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「なるほど、そんな方法が……わかった、試してくれ」
記憶を取り戻すための案を聞いたリンは二つ返事で了承する。……あまりにもあっさりと決断するものだから、思わず"本当に良いのか"と二人は訊ねてしまった。
「取り戻せる可能性があるならなんだって試す、そのためなら記憶を覗かれるくらい一向に構わない。それに……いや、やっぱりなんでもない」
「……俺の記憶は決して見ていて気分の良いものではないと思う。……無理はしないでくれ」
「わかった、それじゃあ時間も惜しいし、早速始めるよ。……ホタル」
「あたしは大丈夫、準備は出来てるよ」
星はホタルから受け取った憶泡を鍵として──クロックトリックを発動。失われた仲間の大切な記憶を取り戻すため、記憶の海へと沈んでいった。
◇◇◇◇◇
二人はリンの記憶を辿っていく。生体兵器として培養器の中で生まれ、スウォームという巨大な蟲との命の奪い合いの日々を送る彼の記憶には……本来、あるべきはずのものが欠けていた。
──それは、生まれたときからずっと、ずっと側にいたはずの
彼女がいたはずの場所は黒く塗りつぶされ、燃え尽き、ノイズが走ったように姿を捉えることが叶わず……彼女の名前を呼んでいるはずの声も、聞こえてこない。
……はじめから分かっていたことではあった。……それでもやはり、自分の存在が彼の記憶から消えてしまっているという事実はとても辛く、悲しかった。
「大丈夫?辛かったら無理せずに私に任せてもいいんだよ?」
「……あたしなら大丈夫。……先に進もう」
気丈に振る舞うホタルであったが、星は彼女の胸中が内心穏やかではないことを感じ取っていた。……自分ですら、困惑と焦りを抱いているのだから。
しかしながら、彼女たちが焦りを抱くのも仕方がない。なにせ今のところ───ただの一度も、リンのホタルに関する記憶を取り戻すことができていないのだから。
……初めて彼の記憶を取り戻そうとした時は、あまりにも衝撃的だった。
……実を言うと、最初は上手くいっていたのだ。黒く塗りつぶされた記憶を元に戻すようにクロックトリックを使い、少しずつではあるがノイズが剥がれ落ちていく様を見て二人は揃って歓喜の情を抱いていた。
"このままいけば、彼の記憶を取り戻すことができる"……そんな二人が抱き始めた希望は直後、残酷な現実に踏みにじられることとなる。
【……っ!?な、なんで……!?】
【星、どうしたの!?】
【わかんないっ!戻したはずの記憶が塗りつぶされてく……っ!】
【そんな……!】
星は必死に抵抗した、彼の記憶を奪おうとする正体不明のナニカに抗うように、クロックトリックを発動し続けた。……しかし彼女の必死の抵抗も虚しく、リンの記憶は再び塗りつぶされてしまう。
仲間からは特殊なケースだとは聞いていたが……明らかに彼の記憶喪失には、
その事実に気づいた彼女たちは無闇に取り戻そうとするのをやめ、まずは彼の記憶を奪ったであろう存在を突き止めようと、やるせない気持ちと悔しさを抑え彼の記憶の道筋を辿っていくことにしたのであった。
◇◇◇◇◇
スウォームを殲滅するばかりの日々、自分より
そんな世界に置いてリンと黒く塗りつぶされた
【"グラモスの双翼"……?なにそれ?】
【知らないの?戦場に駆り出されてから今日この日まで、ただの一度も負けたことのない最強って名高い二人組のことだよ。……そういえばあなた達、さっき二人で100体くらいのスウォームを殲滅してなかった?もしかしてあなた達がグラモスの双翼だったりする!?】
【お、落ち着いて……!確かにあたしたちはずっと二人で戦場を翔けてきたけど、そんなふうに呼ばれるほどじゃないと思うよ……!?】
【……じゃあ、番号は?】
【ば、番号?えっと……あたしが"AR-26710"で、彼はその一つ前かな……?】
【……やっぱりあなた達じゃない!】
【わぁあ!?ちょっと落ち着い……君も見てないで助けて……!】
【………】
【無視!?うう……はくじょうものー!】
視線の先に広がる光景は、たまに訪れる束の間の休息のひととき。……記憶の道を先に進めば進むほど、
先に進めば進むほど……
胸が張り裂けそうな、ともすれば逆に締め付け圧迫するような苦しさを覚えながらも二人は歩みを止めることなく先へ先へと進んでいき……やがて、
──ごめんな、ホタル……約束は、守れそうにない
「……なに、これ…?」
──視線の先には、まさに"地獄"としか言い表しようのない光景が広がっていた。