ウマ娘を知らない競馬ファンがライスシャワーに転生した話   作:雅媛

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4 バレンタイン

 新年のときからブルボンちゃんと少しすれ違っている気がする。

 なんというか、少し疑われているような、そんな感じだ。

 仲が悪くなったとかいうほどではないんだけど。

 

 

「ということでお姉様! バレンタインで巻き返しを図りたいんだよ!」

「なるほど。じゃあこれがいいんじゃないかしら」

 

 

 この微妙な感じを打開するべく、バレンタインに合わせて何かプレゼントを考えようと思って何かいい感じのものをブルボンちゃんに贈ろうと考えてマルゼンお姉様に相談したのだが……

 マルゼンお姉様が取り出したのは赤いリボンだった。ずいぶん幅が広い。

 

 

「何に使うの、これ?」

「体に巻いて、私がプレゼントよってすればすぐ仲直りできるわよ」

「お姉様!? 破廉恥すぎるよ!?」

 

 

 とんでもない使い方を言われて動揺する。さすがにいろいろ問題が大きすぎるだろう。

 

 

「なんで? 私がトレーナー君を落とした時に使った由緒正しいリボンよ」

「しかもお姉様の使用済み!?」

「そうしてできたのがカレンチャンだし」

「お姉様!! 生々しいよ!!!」

 

 

 ちなみにカレンチャンは今は私たちの周りをてってこ走り回っている。とてもかわいい。まだ一歳にもなっていないが、ウマ娘の身体的な成長は早いので、これくらいの年齢でも普通に走るのだ。まだまだ全然遅いけど。

 そんなカレンチャンはリボンを見つけて楽しそうに自分の体に巻き付けた。

 

 

「あら、カレンチャンも気に入ったの?」

「にゃー!」

 

 

 謎の声を上げて、ぐるぐる巻きになったりボンから顔を出すカレンチャン。まだ色が黒い芦毛の髪と、白い肌と、赤いリボンのコントラストは確かにかわいいが、リボンが使用済みのわいせつ衣装だと思うと微妙な気持ちにしかならない。

 カレンチャンを抱き上げると「だー」と謎の声を上げて私の胸に飛び込んでくる。非常に温くてかわいい。天使である。

 

 

「じゃあこれもつけるわ」

「なに? これ?」

「チョコレートクリームよ。体に塗って、私を食べてって言えばブルボンちゃんもいちころよ」

「お姉様!! カレンチャンのまえだよ!?」

 

 

 結局抵抗したが、チョコレートクリームとリボンは渡されてしまった。一応かばんにはしまったが、おそらく使うことはないだろう。

 

 

 

 

 

 マルゼンお姉様がまるで役に立たなかったので次の相談相手に相談することにする。

 

 

「で、なんでボクなの?」

「テイオーちゃん、基本的にセンスがいいから」

「普通に手作りチョコでいいじゃん。ライス先輩、料理できるでしょ」

「いやー、もうちょっと特別なもの作りたくて」

「ブルボン先輩と何があったのさ?」

「じつは……」

 

 

 初詣の時の話をテイオーちゃんにすると、テイオーちゃんが呆れた顔をした。

 

 

「ライス先輩って、勉強できるけど結構世間知らずだよね。箱入り娘?」

「否定はしないよ……」

 

 

 小学校不登校でぶっちぎってたしね…… さらに前世の記憶のせいで変に身に着いた知識があるから、前世と違う部分があると明らかにずれた考え方することがあるのだ。よくないことだとは思いつつもなかなか修正しきれないでいることがある。

 

 

「まあ、変にマックイーンが巻き込まれても余計面倒になりそうだし、いつもお世話になってるし協力はするけど……」

「テイオーちゃんありがと~」

「で、今のところ手作りチョコ以外の案はないの?」

「マルゼンお姉様からはこれを渡されたけど……」

「何これ、チョコクリームと大きなリボン? ……もしかして」

「プレゼントはワ・タ・シというやつだね」

「……」

 

 

 テイオーちゃんが真っ赤になる。刺激が強すぎたようだ。

 まあ、大体のトレーナーさんは真面目な人だ。教育者という立場もあるし、下手に隙を見せると思春期のウマ娘に何をされるかわからない。お兄様だってマルゼンお姉様にあんなに迫られても鋼の意思を崩さなかったし、マルゼンお姉様だけが変なのだろう。

