ウマ娘を知らない競馬ファンがライスシャワーに転生した話 作:雅媛
年末が近づくと、トゥインクルシリーズのレースもにぎやかになる。
マックちゃんもイクノさんも、ジュニア級の総仕上げということでレースに忙しく、その調整が大変そうであった。
一方私の方は、私の方で悩ましいことがあるのだが……
何かというとブルボンさんとの関係である。
若干グダグダしたが、無事恋人同士になった私たち。マックちゃんたちやトレーナーさんたちにも報告したので、付き合っているということは間違いがないはずだ。
だが、具体的に何が変わったかというと何も変わっていない。
何かした方がいいのだろうと思う一方で、何も思いつかずクリスマスまであとわずかになってしまった。
何も思いつかなかった私は、ブルボンちゃんがお手洗いで席を立った隙にみんなに相談することにした。
「今まで散々いちゃついてたし、特に何もしないでもいいんじゃないかしら」
マルゼンお姉さまは開口一番投げやりに答えた。
「いちゃついてなんかいないよぉ」
「じゃあ昨日一日ブルボンちゃんとなにしてたか教えなさい」
「えっと、まず朝は同じベッドで寝てたでしょ」
「えっ、ちょっとまって?」
「えっ?」
「同衾? 同衾なの?」
「一緒に寝てるだけだよ」
別にうまぴょいなことをしているわけではない。冬は寒いし、同じベッドで抱き着いているとあったかいのだ。
というか、ウマ娘同士でどうやるんだろうか。ウマ娘同士結婚できるというのは知っているが、それ以上は何も知らないのだ。性教育とかで学べるかと思っていたのだが、小学校の授業全部ぶっちぎったから学問はまだしも保健体育はちゃんと勉強してないし……
「その時点で十分恋人レベル超えてると思うんだけど」
「そうかなぁ……」
「そのあとは?」
「二人で朝練して、二人でシャワー浴びて」
「二人でシャワー浴びるってどういうことよ」
「お互いの尻尾洗ったりとか体洗ったりとか」
「……」
驚愕の表情でマルゼンお姉さまが固まってしまった。
「マルゼンさん、この二人いつもイチャイチャしてますから、真に受けない方がいいですよ」
「マックちゃん、そんなことないよ」
「お昼もライスちゃん、ブルボンさんにあーんしてたじゃないですか」
「してたけど……」
デザートのプリンがおいしかったから共有してただけでしかないが?
「もしかしてマックちゃんもしてほしかった?」
「ブルボンさんに怒られたくないから結構ですわ」
「そうですよ、私がしてあげますから」
「イクノさん!?」
何やらマックちゃんとイクノさんがいちゃつき始めた。
この二人こそ付き合ってるんじゃないのかな。
「というか、クリスマス本当にどうしようかなぁ」
「みんなでクリスマスパーティしますし、それでいいのでは?」
「ほら、付き合ってるなら何かした方がいいかなって……?」
何もしないで愛想をつかされたくないのだ。
でも恋愛経験なんてまるで0だし、前世知識さんも普段は非常に役に立つのに恋愛関係の知識が0だった。
「うう、どうしよう……」
「恋は人を変えるわね」
「ブルボンさんに聞けばいいのでは?」
「聞いていいのかな?」
「うわぁ……」
「うわぁってなに~」
「ライスちゃんっぽくないですわっていう意味ですわ。うじうじ悩んでないで二人で話し合って決めなさい」
「ひぃん」
マックちゃんに文字通りお尻を蹴られて追い出されてしまったところに、ちょうどブルボンさんが戻ってきた。
「ライスさん、どうしました?」
「あ、あのね、クリスマス、どうしようかなって思って」
「クリスマスですか?」
「こ、恋人同士だし……?」
ブルボンさんは少し考える様子を見せる。
ただ、何を考えているのかはよくわからない。
「ライスさんは、私とデートしたいと」
「そ、そうかな? そうかも?」
「行きたいところはありますか?」
「何も思いつかないよ」
基本引きこもりな私を舐めないでいただきたい。
こういう時にどこに行くのが普通なのかなんて全くわからないのだ。
しょんぼりしていると、ブルボンさんが私をギューッと抱きしめて頭を撫でた。
「いろいろ考えてくれたんですね」
「そんなことないよぉ」
何も思いついていない時点でヘタな考え休むに似たり、である。
「クリスマスイブの夜はみんなでパーティですし、クリスマスは一緒にデートしましょう」
「うん」
「どこに行くかは私が決めていいですか?」
「お願い」
こうしてブルボンさんとのデートは、ブルボンさん主導で行われることになった。
さて、デートをするときに何が大事か、みんなわかるかな?
