ウマ娘を知らない競馬ファンがライスシャワーに転生した話 作:雅媛
ライスシャワーのライバルと言えば、やはりミホノブルボンだろう。
ライスシャワーがミホノブルボンの三冠が掛かった菊花賞で勝利したのは有名な話だが、その前の日本ダービーでもライスシャワーは2着に入り、ミホノブルボンに迫っている。
通算ではライスシャワーの1勝4敗であるが、最後でライスシャワーが勝った以上ライバルといっても問題はなかろう。
メジロマックイーン、マックちゃんと出会って友達になったのだから、どうせだからミホノブルボンにもあってみたいと思い立ったはいいが、どうやって見つければいいかわからず途方にくれたのが昨日のことだ。
マックちゃんはメジロの冠があるのでメジロ関係ですぐ分かったが、ミホノブルボンはそういうのがまるでない。そもそもミホノって冠名だっけ、というレベルの知識しかないし、ミホノなんて冠の馬は他に聞いたことがなかった。
自分で調べるのに限界を感じたため、私はマックちゃんにも協力を求めるのであった。
「マックちゃん、ミホノブルボンって子しらない?」
「唐突ですわね」
知り合って後、うちに頻繁に遊びに来るようになったマックちゃんは、うちでトレーニングしたり、私にダルがらみされたりしたりしている。家としては、お嬢様に初めて友達ができた! と歓迎ムードなのもあり、家の方が恐らく空気最悪なのもあり、マックちゃんも居やすいのだろう。
今日も一通り走って、風呂で汗を流したあと、涼んでるときにマックちゃんに抱き着いてダルがらみをしつつ、ミホノブルボンについて尋ねた。
「すぐに思い出せる名前ではありませんが、その方は一体?」
「ライスのウマソウルに刻まれた将来のライバルの一人かな?」
「なんですかウマソウルって」
「わかんない」
私の雑な会話に、マックちゃんがため息をつく。
私はマックちゃんの胸元に顔を埋めた。ウマ娘の成長は人より平均的にかなり早く、12,3歳、つまりトレセン学園に入る中学一年生前後にはある程度体が出来上がる。
まだ小学生のマックちゃんの胸もそれなりに膨らんできており、顔を埋めるととてもふわふわでいい気持ちなのだ。
ちなみに私の方もでっぱりは膨らんできているが、身長はマックちゃんに圧倒的に負け始めている。一時期ぐんぐん伸びたのでマルゼンスキーさんぐらいまで大きくなるのを期待していたが、140cmあたりでピタッと止まってしまっているため、あまり期待できないかもしれないと諦めている。最低でもスタイルだけは頑張りたい気持ちはある。
「で、その方を探していると」
「そうなんだ。でも名前しか分からないから探しようがなくて」
「私の方でも少し探してみましょう」
「わーい、ありがとー」
マックちゃんも協力してくれることになったが、とはいえ情報は名前だけだ。
そうそう見つかることはないだろうと思っていたのだが……
三日後
「ライスさん、ミホノブルボンさんですが、見つかりましたよ」
「仕事が早い!!」
マックちゃんはあっけなくミホノブルボンを見つけた。
最近行われたちびっ子レースの結果を見ていたら簡単に見つかったらしい。
「なになに、おー、ちびっ子レースで常勝無敗じゃない。すごいねぇ」
「なんでもお父様は元トレセン学園のトレーナーだとか」
「あー、なるほど」
その情報だけでいろいろなものが分かってしまう。
トレセン学園のトレーナーが生徒に手を出したパターンだ。いや、実際は人がウマ娘に勝てるわけがないので、基本生徒に押し倒されたパターンだろうが、責任は成人しているトレーナーの方にあるのだ。
トレーナーとウマ娘の恋愛が100%ご法度なわけではないが、生徒と契約トレーナーという関係の恋愛はいい顔はされない。子供ができてしまったりしたら言わずもがなだ。だから基本的には、専属契約で在学中は囲い込んで、卒業後改めてお付き合いするパターンが基本だ。
それを破ってしまった場合になるのが、元トレセン学園のトレーナー、という肩書である。それなりに悪評として回りやすい称号の一つだが、マックちゃんはそこに込められた意味をまだ理解してはいないのだろう。
とはいえやらかしてしまってもクソムズ試験を突破してトレーナー資格を得ただけあり、指導力はあるのだろう。
そんな父親に教えられ実力者として育ったのがミホノブルボンということだ。
「ちなみに今度の日曜日のレースにも出るらしいですわ」
「え? 本当? じゃあライスも出ようかな」
