機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH 作:筆先文十郎
愛機、ブラックナイトスコード ルドラでエルドア市民の救護活動のため進軍したグリフィンだったが、彼は市民を無視してある場所に向かっていた。そしてある場所、キラの乗るフリーダムが見える位置で愛機を停止させると、何かを探すかのように目を
(……よし)
探し物──キラの精神を見つけ出すとグリフィンは目を開き口元をゆがめる。
「闇に
最前線。
シンと共にデストロイを倒したキラはふと意識が戻るような感覚を覚えた。
「……あれ?」
全身が一瞬、黒い何かに呑み込まれたような感覚。怒りとも憎悪ともつかない熱が胸を焼いた気がした。
(何もない……何だったんだ?)
「え?」
その時、キラの視界に動く影が映る。
砦の奥──車両に乗り込み、逃げ出そうとする男。
「ミケール……?」
部下を見捨て、砦を放棄して逃げるミケールの姿に、キラの中で何かが爆ぜた。
(逃がすものか!)
フリーダムは鋭く旋回し、ミケールの逃走経路へと飛び去った。
セレーネブリッツ コクピット。
急に旋回して砦跡から飛び去っていくフリーダムに、ソニファーは思わず息を呑んだ。
(どういうことだ? コンパスの目的はミケール大佐の確保のはず……もしかして逃走などに備えて回り込もうとしている?
いや、そんな事をして何の意味がある? このまま正面から攻撃した方がはるかに効率的だ。それともミケール大佐が別の場所にいると思っているのか?)
疑問が渦巻く中、ソニファーは即座に命令を飛ばす。
「ソドとシースはキラ・ヤマトを追え! 右翼のグレーニはキラ・ヤマトが陽動の可能性を考慮しつつ迎撃! 他の部隊はキラ・ヤマトが抜けた隙にモビルスーツ部隊を叩き潰せ!」
ソニファーの命令に各部隊が動き出す。ソドとシースはキラを追い、グレーニはキラを挟撃するため一部の隊をフリーダムの後方に回り込むように指示を出す。
キラの行動は理解不能だったが、キラが抜けたことで防衛線を崩されそうになっていたブルーコスモスにとっては願ってもないことだった。
(なのに、なぜだ。この得体の知れない違和感は?)
胸の奥に、冷たいものが広がる。
その不安はすぐに現実となった。
キラが軍事境界線を越えて味方のはずのユーラシア軍を攻撃する──その衝撃的な報告によって。
ガルガリン艦橋。
「ヤマト隊長、軍事境界線を越えてしまいます! 引き返して下さい! ……ヤマト隊長!」
進路を変え、ユーラシア軍の方向へと機体を走らせるキラ。
その突然の行動に、ラクスやマリュー、ムウたちと同じように、エリオスも必死に呼びかけていた。
「!」
ふと、エリオスの脳裏に最悪のシナリオがよぎる。キラが協定を破り、ユーラシア軍に攻撃を仕掛けるというシナリオが。
(それだけは……絶対に避けなければ!)
状況は一変した。
エリオスはすぐさまミレイユに命令を下す。
「パットン少佐、ただちに出撃してヤマト准将を止めろ。もしヤマト准将がユーラシア軍を攻撃しようとする兆候があれば──撃墜しろ!」
サンライズ コクピット。
「……!?」
キラを撃墜する。
味方を攻撃するというだけでなく、アラスカで命を救われた恩人を殺す。
ミレイユにとって、それは到底受け入れられる命令ではなかった。
だが、錯乱状態のキラがユーラシア軍を攻撃すれば、自分の想像を超える
「……わかりました!」
通信が切れると同時に、ミレイユは出撃準備に移った。
「ミレイユ・パットン。サンライズ、行きます!」
グレー一色から赤・白・オレンジで彩られた機体──サンライズが勢いよく飛び出し、モビルアーマー形態へと変形してキラのフリーダムへ向かって加速した。
しかし、もともと距離があったうえに、キラを挟撃しようと隊を分けていたブルーコスモスの小隊が行く手を
「どけッ!」
ミレイユは機体を急上昇させるなどフェイントを交えながら強引に小隊を突破する。しかしその足止めが致命的だった。
全員の制止を無視し、キラはユーラシア軍に攻撃。多数のモビルスーツがその攻撃によって戦闘不能に追いやられた。
ミレイユはキラの暴走を止めることができなかった。
キラが事前の協定を破り、ユーラシア連邦を攻撃した。
その事実にラクスは唇を震わせながらもオルフェの進言に従い、断腸の思いでキラの撃墜を了承。
──その瞬間を待っていたかのように、強力な電波干渉が発生した。
ガルガリン艦橋。
「通信が……!?」
「パットン少佐! 詳細を伝えろ! グラント中尉 、アークエンジェルのラミアス艦長と通信を繋げ!」
エリオスはミレイユに状況報告を求めつつ、オペレーターのルクス・グラントへ即座に指示を飛ばす。
「駄目です、全部遮断されています!」
艦橋に悲鳴が響いた。
「……ッ!?」
冷静沈着のエリオスの額に、一筋の汗が流れる。
モビルスーツ同士の連携も、艦との通信も、すべてが断たれた。
通信が途絶え、各個の連携が完全に遮断される。
それは、戦場の均衡が崩壊することを意味していた。