ホタルノヒカリ   作:燐檎あめ

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かりんとう改め、燐檎あめです|´-`)チラッ


今回のお話もまた、初めはライトモードで、次に夜間モードをオンにして読んでみてください。

※スルスルと読みたい場合は最初から夜間モードをオンにした状態でも可では有ります


大切だったはずのもの

 ある日のこと、二人はとあるスウォームの討伐任務を任された。

 

 そのスウォームというのは他の個体よりも強大な力を持っており、これ以上力を蓄えられる前に討伐せねば背に終えなくなく可能性があったのだが……日に日に増していく襲撃の頻度の高さ故に人手が足りず、二人に声がかかったというわけであった。

 

 ……勿論、二人に断るという選択肢はない。

 

 

 

承知いたしました、女皇陛下

 

 

 

 命を受けた二人は女皇陛下の前で傅き一礼した後、鉄騎装甲を纏い蒼穹へと飛び立つ。

 

 

 

最近、どんどんスウォームの襲撃が激しくなってきてるね……

 

『そうだな……それに、王都のほうでもなにかきな臭い動きがあるみたいだし』

 

えぇ……内輪揉めとかやめてほしいんだけどなぁ……

 

『……まぁ、あくまでも噂だからな。話題に出した俺が言うのも何だが、俺達が気にするようなことじゃない』

 

だね、あたしたちはただスウォームを殲滅するだけだし

 

 

 

 "こうやってね!"……と、AR-26710(ホタル)は向かってくる蟲を切り捨てる。瞬く間に一刀両断された蟲が落ちていく様を目にすることもなく、二人は目的地へと翔けていった。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

あれが例の特異個体……分かってはいたけど、いつもの個体とは明らかに違うね

 

 

 

 物陰に隠れて様子を伺う二人の視線の先には、これまで討伐してきたスウォームと違い青く、そして大きかった。

 

 

 

『対峙した仲間の残した情報によると、やつは一定以上の衝撃を与えると小型のスウォームを生み出すらしい。はじめは有利に立ち回っていても、気づけば周囲を無数の蟲に囲われて──殺される』

 

それに加えて、あいつ自身もかなりの力を持ってるんだよね?……少なくとも、十騎の鉄騎を相手にして生き残ることができるくらいには

 

 

 

 本来であれば高火力でもって増殖する前に命を断つというのが、対スウォーム戦における基本戦略。……しかし視線の先で鎮座する存在は並の鉄騎十騎を相手にして生き残るほどの耐久力及び生存能力を持っている。……実に厄介という他なかった。

 

 ──しかし、二人に気負った様子は見られなかった。……それどころか、どこか自分たちが選ばれた理由に納得した様子すら見せていた。

 

 

 

 

作戦は?

 

 ──ダメージを与えると増殖するというのならば

 

『一撃必殺』

 

 ──増殖する隙も与えないほどの高火力で消し飛ばせば良い。……実に脳筋極まりない、しかし事目の前のスウォーム相手には最適解となる作戦であった。

 

 

 

了解、それじゃああたしは、あいつの足止めしてくるね

 

『気を付けろよ』

 

 

 

 AR-26709(リン)AR-26710(ホタル)を見送ると、特殊個体のスウォームを翻弄する彼女を視界に映したまま──言霊を紡ぐ。

 

 

 

起動(スイッチ・オン)──"ブラックバレル"』

 

 

 

 ──瞬間、彼の眼前に身の丈を優に超える巨大な砲身が現れた。

 

 "ブラックバレル"……それは、彼の纏う鉄騎"ファイアフライⅠ"の主武装。大戦初期に製作された彼の鉄騎は、最新型のファイアフライをも超える力を秘めながらも適合者がほとんどいなかったが故に日の目を見ることが滅多になく、また人員の入れ替わりも激しいために女皇を除いて誰も覚えているものがいなかった鉄騎である。

 

 現在の鉄騎と比べ黒く無骨な印象を受けるそれにもまた、相棒である少女が身にまとう"ファイアフライⅣ-戦略強襲型"のように型名がつけられていた。彼の身にまとう黒鉄の鉄騎に付けられた名は──

 

 

 

 

 ──"決戦兵器型"

 

 

 

 

 今、その名の真価が発揮される。

 

 

 

『エネルギー充填、70パーセントッ!下がれAR-26710!』

 

 

 

 忠告とともに戦線を離脱、自身の背後へとAR-26710(ホタル)が移動したことを確認すると、彼は再び特殊個体のスウォームへと目を向ける。──周囲にはただの一匹も、小型個体の蟲は存在していなかった。

 

 

 

『ナイス足止め!増殖しないように上手くやったな!』

 

慣れてないから大変だったけどね!……それよりも早く!

