羅鱶の遺体   作:サビ抜き大トロ

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※オリジナルキャラ、オリジナル設定があります。ご注意ください。


#3 深海チェイス

うす気味の悪い路地を駆け抜ける。まだ真新しい傷口が開き悲鳴を上げる。肩と腕に生暖かい液体が流れる感覚がした。お気に入りだった灰色のスーツも赤黒く滲んでいく。これだけの傷を抱え走り抜ける姿は言うなれば、獣そのものであった。現在、ペインは追われていたのだ。スカー社を裏切ったことによって社長じきじきに制裁命令が下された。なんとかその場を逃れることはできたが、行き場も無く途方に暮れる他に道は無かった。追手を振り切りながら裏道を突き進む。しかし、行き着いた先は行き止まりだった。大量のゴミが無造作に転がっているだけだった。

 

 

「まいったな…」

 

 

追手はすぐそこまで来ているだろう。複数の足音が聞こえる。もうまもなく奴らに見つかり、鱶のエサにでもされてしまう。

 

 

「これだけはしたくなかったけど…仕方ねぇ」

 

 

苦虫を噛み潰したような顔をし、覚悟を決めた。ペインがとった最終手段、それは大量のゴミの山の中に身を隠すことであった。生ゴミの不快な匂いが鼻を突き、頭の上にゴミが被さった感覚がする。そうこうしているうちに追手がやって来たようだ。ペインが居ないことに、苛立ちつつ時間を惜しむ様に再び駆け出した。

 

 

ペインはゴミの山から顔をだし、安全を確認した後ゴミの山から出てきた。服に多少匂いが移ってしまい、不快感が残った。スーツを買い替えなければと考えつつ、その場を後にし裏路地を抜け街の方へと出ていった。ここは六分街。新エリー都の中でも比較的都会に近い。ゲームセンターにラーメン屋、レトロなCDショップまでありとあらゆる楽しみが揃っている。本来ならこの街を楽しみ尽くしたいが、生傷が目立つこの姿であまり人目があるところをぶらつくのはまずい。かといって再び裏路地に戻れば追手と追いかけっこをするだけだ。どうするべきか頭を悩ませているとき

 

 

「お兄ちゃん!あの人、ケガしているよ!」

 

 

どうやら気づかれてしまったらしい。急いでその場を離れようとするがそれよりも早く、

 

 

「大丈夫ですか?ひどい傷ですし…えっと…とにかくうちこの近くなのでそこで手当てしましょう」 

 

 

そう言われなすすべも無く手を引かれ、2人の兄妹に連れて行かれた。そうしてたどり着いたのは先ほどみたCDショップだった。自分よりも若いそうな兄妹がこの店を経営しているとはとても思えないが、どうやらそうらしい。大量のボンプが店裏へと迎え入れてくれた。兄妹とボンプは忙しくなく肩と腕に包帯を巻き、ケガの知慮をしてくれた。ペインは口を開き

 

 

「いろいろすみませんね…すみませんが何か着るものってありますかね?」

 

 

兄妹はわかってますと言わんばかりの顔でそっと服を差し出してくれた。尾を持つシリオン用の服では無かったものの先ほどの不快感のある匂いは無い。二階の兄の部屋をお借りしササッと着替えを済ました。着慣れないTシャツとジーンズに違和感はあったものの、もともと来ていたシャツに比べれば数倍マシだった。そして、感謝を伝え去ろうとしたものの再び引き留められ、兄妹の兄は自己紹介を始めた。

 

 

「僕たちはここの店長をしている。僕はアキラ、こっちは妹のリン。あなたの名前は?」

 

 

そう聞かれあまり乗り気では無かったが

 

 

「ペイン、ペイン・ラヴュー」

 

 

そう答えた。リンは名前を聞き、質問を始める。

 

 

「ペインさんはどうしてあんな傷を負っていたの?それに病院を利用するわけでもなく」

 

 

返答に困る。これを答えてしまえば、この2人は間違いなく治安局に通報を入れるだろう。自分でも目が泳ぎ、ソワソワしているのが分かる。アキラはそれを見逃さ無かったようで

 

 

「もしかして…ホロウに関係しているのかい?」

 

 

そう聞かれたとき弾かれた様に反応をしてしまった。これではそうですと言ったようなものだった。ペインは諦めたように答える。

 

 

「まぁ…そんなとこ…俺は対エーテリアスの軍事会社に勤めてた。そこでちょっとミスってさ、このざま」

 

 

そう答えたとき、リンは満面の笑みで兄であるアキラに目を向ける。アキラもフッと軽く笑いこちらに再び目を向けた。その反応からホロウと関係しているのは明らかであった。ペインの少々驚いた様子にアキラは答えた。

 

 

「僕達はプロキシ、あなたと同じホロウに関わる人間さ」

 

 

想定していない出来事にペインは衝撃を隠せない。しかし、さすがに長い期間をホロウのなかで暮らしてきた人間だ。すぐに慣れ

 

 

「そうか…あんたらプロキシだったのか。仕事の関係で何度か関わったことはあるが、実際に出会うのは初めてだな、まぁ俺のことはホロウレイダーと思えばいいさ…」

 

 

リンは質問を重ねる

 

 

「もともとは会社で勤めてたんですよね?しかも対エーテリアスって…もしかしてその傷も?」

 

 

ペインはその質問に対し

 

 

「まぁ、普段はエーテリアスを殲滅するのが仕事だけど、この傷はエーテリアスじゃないよ。対エーテリアスとはまた別の任務があってね。その時に肩を銃で撃たれて、腕を斬られた」

 

 

アキラはその返答に引っかかるところがあったらしい。質問を続ける。

 

 

