ウマ娘を知らない競馬ファンがライスシャワーに転生した話 作:雅媛
1 新年度
あれやこれやとあって新年度になり、学年が一つ上がった。
「と言っても私たちは特に影響大きくないですけどね」
「だねー」
学園全体は全体的にそわそわしているのは間違いない。
一番の理由はルームメイトが新たになる人が一定数いるからだ。
ルームメイトが先輩で卒業してしまう人や、何かの都合で一人部屋を使っている人、ルームメイトとの仲が上手くいかず変更予定の人などは基本的に新入生と一緒になる可能性が高い。
そういう人たちが期待と不安でそわそわしており、それが学園全体に広がっていた。
とはいえ私はブルボンさんとルームメイト、マックちゃんはイクノさんとルームメイトで変更予定もないので影響はなかった。
そのため、4人で共有スペースを陣取りながら、テレビゲームの「ウマ娘熱血大運動会」をやっていた。
府中市クロスカントリー、障害部屋競走、大食い競争、格闘ドッジボールの4種目でチーム戦をするこのゲームは、私たちの中でプチブームになっていた。
巧さで言えば、マックちゃんが一番うまく、イクノさん、私、ブルボンさんの順番である。ブルボンさん、最近は機械を壊さなくなったが、機械操作は相変わらず苦手であった。
「あー! まけたー!!!」
私の操作するキャラが格闘ドッジボールで集中砲火を受けて沈み、最下位が確定したため思わず叫んだ。
後ろに倒れると、そこには一人のウマ娘がいた。
「ねえ先輩たち、何やってるの?」
「ウマ娘熱血大運動会」
「ボクも交ぜてくれない?」
「いいよー、最下位だった私が抜けるね。今やってるので終わるから、終わったら参加ということで」
「はーい」
新入生らしい子が声をかけてきて、交ぜてほしいと言ってきた。特に断る話でもないので直近最下位だった私がバトンタッチする。
小生意気そうな小柄な後輩だが、お手並み拝見と行こう。
「えっと、お名前伺ってもよろしいかしら」
「吾輩はトウカイテイオーぞよ」
ぞよってなんだぞよって。というかこいつ、トウカイテイオーかよ。まあ確かにボーイッシュなイケメン風美少女だが、ウマ娘になるとこんな感じになるのか。
それぞれが自己紹介をしたところで、次のゲームが始まった。
「テイオーちゃん、巧いね普通に」
「ふっふーん、ゲームは得意なんだ♪」
マックちゃんが策士型の知能派プレイなら、テイオーちゃんは純粋にプレイスキルが高い上、知能プレイもやってくる。
マックちゃんが一番巧いと見抜いたのだろう、妨害を集中的に仕掛けて、順位を下げさせようとしている。
確かにマックちゃんなら万が一があるだろうが、ブルボンさんだったらどう頑張っても普通の勝負で逆転は難しい。なのでできる方を邪魔しているのだろう。
結局テイオーちゃんにいじめられ続けたマックちゃんが最下位で、ブルボンさんが2位だった。1位は当然テイオーちゃんである。
「悔しいですわ! もう一戦!!」
「マックちゃん最下位だったからライスと交代ね」
「がーん」
「あはは、面白いねぇ先輩たち」
テイオーちゃんは私たちを見て大爆笑していた。
「でもごめんね、そろそろ部屋に戻って片付けしないと」
「ああ、新入生だもんね、また遊ぼうね」
「今度こそ勝ちますわ!」
マックちゃんの遠吠えがむなしくこだました。
さて、現状だが、マックちゃんのデビューは太り気味でそこそこ遅れたが、ジュニア時代からの下積みにより、皐月賞が狙える状況であった。前哨戦のわかば賞にも勝利し、皐月賞に向けて調整を進めているところである。
マックちゃんの場合、あまり肉をつけると脚部の負担が大きいため、できるだけ絞るのが基本方針で、脚部に負担がかからない運動を繰り返す方向での調整を行っていた。
当然スイーツも禁止なので、最近は少し気が立っている。時々目に炎が宿るのを幻視するレベルだ。ちょっと怖い。
こういう時、イクノさんが良くフォローするのだが、イクノさんはイクノさんで桜花賞が迫っていて調整しているため、あまりフォローする余裕がなさそうだった。
テイオーちゃんとの再会はマックちゃんがそんな極限状態に絞り込もうとしているときだった。
「せーんぱい、なにしてるの?」