 

『分かってる、それじゃあいくぞ!』

 

 

 獅子の咆哮(レオ・ハウル)ッ!!

 

 

 重厚な砲撃音とともに、黒い砲身から解き放たれた光の柱がスウォームへと迫る。増殖されないようにAR-26710(ホタル)が上手く立ち回っていたこともあり、壁を用意することができなかった蟲はなすすべなく飲み込まれ……地平線の彼方へと消えていく。

 

 掃射してから約十秒ほど、光が収まると……先のスウォームは影も形も存在せず、跡形もなく消滅していた。

 

 

 

お疲れ様。ほんと、清々しいほどの高火力だね

 

『まぁな、決戦兵器型の名は伊達じゃないってことだ。……AR-26710も、足止めご苦労さま』

 

 

 

 グラモスにとって目の上のたん瘤であった外敵を排除した二人は互いを労い合う。無事に片付いたことを女皇陛下へと報告するため、AR-26710(ホタル)は本部へと通信を繋ぐ。

 

 

 

 ──"ザ、ザザッ……"

 

 

 

……あれ?

 

『どうした?』

 

通信が繋がらない……壊れちゃったのかな?

 

 

 

 AR-26710(ホタル)は何度か通信を試みるが一向に繋がることはなく……それはAR-26709(リン)が試してみても同じであった。……どうして急に繋がらなくなったのだろう、特に戦闘中に何処かにぶつけてしまったということも無いはずなのに、何故……

 

 多岐にわたる戦闘経験に伴う直感が、警鐘を鳴らし始めるがしかし……二人が嫌な予感を覚えたときには既に時遅く、敵の術中に嵌められた後であった。

 

 

 

 ──大地が鳴動し、空気が震えだす。

 

 

 

 瞬間、二人の視界に現れたのは──数えるのも億劫になるほどの無数のスウォームの群れ。それも十や二十どころではない、百、千、万……十万をも超える、最早絶望的という言葉すら生温いほどの蟲が地面から這い出てくる。……虚空から、姿を現していく。

 

 四方八方、視線を向けた先の至る所で蟲が蠢き、既に脱出は困難……幸いにも距離は離れているために即座に襲撃を受けることはないが、それでも猶予は後数分といったところか。

 

 

 

 ──"死"の一文字が、二人の脳裏をよぎる。

 

 

 

 ……二人に残された選択肢は、もう二つしか残されていない。一つはこのまま迫りくるスウォームを迎え撃ち、数十匹、数百匹を道連れにした後に無惨に喰い殺されること。もう一つは……鉄騎に共通して備え付けられた昨日を使い、すべてを道連れに自死するか。

 

 どちらにせよ二人に残された道の先には"死"しか存在し得ない。……実質的な選択肢は、一つしか残されていなかった。

 

 

 

……結局、夢は叶えられず仕舞いかぁ。……でも、君と一緒に最期を迎えられるなら──

 

 

 

 "案外、悪くはない終わり方かもね"……と告げようとしたAR-26710(ホタル)の言葉は、他でもない隣に立つAR-26709(リン)によって遮られる。

 

 

 

AR-26710……援軍を、呼んできてくれ』

 

……え?

 

 

 

 彼はいったい、何をいっているのだろうか。こんな周囲を囲まれ頭上にも無数の蟲が飛び交う中で、援軍なんて呼びに行けるはずが……そこまで思考を巡らせた彼女の脳裏に、一つの可能性が過る。

 

 ──"まさか彼は……自分を囮にして、あたしを逃がそうとしている……?"

 

 

 

……っ!だ、駄目だよそんなの!君を置いて逃げるだなんて、そんな……ッ!

 

『誰が一人で逃がすためなんて言ったよ。俺は援軍を呼んできてくれって言ったはずなんだけどな……』

 

 

 

 彼は語る──"このまま二人で戦っても死ぬだけだ"と

 

 

 

そんな事言われなくても分かってるよ!……だ、だったら私が囮になるから、その間に君が……

 

『バカ、それじゃお前が死んじゃうだろ』

 

それは君も『同じじゃない』……っ!?

