ウマ娘を知らない競馬ファンがライスシャワーに転生した話   作:雅媛

11 / 30
4 夏合宿

 選抜レースが終わると夏合宿である。

 7月8月を丸々使って行われるこれは、

 

1 学園が準備した合宿所で合宿をする

2 チームの予算の中でどこか借りてそこで合宿をする

3 個人で借りた、もしくは所有している場所などで合宿をする

 

 といった選択肢がある。

 私たち仲良し幼馴染3人組プラスイクノさんで夏合宿は行動する予定であった。

 私たちのトレーナーのうち、マルゼンお姉様や文乃さん、南坂さんは若手トレーナーなのでチーム予算で合宿所を借りることができるほど予算はないし、ベテランの黒沼さんに全部集るわけにはいかない。

 そうすると基本学園の合宿所をつかうことになるのだが…… 問題が2つほどあった。

 

 一つはマルゼンお姉様の体調だ。

 この人、妊婦なのにそれを意識させないぐらいアクティブで、私や旦那であるトレーナーさん、最近トレーナーさんだと区別がつかないのでお兄様と呼ぶことにしているが、をいつもやきもきさせている。

 とはいえ普段はそう問題もないのだけれども、夏合宿のわちゃわちゃしたところで無理して大事故が起きないか、心配なのだ。マルゼンお姉様は心配し過ぎと笑うのだけれども。

 

 もう一つはマックちゃんとイクノさんのメイクデビューだ。

 二人とも本格化が始まっているので、今年中にメイクデビューをする予定で、上手くいけば夏合宿の時期にデビュー戦に出場予定だ。

 その場合の候補地は北海道の函館か、九州の小倉であり、関東にある合宿所だと距離がある。できればどちらかの場所に近い場所で合宿をしたい。

 

 そうすると、個人でどうにかすることが考えられるが……

 

 

「うちに聞くと、九州にも北海道にも別荘があるらしいんだけど……」

 

「ライスさん、時々忘れますけどお嬢様なんですよね」

 

「私はライスちゃんがお嬢様なんていまだ理解できませんわ」

 

 

 ひどい言いぶりである。とはいえ私がクリ家の娘なのは変わらないし、クリ家は元名家としてそれなりに施設を持っている。

 家に確認すると、合宿所として利用できそうな別荘が北にも南にもあった。

 

 

「問題は施設の充実度で、古いしあまり広くないみたいなんだよねぇ」

 

「私も確認したけれど、かなりおんぼろよ」

 

 

 マルゼンお姉様が補足する。

 海岸が近くにあって、砂浜でのトレーニングには問題ない場所だけれども、コースは小さいダートコースのみだし、道具関係も使う人がいないせいで全くそろっていなさそうだ。小物なら持っていけばいいが、さすがにタイヤとかの大物を持っていくわけにもいくまい。

 メジロ家の施設ならもっといいものがありそうだが、マックちゃんメジロ家といろいろ思う所があるみたいなのでお願いしにくいし……

 

 

「調整をしていくトレーニングなら海と持ち込みの道具だけで済むと思います」

 

「そうですね。レースを控えている中で大物は使わないですから、聞いた限りの施設で十分に思います」

 

 

 文乃さんと南坂さんは、ぼろくても反対はないらしい。

 

 

「そっちはそうかもしれんが、ブルボンはまだ成長途中だ。もっとハードなトレーニングをしたい」

 

「そうねぇ、ライスちゃんも調整レベルじゃ物足りないと思うわ」

 

 

 一方黒沼さんとマルゼンお姉さまは不足を感じているらしい。そりゃ考え方も違う以前にデビューを目指す二人とまだデビューが先の二人なのだから意見が違うのも当然である。

 

 

「とはいえ学園の合宿所行ってもそんなに施設使えないんじゃないですか」

 

「……たしかに」

 

 

 学園の施設は充実しているが、それでも施設の数より生徒が多いため、使えるかどうかの優先順位がある。

 基本、シニア級やドリームトロフィーシリーズを走っている人が優先で、その次がデビューした後の人、デビュー前の人、最後にデビュー予定のない人だ。

 私たちの今の状況ではハードトレーニング用の設備は他の人に取られて碌に使えない可能性がある。

 実際行ってみないとわからないところではあるが。

 

 最終的に安定して使える施設ということで、うちの宮崎にある別荘を使うことに決まったのであった。

 

 

 

