魔法使いたちの骨肉相食む血筋争いが見たい   作:reverofllaF / 永遠下降

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Sin22-1.「演算機構の幕引」

 あの時、己は未来より現れた己の必死さを笑った。どうしてしまったのだと。

 けれど、どうだ。先程の叫びは……ああ、必死だったのだろう。エンジェ。エンジェ。その名を呼んで。

 

「滑稽、かな」

「……」

「どうしたんだい古井戸。そんな難しい顔をして。……ああ、君達の願いを叶えることに支障はないよ。今起きたことの全責任を君達に擦り付けるほど自暴自棄になっているわけではないからね」

 

 全天を覆い尽くす枝。

 空は暗く低く、そして脈動している。

 

 アルター・コルリウム。

 美しい世界のために奔走して……掴み取った結果がこれで。

 君が満足だというのなら、もう、別にいいさ。

 

「それじゃあやッぱりまだ、欠陥品さね」

「……何の話かな」

「人間性のことさ。俺達が最後の最後、お前さんらの逢瀬を妨害した理由は、お前さんを弱体化させるため。お前さんは既に上位者とは言えない。道具とも言えない。その状態へ持っていくことが第一段階。……たぁいえ、それくらいならあの時点の俺達にもできたことだ」

 

 あの時点。

 己が彼ら彼女らと取引をした時点。あるいはその後、グリーフィーと彼らが接触した時点。

 それが……そうだとして、なんだ。

 

「愛情を自覚し、悲哀を自覚し、真楽をも自覚できた。今のお前さんは限りなく人間に近い。だが、足りねえ」

「……」

「来いよ、『円盤の亡霊』。殴って蹴って、全てを目覚めさせてやる」

 

 戦う理由など無い。

 何かを予言されているのだとしても、何かしなければならないことがあるのだとしても。

 

 己はもう、いい。

 やる意味を見出せない。

 

 ……蹴りが来る。

 それを避けずにくらって、吹き飛ばされる。身体が浮いている最中に、古井戸が追いついてきて、背中に膝蹴りが入れられた。されるがままに身体を折って成り行きを見守る。

 

「モード・エスレイム」

 

 全身に衝撃波が伝わる。たったそれだけで肉塊に……バラバラの肉塊になってしまいそうな衝撃。

 追撃にと、高く高くへ跳び上がった古井戸のかかと落としが頸部へ直撃した。

 

 だから、なんだろう。

 外側の肉人形も内側の本体も、単純な物理攻撃でやられるほど軟ではない。こんな連撃に意味はない。オールドフェイスの砲弾をしても己は滅ぼせない。スファニア・ドルミルの特効薬を使っても消滅はしない。

 

 それでも嬲りたいというのなら好きにすればいい。己には、もう。

 

「……知ってたことだが、腑抜けたにも程がある。仕方ないさね、予定通り──エンジェ・エレメントリーの肉体を破壊する、か──ぁ?」

 

 最高硬度の金属同士がぶつかったような音が響いた。

 出どころは……古井戸の草履と、己の杖先。

 

 遅れて……大気と魔力が古井戸のサイドを通り抜ける。

 

「っ、つ゛……!」

「折れたか? なら俺に代われ」

「折れちゃ、いないさ。ただ……ひっさしぶりの痛みに驚いただけさ」

 

 杖を引っ込めて、両の手を閉じたり開いたりする。

 今のはなんだ。

 抵抗する意味など無い。フレデリックの頼みを思えば古井戸を殺すなんてアブソリディエだ。

 そんなこと、己が一番よくわかっているはずなのに。

 

「しっかし、どうしたよ。お前さんが愛したエンジェの嬢ちゃんは魂の方だろう? 肉体なんぞどうだっていい。違ったかいね?」

「……いや、その通りだ。今の誤作動は……見逃してほしい。己に君達への害意はない」

「ああさ、んじゃそこを動くな。こうなっちまった以上、純度の高い四大元素(エレメントリー)の血はこの先必要不可欠。肉体から血液を全て抜いて保管しないといけねえのさ」

