良いことなのか悪いことなのか、よくわかりませんけど」

「私は普通に参戦するわよ。エンジェと戦えそうって話で色々作戦考えてたの、全部パァになっちゃって不完全燃焼だし。分家の動きには私だって言いたいことあったしねー。何よりエンジェの王様になるとかいう夢、いいじゃない。ケニスの奮起もエンジェの夢も、こう……私の少年心をくすぐるっていうか。始祖からの脱却運動で責任ある立場じゃなくなったから、余計に好きなことできるって考えたらやりたいことがたくさん! って感じ」

 

 四大元素(エレメントリー)三人の意向。うん、バーサーカーだね全員。この状況を一番楽しんでいるように思うよ。

 

 そして。

 

「いやぁ……あはは……まぁ、最後は……あたしになるとは思ってましたけど。……カナビ・フィジクラッシュ。そして始祖ビアンカ・フィジクマギアとして発言しますね。──気に入らないことがあったから、全員を巻き込む戦争を切り出し、他の解決策を見出さない。あたしはその結果を出した肉体強化(フィジクマギア)という分家の全てに見限りをつけた。本家の子達が頑張って鎮静化を図ってるのは知ってるけど、もう無理かな。──あたしは、あたしという個人は、血筋を巡って争い、扇動されたことであるからと自身の功罪を棚に上げ、果ては戦争をと望んだ者達へ制裁を下すよ。横暴だと、理不尽だと言われても……知らないかな。たとえこれで肉体強化(フィジクマギア)という血筋の全てが絶える結果になるのだとしても、あたしは止まらない。もう我慢は終わりにするから」

 

 一番強い意思表明だった。感情が乗っていた。

 誰よりも優しいのだろう始祖Bは、誰よりも冷徹な判断を下したわけだ。

 

 であれば……と。

 ステッキを地に突く。

 

「イレイア。先程から何度か話に出ているように、ここ聖護魔導学園を一つの陣営として定めることに異はあるかな」

「……具体的な言葉を所望します」

「つまりだ。たくさんの血筋、たくさんの思惑を持つ者の集うこの聖護魔導学園を、聖護星見(クライムドール)の所有する学園、ではなく、『聖護魔導学園』という陣営に……フォーマットを合わせるのなら、一つの家にする。はじまりの五家をはじまりの六家へと変える。このことに何か異存はあるかと問うているよ」

「ハ──いいじゃねえか。『英雄平民』……いや、『愚者』と呼ばせてもらうがよ。俺は賛成だ。そうなりゃ色んなことを気にしなくてよくなる」

「独立するってこと? ……ま、いいわね。私の話に巻き込んでるから強くは言えないけど、賛同してくれるなら……そっちの方が後腐れも無いだろうし」

「……実を言うと、こうなることは視えていました。『最上級生』さん、あなたを視ることはできませんでしたが、この学園がこうなることは……フィニアンを失ってからの未来視で大枠を把握していたんです。それでも分家に期待した私がいて……いえ、これ以上は愚痴なので良いですね。……あと数人ほどこの陣営に参戦することが視えていますが、聞いておきますか?」

「不要だよ、イレイア・クライムドール。それよりも答えが欲しい。己の問うたことへの答えが」

「ああ……はい。異存も異論もありません。では宣言しましょう。どうせ始祖もいませんし」

 

 傾聴させる。

 世界の魔力。ナノマシンへ、それを伝播する。

 

「これより聖護魔導学園は一つの家として機能を始めます。異のある方は今の内に退去を。その分の賠償などは全て正しく行いますので。ああ勿論、戦争終結後、元の家へと戻っていただくことも勿論問題ありません」

「誰も出ていくことはないと視えていたのでしょう、イレイア。余計な言葉は不要ですよ」

「……こう、余韻というか、情緒というものが普通の人間にはあるんですよ、()()()()()

「決まりだ。では、そうだな。名前を決めようか」

「名前?」

 

 問いに、大仰な頷きを返す。

 

四大元素(エレメントリー)次元空間(デルメルサリス)肉体強化(フィジクマギア)死霊病毒(ネクロクラウン)聖護星見(クライムドール)。それらの混成たる家には、相応しい名前が必要だろう。五家連合、なんて無機質な名前にはしたくないからねェ」

