ウマ娘を知らない競馬ファンがライスシャワーに転生した話 作:雅媛
春のファン大感謝祭は一般の学校で言うところの体育祭である。
とはいえ、学校全体を紅白で分けたりするわけではなく、個人または少人数集団の競技を多数行い、その競技ごとに表彰する、という形式である。
私たちはいつもの5人で、グループ複合競技に出ることにした。
「バスケット奪取ステークス」「ウマドッジチャンピオンシップ」「大食いダービー」「ファン大感謝祭大障害」の4種目で勝負するというものだ。
「4種目なのに5人1チームなんだね」
「大食いが食べる側と運ぶ側の2名ですから、それで5人になるみたいですね」
「なるほど」
というか大食いってなんだよと思うけど、残念ながらトレセン学園伝統の競技である。
それ以外にも、ドッジボールも、2チームに分かれてとかではなく、コートを縦横無尽に走りながら、ボールをほかのウマ娘にぶち当てて、体力が尽きた順に脱落していくというかなり荒っぽいものだし、バスケや大障害も、それなりにラフプレーが許される、全体的に荒々しい競技が多い。
一応目玉競技なのだが、知名度のわりに参加者が少ない競技であった。
「誰か、どれに参加したいという希望はありますか?」
「とくにはないかな」
「わたくしはレースがあるので大食いはちょっと……」
「ボクもレースあるから……」
「では大食いはライスさんかブルボンさんにお願いしてもいいですか?」
「ライスさんのほうがよく食べるからライスさんがいいと思います」
「了解」
こんな感じで私の役割は大食いダービーの食べる側になるのであった。
さて、この競技だが、結局参加するのは4チームであった。
その中の一つにチームメジロというものがあった。
これ、メジロ家で出してるチームだよなぁ…… そんなチームなのに現役メジロの中ではトップの成績を持つマックちゃんがほかのチームにいていいのだろうか。
「マックちゃん、チームメジロに行かなくていいの?」
「問題ありませんわ」
マックちゃんとメジロ家との関係はずいぶんこじれているようだ。
前から結構こじれてたけど、去年の年末の有馬記念出走に関していろいろあったらしい。結局マックちゃんはダービー、菊花賞と勝ち、人気投票トップながら特にけがなどの理由もないのに出走しなかったというトラブルも発生していた。詳細は知らないが、さらに溝が深まっているのかもしれない。
まあ本人がいいと言っているのだから気にしないでおこう。
メジロのチーム以外は、わたしたちとおなじように友達同士で集まった混成チームばかりである。とはいえ、前世知識で知っている名前のウマ娘がかなりいる。
なかなか豪華な勝負になりそうだな、と思いながら少し練習を重ねたらすぐに本番を迎えてしまった。
さて、まず第一試合は「バスケット奪取ステークス」である。
一つのバスケットボールを奪い合い、ゴールに叩き込むことでポイントをゲット、ポイントが多い順に順位が決まるというバスケットボールのようでバスケットボールでない、ちょっとバスケットボールなバトルロワイヤルである。
うちのチームからはイクノさんが出ている。
ぜひ頭脳派なプレイを見せてもらいたいが……
「イクノさん、シュートですわ!」
「えいっ」
「……」
「……」
イクノさんがうまい立ち回りでドフリーの状態から放ったシュートはゴールに全く届かずに終わった。
そのあとも立ち回りはよくて、ボールを確保したり、シュートに持っていくのはうまいのだが、肝心なシュートが全くダメであり、いいところがなく終わってしまった。
まあ、楽しむのが重要なので別段問題ないといえば問題ないのだけれども。
「イクノさんの仇はわたくしがとりますわ」
マックちゃんが燃えながら、第二試合の「ウマドッジチャンピオンシップ」に向かっていった。
そして第二試合の「ウマドッジチャンピオンシップ」であるが……
「久しぶりマックイーン、お姉ちゃんが実力を見せぶへっ!!」
「お久しぶりですお姉様、ではさようなら!!!」
チームメジロから参加していたのはメジロデュレンさん、マックちゃんのお姉さんである。そんなデュレンさんの顔面に、マックちゃんは至近距離からボールをたたきつけた。