 さて、海と言えば水着である。

 トレーニング時に着るのはトレセン学園の指定の水着で十分ではあるが、遊ぶときには無粋すぎるのでかわいい水着をみんな別に持っているらしい、ということをクラスメイトから聞いた。

 マックちゃん以外はそういう水着を持っていないようなので、4人でしま○らに買いに行くことになった。こっちの世界のしま○ら、前世のしま○ら以上に何でもあるな……

 

 

「こう、セクシーなのがいいと思うんだよ」

 

 

 どんな水着がいいかと聞かれて私は力説した。

 そう、必要なのはセクシーさだと。ブルボンさんの超ド級のスタイルにも、マックちゃんやイクノさんのスレンダーなしなやかなスタイルにも、セクシーさはきっと合うはずである。

 決して下心ではない。というか、3人の裸もお風呂でよく見てるしね。洗いっことかもよくするし、なんなら触り触られる関係である。つまり下心ではないのだ。

 そう主張したが、3人の目は冷たかった。

 

 

「ライスさん、時々変態になりますよね」

 

「普段はちゃらんぽらんなだけなのに」

 

「……」

 

 

 え、そんなに変なこと言ってるかな?

 首をかしげると、ため息をつきながらそれぞれが私に水着を持ってきた。

 

 

「ライスさんも、覚悟がある人ですよね?」

 

「え、それ、紐じゃん」

 

 

 ブルボンさんが持ってきたのは紐であった。ギリギリ隠すことができるかどうかみたいな、まさにセクシー極振りの水着に動揺する。

 

 

「もうこういうのでいいのではないですか?」

 

「マックちゃん、それ水着じゃないよ!?」

 

 

 マックちゃんが持ってきたのは肌色のテープである。前張りというやつか。

 

 

「もう何も着なくてもいいんじゃないですか?」

 

「イクノさん!?」

 

 

 イクノさんはさじを投げた。

 結構怒っているようだ。

 

 

「ひとまず試着してみましょうか」

 

「ちょっとまってぇええ! 写真まずいって、児ポ法のお世話になっちゃうよ!!」

 

 

 私の浅はかな主張から3人を怒らせたせいで、私は散々いじめられて反省させられるのであった。

 

 すったもんだはあったが、最終的にブルボンさんは競泳系のスポーティーな水着に、イクノさんはツーピースのこちらもスポーティな水着に、私のはフリフリが多くついたカワイイ系の水着に落ち着いた。

 

 うん、この方が似合ってるね。無理にセクシーさなんて求める必要なんてなかったことを今日私は学んだ。そして調子に乗り過ぎるのはやめておこうと、私は心に刻むのであった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 

 

 

 

 さて、合宿だが楽しくもトラブルもいろいろあった。

 

 まず、マックちゃんが食べ過ぎでメジロポッチャリーンに進化した。いや、もしかしたら退化かもしれないが。

 

 

「ライスちゃんと同じだけ食べていただけですわ!!」

 

 

 というのがポッチャリーンさんの主張である。

 

 そもそもレースにもうでようという状況のマックちゃんと、体づくりをまだしている私では食べる量も違う。さらに言うと、たくさん食べて運動で絞って調子を作っていく私と、食べる量もセーブして絞って調子を作っていくマックちゃんではトレーニング方針も違うのだ。

 あとはつく場所もちがうのもありそうだ。胸や尻につく私と違ってマックちゃんは全身まんべんなく付くし……

 あと同じだけっていうけどマックちゃんは甘いものを食べ過ぎだと思う。メロンパフェ3杯はさすがにヤバいでしょ。

 

 マックちゃんの特性を文乃さんはまだ完全に理解しておらず、食べるのを止めるのが遅くなった結果がポッチャリーンである。

 結局マックちゃんのデビューは夏合宿明けになり、イクノさんだけが小倉でメイクデビューをすることになった。

 

 さて、イクノさんのメイクデビューだが、ぎりぎりどうにか勝利を収めることができた。

 あいかわらずレース運びは上手いし、レース自体も真面目だ。他の子がメイクデビューで緊張から浮ついているのと違い落ち着いていたのもあり、最終的には勝つことができた。

 

 

「目標はティアラですし、まだ時間はありますからね」

 

 

 南坂さんはレースを見てそう分析していた。

 イクノさんもすでに本格化が始まっているが、マックちゃんと違いある程度仕上がっているわけではなく、成長段階だ。時間をかければもっと強くなれるだろうし、そのための時間もまだたくさんある。勝利も、実力も、徐々に積み重ねていく予定のようだ。

