ウマ娘を知らない競馬ファンがライスシャワーに転生した話 作:雅媛
夏までのクラシックの戦績に関しては、まずマックちゃんは良い成績を残した。皐月賞には3着に入り、なんと、日本ダービーに勝利したのだ。一躍ダービーウマ娘である。
また、イクノさんもフィリーズレビューには勝利し、桜花賞、オークス共に掲示板に入っており、存在感をアピールできている。
そんな感じで順調にクラシッククラス前半を終えた二人と一緒に、私たちは6月恒例のビューティードリームカップの予選に挑むことになった。
毎年恒例のこのイベントは、5人一組で参加し、知力や体力など様々なものを試されるもので、予選合格者にはウェディングドレス風の勝負服がプレゼントされ、特別レースであるビューティドリームカップに参加することができるという非常に華やかなイベントである。
去年は残念ながらメンバーが集まらずに参加できなかったが、今年はテイオーちゃんを加えて5人組で参加できるため、意気揚々と参加したのだが……
「美しさ対決……?」
「一人をモデル役にして、あとの四人がクイズやミニゲームを行いその成績によって貰えるアイテムを集め、それを使ってモデル役を着飾るゲームみたいですね」
「四人の成績のほか、モデル役の美しさも考慮要素として大きいようです」
要綱を読みながら作戦会議をする。
内容としては、四人でいろいろやって、一人が着せ替え人形になるゲームのようだ。
「つまり誰がモデル役になるかがまず最大の問題だけど…… クイズとかはどういう内容になるのかな」
「美容に関するクイズと、ゲームはきれいな姿勢とかポーズをとったりするものみたいですね」
「クイズは美容関係なら、そういうのに詳しいマックちゃんやテイオーちゃんはモデルじゃないほうがよさそうだね」
「ゲームは背が高いブルボンさんやイクノさんが出たほうがポイントがよさそうですわ」
「そうすると……」
え、そうすると消去法的にもしかして私がモデル役なの……?
単純に見世物になるのは遠慮したいのもあるが、モデル役の美しさは最終成績のうちの4割ぐらいを占めており、明らかに寄与度が高い。
「ライスがモデルじゃなくて、もっと他の人がやるべきだと思うんだけど」
「ライスさんはかわいいです」
自信満々にブルボンさんが断言するが、さすがにいろいろ曇っていないだろうか。
「ほら、ブルボンさんのほうが背も高いし」
「ライスさんのほうがかわいいです」
「マックちゃんとかのほうがすらっとしていてモデル体型だし」
「ライスさんのほうがかわいいです。異論は認めません」
ブルボンさん横暴じゃないか!?
ほかのメンバーもやりたくないのかブルボンさんを一切止めてくれないし。
「これ以上言うならその口ふさぎますよ」
「おうぼうだー! むぐぅ!?」
ブルボンさんが唐突にキスしてくる。
「うわぁ、行きましたわ」
「この二人、いつもこんな感じなの?」
「いつもではないですが時々こんな感じですね」
三人とも見てないで助けてよ!! と思うが、三人ともひそひそ言うだけで何もしてくれる気配がない。
こうしてブルボンさんのノリと勢いで、私がモデル役をやる羽目になってしまった。
まあ確かに私は美容系のクイズもダメそうだし、ポーズをとるとかは手足が長い二人のほうが向いてそうではあるんだけど…… 解せぬ。
さて、そんなビューティドリームカップの予選だが、まずクイズに関してはテイオーちゃんが無双していた。
見た目はボーイッシュだし明るくてやんちゃ坊主みたいな雰囲気のテイオーちゃんだが、中身の女子力とお嬢様力が高すぎる。似非お嬢様の私はともかく、愉快なところはあるが一応メジロのお嬢様として文句がない程度にはお嬢様家業を頑張っていたマックちゃんよりも圧倒的にお嬢様力が高い。
「Aはフランスの会社のフレーバーティ、Bは安いティーパックの紅茶、Cがダージリンのファーストフラッシュだね」
今もテイオーちゃんが利き紅茶をしてどの紅茶がどういうものかを答えている。
私もためしに飲んでみたがまったくわからないわ……
「そんなに難しくないね」
「それはテイオーちゃんだからだよ」
トレセン学園のウマ娘はそこそこお嬢様がいるはずで高い紅茶に慣れている子も多いはずだが、今の利き紅茶の正解率はそんなにいいわけではない。
そんな中、完全に正解して意気揚々と美容用品を持ち帰ってくるテイオーちゃんがおかしいのだ。
「これ、最高級品ですわね」
「よかったねライス先輩。ピカピカになれるよ」
「いつもと違いすぎて怖くなってきた」