「ふむ。……良いですね。なんだか学生に戻った気分です。……ちなみに何か案はあるのですか、『最上級生』さん」

「あるにはあるけれど、当然エンジェに寄り添った名前になるよ」

「……ちょっと、恥ずかしいのはやめてくれる?」

「一応聞くくらいは良いのでは? 気になりますし」

「私も気になります」

「二人とも、なんでこういう時だけ味方してくれないワケ……?」

 

 なんでだろうねェ。

 では僭越ながら。

 

覇道天還(FLEDGELORD)。……Fの名は、聖護星見(クライムドール)にとっては、複雑かな?」

「いいえ、気にしませんよ」

「騎士の一族は"名の軛"には誇りを持ちますが、姓の無いことへは然程何も思っていないので問題ないかと」

「そもそもフィジクマギアだってFだろ。何を今更」

「フェイククラウンとかもFだからねぇ~。本当に何を今更だねぇ~」

 

 ……これでも気を遣ったつもりなのだけど、難しいね、人間というのは。

 

 なんにせよ……我ながらフラッジロードは良い名前だと思うよ。巣立ちの王。転じて、翼の生えた覇道。

 エンジェ(ANGEL)が征く名前にはぴったりだろう。己の……ルリアン(LULLIAN)ではない方の名前も含めて、ね。

 

「とはいえ、これは今ここで定めたもの。各家に周知されたものではないから……今は一組織としての名前と考えた方がいいかもしれないね」

「はいはーい! じゃ、私が一番乗りで名乗らせてもらいます! フレイマグナの家名は捨てるわけですし、どこにも属していない名前であるのならぴったり、ですから」

「お、じゃあ俺もだな。何よりFで始まるのは俺達にとっても好ましい。ディンドコンゲンスなんて家は没落したんだ、無くてもいいだろ」

「……一応言っておくと、己はフリスを意識したわけではないからね?」

「わかってるわかってる。お前達にもなんか因縁があるんだろ? だが、何十万年経ってもフリスは俺達の大事な名前でさ。そこは理解してくれ」

「ふむ……では、私もフラッジロードを名乗りましょうか。デルメルグロウ自体、有って無いような家なので」

 

 この流れを受けて、だろう。

 始祖たちが顔を見合わせる。

 

「脱却運動で捨てられちゃったし、私もそれ名乗るわ。ま、公的な場ではアンジェリカ・エレメントリーに戻ってあげてもいいけど、エレクトニカロルスにこれ以上迷惑かけるのもアレだし、なんか変な動きしてるっぽいし、この名前は今日で終わり。アンジー・フラッジロード。新しい名前、ね」

「ネクロクラウンを捨てる気はサラサラないけどー、『せぇんぱぃ』が作った名前を名乗らないとかないのでー、わたしも今日からアナ・フラッジロードでーす」

「……クローヴサリスという家は存在しません。ですが、この響きは私にとって大事なもの。偽名につけておくのは勿体ないので、ここに棄却し……シエル・デルメルサリスはそのままに、シェリー・フラッジロードを名乗るようにします」

 

 それは意外だ。上二人はともかく、君はクローヴィーに戻るものだと思っていた……けれど、そうか。

 己以外にはクローヴィー姓を名乗っていないんだったね。自らの胸の内に秘す名前、になるのかな。

 

「本家当主はイレイアがいますし、私もイリス・フラッジロードに改名しておきましょうか。いつまでもイリス・クライムドールだとイレイアの肩身が狭いだろうな、と考えていたので」

「いえそんなことは思ってませんでしたけど……止めはしませんよ。そんな勇気ありませんし」

「あたしは……まだフィジクマギアでいいかな。全てを誅戮し終わったら、改めてそっちを名乗るかも」

「……しっかし、そうなると……俺達がフラッジロードの始祖になるのか?」

「形式的にはそうだけど、なに、ケニスあんた、始祖になりたいの?」

「いや、言ってみただけだ。あんたら始祖を見てると堅苦しそうで不自由そうで、罷り間違ってもなりたいとは思わねーよ」

「前世を思い出してからっとにいい度胸になったわね……」

 

 手を打つ。

 空気が弛緩してきたからね。

 

「己達のスタンスの表明が終わったところで、今後の動きを考えていくべきだと思うのだけど、どうかな」

「……スヴェナ。今、私感動してるんだけど、伝わってる?」

「一応は。私も……『一応平民の人』が最も常識的な行動を取った、ということに驚きを隠せません」

「うわなんかそう言われたら途端に恥ずかしくなってきた……」

「アンジーちゃん、エンジェ先輩と戦うかも、ってなってからずーっとテンション高かったですからね。一度落ち着くと自分が恥ずかしくなるの、わかりますよ」

「そういう話じゃないんだけど」

 

 うん。人数が多いと纏まらない纏まらない。

 教師陣、こういう時こそ君達が音頭を取るべきじゃないかな。……なぜそっぽを向くんだい?