そしてそのまま跳ね返ったボールを空中でキャッチし、追撃の全力シュートを叩き込む。
「ぶへっ!?」
当然躱せなかったデュレンさんは哀れに吹き飛んだ。
容赦がなさすぎる。
「勝負事は情け無用ですわ」
開始10秒ぐらいで姉を倒したマックちゃんの気迫は半端なく、ほかの参加者も完全に委縮してしまったので、この競技はマックちゃんが1位を取ったのであった。
そして第三試合の「大食いダービー」が私とブルボンちゃんの試合である。
ライバルは、チームメジロからはメジロラモーヌさんとアルダンさんの姉妹、ラモーヌさんが食べる側である。その組み合わせでいいのかと思ってしまうが……
おそらくこの試合で一番強いだろうペアはオグリキャップさんとタマモクロスさんのペアだ。永世三強を中心として集まっているチームだが、1試合目のイナリワンさんは身長が低くてイクノさんに簡単にボールを奪われていたし、2試合目のスーパークリークさんはマックちゃんの気迫に押されて簡単に負けていた。いいところを見せたいという気持ちもあるはずだ。
最後のペアはダイタクヘリオスさんとダイイチルビーさんのペアだ。というかダイイチルビーさん、初めて見たけどくるっくるのお嬢様へアーなんだ。すごいお嬢様お嬢様している。相方のダイタクヘリオスさんは思いっきりギャル! みたいな外見なのでペアのギャップがひどい。こちらのチームは1試合目はヤマニンゼファーさんが、「風を感じる」とか言いながら縦横無尽に飛び回ってダンクシュートを連発し1位を取っており、第2試合は、なぜかこちらもチームメジロではなかったメジロパーマーさんがうまくさばいて2位に入っていたので今のところ総合成績1位のチームである。
この世界で皆有名というわけではないが、知っている名前が多くて楽しくなってきてしまう。
そんなことを考えていたら、試合が始まってしまった。
「ライスさん、まずはお寿司で行きます」
たづなさんがばらまくように配置する料理から、ブルボンさんはお寿司の皿を2つ持ってきた。食べやすいものから選んでくれたようだ。これくらいならと一瞬で食べる。その後もどんどん料理を持ってくるブルボンさんから、料理を受け取りどんどん食べていく。
どれもおいしくて満足である。
少し横をうかがうと、なんというか、ラモーヌさんがまずすごい勢いで食べていた。
お嬢様っぽい雰囲気はどこに行ったのかと思うぐらいの食べっぷりである。あんなに大食漢だとは全く知らなかった。
オグリキャップさんはイメージ通りすごいが、ダイタクヘリオスさんのところは……
「お、お嬢、ちょっとま……」
「私の料理、食べられますよね?」
「たべりゅぅ……」
謎のSMプレイが行われていた。
というかヘリオスさんあまり食が太くない感じだ。なのにダイイチルビーさんの料理を集める速度がそれなりなので、明らかに消費が間に合っていない。
まあ、あまり他人のことばかり気にしてはいられない。また料理に向かって箸を進める。
さて、食べるほうは必死に食べるだけだが、提供側のほうは実は結構駆け引きがある。なんせ、妨害すらありのルールだ。体当たりして料理を落とさせたり、料理を奪い取ったりといった行為すら運んでいる間なら許される。
アルダンさんとルビーさんはどちらかというと防御的な姿勢で淡々と料理を運んでいたが、タマモクロスさんはそれを乱しにかかった。取ろうとした料理を横から奪い取ったり、体当たりして体勢を崩させたり、なかなか攻撃的な行動をとり始めたのだ。それでいてオグリさんへ料理を運ぶペースは崩さないのだからかなりやり手である。
それに反応したのはアルダンさんだった。あの二人、おそらく学年が近いはずだし、ライバル心を刺激されたアルダンさんは、タマモクロスさんを吹き飛ばした。パワー勝負では、重戦車と異名を持つ恵まれた体格を持つアルダンさんと、小柄で有名なタマモさんでは勝負にならない。だがタマモさんも小柄な体格を生かしたかく乱でアルダンさんに対抗していく。
その間、ブルボンちゃんは粛々と料理を運び、ダイイチルビーさんはヘリオスさんにさでずむをしていた。なんで食べる側で出てしまったんだヘリオスさん。