マックちゃん曰く景品でもらえるのは1瓶万単位のお値段の化粧水やら乳液やら尻尾オイルらしい。それを容赦なく私にぶっかけるように指示するテイオーちゃんと、それを躊躇なくぶっかけて塗り込んでくるブルボンさん。おかげで私はどんどんピカピカつるつるになっていく気がする。
テイオーちゃんのおかげで一人だけわかりやすいぐらいツルツルペカペカになった私を置いて、予選は進んでいく。
続いてのポージングゲームは、指示されたポーズをとってその再現性を競うというゲームであった。こちらはブルボンさんが圧倒的に強かった。
身体感覚がいいのだろう。サイボーグのように見本のポーズをそのままコピーするのだ。
結局うちのチームが一番になったが、問題になったのはそのあとだ。
勝った順番に衣装を選べるというルールだったのだが……
「ライスさん、メイドさん好きですしこれにしましょう」
「待ってブルボンさん待って!!」
ブルボンさんが選んだのはサブカルに毒され切ったミニスカートなフリフリメイド服だった。
どう考えてもネタ枠であり、外れ枠なのだがブルボンさんが妙にそれを押してくる。
「ほら、ライスさんの好きな猫耳と猫尻尾もついてますよ」
「ブルボンさん!?」
私は猫が好きなだけであって猫耳と猫尻尾はそこまで…… いやブルボンさんがつけてくれたらうれしいかもしれないけどそこまで好きではないのだ。
「ほら、いつもの二人、相変わらずすごくただれてるわ……」
「怖いわね……」
「そんなんじゃないから!!」
偶然参加していたクラスメイトにもひそひそ言われてるし、もう散々である。
結局私の反対は華麗にブルボンさんにスルーされて、フェチズム満載なメイドさん衣装になることが確定する。
「では水着はこちらでいかがでしょう」
「お前もかイクノさん」
モデル役は水着審査もあるということで水着も選ばないといけないのだが、イクノさんが選んだのは紐であった。
どこかで見たことのある紐水着だ。学園指定の普通のスク水や、競泳水着、ビキニの水着などもある中でなぜそれを選んだ。
「どう考えてもネタ枠だよ!?」
「これが一番布面積が少なかったので」
「どうして布面積が一番少ないのを選ぶんですか……?」
確かに他のものと比べても圧倒的に布面積が少ない。次点であろうビキニと比べても下手すると半分以下なのではないだろうか。
だが布面積が少ないのを選ぶ理由が不明である。
「テイオーさんの活躍で今のライスさんはつるつるぴかぴかです」
「そうだね」
「そのつるつるぴかぴかなお肌をアピールするにはできるだけ隠さないほうがいいわけです。だからこれが最適解です」
「そのはっそうはおかしい……」
イクノさんが強硬に主張するがセクシー系ネタ枠になりたくない私はほかのメンバーに助けを求める。
「ブルボンさーん!」
「ライスさんのお肌はもちもちつるつるですからね。見せつけましょう」
「恋人の肌をさらしてもいいの!?」
「? 何か問題でも?」
自慢の恋人ですって自慢する気しかないブルボンさんはイクノさん側に回った。
ブルボンさん、このあたりの情緒が結構普通とずれている。
「マックちゃーん!!」
「色気に全振りしてもいいのではないですか。マルゼンスキーさんの親戚ですし?」
「マルゼンお姉さまとライスじゃ全然ちがうよ!」
マックちゃんもイクノさん側のようだ。まあこの二人、半分恋人みたいなものだし、イクノさんが強く言うことにマックちゃんが逆らうわけもないか……
「テイオーちゃん!!!」
「ボクしーらない。先輩たちを止めるのをボクに求めないでよ」
「たしかに!」
テイオーちゃんは我関せずである。一人だけ後輩なのだから頼るほうが間違っていると言われればその通りだ。
結局私の意見は却下され、私はイクノさんが選んだ紐水着を着る羽目になったのであった。
結局自棄になった私は、両方とも着てマルゼンお姉さま直伝のセクシーポーズを決めてやった。見られて困るものはない! という自己暗示でやりきったところ見事うちのチームが優勝を飾ったのだ。
ただ、中学生になんて格好をさせたんだということになり、翌年から水着審査が無くなったらしいが、それは私のせいではないと声を大にして主張したい。
何にしろ優勝である。
優勝すれば結婚式風の勝負服がもらえるのだ。
そこで問題になるのはどんな衣装にするか、というところである。全くデザイナーにお任せとなるわけではなく、こちらからそれなりに要望を出さなければならないのだ。
「んあ~ 全然思いつかない」
みんなで考えていたが、最初に音を上げたのが私だ。
自分が着るとなると全然イメージがわかないのだ。
