親父が魔法少女だった 作:おれ
『父さんな、実は今まで魔法少女だったんだけど辞めようと思うんだ』
「あっそ。辞めれば?俺、深夜帯に移ったプリキ○ュアをリアタイするのに忙しいから。じゃ」
突然親父が狂った事を言い出した。が、特段おかしな事でも無い。
親父は魔法少女が好きだ。どれくらい好きかと言えば、いつも仕事で忙しく滅多にいない癖に日曜日の朝からやってる女児向けアニメは毎週欠かさずリアタイをし。全員の名前をコールしながらステッキを振って踊るぐらいにはだ。少なくとも、俺が物心が付いた時には既に踊っていた。そんな人がそんな事を言っても驚きは無いだろう。
『おい、何でもっと驚かないんだよ。本当だぞ?』
「ウワービックリシタ。マサカ、オヤジガホンモノノマホーショウジョダッタナンテー」
なんて事を親父自身は知らないので、仕方無くリアクションを取ってやる。これもここまで俺を育ててくれた親父に対する親孝行と思えば何とも無い。
『いや、絶対信じて無いだろ!よしっ証拠見せてやる。見てろよお前の親父が、魔法少女になる所を!』
そう言って親父がズボンのポケットから石を取り出すのを横目で見る。その石で一体何をするのか、と少し興味が湧いた所で。
《──!》
始まった。ソファに座り直し、腕を組んで見守る。ふと親父の方を見ると、さり気なく隣に座っていた。
やはり、隣の自称魔法少女よりも画面の方が数百倍魅力的で目が惹かれるなと思っていると三十分はあっという間に経過した。
『あー、来週もまた見るか』
「んじゃ、寝るか」
『いや待て、俺の証明が終わってない。今度こそよく見ろ』
嫌だよ、何で寝る前にガタイの良いムキムキなオッサンのフリッフリッのドレス着た姿(オヤジ)を見なきゃいけないんだよ。悪夢しか見れないだろ。
『まぁまぁ、これはお前にとっても大事な事だから』
「?」
意味が分からない事を言いながら、親父は先程の石を取り出した。それを唇に当て。
《
そう言って石にキスをした。
「何やってんだ」
と思わず声が漏れ出てしまったが、親父は緑の光に包まれ見えなくなってしまった。その後、すぐに光は消え出て来たのは。
『久々だな、この身体は……まぁどっちも俺だけど』
薄い黄緑の様な綺麗な髪色をした美少女いかにも魔法少女ですと言った格好をして立っていた。中学生、いや高校生ぐらいだろうか?どちらにしてもさっき居たはずの親父は何処に行ったんだろう?ロリに興味は無い筈なのに、不思議と目が惹かれて離れない。
『で、分かっただろ?俺が本当の魔法少女だって』
「え」
『何だよ、えって』
いや、これが親父か?これが?いやおかしいだろ。どう見たって目の前の人間が親父とは思えない。もっと近くで見てみよう。
「何処かで親父が吹き替えでもしてるのか?と言うか、誘拐だろこれ」
『分かった。もう元に戻るから離れろ!あぶねーから。あ、やばい』
かつて、魔法少女という存在が実在した。それは紛れも無い事実であり、証拠として本やネットに載っている。
と言っても、居たと言う事は確かだが具体的に何をしたかとかは確かではないのでオカルトや都市伝説的な存在として居たとされている。そしてその存在をモデルに作られていると言われているのが今の魔法少女系アニメだ。
さて、現実逃避はこのぐらいにしておこうか。これ以上はWikipediaじゃないから何も言えない。となると、目の前の惨劇と言うか地獄絵図に目を向けるしか無い。
『元に戻っちまったか。やっぱり、今の女子力じゃこの程度だな』
先程の言葉が実現されてしまった。あまり、目も向けたくないが言葉にするのなら、"先程の美少女が親父化した"だろうか?
それから、親父はその格好のまま腕を組んで俺を見るとつぶやいた。
『やはり、お前に魔法少女をやってもらうしかないか』
「嫌です」
『やれ』
「いやだ!」
『お前は、私の若い頃の様に女子力に溢れている。なら、お前も魔法少女に変身出来る筈だ』
「いやだって言ってるだろクソ親父ッ!!」
今日この日、俺は初めて親父に反抗した。これが俗に言う反抗期と言うのかもしれない。