機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH   作:筆先文十郎

21 / 61
第3章-5 ジャンヌ死す

 左翼隊の指揮官ジャンヌは、砂煙の向こうから迫る黒い影を視認した瞬間、息を呑んだ。

 進軍してくるのはファウンデーション軍──だが、通信障害で状況が掴めない今、彼女に与えられた情報は視界に映る事実(・・)だけだった。

「……ブルーコスモスへの攻撃? いや、違う……これは──コンパスを救援するための進軍……!」

 判断は一瞬。

 迷っている暇などない。現場指揮官とは見える脅威に対処する者。そうソニファーから教え込まれたジャンヌは命令を飛ばす。

「全隊、二手に分ける! ジルドとライルの部隊はシキシマ隊の進軍を遅らせろ! 残りは私と共に正面のファウンデーション軍を迎撃だ!」

 怒号にも似た指示が飛ぶと、部隊は即座に動き出した。

 ジャンヌはウィンダムのスラスターを全開にし、味方の援護射撃を背に受けながら急上昇する。

(コンパスの所には行かせない……! 少佐の策の成否は私にかかっていると言っても過言じゃないんだから!)

 視界の先、黒い機体──ブラックナイトスコード ルドラが、まるで獲物を待つ獣のように静止していた。

 その不気味な沈黙が、逆にジャンヌの背筋を冷たく撫でる。

「行く……!」

 叫びと同時にビームサーベルを振り下ろす。

 確かな手応え──斬った。

 そう確信した瞬間、ビーム刃は黒い装甲をすり抜けた。

「なっ……!? どういう──」

 理解が追いつく前に、ルドラのビーム刃が横から突き刺さった。

 衝撃が機体を揺らし、警告音が耳をつんざく。

「キャアアアアアアァァァァァァッッッ!!」

 コクピットこそ外れたが、ジェットストライカーとの接合部が破壊され、ウィンダムは飛行能力を失った。

 制御不能のまま地面へ叩きつけられ、視界が白く弾ける。

(う……動け……!)

 倒れたウィンダムに、ルドラのビームライフルの銃口が冷たく向けられる。

 立ち上がる隙も、銃を取る余裕もない。機体を仰向けに動かすことも叶わなかった。

 ただ、死が迫る音だけが聞こえた。

(まだ……リーブラン少佐に……恩返し出来ていないのに……)

 涙が頬を伝う。

 ソニファーの笑顔が脳裏に浮かぶ。

「も、申し訳……ございません……ソニ、ファー……お姉さ──」

 その言葉の途中で、背後からビームが放たれた。

 コクピットを貫かれ、ジャンヌの命は一瞬で散った。

 爆炎が上がり、黒煙が空へ昇る。

「お前のような雑魚が、身の程を知れよな……俺の貴重な時間を無駄にしやがって」

 グリフィンは爆散したウィンダムを苦々しく睨みつけた。

 ジャンヌを失い統率を欠いたブルーコスモス部隊は、もはや脅威ではない。

「邪魔だ……どけ」

 吐き捨てるように呟くと、グリフィンは本来の目的──コンパスの壊滅へ向けて、迷いなく進軍を再開した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。