そうだね、服装だね。
一応これでも乙女の端くれなので、ちゃんとしたデートっぽい格好をしないといけないと思うのだが……
「……」
「いろいろあるけど、デートには難しそうね」
マルゼンお姉様にヘルプを頼みつつ、一度実家に帰って服を確認したのだが、良いものがなかった。
いや、ドレスとかはあるんだよ。というかいつの間にか今の体形に合ったものとかも増えているのがちょっと怖いぐらいである。そんなフォーマルなものはいくつかあるのだけれども…… それ以外はくたびれた楽に着られる普段着ワンピースか運動用の服ばかりで、外に遊びに行けてなおかつファッショナブルな服装がまるでなかった。
「仕方がないから買いに行きましょうか」
「うう、お店もわからないし選んで、お姉様」
「任せなさい」
こうしてマルゼンお姉様と二人、服を買いに出かけることになった。
向かうのはさすがにし○むらではなく、デパートのちょっとおしゃれな服屋さんである。マルゼンお姉様がし○むらに行くイメージないし……
「ライスちゃんは、どんな服にしたい?」
「大人っぽくてセクシーな感じ?」
「なるほど……」
どういう風にしたいか、と聞かれるとちょっと悩むが、ブルボンさんが背が高くて大人っぽい印象がある一方、私は背が低いせいか幼く見えるので、少し背伸びをしたいところである。
「セクシーはちょっと難しいかもしれないわね」
「やっぱり背が足りない?」
「いえ、ライスちゃんはスタイルいいからそういうわけじゃなくて」
まあスタイルは確かにいいと言えると思う。マルゼンお姉さまほどじゃなくても胸と尻は女性らしくかなり育っている。若干邪魔に思うことがあるレベルだ。
これを使えばセクシーさはアピールできると思ったのだが、セクシーさが溢れすぎている27歳人妻妊婦マルゼンスキーお姉様の考えは違うらしい。
「セクシーさっていうのは普段とのギャップなのよ。露出のね」
「ギャップ」
「そう。例えば私なら、普段はあまり肌を出さないから、時々ちら見せすると旦那様にすごく刺さるわけ」
「ふむふむ」
確かに普段のマルゼンお姉さまは露出少なめである。
お腹が大きくなってきた今は比較にならないだろうが、私の記憶を探ってもあまり肌を出しているイメージは多くない。太ももの絶対領域は勝負服でも体操着でもよく見せていたが。
「ライスちゃん、ブルボンちゃんに見せてない素肌の部分、ないんじゃない?」
「たしかに」
昔から裸の付き合いも多かった私たちの間で、どこを見せればセクシーかと聞かれると結構困る。何なら風呂上りとか、暑いと部屋で全裸でいることもあるし、むしろ見慣れている可能性すらある。
「だから、大人っぽくというなら清楚な感じの方がいいと思うのだけれども、どうかしら」
「お任せします」
マルゼンお姉様の言うことはわかるが、結論を言えば私のファッションセンスが終わっているということだ。
もう任せた方がいいだろうという結論に達し、私はマルゼンお姉様の着せ替え人形になる覚悟だけを決めたのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
さて、クリスマスイブは大人数で集まってクリスマスパーティだ。
雪がちらつく中、あったかい室内でケーキを食べたり、ごちそうを食べたり、プレゼント交換したりしながら適当にだべるだけの緩い会である。
いつものメンバーだけでなく、クラスメイトも多く参加している会なので、もう中もごちゃごちゃになっており、カオスな空間になっていた。
そんな会の途中で、マックちゃんに呼び出された私は、会場を離れて人気のない渡り廊下まで移動した。いったい何だろうか。
「マックちゃん、お待たせ―」
「今来たところですわ」
デートの待ち合わせをしているカップルのようなやり取りをしながら、マックちゃんが呼びだした理由を考える。
考えるがよくわからない。減量がきついというなら文乃さんに言うべきだろうし……
「で、何の御用? マックちゃん」
「一つ告白したいことがありまして」
告白? いったい何の告白だろうか。
思い当たる節が全くないのだが……
悩んでいるとマックちゃんが口を開いた。
「私も、ライスちゃんのことが好きです」
「……へ?」
告白ってそういうことか!! 言いたいことがやっと理解したが、やっぱり理解しきれていない。
マックちゃんも確かに好きな人がいるって言っていたことあったけど、よりによってそれが私だとは全く思ってもいなかった。
「あ、あの、あの…… ごめんね、全然気づかなかった」
「でしょうね。私もブルボンさんもわかりやすくアプローチしていたと思うのですが、全く思ってもいなさそうでしたし」
「だって、私なんか……」