 まあそれもおそらく私の前だけだと思うが。ほかの人の前では美人で優しくて速い尊敬するべきトレーナーさんで通ってるし。

 

 

「もうそれにすれば……?」

「いやだよ!? ドン引きされるでしょ!」

 

 

 さすがに性的過ぎてブルボンさんドン引きだよこれ。

 これは熟年ラブラブ夫婦のプレイの一環で使われるものだろう。

 

 

「じゃあほかに何か考えているものはないの?」

「薔薇の花100本とか?」

「そっちのほうがドン引きだと思うけど。値段的にも重量的にも気持ち的にも重いよ」

「そうかなぁ」

「はぁ、やっぱりライス先輩は箱入りだなぁ……」

「?」

「薔薇100本をブルボン先輩が貰って、どこに持って帰るのさ」

「寮の部屋じゃない?」

「寮の部屋のどこに置くの?」

「……どこだろう?」

 

 

 そう言われると困る。大量の薔薇、どこに保管すればいいだろうか。

 そもそも花瓶とかもないし。私の実家なら大きいサイズの花瓶もあるが、ブルボンさんちにはそういうのもなさそうな気がする。

 

 

「もらった後どうするかも考えないとプレゼントはだめだよ」

「なるほど……」

 

 

 さすがテイオーちゃん、頼りになる。

 

 

「じゃあ指輪とか?」

「ライス先輩、なんでさっきから案が全部重いの?」

「重いかな……?」

「重いよ!」

「でもペアリングとか憧れない?」

「わからなくもないけどさぁ。そもそもライス先輩、ブルボン先輩の指のサイズわかるの?」

「わかんにゃい……」

 

 

 指輪のサイズか…… 考えたこともなかったなぁ…… というか自分の指のサイズも分かんないや。

 

 

「あとアクセサリは好みがあるから、買うときは相手と一緒に行かないと揉めること多いって聞くよ」

「うぐぐぐぐ……」

 

 

 そう言われると自信が一切なくなる。そもそも自分のセンスに自信ないし、プレゼントしてドン引きされたらたぶん死にたくなる。

 

 

「というか、去年はどうしたの? そのころから付き合ってるでしょ?」

「手作りチョコだよ」

「どんなのつくったの?」

「こんなの」

 

 

 スマホに撮影した写真を見せる。

 丸いチョコクッキーに粉砂糖をまぶしたものだ。

 

 

「へー、かわいいとおもうけど」

「マックちゃんとイクノさんと、ブルボンさんと4人で作ったんだよね」

「えー、ずるいー! ボクも一緒に料理したいー!!!」

 

 

 テイオーちゃんが駄々をこねる。

 確かにこの時まだ入学前だったからテイオーちゃんいなかったもんねぇ……

 

 

「みんなで作りたいー! お願いライス先輩」

「うっ」

「お願い」

「わかったよ。じゃあみんなと日程調整しよう」

「やった♪」

 

 

 テイオーちゃん必殺の上目遣いが繰り出され、私は完全敗北してテイオーちゃんのお願いを聞くことになるのであった。

 そして私の問題は何一つ解決しないのであった。

 

 

 

 

 

「ということでイクノさん助けて」

「なるほど、とはいえ私もあまりお役に立てそうにありませんが……」

 

 

 テイオーちゃんのおねだりに従い、バレンタイン料理教室の日程調整のためにイクノさんに声をかけつつテイオーちゃんと同じ相談をする。

 

 

「そういえばイクノさんはバレンタインはマックちゃんに何かあげるの?」

「お誘いいただいたチョコ作りのチョコ以外に、ちょっとしたお高めの小さいチョコをマックイーンさんとテイオーさんに渡すつもりですよ」

「へー」

「あまり多いと体重管理に影響出ますからね、特にマックイーンさん」

 

 

 贈り物だっていろいろ気を使っているらしい。まあ当然だけど…… あまり参考にはならないかもしれない。

 

 

「それでどんなのがプレゼント候補にあったんですか?」

「100本の薔薇とか、指輪とか」

「重すぎますね」

 

 

 イクノさんにもバッサリだった。

 

 