 

 なお、身内だけのお祝いパーティをやったのだが、ひもじそうにしているマックちゃんがかわいそうになって、文乃さんやイクノさんが食べさせるものだから、マックちゃんは無事リバウンドした。

 マックちゃん…… もう適正体重増やした方がいいんじゃないかな……

 

 

 トレーニングの方は、黒沼さんが自然からハードトレーニングを見出すことに目覚め、様々なトレーニングを開発していた。

 崖上りによる根性とスタミナをつけるトレーニングに始まり、岩砕きによるパワートレーニングは瓦割よりもハードだったし、山登りも足腰と精神を鍛えるのに良いトレーニングだった。

 何よりも驚いたのは、黒沼さんが普通に同じトレーニングをやっていたことだ。もちろん走る関係に関しては私たちより遅いが、パワーなどは似たようなレベルを発揮していた。

 

 

「自分に甘えがあるから、ウマ娘に振り回され、何かあったときにウマ娘に当たるのだ。トレーナーたる者、心技体を鍛えなければならない」

 

 

 とのことである。ストイックだし黒沼さんの筋肉はその育成スタイルからきているのだろう。まあそういう割には他のトレーナー、特に文乃さんには甘いので、マックちゃんの管理がいまいちでも特に叱ったりしていなかったが。

 

 なお、黒沼さんの意識の高さに感化されたマルゼンお姉様が妊婦の癖に全部同じ事をやろうとして私やお兄様に止められ、最終的にお兄様がなぜか全部やらされてへとへとになっていたのは余談である。

 というか、お兄様もなんだかんだ言ってついていけるあたり、トレセン学園のトレーナーのレベルの高さを感じた。

 

 あと、南坂さんは黒沼さんに付き合って全メニュー飄々とやっていて「いいトレーニングになりますね」なんてあっけなく言っていたがあの人はいったい何者なのだろう。底知れぬ人である。

 

 

 

 

 他には、海で遊ぶときにもいろいろあった。

 一番の出来事はやはりマルゼンお姉様である。

 

 なんだかんだ言って私もブルボンさんも胸やお尻が大きくてスタイルがいい、と言える外見だし、マックちゃんやイクノさんはすらっとしているがそれはそれでスマートでスタイルがいいと言える外見をしている。まあマックちゃんはちょっとポチャったが。

 水着を着ればセクシーと言ってもいいだろう外見だと思っていたのだが、マルゼンお姉様の登場でセクシーというものの神髄を知った。

 

 妊婦とはいえ、まだお腹がほとんど大きくなってないマルゼン姉様のビキニ姿は、本当にヤバかった。小さいころ、35歳マルゼンスキーを想像して初恋をあきらめたことがあったが、自分の想像力などとんでもなく貧弱であることを実感するぐらい、人妻妊婦27歳マルゼンスキーお姉様の色気はすごかった。

 すごく、すごくてもうどうすごいか表現できないレベルである。目の毒とかそういうレベルではない。脳みそが破壊される色気だ。

 

 そんな人が笑顔で遊んでくれるのだから、もうウマ娘たちの情緒なんてぼろぼろのズタボロである。マルゼンお姉様の色気にやられていたのは私だけではなく、ブルボンさんは「理解不能」と宇宙ネコになっていたし、マックちゃんは「ママー」となぜか幼児化していたし、イクノさんの眼鏡にはヒビが入った。

 

 マルゼンお姉様の色気に比べれば、私たちの色気などまだまだおこちゃまなのだと実感する。こんな人を妻にしたお兄様への尊敬がうなぎのぼりだった。

 なお、こんなにすごい色気で、ウマ娘たちはメロメロにされていたのに他の男性トレーナーたちはマルゼンお姉様に普通に接していた。トレーナーの鋼の意志の強さを見て、彼らがエリートであることを心で理解できた。

 あと文乃さんの水着は可愛かった。

 

 

 他にもブルボンさんがカレーを爆発させたり、南坂さんがビーチに行ったら逆ナンされすぎてなかなか帰ってこなかったり、文乃さんのニンジン嫌い克服が失敗したりといろいろあったが、楽しく夏合宿を過ごすことができた。

 

 実力も一回りも二回りも上がっていると思う。

 そして夏合宿が終わればマックちゃんのメイクデビューである。

 

 どんなレースになるか、今から楽しみであった。




評価お気に入り・感想お待ちしております

人妻妊婦27歳マルゼンスキーお姉様は文字面だけで強すぎる。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。