かわいいかわいいホタルちゃんの二次創作もっと増えておくれ〜
という訳で、本編へどうぞ
大通りから少し離れた街の片隅で待つ二人。うち一人であるホタルは、星が仲間からのメッセージを受け取ってからずっと……手鏡を取り出しては髪型を整え、服装に乱れがないかを確認し、星に"どこにも変なところないよね?"と訊ねるということを繰り返していた。
まるで恋する乙女のようにそわそわ、そわそわと身だしなみを整えては自分に問うてくる彼女のことを、はじめのうちは"かわいいなぁ"と微笑ましく見守っていた星も……流石に回数が二桁目に差し掛かる頃には少し困り始めていた。
(かわいい、かわいいけど……早く来て……!)
そんな星の切実な願いが通じたのか……突如として彼女たちのそばに、青い炎が現れた。
すわ敵襲かと、浮ついた気持ちを即座に捨て去りながら武器を構えるホタルのことを、"安心して、待ち人がようやく来ただけだから"となだめる。
"待ち人"……その言葉の示す意味を理解した彼女は再び正面へと顔を向ける。──ごうごうと唸りを上げ燃え盛る炎の奥に、人影が映る。
一刻も早くその姿を目にしたいのに、炎は未だに燃え続けている。"ああもう、じれったいな"と、まだほんの数秒しか経っていないのに我慢の限界が近づいてきた彼女の思いを汲み取るように……炎の中から外へと一歩踏み出すようにして、一人の青年が現れた。
腰まで伸びるホタルと瓜二つの色の髪を一つに結んだその姿は、一見すると女性に見えなくもない。しかし、女性と比べほんの僅かに角張った顔立ちやごつごつとした手の形などが、眼の前の人物が男性であることを示していた。
あの日から月日が経っているからだろうか、眼の前の人物は自分の記憶よりも幾分か成長しており、以前と比べてより男性らしさが増しているが……それでも、間違えるはずがない。……間違えるわけがない。
──脳が理解を示すよりも早く、気づけば彼女は、眼の前の人物へと駆け出し抱きしめていた。
トクン、トクン……と規則正しくリズムを刻む鼓動の音。自然と彼の胸元に頭部が位置するという事実に、"昔は私と殆ど変わらなかったのにな"と、懐かしさと一抹の寂しさを覚える。
……でも、いいのだ。彼が生きていたのなら、それで良かった。
あの日、死んでしまったと思っていた彼が生きていて、こうしてまた再開することができたという事実がたまらなく嬉しくて……思わず涙が溢れそうになるのを我慢しながら、満面の笑みを浮かべて"君が生きていてくれて、本当に良かった"と顔を上げたホタルの瞳に映る青年は──
「……君は、誰だ?」
……と、困惑した表情を浮かべながら、そう言葉を漏らすのであった。
◇◇◇◇◇
「……え?な、何を言ってるの……?」
目の前の人物から投げかけられた、全く予想打にしていなかった、微塵の可能性すら考えていなかった問いかけにホタルの頭の中は真っ白になり、思わず声を震わせながら問い返してしまう。
対する彼は、"何をって言われてもな……"と困った様子を隠さずに周囲へと目をやり……星穹列車の仲間である星を見つけると助け舟を求めるように声を掛ける。
「星、この子は一体誰なんだ?俺と話したいのは星核ハンター"サム"だって銀狼から聞いて来たんだが……」
「……その子がサムの正体だよ」
「……本当か?てっきりサムは男だと思ってたんだが……」
理解が、追いつかない……彼はいったい、何を言っているのだろう?確かにサムとして行動している時は男性の声色をしているし、鉄騎を身にまとっているために背丈も大きく見えるから勘違いしても仕方がないけれど……でも、だとしても、流石にこの反応はあんまりじゃないかと思う。
彼が驚いているのは、あたしが
もしかしたら人違いをしてしまっている可能性も脳裏によぎったが、即座に否定する。……生まれたときから
でも……なら、どうして?君はあたしのことをよく知っているはずでしょ?なんでそんな、初対面の人にあったような反応をするの?……これじゃあまるで、あたしのことを──
「本当に、何も覚えてないの……?」
──忘れてしまったみたいではないか。
お願いだから、嘘だと言ってほしい……冗談だって笑って、久しぶりだなって言って。ただ一言そう言ってくれたなら……ちょっとは怒るかもしれないけれど、それでも君が生きていてくれた喜びに比べればほんの些細なものだから。
……しかし、そんな彼女の願いも虚しく……彼はただ、"すまない"と首を横に振るだけであった。
「……ッ!」
「ホタル!?……リンはここで待ってて!」
気づけば、先ほどとは真逆の方向へ……リンから遠ざかるように、現実を受け入れられず逃げ去るように走り出していた。
◇◇◇◇◇
星が慌てて追いかけていったことで、ひとり取り残された彼は呆然と立ち尽くしながら……無意識のうちに差し伸べていた自分の右手を、じっと見つめていた。
「俺は今、なにを……?」
まさか自分は、少女を引き留めようとしたのか?何故?……自分は彼女のことを、何も知らないはずなのに。……いや、本当は知っているのではないか……知っていたはずなのではないか?
少なくとも彼女は間違いなく、自分のことを知っている反応だった。そこに虚実や勘違いといったものは含まれておらず、間違いなく己を己と認識したうえで、かつ明らかに親しいものにしか見せないような言動……もしかすると、彼女は──
「………まさか、君は」
星が"ホタル"と呼んでいた少女を追いかける際、自分に待っているようにと言っていた。リンは指示に従い待っているべきかと悩み……それでは駄目だと一歩、前へと踏み出していた。
………走り去る瞬間に見えた少女の目から零れ落ちる涙を目にしてからずっと、突き刺すような胸の痛みが──"二人を追いかけるべきだ"と、訴えかけてきていたから。
二人の姿はもう見えない、夢境に足を踏み入れたばかりの自分では彼女たちがどこへ向かったのか皆目検討もつかないがそれでも──待っているだけでは道は拓けないと、彼は自分の抱いた思いに従い駆け出した。
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これからも是非、エピローグが訪れるその時までお付き合いいただければと思いますのでどうぞよろしくお願い致します!