「や、テイオーちゃん。朝練の準備だよ」
「こんな早くから? すごいねー」
「テイオーちゃんは?」
「朝練なるものがあると聞いた吾輩は、興味があるので調査をしてるぞよ」
だからなんだそのぞよは。
まあ、朝練をしてみようと早く起きたということだろう。現に、テイオーちゃんは体操着に着替えている。
「なんなら一緒にやる? 今マックちゃんとイクノさんの調整期間だから、ストレッチとかばっかりで走らないけど」
「ならお邪魔するね♪」
先輩たちの集団に交ざっていくそのメンタルとコミュ力、すごいな。テイオーちゃんに素直に感心する。
「マックイーン先輩、おっはよー」
「テイオーさん、おはようございます」
「……ライス先輩、マックイーン先輩すごい殺気なんだけど。この前のゲームのことまだ根に持ってる?」
「スイーツ禁止令が出ていて、甘いものが食べられないからなだけですね」
マックちゃんの背中を押していたイクノさんがため息をつく。
私としては、この闘志もレースにつながると思っているけど、イレ込み過ぎともとれる状態でもある。
「もー、マックイーン先輩、美人なんだから笑顔じゃないと」
「ふにゅっ」
テイオーちゃんは怖いもの知らずのようで、マックちゃんのほっぺを揉みしだき始めた。
マックちゃんがテイオーちゃんの手を振り払う。
「今はスイーツを食べられない恨みとメジロへの気持ちを力に変えているのですから、邪魔しないでくださいまし」
なんか黒いオーラが噴き出し始めているマックちゃんに、テイオーちゃんは頬を膨らませる。
「じゃあさ、勝負しようよ、柔軟性の勝負」
「勝負?」
「そうそう、負けた方が勝った方の言うことを一つだけ聞くっていうやつ」
「受ける理由がありませんわ」
「へー、ゲームに一度負けたから怖いんだ、マックちゃんは♪」
「やってやろうじゃありませんか!!!」
テイオーちゃんの謎のあおりにすぐに頭が沸騰するマックちゃん。普段なら絶対軽く流すんだけど、スイーツ禁止令がよほど効いているらしい。
とはいえ柔軟性の勝負ならマックちゃんに分があるだろう。ストレッチは幼いころからずっとやっているし、マックちゃんもかなり柔らかい。負ける理由がない、そう思っていたのだが……
「テイオーちゃん、すごい柔らかいね」
「ふふーん」
長座前屈は、僅差でテイオーちゃんの方が勝った。マックちゃんの身長が160cm以上ある一方、テイオーちゃんの身長が私とほとんど変わらないのを考えたら、胴の長さの差分マックちゃんの方が有利なはずで、それも考えたらテイオーちゃんの圧勝だろう。
この柔らかいばねからの走りはきっとすさまじいことになるだろうことも容易に想像できた。
「じゃあマックちゃんは笑顔になるのだー」
「にゃー!!」
「私も加勢します」
「イクノさん!?」
なぜかイクノさんまで加わったくすぐり攻撃に、マックちゃんは大爆笑させられてしまう。
程よい具合に力が抜ければいいのだけれども。
三人がじゃれているのを見てそう思うのであった。
この時から、テイオーちゃんともよく一緒に行動することになった。
コミュ力の死んでいる私やブルボンさん、ムラが結構あるマックちゃん、時々に何を考えているかわからないイクノさんと比べて、テイオーちゃんは非常にコミュ力が高く、ムードメイカーとして非常に助かる存在だった。
また、後輩らしくいろいろ聞いてくることも多い。
その質問をされたのもそんな一環であった。
「そういえばみんなはどうやってトレーナーを決めたの?」
「私は選抜レースでスカウトされました」
イクノさんは王道の方法だった。今ではすっかり南坂トレーナーと息が合っている。
最近はナイスネイチャやツインターボなども加入し、メンバーが増えているとのことである。
「私とブルボンさんは、直接逆スカウトしましたね」
「そうでしたね」
マックちゃんと文乃トレーナーはうまく息があっており、この名コンビだからこそ実績が出せるのだろうと思う所だ。
ブルボンさんのところも熟練の黒沼トレーナーのハードトレーニングとブルボンさんの気質は噛み合っているように思う。
「で、私は小さいころから知っているお姉さんにお願いしたってところだね」