 

 

 

 感情が高ぶり、掴みかかってきた相棒の言葉を遮ったAR-26709(リン)は、AR-26710(ホタル)を宥めるように落ち着いた様子で彼女の説得を試みる。

 

 

 

『俺の鉄騎に付けられた名は"決戦兵器型"だ。……当然、こういった場に適した武装も存在してる』

 

『単純な話だ。……君が残るよりも、俺が戦ったほうが最終的に二人共が生き残れる確率が高い』

 

……っ

 

 

 

 納得いかない、納得できるはずがない……でも、二人が生き残るためのより良い案を自分では思いつけない。自身の不甲斐なさに鉄騎の下で涙を流す彼女の様子を知ってか知らずか、彼は言の葉を紡ぎ続ける。

 

 

 

『俺が道を切り開くから、その間に君はこの包囲網を抜け出して、援軍を呼びに行ってくれ。……できるな?』

 

……わかった。……もし死んだりしたら、絶対に許さないから

 

『それは怖いな。……安心しろ、俺は君を置いて死んだりなんか絶対にしない。……例の約束のこともあるからな』

 

 

 

 話は終わり、二人はこちらへと迫りくる蟲の大群へと目を向ける。……随分と話し込んでしまった、接敵までの猶予は……残り一分と十七秒ほどと言ったところか。

 

 AR-26709(リン)は空を、大地を覆い尽くす蟲へと向けてブラックバレルを構える。──スウォームが姿を現したその瞬間から今この時までずっとエネルギーを貯めていたそれは光を放ち、今か今かと外敵に撃ち込まれるその時を待っていた。

 

 

 

『エネルギー充電、120パーセント──』

 

 

 戦乙女の涙(ヴァルクス・レイン)ッッ!!!

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 砲口から、一筋の光が放たれる。光は蟲の群れへと突き進んでゆき──拡散。無数の光の矢となりて、外敵へと降り注いだ(襲いかかった)

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

 道は拓けた、先程までこちらを嘲笑うように"ギチギチ"と響いていた不協和音はピタリと止み、同胞を屠った光の矢に恐れ慄いているのか蟲たちはその動きを止める。

 

 

 

『今だッ!』

 

っ!

 

 

 

 AR-26710(ホタル)AR-26709(リン)の掛け声に合わせ、空へと飛び立つ。……一緒に行こうとは、言えなかった。

 

 二人で抜け出せば、スウォームは必ず追いかけてくるから……もしそうなれば、これまで仲間が命を賭して守ってきた無辜の人々が食べられてしまう。

 

 

 ──|足止めを行うものは、必ず必要なのだ《本当は、すべてを捨てて君と逃げ出してしまいたかった》。

 

 

 一人残していかなければならない自身の不甲斐なさに血が滴るほど唇を強く噛み締めながら、彼女は空を翔ける。気を取り直した一部の蟲が道を塞ごうとするが……遅い。彼女はただの一匹とも相対することなく包囲網を抜け出すと、援軍を呼ぶために全速力で王都へと翔けていった。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 相棒たる少女が去ったことを確認した彼は、ブラックバレルを地面に突き立て……自身の胸元に手を添える。

 

 …… 少女を逃がす手前虚勢を張ったが、襲来まで残り一分にも満たない時間で蟲を滅し、生き残ることが出来るような都合のいい術など……当然、あるはずもなし。

 

 

 

『ごめんな、ホタル……約束は、守れそうにない。……どうか、お願いだから君だけは最期まで──』

 

 ──"生き延びてくれ"

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

「嫌…やめて……」

 

「ホタル?」

 

 

 

 星と共にリンの記憶を辿っていたホタルは、記憶の中の彼が取った行動を目にし目を見開く。"やめて、やめて"と拒絶の言葉を繰り返す彼女の呼吸は、焦燥により次第に荒くなっていく。

 

 星がどれだけ呼びかけても、肩を揺すってもホタルは"やめて"と首を左右に振るばかり……一体彼女は何を恐れているのか、仲間(リン)は何をしようとしているのか……星は再び記憶の中の彼へと視線を移す。

 

 そしてついに──その時は訪れる。

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

『お前たちはただの一匹も、二度とホタルに遭わせはしない。──テメェら全員、俺と一緒に地獄に堕ちろッ!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 焦土作戦、実行ッ!!!

 

 ──"さようなら、俺の大切な人(ホタル)"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───彼の言霊を引き金(トリガー)として、天より光の柱が降り注ぐ。

 

 

「いやあああああああああっ!!!!!」

 

 

 ホタルの懇願も虚しく……極光は彼女の相棒も、敵対する蟲も……すべてを呑み込み、覆い尽くしたのであった。




獅子の咆哮(レオ・ハウル)
モチーフ:獅子座

戦乙女の涙(ヴァルクス・レイン)
モチーフ:乙女座(戦乙女/valkyrie)×光(lux)×弓(arcus)


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