「血……」

「ついでだ、シャニア・デルメルサリスの血液も頂こう。どこぞに転がってるだろう他の奴らの血も。ありがたく多種多様で見どころのある血筋ばかりがお前さんのもとに集まっていたから、これならここから立て直せるってもんだ」

 

 心臓が鳴る。そんな機能、つけていないのに。

 冷や汗が出る。そんな機能、つけていないのに。

 嗚咽が漏れる。そんな機能、つけていないのに──。

 

 高く高く、古井戸の足が上がる。

 いつの間にか彼は仰向けに倒れているエンジェの肉体のもとにいて。

 その足の落下地点は……彼女の首で。

 

 ああ。

 ギロチンの刃が、彼女を──。

 

 

 

 

 世界が揺れる。

 世界が震撼する。

 謳い上げろ、その生誕を。

 喜び竦め、その輝きに。

 刻め刻め刻め刻め。

 情報録に言葉を刻め。

 許されざる盈虧。

 鎖されし瘴癘。

 

 パタン、と。

 この時代には無い本が閉じられる。

 

「……はぁ。結局起きるのか。……未来視たちの最後の抵抗といったところだね、当然に」

 

 ある国。ある尖塔。

 命の選別を終えた大犯罪者。

 

 誇大妄想家アルター・コルリウム。天才であり傑物であり怪物であり英雄であり救世主であった彼は、砕けた窓から見る世界に溜息を零す。

 それは彼が考えたものと全く同じだった。それは彼が案じたものと全く違っていた。

 

 世界の滅亡を予期し、そのために必要なすべてを用意した彼の、ありとあらゆる理想を踏みつぶしていく『愚者』。

 これなるは生存戦争。どちらが吊るされた男を冠するかの勝負。

 

 

 

 人々は祈っていた。

 突如として消えた隣人。暗い空。低い空。

 魔王の顕現から二か月で起きた様々な兆候。

 祈る神は統一されていない。けれど、彼ら彼女らが祈るのは形あるものに対してではない。

 

 どうか厄災が、何事を起こすこともなく、通り過ぎますように。

 そう願うのだ。

 

「──うひゃー、こりゃ壮観。確かに世界滅亡だ。『忘我の繭』が襲ってきた時も充分世界滅亡だったけど、こっちの方がよっぽどとんでもないね~」

「ああ。しかし、君はどの場面に至っても軽いのだね」

「それがオレっちの唯一のアイデンティティだからね~。……しっかし本当に座して待つだけでいいの? コレを乗り越えられなきゃ、オレっちとアンドりゅんの仕込みも意味なくなるわけだけど」

「私と君の二人ではなく、私達全員の準備、だよ。……こればかりは人々に倣い、祈るしかないだろう。なにせ私達には文字通り手も足も出ない領域だ」

 

 人々は祈っていた。

 ただ一柱、脳が認識を拒むほど美しい黒き稲光。

 鬱屈としつつあった天に、ただ一本、一切染まることなく在り続ける絶対へ。

 

 周囲を吹き荒れるは隷従した魔力。

 覆い潰す闇をも覆い殺す黒。漆黒。揺らめきを持たぬ真黒。

 

「珍しい言葉を吐くけれどね。……君の勝利を願っているよ、『詐欺師』」

「願う相手違わね~? 応援するなら実際に対峙してるやつらだろ」

「合っているさ。これは結局、多分に漏れない話。私達がそう求められたように──」

 

 それでも世界は。

 

「克己こそが、求められたことなのだから」

 

 今、なお。

 

 

 

 少女は嘆息する。

 こうなることは事前に伝えられていた。伝えられた上で忘れさせられていた。

 そうすることで未来への変動率を消し、且つ迅速な行動ができるように、と。

 

 任せてくださいと言った。諦めないために諦めますと言っていた。

 

「……理屈は一応わかりますが、だったらそうも全力を尽くさずとも良かったのでは? あなた達は忘れていなかったのでしょう、一応」

「え、えへへ~……。……本気で暴れてもいい空間、嬉しくて」

「カナビちゃんにおなじーく~。いや楽しんだ~」

「しっかし凄いわねあんた。始祖五人の力を結集させても破れない結界とか、あんたでもなれるんじゃない、魔王ってやつ」

 