「今から調整間に合いますの?」
「ちびっ子レースに調整もなにもないでしょう?」
私がそういうとマックちゃんがため息をついた。
別に1戦にそこまで掛けるようなレースと思っていないので、普段通りに行くつもりだが、マックちゃんだったら真面目だから本番とあればちゃんと仕上げるのだろう。
ひとまずトレーナーさんに頼んでレースに登録してもらい、私は初めてミホノブルボンに会いに行くことになった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ということで参加したちびっ子レース。
場所は市営のトラックで行われるこれは、1日で10レース以上行われる。
そのうちの一番長い2000mのレースにミホノブルボンは参加するということで、私も同じレースに登録をした。かなりギリギリ時期の登録であったが、長距離のレースは参加者が少ないので登録ができた。
なお、今回は応援にマックちゃんも一緒に来てくれている。さすがに調整が間に合わないと参加はしていないが……
「あ、多分あの子がミホノブルボンだと思うな」
「……どうしてわかりますの?」
準備運動をしながら他の参加者を観察していると、ミホノブルボンらしき子はすぐ見つかった。
残念ながら写真などは手に入っていないので外見に関する事前情報はなかったが、きっとあの子だろう、という子を見つけたのだ。栗毛でそしてケツがデカくて太ももが太い少女だ。
馬のミホノブルボンと言えばあの坂路で鍛えられたデカいトモとケツである。当時見たときの圧倒的なデカさは今も記憶に残っている。その能力を引き継いでいるのだからこちらのミホノブルボンもきっとデカいだろうと思っていたが、案の定立派であった。
「トモとおしりが大きいからね」
「太さで言えばライスさんも同類ですけどね。後あまり人のお尻や太ももをじろじろ見るものではないかと」
マックちゃんが呆れたように言う。
馬のライスシャワーは小柄で細く、どちらかというと絞り込むと走る馬だったが、名前を継いだだけの私が馬と同じである必要もないので、よく食べよく動いていたら私の方はムチムチな体になってしまった。背が伸びればマルゼンスキーさんも夢ではないのだけれども、最初のころと違って最近完全に身長が伸びなくなっているのでそちらはあきらめ気味である。
言われれば確かに太ももは太いし、ケツも大きいのは私も一緒であるのは確かだが…… マックちゃんも結構太くてデカいので、そっちも同類じゃないかと思うのだけれども……
閑話休題、ひとまずミホノブルボンさんに声をかけてみよう。
「こんにちは。ミホノブルボンさん、ですよね?」
「はい、そうです」
「ライスはライスシャワーって言います。今日のレースで一緒に走るんだ。よろしくね」
「よろしくお願いします。ライスさん」
挨拶自体は特に問題なくできたが、反応はいまいちだ。
ミホノブルボンさんの表情が全く動かないし、何を考えているのかいまいちわからない。お嬢様然としているのに表情がくるくる変わるマックちゃんとはすごい違いがある。
「……」
「……」
無言の時間が過ぎる。これで何となく察するところがあった。
この子、おそらくコミュ力が非常に低い。
若干目が泳いでいるし、どうやって会話を続けようかと考えているのだろう。
ちなみに私の方は私の方でコミュ力が死んでいる。前世の知識はあるが、今世は完全な箱入り娘だ。外にもあまり出ず、家にこもりっぱなしであり、トレーニングすら自宅で完結する生活なので会話するのは身内ばかり。
そこから外れるのがマックちゃんだけという状況なのでそりゃコミュ力も育つはずがない。
「ブルボンさん、私はメジロマックイーンです。よろしくお願いしますね」
「あ、よろしくお願いします、マックイーンさん」
「ブルボンさんはよくレースに出られていると聞いていますが、今日の調子はいかがですか?」
そんな無言のお見合いをしているところに助けを出してくれたのがマックちゃんであった。さすがコミュ強者である。
「悪くはないですね」
「そうですか、今からライスさんがウォームアップを始めるようですが一緒にやりませんか?」
「わかりました」
マックちゃんは、仲良くしたいなーと思っていた私の意を察してくれたのか、あまりに友達がいなさすぎる私を心配してくれたのか、ひとまず一緒にウォームアップを提案してくれた。
ブルボンさんも応じてくれたので、ひとまず一緒にストレッチから始めることになった。
