機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH 作:筆先文十郎
「……まさか傍観を決め込むと思われたファウンデーションが積極的に動くとは!?」
ファウンデーション軍の進軍というソニファーの予想を大きく外れた展開に、右翼隊の指揮官グレーニは一瞬動揺した。しかしすぐに冷静さを取り戻す。
(何を動揺しているのだ、俺! 予想と異なることが起きるのは戦場では日常茶飯事のはずだ。その不測の事態にも対処するために現地で直接指揮する俺がいるはずだ!)
「指揮官としてのイロハをご教授して下さったリーブラン少佐に何を教わったかを見せる絶好の機会!」
そう言い聞かせ不安な気持ちをごまかす。
「落ち着け、お前ら! 我々はソド大尉とシース中尉がキラ・ヤマトを倒せる時間を稼ぐためにファウンデーションの足止めをすればいいんだ!」
浮足立つ部下を一喝して動揺を
「撃てぇぇぇっ!」
グレーニのバスターダガーを始めとするモビルスーツの弾幕射撃がファウンデーション軍に襲い掛かる。
(よし!)
弾幕射撃にシヴァに追従していた無人機が霧散する。そして回避することを見越してわざと射線をずらしたグレーニのビームがシヴァに直撃する。コクピットに直撃して墜落する、そう思った。しかし
「な!」
グレーニは目を見開き言葉を失う。直撃と思われたビームが当たる直前で霧散したからだ。
(ど、どうなっている!?)
動揺するグレーニに何者かが語りかける。
《雑魚が時間を取らせるな。消えろ!》
「くっ!」
脳内に響く声に戸惑いつつも、グレーニは迫り来るシヴァを近づけまいと乱射する。そんなやぶれかぶれの攻撃は通用しないとばかりにシヴァは瞬く間に間合いを侵食した。
《死ぬがいい!》
シヴァは容赦なくバスターダガーに刃を振り下ろした。
この時。グレーニの目には振り下ろされる刀がスローに見えた。
幼い頃、家族と過ごした日々。
生まれつきのアザを理由に受けた苛烈ないじめ。
コーディネイターへの怒りからブルーコスモスに入った日。
ミケールが連れてきたソニファーに最初は嫌悪を覚え、しかし彼女の実力と誠実さに触れるうち、いつしか尊敬へと変わっていったこと。そして、
(俺は……死ぬんだ……)
世界を正しい場所へ戻すという志を果たせぬまま死ぬ自分の運命に涙した。その哀しみの中で、彼の目には僅かな希望が灯っていた。
(それでもリーブラン少佐ならやってくれるはず! 俺達の意志を、理想を──)
次の瞬間、シヴァの刃がコクピットを両断し、グレーニの思考は強制的に途切れた。
ちゅ、中尉がやられた!
に、逃げろ!
バカ者! 最後まで戦わんか!
指揮官を失った右翼隊は、瞬く間に烏合の衆と化した。
シュラはその様子を見て、薄く笑う。
「こんなやつらに構う時間はない」
(緻密に練られたこの計画、こんな奴らで浪費するわけにはいかないからな)
そう心の中で呟き、シュラは先を急いだ。