 存在しない外殻を叩きつける轟雷。

 一瞬眉を顰め、さらに堅固な結界へ作り替える少女。

 

「四人の結集の間違いでしょう。加えて偽装のために力の大半を外へ置いてきたあなた達に勝ったとて、然程の喜びはありませんよ、一応」

「謙遜はそれくらいにしてくれますか。力の大半を失っているからといって二十年も生きていない魔法使いに負ける、なんてことがそうそうあるはずがないでしょう。魔法とは想像力。魔力量は二の次。……あなたはここにいる五人の少女よりも強い幻想を抱いていた。それだけです」

「少なくない皮肉が混じっているように聞こえるのは、先入観のせいなのでしょうね、一応。……全てわかった上で再度問います。私達は……彼を止めにいかず、本当に良いのですか。あの三人が負ける可能性はゼロではないのでしょう」

「ゼロじゃないどころか、フィフティフィフティじゃなかった?」

「欠片でも理性が残ってたらアウトらしーね~」

「それでもあたしたちにはやることがあるから」

 

 やること。そんな特別なことではない。

 そしてそれをやるためだけに、始祖と呼ばれる者達はその身に宿る魔力を使い果たした。曰く、少しでも残っていたら勘付かれるから、と。

 

 少女は嘆息する。

 

「無事でいてください、エンジェ。あなたの現状を私はよく知っていますが……それでも息災を願います。一応ではなく、本心から」

「あ、あはは……そうやって妹さんを案じている顔は……確かにあなたらしいですね。ずっと見てきたのに……気付けませんでした」

 

 彼女はもう一度、深く深く。

 

 

 

 

 オ、オオ、オオオ──。

 声か咆哮か、慟哭か悲鳴か。

 ソレの発する音は、遠く遠くまで響き渡る。

 

「……想像以上にデカいなこりゃ」

「昔戦った原初の五機に勝る大きさだ。でもま、燃えてるわけでも跳びはねるわけでもない」

「そりゃそうだがね。スファニア、お前さんこういうデカブツ退治の経験についちゃブランクがあるだろう?」

「お前達と共闘したデカい機械の花を除けば、確かにそうだな」

「ああ……なんだっけ、明日天気になあれ(ドゥマニル・テンポ・エピーロ)、だったか。まーあれも確かにデカブツっちゃデカブツか」

 

 地面につま先を向け、カツカツと草履を履き直す古井戸。

 突撃槍カイルスを撫で、正眼に構えるスファニア。

 

 二人の目の前には──割裂(きれつ)の巨人と、そう表現する他の無いナニカがいた。

 

 天を衝くほどの背丈。

 その身に肉はなく、肌もなく、構成物は真っ黒な割裂だけ。それが神経系のようにも見えなくはないが、時折覗く裂け目の奥に広がる無限の星海が、この割裂がそう単純なものではないということを知らせていた。

 

「統括演算機構『円盤(おもいで)』。……以前現れた巨大演算機構『台本(てのひら)』、どこぞの馬鹿が作った終末演算機構『末日(まどろみ)』。それら二つと同じく、既存の不可思議な機構……機奇械怪(メクサシネス)廃徊棄械(クラッドオレオム)とは似ても似つかない、しかし機械である存在。三機はそれぞれに全く別の起源を有するが、二つの共通点を有している。一つは……なんらかの形で人類の命運にかかわるものである、ってのが、グリーフィーの嬢ちゃんの見解」

「その辺興味なくて聞いてなかったな」

「ま、実際に知ってたところでなんだって話さね。んでもう一つが──」

 

 散開する。

 否、正確には古井戸だけが飛び上がっていて、スファニアはそのままの位置にいる。

 

 巨体に見合わぬ速さでの拳。その直撃を彼女は受けた。

 

 受け、止めた。

 

「モード・エルヴァニアティアム」

 

 さらには──弾き返す。

 

 大きく仰け反る割裂の巨人。ただしそれだけだ。

 倒れることもなければ、その拳に傷がついているということもない。

 そこへ流星が如き蹴り……古井戸の蹴撃があっても、やはり無傷。

 