 

「動きも何も、戦闘が起こってる地域に突撃して喧嘩両成敗、戦ってる奴ら全員ぶちのめして終わり、でいいだろ」

「ケニス、ちょっと頭悪くなった?」

「少なくともお前の考えてるような意味では言ってねぇよ。現状の俺達は血筋に関係のない勢力で、肉体強化(フィジクマギア)次元空間(デルメルサリス)のどちらのしがらみにも関わってねぇ存在だ。それがどっちかに加勢してみろ、余計面倒になるのは火を見るよりも明らかだ。だってんなら俺達は第三勢力として戦場に出て、どっちもの敵になってどっちもぶちのめすのが一番なんだよ。圧倒的武力で魔法大戦を鎮圧した、って功績が残った方が今後のフラッジロードって家にとっても益あることだろうしな」

「……馬鹿は私の方だった、と。……また"馬鹿なアリス・フレイマグナ"……"馬鹿なアリス・フラッジロード"に戻ろっかなぁ、色々考えるの面倒臭いし」

「何言ってんだ、お前にだって考える頭があるんだから、俺と一緒に考えんだよ。効率良く、んでもって最大限の利益を生む結果をな。あくまでエレメントリーが得をするんじゃなく、フラッジロード、そんでエンジェの嬢ちゃんの得になることをする必要がある、ってのは忘れるなよ」

「はいはい。じゃあ……久しぶりのブリーフィングしよっか。……ね、『愚者』。ランビちゃんはいないの? あの子がいるとブリーフィング楽なんだけど」

 

 ランビ?

 ……えーと、……あー、確か奇械士(メクステック)にそんな名前の人間がいたような。

 

「いやあのね、君達の転生は例外中の例外なんだよ。そう簡単に前世持ちが出てくることはないと思ってほしい」

「そっか、残念。それじゃ私達が舵を取らなきゃね。ケニス、拠点防衛関係のことはそっちでお願い。私は戦場に出る子を集めて、やることのリストアップやってくから」

「あいよ。つーわけで、聖護星見(クライムドール)の二人。……ああまぁイリスはフラッジロードか。んで死霊病毒(ネクロクラウン)のやつらもこっち来てくれ。聖護魔導学園自体を固める案出しをする。ついでに誰か一人、四大元素(エレメントリー)の魔法使いで聖護魔導学園の陣営化に協力的な奴がいるとありがてぇな。全体連絡を任せたい」

「誰か大陸図持ってる子いない? 今から勢力図を書いていくから、都度疑問があったら言ってね。ちゃんと答えてあげるから」

 

 呆気に取られるはケニスとアリス以外の面々。

 慣れている。五千年を生きた始祖でさえも、だ。ま、彼女らは戦争へ積極的に参加する、ということが無かっただろうからね。

 

 ケニスとアリス。あるいはケニッヒとアリア。

 歴戦の猛者の中でも、しっかりと頭を使って戦い抜いた二人。ひとたび戦場へと赴けば一騎当千の活躍を、そして拠点にいる間は頼れる上官に早変わり、だ。

 

「エンジェ、二人のことをよく見ておくんだ。君がいつか王様になりたいというのなら、ああいう動きも大事になってくるからね」

「……ええ。今……凄く、尊敬の念があるわ。……生徒でも、魔法使いでもない……あれが、戦士……なのね」

 

 言葉には「ああ」と返して。

 

 では、こちらからも開戦を宣言しよう。

 己達フラッジロードは、圧倒的な武力を以て──君達を押し潰す。ただ、安心したまえ。

 臣民のいない王道に意味はない。その全てが殺戮されるということはない。

 

 尤も、罪ある者は、それを枕の下にでもしまっておくことをおすすめするよ。 

 エンジェの博愛主義がどこへ向くかは──己でもわからないからねェ。

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