ウマ娘を知らない競馬ファンがライスシャワーに転生した話   作:雅媛

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6 ブルボンさんちに遊びに行った話

 メジロ家に行った数日後、ブルボンさんが是非遊びにも来てほしいというので、早速遊びに行くことになった。

 

 そうして案内されたのは広い公園だった。

 

 

「ようこそ、ミホノトレーニングクラブへ」

 

「ミホノトレーニングクラブ?」

 

「ブルボンさんのお父様が運営しているウマ娘クラブですか?」

 

「そうです」

 

 

 おうちではなく、運営しているクラブの方に連れてきてくれたらしい。

 

 

「普段はこちらの市営のコースを借りてるんです」

 

「ほほう」

 

 

 こちらの世界はウマ娘がいるせいか、ただの公園のみならず、ウマ娘向けのコースが各所に存在している。そういったコースのうち、市営のものを一つブルボンパパは借りてクラブ運営をしているようだ。

 参加者は下は幼稚園生ぐらいの子から、上は小学生までのようだ。中学生以上らしき子は見当たらない。恐らく中学になれば各地のトレセン学園なりに進学し、そちらで練習などをするだろうから、ここで受け持つのは小学生までなのだろう。

 

 いつもマルゼンさんのトレーナーさんに教えてもらってばかりなので、たまには違う人に教えてもらうのも勉強になるだろう。

 なのでブルボンさんにお願いして参加させてもらおうかと思ったのだが……

 

 

「あんたたち? ブルボンの連れてきたウマ娘は」

 

「そうですが?」

 

 

 いきなり参加者の一人に声をかけられた。

 年齢のほどは私たちと同じぐらいか。体格は悪くないが、体のキレは少し甘いように見える。

 

 

「じゃあ私と勝負しなさい!!」

 

「勝負? いいよ」

 

「えっ?」

 

「えっ?」

 

 

 断られると思ったのだろうか。応じたら驚かれてしまった。

 私としてはレース大好きなので、挑まれたら断る理由もない。普段やる相手があまりいないだけである。

 先日ラモーヌさんと併走していくつか技術を盗んだので、そのあたりのお披露目をするとしよう。

 

 

「ふん、負けてもいいわけなんてするなよ!」

 

 

 そんな捨て台詞を吐いて、彼女は去っていった。

 さて、私も準備をしなければならないが…… その前に

 

 

「ブルボンさん、あの子、だれ?」

 

 

 自己紹介もされなかったのでブルボンさんに誰だか聞く。向こうは私のことを知っていたみたいだが……

 

 

「ミホノワカバさんです。私たちの同級生で、クラブの古株でもあります。最近私がこちらにあまり参加しないのが不満らしく……」

 

「なるほど、うちに来てるからライスのせいだと思っているんだねぇ」

 

 

 まあ確かにそこそこの頻度でブルボンさんはうちに来るから、こちらの参加率は落ちているだろう。きっとワカバさんは友達を取られた気持ちになって寂しかったのだろうなと思う。

 

 

「うちのワカバさんが申し訳ありません」

 

「気にしてないよ。まあそれはそうとして、全力でやるけどね」

 

 

 事情がどうであれ、手を抜くつもりはないので、全力で相手をすることにする。

 ひとまず服をいつものランニングウェアに着替えるべく、更衣室へと向かった。

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 

 

 

 

 

「もうむりぃぃ」

 

「またえげつない技を覚えましたわね……」

 

「ラモーヌさんの真似だけじゃない……」

 

 

 結局ブルボンさんとマックちゃん、さらにクラブのメンバーもワカバさん以外に2人を併せて6人で走った。

 ダート2000m走であったが、無事私が勝利した。

 

 

 

 勝負の決め手はラモーヌさんがやっていた妨害技の多用だ。

 メジロ家でレースをしたときに思いっきり食らってヘロヘロになってしまったあれだが、将来的には必要になるだろうと思って、最初マルゼンさんにやり方を聞いたのだ。

 そうしたら

 

 

「わからないわ」

 

 

 の一言で切り捨てられた。マルゼンさんは、そういうことも意にも介さず全部ぶっちぎって走っていたらしい。

 さすが圧倒的強者。ある意味マルゼンさんがトップを走り続ける時点で他のウマ娘はやる気を大幅にそがれるだろう。仕方がないのでトレーナーさんにいくつか教えてもらったことや、ラモーヌさんから盗んだ手法を今回やってみたのだ。

 

 

 ベストポジションを占めて他のウマ娘が走りにくくする『独占力』

 