「別任務って対エーテリアスじゃなくて…人間?」

 

 

そう言ったアキラの目は先ほどよりも鋭い疑いを持ったような目であった。その反応も仕方がないといえば仕方が無いが、少し寂しさを覚える。

 

 

「あぁ…そうだ。俺が勤めてた会社は表向きはエーテリアスを、そして裏では人を殺してた。」

 

 

その言葉によって、兄妹の顔が戦慄を覚えていた。空気は凍りついたように冷たく、暗くなっていた。その空気感も気にせずにペインは話を続ける。

 

 

「実際…俺も人殺しをした。俺はガキの頃に親が蒸発してひとりで盗みなり何なりをして暮らしていた。そんな時に会社の前社長に拾われて俺に勉強をさせてくれた。飯も食わせてくれた。その恩を返さなければと、必死になって、訓練を積み会社の兵士となった。しかしその恩人も死に、その娘が会社を引き継いだが、何を思ったか、金のために暗殺サービスを始めた。抵抗感はあったものの会社の為と割り切っていた。でも、ついこの前に間違ってると気付かされて逃げ出した。俺は会社に追われる日々を過ごしている。そんな中、あんたらに出会った」

 

 

話せるだけの全てを話した。兄妹達は先程よりも警戒を解いてくれたようだ。アキラは納得したように

 

 

「そんなことがあったのか…すみません」

 

 

リンも頭を下げてくれたが、ペインはその謝罪を断り

 

 

「いいよぜんぜん。俺が人殺しに変わりはないし、犯罪者の俺をここまで良くしてくれただけで俺はありがたいよ。でもさっき言った通り、俺は追われてるから迷惑かけるわけにもいかないしもう行くよ。ありがとう。この恩はまた返すよ」

 

 

そう言い残し、去ろうとするペインをリンは引き留めた。

 

 

「傷も治ってないし、今行くのは危ないよ」

 

 

アキラも

 

 

「そうだね。その傷では満足には動けないだろう?」

 

 

図星といえば図星。傷はまだ痛むし、まだ休んでいきたい。しかし、あまりにも申し訳なかった。その様子をみたアキラは

 

 

「それじゃぁ、僕たちに恩を返すという意味も兼ねてしばらくショップ運営を手伝ってくれないかい?それならいいだろう?」

 

 

ペインは返答に渋ったが、ここまでの好意を受け取らないわけにもいかなく

 

 

「…ありがとう。お言葉に甘えさせてもらおうかな」

 

 

リンとアキラは笑みを浮かべ、業務内容やどこで寝れば良いのか全てを教えてくれた。本当にお人好しな兄妹だと思いつつ、ペインは嬉しさを覚えていた。兄妹は笑顔を絶やさずにこちらに話しかけてくる。ついついこちらも顔をほころばせてしまう。しばらくはこの兄妹のもとでお世話になろう。兄妹達との明るい時間を過ごす中、ショップのドアが開く。ふと目を向けると、そこには見知った顔があった。ショートヘアの赤い瞳。そして何よりも優雅にたなびく大きな尾ビレ。あの時見たメイド服では無かったがすぐ分かる。相手もこちらの姿を見て、驚いている様子だ。それを見ていた兄妹も驚いている。ペインは驚きつつも口を開き

 

 

「あんた…確か…エレン…?」

 

 

それを聞いたエレンは

 

 

「名前、覚えてたんだ…殺人鬼さん」

 

 

その様子を見ていたアキラはエレンに声をかけようとするがそれを遮る様に

 

 

「プロキシ、離れて危ないから」

 

 

エレンはペイン対して警戒をしている。今日はあの時の巨大なハサミは持っていなかったが、それでもなかなかな圧がある。ペインは息を飲み、両手をあげて

 

 

「俺が殺人鬼ってことはふたりには言ってある」

 

 

そう答え、敵対の意思が無いことを伝える。それに対しエレンはアキラ達の方を向き、目を向ける。アキラはその視線に気づき、その通りだと大きく頷く。エレンはため息をつき、やっと信用してくれたようだ。それを見て深く息をついた。リンは

 

 

「えっと…エレンとペインさんって知り合いなの?」

 

 

そう聞かれ、エレンは

 

 

「ちょっとね…いろいろあったの」

 

 

ペインは苦笑いするしか無かったが、エレンはすぐにこちらに近づき、つい後ずさりをする。エレンは

 

 

「あんたペインって言うんだ…ふぅ~ん」

 

 

獲物を品定めするような鋭い目で観察をするが、その目は明らかに腕と肩を見ていた。その様子に気づいたペインは

 

 

「大した傷じゃないよ、大丈夫」

 

 

エレンにとって少し気がかりだったのだろう。少し安堵したような目をした。アキラは咳払いをし

 

 

「何があったかまでは聞かないけど、仲良さそうで良かった」

 

 

エレンは別に…と反論したが、顔は穏やかだった。そして、アキラがエレンに声をかける。

 

 

「それで、エレンはどうしてここに?」

 

 

エレンは思い出したかのように、兄妹の方を向き

 

 

「実はさプロキシに手伝ってほしいことがあって」

 

 

エレンはアキラとリンに依頼内容を伝える

 

 

「ホロウ内に湧いた、エーテリアスの一掃の手伝いをしてほしい」  

 

 

ペインはエーテリアスの一掃という言葉に反応した。そうして気づけば

 

 

「それ、俺にもやらせてくれ」

 

 

そう声をあげていたのだった。




依頼

ヴィクトリア家政に依頼がある。実は自分が管理しているホロウでエーテリアスの大量発生が確認された。このままではホロウ外にも危険が及ぶため早急な対処をお願いしたい、報酬は弾ませてもらう。良い返事を待っている。 
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