ウマ娘を知らない競馬ファンがライスシャワーに転生した話 作:雅媛
季節も巡り、新しい年になった。
今年のみんなの成績はかなりいいほうだといえるだろう。
テイオーちゃんが今年デビューした後、ホープフルステークスに勝利してジュニア年度代表ウマ娘になったほか、マックちゃんは菊花賞に勝利してこちらもクラシック年度代表ウマ娘に選ばれていた。イクノさんは残念ながらGⅠ勝利はできなかったが、安定した成績で重賞にまた勝っている。
私とブルボンさんは今年やっとデビュー予定である。入学すぐにデビューしたテイオーちゃんとかに比べればかなりスロースタートだが、この辺りは好みや本格化の進展度合いもあるので、人によるとしか言えない部分であった。
そんな私たちだが、今回初詣に皆で来ていた。
「で、これどう思う?」
「ついに決着がつくのではないでしょうか」
普段着の私やブルボンさんと違い、フル装備の振袖をイクノさんとテイオーさんが着てきたのである。二人ともスレンダーだし、顔がいいから非常に似合っている。そんな二人に挟まれてマックちゃんもご満悦そうであるが、おそらくそれだけでは済まないだろうというのが私とブルボンさんの予想であった。
すなわち、マックちゃん争奪戦である。
なんせマックちゃん、かなりモテるのだ。
まあモテる要素ばかりだし……
まず背が高くてスレンダーなのだ。前世の感性を引きずった私としてはムチムチナイスバディのほうが好きだが、ウマ娘の中では走ることを重視するからか、高身長スレンダーが理想的な体型とする人のほうが圧倒的多数派である。なのでマックちゃんは外見から言ってもかなりモテる。
次にレースで強い。なんせ年度代表ウマ娘だ。ウマ娘は速い者が好きという前世の男子小学生みたいな感性が普通なので、マックちゃんはその点でもモテモテである。
最後に所作がいい。育ちがいいのでお嬢様の所作が身についていて非常に美しいのだ。これらが合わさったマックちゃんにモテない理由は無かった。
とはいえ、マックちゃんが今のところ誰かと付き合っているということはない。
1年ほど前のクリスマスに私に告白してきたマックちゃんだが、あの後特に引きずるようなそぶりもないし、すぐに次に行くかと思ったのだが、なかなか次に行く感じがない。
これにやきもきしているのはむしろ周りである。具体的には私とブルボンさん。
なんせ、見ている感じ、イクノさんもテイオーちゃんもマックちゃんのことが好きだろうことが容易に読み取れるからだ。
テイオーちゃんが入ってくる前はなんだかんだ言ってイクノさんといちゃついているだけだったからそのうちくっつくだろうと思っていたのだが、テイオーちゃんが仲間に加わってからは空気が変わった。テイオーちゃん、マックちゃんのこと好きなんだなーと思うぐらい結構すぐ絡みに行くのだ。
これは恋のダービーの予感である。とはいえレースと違って気軽にみているだけというわけにもいかない。両方とも友人だし……
まあ、なんだかんだ言ってイクノさんとテイオーちゃんも仲がいいし、マックちゃんを奪い取るみたいな雰囲気はないのだが…… だからこそどちらかが抜け駆けしてグループの雰囲気が壊れるのは嫌だな、というところはあった。
そんな感じで心配8割、好奇心2割ぐらいで見守っていたのだが、今日、勝負服に身を包み勝負をかけてきた二人を見て、何か決着がつくだろうことを私とブルボンさんは察した。たぶん何も考えていないのはマックちゃんだけである。マックちゃん、自分のことになると突然鈍感主人公になるしね……
「ライスちゃんも人のこと言えないぐらい自分のことには鈍感ですよ」
「そんなことないよ!? というか心読まないで!?」
「私がライスちゃんのこと昔から好きだったことも、マックちゃんが昔からライスちゃんのこと好きだったことも、気づいてなかったですよね」
「うっ……」
どうやら私も鈍感系主人公だったようだ。
まあ私のことは置いておいて、私とブルボンさんは恋のダービーの最終直線を観客気分でゆっくり見守ることにした。おそらくテイオーちゃんとイクノさんの間では何かが通じ合っているだろうし、ここで部外者が口出ししてもいいことにはならないだろう。マックちゃんが半分に引き裂かれそうになったら止めれば十分だ。
そんなことにおそらく何も気づいていないマックちゃんは、二人の着物姿をべた褒めして、フラグをまた一段積み上げていた。
「そういえば、いい感じの告白スポットを今から見繕わなくても大丈夫かな」
「告白を二回されているライスちゃんの経験をもとに考えるといいのでは?」
「ブルボンさんは寮の前だったし、マックちゃんは寮の渡り廊下だから参考にならないよぉ」
「そういえばそうでしたね」
どうせならばラストの告白にふさわしい場所があるのでは、と思ったが、意外と思いつかない。人気が少なくてロマンチックな場所、なんて都合のいい場所はそうそう存在しないのだ。
「でも、こういう時は伝説の大きな木の下で告白すると、なんていう話が定番だよね」
「じゃああそこはどうでしょうか?」
「どこ?」
「東京レース場の大ケヤキの下」
「それはどうだろう…… 確かに伝説的だけど」
前世では魔の大ケヤキとか言われてたしむしろ縁起悪そうだけど。切ると呪われて死ぬとかあるし、サイレンススズカとか…… うっ、頭が……
それを除いてもこちらの世界でもラストスパート前のコーナーは事故が起きやすいのでどちらかというと私としては縁起が悪い印象である。
「どうしました?」
「あ、イクノさん。いえ、たいしたことでは」
「ライスさんと告白のベストスポットはどこかという話をしていたのです」
「なるほど」
「ブルボンさん!?」
イクノさんが眼鏡をキラリと光らせる。
イクノさん、まじめキャラに見えて結構悪ノリするタイプだから変なこと言うのやめたほうがいいと思うんだけど。
「ライスちゃんの言うには、東京レース場の伝説の大ケヤキの下で告白をすると恋が叶うらしいです」