結局粛々と食べていたうちのペアがぎりぎり1位になった。とはいえ、波乱がなければオグリさんやラモーヌさんには勝てていなかっただろう。展開に恵まれた試合であった。
最後の「ファン大感謝祭大障害」は、うちからはテイオーちゃんが出たのだが、勝ったのはメジロのチームであった。メジロ牧場は障害馬も積極的に出していたのは前世記憶にあるが、今回出てきたのは先の障害レースの王者メジロマスキットさんだ。そのレベルの選手を出されるとさすがにキツかった。
純粋に平地を走るところではテイオーちゃんのほうが速そうだったが、障害物を登ったり越えたりする速度や、越えた後の加速が全く違うのだ。
負けたテイオーちゃんがかなり悔しそうにしていたのが印象的であった。
「ということでみんなお疲れさまでした」
「お疲れさまでした」
「疲れましたね」
「わたくしはすっきりしましたわ」
「マックイーン、あれはちょっとえげつなさすぎたよ」
それぞれ3位、1位、1位、2位と良い成績を残し、総合で優勝した私たちは、寮に戻って自主的な祝賀会をしていた。
「そういえばマックちゃん、お姉さんのこと嫌いなの?」
「別に嫌いではないですわ。どちらかというと仲が良い部類に入ると思います」
「あれで……?」
えげつないシュートを見た私たちは、とてもマックちゃんの発言を信じることができないが、もしかしたら気の置けない仲、というものかもしれないので深くは考えないことにした。
「そういえば、今後だけどテイオーちゃんはクラシック三冠を目指すんだよね」
「そうだよー。ボクが最強だからね」
テイオーちゃんは自信満々にいうクラシック三冠。普通なら与太話にしか聞こえないが、テイオーちゃんなら怪我をしない限り十分取れるだろう。
「わたくしは大阪杯、宝塚記念と経由して秋は凱旋門賞を目指しますわ」
「え、天皇賞は?」
「出ない予定ですわ」
メジロマックイーンと言ったら天皇賞春のイメージだが、どうやら今回出走しないとのこと。メジロは天皇賞を重視しているはずだが、あえて外すあたり、メジロとの確執は深そうである。
というか、夏以降は海外遠征するのかぁ。すごいなぁ。
「イクノさんは?」
「私は春はレースに参加しつつ、夏にはマックイーンさんに帯同予定です」
「いいなー、ボクもパリ行きたかったなぁ」
「テイオーさんはクラシック三冠頑張ってください。期待してますからね」
うらやましがるテイオーちゃんをイクノさんが抱きしめてよしよししている。
というか、よくよく考えるとテイオーちゃんとイクノさんもかなり仲が良いよな。
テイイク…… ありだな。
「ライスちゃんとブルボンさんは今年デビューですわよね?」
「そうだね。ライスは新潟で9月の予定」
「私は中京で9月の予定です」
「頑張ってくださいね」
マックちゃんの激励に私もブルボンさんもうなづく。
休養の期間は終わり、戦いが始まろうとしていた。
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三人でとったら親子みたいになっちゃった写真
【挿絵表示】
雑談フリースペース
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またたまったら更新します
次章メイクデビュー後の話ですが何が読みたい?
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1 クラシック三冠激闘編
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2 ブルライいちゃらぶ
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3 マックちゃん海外遠征
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4 カレンチャンかわいいやったー
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5 その他何かあれば投票の上活動報告へ