 相手の気持ちの合間に独り言を届けて集中力を乱す『ささやき』

 

 にらみつけて相手を委縮させる『鋭い眼光』

 

 

 そのほか各種牽制なども併せて使いながら走ったのだが、みんな影響を受けてどんどん失速していった。

 一度ラモーヌさんと走って耐性があったブルボンさんとマックちゃんはまだ最後まで持ったが、クラブの人たちは最後は完全に息が上がってしまっていた。

 ここまできれいに決まってしまうとちょっと怖い。クラブの子たちは、ワカバさんはさっきからあおむけに倒れてぜーぜー言ってるし、他の二人もコースで倒れ伏している。

 

 

「ちょっとやりすぎたかな……」

 

「勝負の世界に情けは不要です……」

 

 

 そういうブルボンさんも疲れ切っている。

 ここまでやらなくても勝てたと思うけど、まあ使ってみたかったから良しとしよう。

 

 そんなことを自分で納得していると

 

 

「みんなお疲れ様」

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「ほら、コースからすぐ退く。他の人の邪魔になるからね」

 

 

 そういって倒れていたワカバさんたちを追い出したのは、ブルボンさんのパパ殿だ。

 レースになっても特に口出ししてこなかったが、終わったし何か言うことがあるのかもしれない。反省会とかかもしれないけど。

 

 

「うちの子たち、どうだった?」

 

「どうって聞かれましても…… 真面目には練習してるんだろうなと思いますよ」

 

 

 私やマックちゃん、ブルボンさんはそれぞれ引き継いでいる才能が多い、いわば上澄みであり、さらにそこでかなり練習を重ねているため、同世代でも頭一つ抜けた存在だろう。

 

 一方今日走った子たちもそんなに悪いわけではない。相手や展開に恵まれれば十分ちびっ子レースに通用するレベルだ。

 そのレベルになるだけのちゃんとした練習を積み重ねてきているのはわかる。

 

 とはいえ才能以外に一つ差があるとすれば……

 

 

「ただ、やっぱり設備の差が大きいんじゃないですかね」

 

「そんなに違うかな」

 

 

 そういってブルボンパパはコースを見渡す。

 

 市営のコースは手入れはきちんとされていて、ダートコースもウッドチップコースも綺麗にならされている。

 このコースだけなら、確かにここの環境はかなり良いと言えるだろう。

 ただ、問題は設備の質が低いわけではなく、設備の数と種類の不足なのだ。

 

 

「うちのコースには芝と坂路がありますし、各種アンクルやタイヤ引き用のタイヤとか、いろんなグッズがありますからね」

 

「トレセン学園でよく使ってたけど、やっぱりああいうの便利だよねぇ」

 

 

 ここでは碌な道具が使えないという問題点がある。

 タイヤなんかの大物はそもそも持ち込めないし、重量物も表面が乱れるから制限がありそうだ。コースも最新設備の坂路はまだしも芝のコースもないから、芝慣れするのに時間がかかりそうだ。

 どうしてもただ走るだけで十分な強度の練習量を得ようとすると脚部の負担が大きくなる。それは怪我にもつながりやすいし、怪我を避けようとすれば追込みが不十分になり、その積み重ねで実力差ができてしまうのだろう。

 

 

「とはいえ設備を導入できるお金があるわけでもないし、悩ましい話だよ」

 

「ならうちのコース使いますか?」

 

 

 ならばうちのコースを使ってもいいのではないか。

 マルゼンさんのトレーナーさんがいろいろやってるのもあり、設備の充実度はかなりのものだ。

 一方で使用者は私とマルゼンさん以外、マックちゃんとブルボンさんぐらいしかない。前は興味本位でクリ家の子が坂路を使いに来ていたが、来るのが面倒になったのか最近は全く来なくなってしまった。

 

 まあ貸す条件とかいろいろあるだろうが、その辺はトレーナーさんか誰かにお願いすればいいだろう。私は相場とか全くわからないし。

 

 

「ふむ、使えれば確かに助かるのだが……」

 

「詳しい条件はこの人に聞いてください」

 

 

 そういってトレーナーさんの名刺を渡す。後は良きに計らってくれるだろう。

 

 

「ということで、面倒なお話はここで終わりにして、残りのトレーニングの指示をください、ブルボンさんのお父さん」

 

「え、あれだけ激走していたのにまだ走るのかい」

 

「まだいけますよ。ほら、ブルボンさんたちも行けるって」

 

 