「ブルボンさん!? そんなこと言ってないよ!?」
「わかりました。情報ありがとうございます」
「イクノさん!? イクノさーん!!」
なんかとんでもない情報をインプットして去っていくイクノさん。
どや顔するブルボンさん。
私はブルボンさんのほっぺを抗議の意味を込めてつつきまわすのだった。
結局神社を回った後、解散することになり、イクノさんとテイオーちゃんはマックちゃんを両脇から抱えてレース場のほうへと向かっていった。本気で大ケヤキの下で告白するつもりなのか。私は頭を抱える。
「どうします? 出歯亀しますか?」
「いやさすがにそれは悪いでしょ」
告白シーンを友達にみられるのはさすがに嫌だろう。私だっていやだし。
興味はあるし後ろ髪引かれる思いはあるが、私たちは私たちで適当に遊んで帰ろう。
その後、二人で駅前のゲームセンターに行き、ユーフォーキャッチャーで大量のマックちゃんのぱかぷちをとったり、ブルボンさんがユーフォーキャッチャーを爆発させたりして遊んだ後、適当な時間で寮に戻るのであった。
「こんなに取らなくてもよかったのでは?」
「いやぁ、一度取れたら止まらなくなっちゃって」
大小10個ぐらいのマックちゃんぱかぷちを抱えながら寮に戻ると、マックちゃんたちが共有スペースのソファに座っていた。
何というか、右にイクノさん、左にテイオーちゃん、そして真ん中になんかげっそりしたマックちゃんという謎サンドイッチ状態だ。告白イベント後かと思ったのだがこれはどういうことだろうか。
「ただいまー」
「ただいまです」
「おかえりなさい。すごいぱかぷちですね」
「なんか一杯取れちゃって。一人2個ぐらいずつ持って行ってくれると嬉しいな」
イクノさんに大小二つ渡して、テイオーちゃんには一番大きいのを渡して頭の上に小さいのを一つ置いた。かわいい。マックちゃんは…… まあ見なかったことにしよう。
「で、マックちゃんどうしたの? イクノさん」
「そういえば恋人になったんですよ」
「え、だれとだれが!?」
「私とマックイーンさん、あとテイオーさんとマックイーンさんで」
「え? え?」
何が起きているのか、イクノさんが何を言っているかさっぱりわからない。
え、それって二股ってこと? それをされている側のイクノさんが楽しそうに言うのはどういうこと?
そしてマックちゃんが何でげっそりしてるの!? とんでもない告白イベント起きてない?
「そうですか、よかったですね」
「はい、三人仲良しです」
ただ、疑問に思っているのは私だけで、ブルボンさんは普通に祝福していた。
まあ別に当人同士の話だから他人が口出しする話ではないと思うんだけど、それでいいのか? という疑問が浮かぶ。
「それではごゆっくり」
「また明日」
まあなんにしろ邪魔する話ではないだろう。
マックちゃんが助けてほしそうに見ていたが、華麗にスルーして私達はその場を去ったのであった。
「何かさっきから腑に落ちない顔をしていますがどうしました?」
「いや、うーん、なんだろう、別に3人が納得しているならいいんだけど」
「ふんふん」
「三人一緒ってちょっと意外だったから」
「そうですか?」
ブルボンさんが不思議そうに首を傾げた。
「マックイーンさんもテイオーさんも名家の出ですし、複数と一度に付き合ったり結婚したりというのも珍しくないのではないでしょうか?」
「そうなの!?」
「ライスちゃんも一応名家の出では……?」
いやだって、うちの両親はそんなことないし、マルゼンさん所とかもそんなことないし、ブルボンさん所もそんなことないし。
まあ私が知ってるこちらの世界の夫婦ってこれくらいだけど……
「え、多夫多妻制ってありなの?」
「え? 何をいまさら…… まあ多数派ではないでしょうけど……」
こちらの世界に生まれてもうそろそろ15年になるけど結婚制度について初めて知った。
あまりに引きこもりすぎてた問題がここにも出たようだ。
あれ、でもということは……
「ライスも、ブルボンちゃんとマックちゃんと一緒に付き合っても問題……ひっ」
「ライスちゃん?」
「ぴきゃああああああ!!!!」
同時に付き合う選択肢もあったのか、ぐらいの軽い気持ちだったのだが、ブルボンちゃんの嫉妬を買ってしまったようだ。肩に置かれたブルボンさんの手の中から、めりめりという嫌な音がしている。
二股なんて考えてないよ! 全く考えてないよ!! というか絶対二人と付き合うとか、関係性維持すごい大変じゃん!! できたとしても考えてないから手を放して肩が壊れる!!
悲鳴にそんな気持ちを込めたところ、ブルボンちゃんは私のことをそのまま正面から抱きしめた。
身長差があるので顔がブルボンさんの豊満な胸部に埋まる。これはやばい、と思ったがある意味天国のような感触に私は逃げることができなかった。
そのまま強く抱きしめられると私は全く息ができなくなった。体中もミシミシと悲鳴を上げる。
悲鳴すら上げられず、そのまま意識がなくなるまで私はブルボンちゃんのデス抱きしめに締め付けられ続けたのであった。
「次やったらこれですよ」(胸の横に手を当てる例のポーズ)
「ひぇ」
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1 クラシック三冠激闘編
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2 ブルライいちゃらぶ
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3 マックちゃん海外遠征
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4 カレンチャンかわいいやったー
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