「じゃあライスが先に補助するね」
「お願いします」
私がまず開脚前屈するブルボンさんの後ろに回って、太ももを抑えつつ体で押す。
うお、太ももふっと! しかも鍛えられてるので結構堅めにもかかわらず、脂肪もついているので絶妙な触り心地である。こんな枕、欲しくなる硬さだ。
後ろから押す感じからも体幹もしっかりしていて、よく鍛えられた体だな、とすぐに分かる。これは速そうだ。
私がブルボンさんの体を堪能していると……
「そろそろ代わりましょうか」
「わかったよ、おねがい」
補助役を交代することになった。
私の後ろに回るブルボンさんは、そのまま私の背中を体で押す。
むにょん、と柔らかいものが背中に当たった。とても大きい。マックちゃんのとは天と地ほどの差がある。
いや、マックちゃんのはマックちゃんので十分楽しめるが、大きさは全く違った。
顔がにやけるのをマックちゃんに思いっきりみられてしかめ面をされてしまった。
マックちゃんの小さいのも好きだよと目線で送ったら冷たい目線が返ってきた。解せぬ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
さて、レースに関しては私がまたもや勝ってしまった。
とはいえ山が当たっただけに過ぎないのだが……
ブルボンさんが実力があることはマックちゃんから聞いていたし、ミホノブルボンと言えばラップを正確に刻んだ逃げなので、ブルボンさんを後ろでマークしたら楽して勝てるんじゃないか、と思ったら本当に勝ってしまった。
単純に競ったらブルボンさんの方が上な感じがあったが、これはレースであり、作戦も含めての結果だ。まあ端的に言えば私の作戦勝ちであった。
それにしてもレースもまた楽しいということを2回目にして感じてしまった。最初の時は空気が悪かったからか私も緊張していたようで、あまり強く感じなかったが、今回は脳内麻薬がいつも以上にドバドバ出ているのを感じる。前世含めたあらゆる娯楽よりも気持ちのいい瞬間だ。
若干笑顔がアヘっていそうで怖いぐらいの感覚に、自分でもちょっと恐ろしさすら感じる。
また、負けたブルボンさんの悔しそうな顔を見るのも申し訳ないが楽しかった。美少女が涙をためてしょんぼりしているところからしか取れない栄養があるのは違いない。きっとしょんぼりブルボンさんはがんにも効くだろう。現に私は元気になった。
それはそれで置いておいて、私としてはブルボンさんとも友達になりたいのだが……
ひとまず声をかけてみよう。
「お疲れさま、ブルボンさん」
「ライスさん、お疲れ様です」
私の邪な視線には気づいていないようで、ブルボンさんは返事をしてくれた。表情は無表情だが、耳やら尻尾やらが全体的にしょんぼりしている。やはり負けて悔しいのだろうか。
「ブルボンさん、とっても速かったよ。それでよければ友達になってほしいなって」
「友達、ですか?」
「うん!」
なんか唐突過ぎる話だが、ブルボンさんは聞いてくれるようだ。マックちゃんの時はもっとうまくやれた気がするが…… あれはマックちゃんのコミュ力が良かったのだろう。多分私の力ではない。
「ブルボンさん速かったし、一緒に練習すればもっともっとすごくなれると思うんだ。だから友達になりたいなって」
「そうですか……」
「おねがい」
胸元に縋り付いて、上目遣いでおねだりをする。
あざといが、結構男女問わず効果的なのだ。マックちゃんなんか私の意図が分かっているにもかかわらず結構従ってくれるまさに必殺技である。
「わかりました。ライスさんとお友達になります」
「わーい、やったー」
ブルボンさんにも上目遣いが効いたのかはわからないがこうやって私の友達が一人増えた。
無事連絡先も交換し、友達が一人増えてうれしい私は、マックちゃんがこれだからコミュ障は…… という顔をしていたのを無視するのであった。
この小説のメインヒロイン
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ミホノブルボン
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メジロマックイーン
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マルゼンスキー
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その他