 掴まれる、あるいは振り払われる前に跳躍し、スファニアの隣へ戻ってくる古井戸。

 

「硬ったいね」

「ああ。エルヴァニアティアムは受けた衝撃を倍にして返すモードなんだが、それで傷一つないのはどういうことだ」

「どういうことも何も、無手だからさね。グリーフィーの嬢ちゃんも言ってただろ? 杖を作り出す前に決着をつけることを推奨する、ってさ」

「聞いてなかった」

「っとに……。……んで、お互い今の一撃で大分持っていかれただろう? コーティング、忘れなさんな」

「ああ」

 

 コーティング。

 それは黄金色の液体。その色が指し示すはオールドフェイス。

 

 ──"良いですか。自分が視た限り、割裂の巨人に走る無数の黒は、口です。魂あるモノがそれに触れたが最後、瞬時に捕食されます。よって、高機動力を持たないピオさんはこの戦いに参戦できません"

 

 グリーフィーの言葉。

 古井戸は対策を聞いてしっかりと作戦を練ってきた。きたし、ちゃんと共有もした……のだが、どうやら彼の隣の少女はその一切を聞いていなかったらしい。

 肩を竦めもしようというものだ。

 

 ──"最初、割裂の巨人は理性を持たぬままに暴れるだけです。その状態で倒すことをおすすめします。もしアレが杖を取り出した場合、攻撃の威力や速力が人間大と比例するほどになると思ってください"

 

「話は聞いてなかったが、俺も殺し方は考えてきた」

「なら構わないさ。どの道俺達に連係なんて無いからな」

「ああ。で、もう一つの共通点ってなんだ」

「……大事だから聞いておきなよそれくらいは」

 

 瞬きの合間に巨体が消える。

 

「次お前の番」

「そりゃ中々手厳しい、なァ!」

 

 隕石を思わせる拳の落石。

 それを蹴りの一本で受け止める古井戸。

 ──ただ、どうしようもない体格差は存在し……ずしずしと、支点の足が地面に埋まっていく。

 

「いいぞ、そのまま止めてろ。モード・エスレイム」

 

 穂先の当たった対象に衝撃を浸透させ、内側から破壊する実体のない射出装置(ヴォイド・パイルバンカー)

 吐き出されるは"毒"に似た力。名称不明のその力はしっかりと割裂の巨人の拳へ侵入し──ごりゅ、という音を立てて炸裂する。

 

「……」

「……」

「……圧力、変わってないんだが」

「効きはしたが修復されたな。加えて痛みも感じないか。面倒臭い」

「あー、だから、もう一つの共通点。この三機の演算機構には、動力切れってモンがないんだとさ。オールドフェイスで動いてるわけでも、ナノマシンだの魔力だので動いてるわけでもない。完全自律、完全独立の機構。だから適当な火力で削るとか考えねえ方が良いんだって話さ」

「最大火力で破壊しろって話だろ。それは知ってる」

「んじゃあとっととやってくれ。俺の足がぽっきり行っちまう前に」

「ああ。モード・エヴィカルム」

 

 光が満ちる。

 穂先より射出されるはかの寄生虫が一切の自重をせずに仕込んだ太陽光線。

 それは割裂の巨人の拳を焼き焦がし、掘削し……止まる。

 

「……食われた」

「おっとこりゃ、絶体絶命かい?」

 

 開いた穴が閉じる。拳の上からもう一つの拳が来る。

 

 そのまま──割裂の巨人の拳が地面へとめり込んだ。

 さらに何度も何度も拳を叩きつける巨人。

 ようやく動きを止めた時にはもう、肉片すらも。

 

 ──少し離れた場所にある、透明なテントの中。外から見ても透明で、中のものもまた透明に見せるそのテントに、三人はいた。

 