「ライスちゃん、私なんか、というのは止めてください」
「ふえ?」
「私の好きなライスちゃんを、ブルボンさんが好きなライスちゃんを貶すのは本人でもいやですわ」
「うん……」
そっか、確かにマックちゃんやブルボンさんがそんなこと言ったら私も嫌かもしれない。自信がなくても、空元気でも胸を張らないといけないところなのだろう。
「それで…… 告白はうれしいけど、ごめんなさい」
「そうなるとは思っていましたわ」
さすがにブルボンさんと付き合っている現状でマックちゃんにこたえるわけにはいかない。マックちゃんもそれはわかっているだろうし、おそらくこれは一種の儀式なのだろう。
だからこそちゃんと気持ちを込めて断るのが正解だろう。
「先に戻ってるね」とだけ告げて私はパーティ会場に戻る。
マックちゃんがそのあとどんな表情をしていたかは私は確認しなかった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「それでライスさんは落ち込んでいると」
「落ち込んでいるというかモヤモヤするというか…… デートなのにごめんね」
結局私は昨日のマックちゃんの告白を翌日まで引きずっていた。
どこまで話すかも悩んだが、ブルボンさんには告白されたことも話している。
ブルボンさんからは「マックイーンさんがライスさんのこと好きだって知ってましたから」という答えしか返ってこなかった。
私は自分がどれだけ鈍感だったか気づいて余計凹んだ。
そして、せっかくのデートなのに他の女のことで凹んで相手に心配かけている自分に、余計凹む。
もうだめだぁ……
「うう、ライス、おにぎりになりたい……」
「よしよし、もう少しで目的地につきますからね」
「うにゅぅ」
ブルボンさんに撫でられながら連れてこられたのは、スーパー銭湯だった。
前世の知識にはあるが、今世になってからは来たことがない気がする。
というか旅行自体この前の合宿以外にした記憶がない。
「おー」
「ライスさん、お風呂好きですし、温泉も好きかと思いまして」
「温泉、入ったことないかも」
あまりクリスマスらしくないが、学生だし、私の好きそうなものを選んでくれたのだろうと思うし、楽しもうと気持ちを頑張って切り替える。
女湯に分かれている方に少しドキドキしながらブルボンさんと一緒に入る。
クリスマスに来るような場所じゃないからか、時間が早いからか、人はほとんどいなかった。
「まずは体を洗いますよ」
「はーい」
ブルボンさんにくっついて流し場で体を洗う。
お互いをくすぐるように洗いっこした後露天風呂に向かった。
露天風呂は広く、他の人は誰もいなかったため使い放題といった感じだ。
何も考えずに仰向けに浮かぶと開放感がすごかった。
「髪の毛、すごいことになってますよ」
「でも気持ちよくて」
髪をお湯につけちゃいけないとかいうマナー全く無視した行動なのはわかっているが、だれもいないしやりたい放題だ。多分私の長い髪がお湯の中に広がって見た目すごいことになっている。
ブルボンさんは苦笑しながら私のそばに寄ってきた。
「少しは気分は晴れました?」
「そこそこかな」
上を向くと青空が広がっている。
ボケーっとお湯を漂っていると、隅の段差に座っていたブルボンさんの膝にぶつかった。
そのまま貞○のような感じになりながらお湯から頭を上げ、ブルボンさんの膝に頭を乗せる。横を向いたら顔が沈んだので、あおむけに向きなおす。ブルボンさんの顔は豊満な胸部に阻まれて見えなかった。
「甘えん坊ですね」
「今日のライスは甘えん坊なんだよ」
膝枕されたり、くっついたりしながらしばらく露天風呂を楽しむのであった。
お風呂からあがって、休憩スペースで二人してゴロゴロする。
ちょうどいい感じのデカいクッションがあったので二人で一緒に寝転がりながらくっついた。ポカポカになったブルボンさんにくっつくと非常に温かかった。
特に話すこともなくボケーっとしながらしばらく時間が流れていく。
「ライスさん」
「うにゅ?」
少し寝てしまっただろうか。ブルボンさんの呼ぶ声に意識が戻る。
ブルボンさんの方に向くと、目の前にブルボンさんの顔があった。
やっぱり顔がいいな。そんなことを確認してふにゃっと笑ってみると、ブルボンさんは私の後頭部に腕を回した。
「んっ」
「んむっ」
唇と唇が触れる。
一瞬ぬるっとしたぬくもりが唇に伝わり、そして離れていった。
「……」
「……」
少しの無言の後、私はブルボンさんの胸に顔を埋めた。
真っ赤になっているだろう自分の顔を見せるのが恥ずかしかった。
第三章で見たいイベント(2,3話やる予定)
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