ほかの人のを見ると、イクノさんがまずビビるぐらい力の入ったフリフリのウェディングドレスのイラストを描いていた。イクノさん、結構ボーイッシュなイメージなので、ズボン型の花婿っぽいのを着るかと思ったのだけれども、完全に花嫁感を出している。
テイオーちゃんもこちらはこちらでまた乙女力強そうなウェディングドレスのデザインをしている。テイオーちゃん、普段がボーイッシュな感じだけど、意外と乙女力も高いし似合いそうではある。
マックちゃんは珍しくズボン型のを考えているようだ。まあマックちゃん、普段はお嬢様感が強いので乙女っぽいが、外見だけ見ればスレンダーで高身長だからこういう花婿風の衣装も似合うだろう。なんとなく、イクノさんとテイオーちゃんの間で大岡裁きをされそうな気もするが。
ブルボンさんは…… 駄目だ、ブルボンさんも何も思いついてなさそうだ。
「お二人で新婚風にすればいいのでは? 恋人なんですし」
「うう、それもそうなんだけどそれはそれで恥ずかしいんだよねぇ……」
マックちゃんがアイデアを出してくれたがそれはそれで気恥ずかしさが先行してしまう。しかし、それしか打開策はなさそうだ。
「じゃあライスは花婿風のパンツスタイルにしようかな」
「え?」
「え?」
「いやライス先輩がパンツスタイルはきついでしょ」
テイオーちゃんの容赦ないツッコミが胸に突き刺さる。
まあ確かに私の体型はよく言えばトランジスタグラマ、悪く言うと土偶型の低身長で凹凸が激しいものだ。
こんな私がズボンをはくと、尻や太ももがぱっつんぱっつんになる上、下半身のラインが丸見えで不格好に見えるのだ。水着もトレセン学園のスク水とかだと不格好になりがちで、この前の紐水着とかハイレグとか、足が長く見えるものじゃないと見た目がよくなかったりする。
うう、前世男性だというなけなしのプライドで花婿役を目指してみようとしたが、完全否定されてしまった。まあもうウマ娘として長年やってるからそんなプライド砂粒程度しか残ってないんだけど……
「ライス先輩だとこういう感じのふわっとしたスカートがいいと思うな」
「そうですね。でも腕やデコルテは見せたほうがいいと思いますよ」
テイオーちゃんとイクノさんが嬉々としてボクの書類にイラストを描いていく。
確かに似合いそうなかわいらしいウェディングドレスが出来上がっていく。
ブルボンさんのほうは、マックちゃんと花婿風のズボンスタイルの服をデザインしていくようだ。尻のでかさならブルボンさんもすごいのに、ズボンが似合うのはなんでだろうか。身長の差だろうか。確かに15cmは違うもんなぁ……
なんだかんだしながらも、どうにか花嫁風のウェディングドレスが3着、花婿風のパンツスタイルが2着のデザインが出来上がり、それをもとにした勝負服が後日無事に私たちの元に届いたのであった。
「うう、なんでライスのだけこんな露出が……」
「なんでってそれは」
「ライスちゃんだからですね」
「ひどい!」
早速届いた勝負服を着てみたのだが、私のものだけ、露出が多かった。
イクノさんのも、テイオーさんのも、まあ普段と比べれば露出はしている。
イクノさんのは腕が丸出しだし、テイオーちゃんのは胸元から首回りまでが露出している、ちょっと大人っぽいデザインだ。
だが、私のは胸元ががっつり開いているしそこから手首のレースのブレスレットまで布がないほか、背中も尻尾の付け根までがっつり露出している。髪が長いから背中はあまり目立たないとはいえ、かなり頼りない着心地だ。
さらにスカートのほうもロングスカートな二人と違って一人だけ短く、太ももの真ん中ぐらいまでしかないためガーターベルトすら見えてしまっている。
こんな痴女ウェディングドレスなのだが、周りからは似合っていると評価が高く、正直複雑な気持ちである。
ちなみにブルボンさんとマックちゃんは二人とも白タキシード風の衣装なので露出は少ないがかっこよく仕上がっていた。
言いたいことがないわけではないが、もうどうしようもないので、このままビューティードリームカップのレースに参加することになった。
残念ながら羞恥心が勝っている状態では実力が発揮できず、レースのほうの結果は散々であった。
さらにレース後、今回のレースで勝利したブルボンさんに、永遠の愛を誓いますとか言われて勝利者インタビュー中にディープキスをされ、生中継で全国に流されたのも散々であった。
「もうお嫁にいけない」
「ライスさんは私のお嫁さん以外の将来はあり得ないですが?」
「なにそれこわい」
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