ホタルノヒカリ   作:燐檎あめ

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プロローグ

 スウォームの脅威に対抗すべく、遺伝子操作によって生体兵器として生み出された少女にはかつて、一人の相棒がいた。

 

 

 

 ──識別番号『AR-26709』

 

 

 

 ほんの一つだけ早く生み出された彼と少女は同じ部隊に配属されると、数多の戦場を翔け巡り、無数の外敵を駆逐し続けた。

 

 自分より()に生まれたものが死に、部隊のメンバーが何度入れ替わろうとも彼等は互いを支え合い、背を預け生き残る。

 

 比翼連理という言葉は二人のために存在すると言える程の無類の連携能力を持つ彼等は程なくして──"グラモスの双翼"と呼ばれるようになった。

 

 常勝無敗を誇る彼等には、二人だけの秘密があった。それは兵器として生み出された彼等には有るまじきものであり……人という生き物にとっては普遍的で在り来りな、ともすれば当たり前すぎて考えすらしないような……とある共通の願い。

 

 

 

 人として生き、人として死を迎えたい

 

 

 

 そんな小さな、しかし生まれながらにしてとある病を患った二人にとっては叶えることの難しい、とても大きな願いに加えてもう一つ。

 

 

 

【ねぇ…もし、もしもだよ?……いつか、この戦いの日々が終わる日が来たとしたら……君は、何がしたい?】

 

【……言わなきゃダメか?】

 

【あっ、そういう言い方をするって事は何かやりたいことがあるんだよね?】

 

【……しまった、墓穴を掘った。……言ってもいいけど、後でお前のも聞かせろよ?】

 

【もちろん!】

 

 

 

 彼は夜空を見上げながらぽつりと小さく願い事を口にする───"いつの日か、あの星空を旅したい"と

 

 ちらりと視線を隣に向けると……驚いた様子で目を開きながら、己の顔をまじまじと見つめる少女の姿が目に映る。

 

 

 

【なんだよその目は……自分でもらしくない事言ってるとは思うけど、願う(夢を見る)くらいいいだろ】

 

【……あっ!ご、ごめんね!?別に馬鹿にしようとかそういう訳じゃなくって、その……同じ事を考えてた事にびっくりしちゃって……!】

 

【……ねぇ、その旅って……あたしも着いて行っちゃダメかな…?】

 

 

 

 少女は緊張した面持ちで、隣に座る少年の事を上目遣いでちらちらと見ながら反応を伺う。

 

 対する彼は数秒目を合わせた後、再び夜空を見上げながら──こくりと頷いた。

 

 恥ずかしかったのだろうか、直接言葉にこそしなかったものの……明確な了承の意を示した彼は、喜びを露わにする少女を横目に見ながら続け様にとある提案を口に出す。

 

 

 

【……なら、名前を考えないとな】

 

【名前?どうして……?】

 

【どうしてって……一緒に旅をする上で、何時までも番号で呼び合うのは外の星の人々からしたら不自然に見えるはずだろ?】

 

【確かにそうだね。……うーん、どんな名前がいいかなぁ…?】

 

 

 

 うんうんと首を傾げ、悩み……自身の手に握られた、ある物に意識を向ける。

 

 

 

【……ねぇ、あたしたちがスウォームとの戦いの為に渡された"ファイアフライ"って、何かの生き物の名前に由来してるんだよね?】

 

【……確か、"蛍"っていう光を放つ小さな虫の名前だった気がする。無数の蛍が飛ぶ様子は、星空みたいに綺麗って前に聞いたことがあるな】

 

【そうなんだ……うん、決めたっ!】

 

 

 

 少女は勢いをつけて立ち上がり、笑みを浮かべながら少年へと振り返った。

 

 

 

【今日からあたしの名前は──】

 

 

 ──"ホタル"

 

 

【君にも、そう呼んで欲しいな】

 

【……周りに人が居ない時だけならな】

 

【うん、流石に他の人に聞かれるのは良くないだろうからね。……君はどうするの?】

 

【俺か?……そうだな、俺の名前は──】

 

【いいね、凄く素敵な名前だと思う】

 

 

 

 星々の煌めく夜空の下で交わされた、二人だけの密かな約束()は──

 

 

 

【楽しみだね】

 

【あぁ……一日でも早く旅に出る為にも、さっさとスウォームを殲滅しないとな】

 

【大丈夫、あたしたちは強いからきっとすぐに殲滅出来るよ】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【ごめんな、ホタル】

 

【どうして……一緒に居ようって、約束したのにっ】

 

 ──星の滅びるその日まで、終ぞ叶えられることはなかった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 時は移ろい現代──場所は、夢の国ピノコニー

 

 夢境と夢境の狭間の通路にて、開拓者"星"と星核ハンター"サム"が対峙していた。

 

 ……否、対峙していたというのは語弊がある。確かにほんの少し前には互いに死闘を繰り広げていたものの、星核ハンターには星に対しての敵意はなく、また鉄騎の下に隠されていた正体を知った開拓者も、サムに対しての敵意は失せ……寧ろ、"彼女"の生存を喜んでいた。

 

 

 

「ごめんね、本当はもっと早くに知らせたかったんだけど……定められた運命に、どうしても逆らうことが出来なくって……」

 

「良いよ、気にしないで。……ホタルにも事情があったって事は何となく察せるし……無事だってわかっただけでも嬉しいから」

 

「ありがとう……優しいんだね、君は。お詫び……って言うのも変な話だけど、聞きたいことがあったらなんでも聞いて?」

 

 

 

 サム改め──ホタルは、真実を伝えることの出来なかった自分を許してくれた相手への感謝の言葉を述べた後、一つ一つ質問に答え……ピノコニーに関する情報交換を行っていく。

 

 粗方の情報交換を終えた二人は星穹列車の仲間と合流する為に通路を歩き、夢境の入口を潜ろうとしたその時──星が、その歩みを止めた。

 

 どうしたのとホタルが振り返りながら訊ねると、もう一つ聞きたいことがあった事を思い出したと言う。

 

 

 

「これはピノコニーの事とは関係が無いんだけど、実は星穹列車にもホタルの生まれ故郷の星に住んでたって言う仲間がいてさ」

 

「そうなの…?」

 

 

 

 そんなことが有り得るのだろうか……自分が生まれた時には既に宇宙の蝗害の襲撃にあって長い年月が経っており、宇宙に飛び立つことなど不可能となっていた筈。

 

 それに、自分以外の住人はあの戦いで全員亡くなっている筈なのにと首を傾げる彼女は数秒後───星の告げた仲間の名前を聞き、驚愕に目を見開くこととなる。

 

 

 

「ねぇ、ホタル──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──"リン"って名前、聞いた事ない?」

 

「………ぇ?」




ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ホタルちゃんが復刻と聞き2.6終わりがけでスタレを初め、無事ピノコニー編でホタルちゃんに無事脳を焼かれた結果、気付いたら手が動いていました。……スタレ二次少なくない?

実はスタレ以外でもハーメルンで二次創作の小説を投稿していたりもします。匿名設定は……ある程度たったら外そうかなと。

多少は書き溜めてあり、プロットもエピローグまでは組んであります。次話以降も読んでいただけますと幸いです。



感想や高評価、ここすきお待ちしております。
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