「お二人とも、どうしたんですか?」

「あ、マックちゃん。実はかくかくしかじかで」

「まるまるうまうま、と。相変わらず乙女心がわからない人ですよね、ライスちゃん」

「これでも乙女なんだけど……」

 

 

 そこに通りかかったマックちゃんにも助けを求めたのだが、マックちゃんに説明したら一刀両断である。

 かなしい。

 

 

「ブルボンさんの機嫌を取りたいなら、リボン巻いて私がプレゼントってすれば一発ではないですか?」

「お前もかマックちゃん」

「あら、同じ意見もう出てましたか」

「お姉様がね…… リボンとチョコクリームまで押し付けられました」

 

 

 一応二人にリボンとチョコクリームを見せると、特にイクノさんが興味深げに見ていた。

 

 

「まあ、半分冗談なのでおいておいて」

「半分本気なの!?」

「まあ、三割ぐらい冗談なのはおいておいて」

「本気度増えた!?」

「ふつうにハートのチョコに大好きっていう文章書きこむのが一番いいと思いますよ。ライスちゃん、あまり好きな気持ちを言葉にしてないでしょう」

「うっ」

 

 

 そういわれると確かにあまり口に出してはいない。

 何というか恥ずかしいし、あと、どことなく罪悪感がある。たぶん前世足すとブルボンさん年下だし、同性だしとか、変なところで前世を引きずって無駄な背徳感を抱いているだけなのだが。

 

 

「ライスちゃんに必要なのは気持ちを言葉にしてちゃんと伝えることだと思います」

「なるほど、わかったよ」

 

 

 さすが幼馴染だけあり、説得力がある。

 覚悟を決めてド甘い手作りチョコを作ることにした。

 

 

 

 

 ということでバレンタイン前日に実家に帰り作り上げたのがこちらのハート形本命チョコである。白チョコで「I Love You」と書いたべたべたなものであるが、こういうのがいいだろうと開き直った。

 既にほかの人に配る分のチョココーティングマシュマロはいつもの5人組で集まって作ったので準備は万端であった。

 

 放課後、寮の部屋に帰ったところブルボンさんもすでに戻っていたので、早速話を切り出す。

 

 

「ブルボンちゃん」

「ライスさん。どうしました?」

「これ、バレンタインのプレゼント」

「ありがとうございます。みんなで作ったのと別のものですか?」

「そうだよ。本命チョコだからね」

 

 

 マシュマロとは明らかに大きさが違うから別物だとすぐにわかったのだろう。

 ブルボンちゃんが丁寧に包み紙をはがすと予定通りハートチョコが出てきた。

 

 

「ふふ、ありがとうございます」

「ブルボンちゃん」

「なんですか?」

「大好きだよ」

「私もです、ライスさん。大好きです」

「……」

「ライスさん、お顔真っ赤ですよ」

「ううううう……」

 

 

 やっぱりすごく恥ずかしい。

 でも言った達成感も同時にあった。

 ちびちびとブルボンさんが私のチョコを食べ始めて、ふと気づいたように顔を上げた。

 

 

「ああ、でも私は本命チョコ用意してないんですよね……」

「ホワイトデーのお返しでもいいよ?」

「あのクローゼットの奥のリボンは着なくていいんですか?」

「なんで知ってるの!?」

 

 

 マルゼンお姉様からもらったリボンはクローゼットの奥に隠しておいたのにいつの間にかバレていた。

 

 

「私に着せたいのかと思っていましたが」

「いや、そんなことないよ」

「ではライスさんが着てくれるんですねやっぱり」

「やっぱりって何~!?」

 

 

 ブルボンちゃんに着せたい気持ちが全くないといえばうそになるが、たぶん着てもらったら罪悪感と背徳感で死んでしまう。

 とはいえ自分で着る予定も全くないのだけれども。はずかしいし。

 

 

「お風呂あがり、楽しみにしていますね」

「だからライスが着るわけじゃないってば!?」

 

 

 結局リボンが使われたかどうかについてはここでは秘密にしておく。




評価お気に入り・感想お待ちしております。

次やったらこれですよブルボン
【挿絵表示】


雑談フリースペース
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次章メイクデビュー後の話ですが何が読みたい?

  • 1 クラシック三冠激闘編
  • 2 ブルライいちゃらぶ
  • 3 マックちゃん海外遠征
  • 4 カレンチャンかわいいやったー
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