「へー、スカウトされる以外の方法もあるんだ」
「テイオーちゃんはこのトレーナーさんがいいっていう人いるの?」
「うん、シンボリルドルフさんと同じ東条トレーナーがいいなって」
「なるほど」
テイオーちゃんはシンボリルドルフに憧れており、無敗の三冠を目指すと豪語している。となると、ルドルフさんと同じトレーナーにつきたいと思ってもおかしな話ではないだろう。
とはいえ東条トレーナーのところはメンバーも多いし、必ずしも適切かどうかわからないが……
「ひとまず逆スカウトしてくる!!」
「行ってらっしゃい」
そうして二時間後、テイオーちゃんは別のトレーナーと契約して帰ってきた。何を言っているかわからないと思うが、私たちも何が起きたかわからなかった。ただ、本人は満足してそうなので、それでいいかと思うことにすることしか出来なかった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
新年度になり、もう一つ出来事があった。
マルゼンお姉様の子供が生まれたのだ。
当然まだしわくちゃの赤ちゃんなのだが、とてもかわいい。
子供も生まれたし、しばらくお姉様は学園に来ないのかな、と思っていたのだが、退院した翌日から学園に来ていた。
「お、お姉様、なんで……?」
「部屋にこもってると気持ちが暗くなるから、トレーナー君にお願いして私はきちゃった♡」
きちゃった♡ じゃないよお姉様!?
本当にやりたい放題だな。しかも「鈍ってるから併走させて」とか無茶苦茶いうから仕方なく併走したら文句なくぶっちぎられた。この人、1週間前まで妊婦だった経産婦なんだぜ…… 信じられん……
しばらくお姉様に振り回された後、お姉様は
「そろそろ母乳を上げないといけないから帰るわ♪ あでゅー」
と言い残して走って帰っていった。
パワフル過ぎんだろ……
「マルゼンスキーさん、すごいですね」
見ていたブルボンさんも感心していた。
さてお姉様の娘だが、芦毛で名前はカレンチャンといった。
かわいい名前に似合わずでかいあの短距離の女傑じゃん……
マルゼンスキー(馬)とどういう関係が在るのだろうか。さすがに血統表までは覚えていないのでわからないし、もしかしたら全く関係なく生まれてくるのかもしれないからその辺はわからなかった。
でも将来でっかくなるのかなこの子も。頬をつついたらにへらと笑った。かわいい。まあマルゼンお姉様がいろいろでっかいし、遺伝的にこの子もナイスバディ美女になりそうだ。
よくよく考えたらこの子と私の年齢差、13歳差か。将来はライスお姉ちゃんと結婚すると言わせてみたくもある。マルゼンお姉様に私が言ったように。
「ライスちゃん、そんなかわいい感じに言ってくれなかった気がするけど」
「気のせいだよ。5歳のライスはとってもかわいかったはずだもん」
「見た目はかわいかったけどね」
中身が可愛いもんではなかったことは否定できなかったのでスルーする。
なんにしろ赤ちゃんはかわいい。ツンツンしていて飽きない。
私が赤ちゃんに構い過ぎるからか、お姉様はとんでもないことを聞いてきた。
「そんなに赤ちゃん好きなら産めばいいのに」
「お姉様!?」
「ブルボンちゃんの子供」
「お姉様!?」
フルスロットルすぎないか。子供の前だしまだ昼間なんですが!?
というか私まだ中学生ですよ!!
「というか恋のABCのどこまで行ったの?」
「セクハラだよお姉様!!」
キスぐらいはしたけど、B以上は中高生にはやばいんじゃないだろうか。
「尻尾絡めてるのは見たことあるし、ライスちゃんも隅に置けないわね」
「いつ見てたの!?」
「あー、やっぱり」
「カマかけられた!!」
「いや、ライスちゃんの尻尾に栗毛が混ざってるからバレバレよ」
思わず自分の尻尾を握ると、確かに混ざっている。私の黒っぽい毛と色が違い過ぎてすぐわかった。
「仲いいわねぇ」
マルゼンお姉様の発言に、私は顔を赤くしてうつむくしかできなかった。
第三章で見たいイベント(2,3話やる予定)
-
新年
-
バレンタイン
-
リーニュ・ドロワット
-
春のファン大感謝祭
-
ビューティードリームカップ
-
サマーウォーク
-
ハロウィン
-
駿大祭