 かなり消耗していたブルボンさんとマックちゃんも次の指示待ちの姿勢になった。

 確かにかなりスタミナを使ったが、とはいえまだギリギリまで追い込んでいる感じはしない。もう少しは走れるだろう。どうせならブルボンさんのパパの指導力も見たい。

 

 

「では小さい子供たちと一緒にトラック一周してきてくれ」

 

「了解です」

 

 

 子守りまで押し付けられてしまったが、競技場内の話だ。きっと大丈夫だろう。

 その時私は子守を甘く見ていたのだが……

 

 

 

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 

 

 

 

 

「もうむりぃぃ」

 

 

 根を上げたのは私の方だった。

 小さい子らは、見た目は天使だが中身はカオスだった。

 蜘蛛の子を散らすようにどこかに走っていってしまうし、捕まえても捕まえてもどこかへ行ってしまう。

 賽の河原の石積のようなどこかへ行ってしまう子を捕まえる作業に、最後は私の精魂が尽き果ててしまった。

 

 子供らに侮られているのもありそうである。

 クラブに所属しているブルボンさんはもとより、今日初対面なはずのマックちゃんも子供らをうまく導けているのに、私だけはひどいことになった。

 

 トラックをどうにか一周させるだけでもう限界を超えてしまったのだ。

 

 

「わぁい!」

 

「ふみゅっ」

 

 

 倒れる私の上に、子供たちらがのしかかってくる。1人2人ならまだしも、数人はさすがに重い。潰れて起き上がるのもつらい重さだ。

 ブルボンさんが助けに来るまで、私はジタバタもがく以外できないのであった。

 

 

 

 

「意外でしたわ。ライスちゃん、何でもできそうなのに」

 

「子供は嫌いじゃないんだけど、舐められがちなんだよねぇ」

 

 

 正直不登校な私に比べれば、クラブでちゃんと練習してる子たちは十分偉いと思う。それはそれとして喧嘩を売られたら倍返しだが。

 なので喧嘩を売ってくるならまだしも、じゃれてくる程度の子だとかわいいなという感想しか浮かばない。きっと甘い対応になめられてしまうのだろう。仕方ない話だ。

 

 

「それにしてもマックちゃんは子供の世話が上手だね」

 

「メジロ家で年下の子の面倒を見る機会も多いですからね。子供の相手は慣れているんです」

 

 

 下手するとクラブに入っているブルボンさん以上に手慣れた感じであったが、メジロ家で学んだことだったとは。

 

 

「メジロ家ってすごいねぇ。マックちゃん、良妻賢母じゃない」

 

「そうですかね?」

 

「そうだよ~」

 

 

 クリ家とは偉い違いである。クリ家で生産された私は引きこもりの頭でっかちだ。良妻にも賢母にも慣れなさそうな程度のコミュ力しかない。

 これが、今も勢いがある名家と没落名家の違いだというのだろうか。

 

 

「それにライスちゃんだって子供たちに好かれていますよ」

 

「そうかなぁ」

 

「そうですよ」

 

 

 そんな話をしてると子供らが後ろから抱き着いてきた。どんどん増える子供らに、私はまた押し倒されて潰れてしまう。

 

 

「うにゅぅ」

 

 

 子供らの体温はひどく暖かかった。

 

 

 

 結局子供らにいたずらされ続けて、私の一日は終わってしまった。

 

 そして、ミホノトレーニングクラブは、うちのコースを借りて練習するようになったためうちのコースが俄かに騒がしくなった。

 

 ブルボンさんのパパ殿が特に気に入ったのが坂路コースだった。

 これは素晴らしいと言ってブルボンさんやマルゼンさん、トレーナーさんと練習方法の研究をはじめ、何連泊もし始めた。最終的にブルボンさんのママが家に乗り込んできて大騒ぎをして連れ帰っていった。信じて送り出した夫と娘が坂路コースにNTRれるなんて、みたいな状態になったせいで、ブルボンママがうちに乗り込んできて、夫婦げんかの末にブルボンパパは引きずられていった。

 やっぱり人はウマ娘に勝てないのは間違いないようだ。

 

 そして私はクラブの幼児たちに集られて潰されていた。




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ミホノブルボン(10歳)

誕生日    4月25日
身長     157cm
体重     尻とトモがでかい
スリーサイズ B85・W57・H90

無表情素直クール系ウマ娘。尻とトモがまた大きくなった。

ミホノブルボン(ウマ娘)の体格

  • ぶるんぼるん
  • ばるんばるん
  • 尻に重機乗せてるんかい!
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