「いやぁ、完全に怪物だなありゃ。本当に勝てるのかいね」

「一撃で消し飛ばすのはきついかも知れない。俺の考えた手段は手足を一本一本引き千切っていく、だった。けどそれも修復されそうだ」

「やはりピオも戦った方がいいのでしょうか? こうしてセーフゾーンを作成したり、次の準備を仕込んだりするのではなく……せめて攪乱を」

「邪魔」

「無駄さね」

「……私も自己改造を頑張ったのですが」

「お前にはお前にしかできないことがある。俺と古井戸は、言ってしまえば戦うしかできねぇやつで、必要なモノづくりなんてできない。その点お前の手に入れた創り変える力は重要だ」

「適材適所なんざ今更な話だろうよ、ピオ。ま、俺たちが不安を招いてるってないい訳のしようがない事実だが──」

 

 オオオ、と慟哭を吐いて……何かを探すように歩き回る割裂の巨人。それを見上げて。

 

「勝てない場合は勝てなくていい、らしいからなぁ。あれが暴れ出して、この星を壊し始めたらそれを止めろってのが本来のオーダーだ」

「なんでアイツ、この星を壊そうとしてるんだ」

「この星が『叡素励振惑星(ソフォンタイド)』だから、とグリーフィーさんは仰っていました。つまるところ、この星を物理的に破壊すると、"情報の整列"がおかしくなって、過去、未来、現在の並びが変動するから、とか」

「簡潔に言え」

「世界を滅ぼせばエンジェの嬢ちゃんが戻ってくる可能性が高くなる。そんだけさね」

 

 無論。

 "そんだけ"で済むとは欠片も考えていない古井戸ではあるが。

 

IN TROUBLE(困っていると)……()()()()……()()()()()()()()()()……」

 

 一気に臨戦態勢になる三人。

 

 そいつはいつの間にかそこにいた。

 中肉中背の男性。この時代には似つかわしくないワインレッドのスーツを着た、「何かしらの起業家」であると思わせる風体の男。

 

「……誰だ」

「リープと……そう名乗っています……」

「何の用だ、おっさん」

「名乗らせたのは……そちらなのに……不躾ですね……」

「俺達の秘密基地へ無断で侵入してきた方が不躾だろうよ」

「それは……失礼いたしました……」

 

 男は、けれど実体が無かった。

 これは立体映像(ホログラム)だ。映写機も無ければスクリーンも存在しない、割裂の巨人にさえ感知されない空間内に投影された、どこかからの映像。

 

「申し訳ありません……私の本体は……地中深くにあるため……こうして大気中の……ナノマシンに干渉してでしか……あなたたちに言葉を伝えられず……」

「長い。用件だけ言え」

「せっかちな方ですね……。ですが、いいでしょう……今からあなたたちに……力を授けます……」

「思いっきし怪しいなぁオイ」

「詐欺でしょうか」

「力の名は……念動力……力の起源は……アイメリア……」

「!」

 

 驚きの間もなく、二人にその力が纏わりつく。

 

「オールドフェイスによる攻撃は……いざという時に取っておくといいでしょう……通常攻撃は、それで……この力は……『彼』と類似起源のもの……あれに理性が無い限り……自動修復機能を……阻害できます……」

「そりゃありがたいが、これをやるメリットはなんだ。あんたが何か得をしねえとこんなピンポイントな力は渡せねえだろう?」

「『彼』は……私を外へ、出してくれるそうなので……早く戻ってもらわないと……いけませんから……」

 

 そして、何より……と。

 リープは、その映像は、微笑みを見せる。

 

「私が敬い……私が畏れ……私が焦がれたアイメリアに……形は違えど……反撃の機会があるなどと……思ってもみなかったので……」

「アイツの敵ってことは、おっさんマグヌノプスか?」

「違いますよ……ただの……しがない、隕石収集家です……」

 

 ──衝撃があった。

 何かを探してうろついていた割裂の巨人が地面を叩き出したのだ。

 探し物を見つけたか、あるいは見つからずに狂乱しているのか。

 

「いってらっしゃい……渡世の嬰児たち……」

「……ピオ、いざとなったら逃げないね」

「気になるから消えろおっさん」

「ふふ……信用が……まるで無いですね……」

 

 ぷつんと消えるホログラム。

 

 では、気を取り直して、と。

 壊させないための修行は積んできた二人による、壊すための戦いが今。

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