機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH   作:筆先文十郎

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第3章-7 ソド傍観

「どういうことだ……」

 ソドは喉の奥がひりつくような感覚を覚えながら、目の前の光景をただ見つめるしかなかった。

 傭兵時代からの相棒、シースと共に任された任務──『キラ抹殺』。

 その作戦の要を担うはずだった自分たちが、今見ているのは理解不能(・・・・)という言葉すら生ぬるい戦場だった。

 キラのライジングフリーダムが突然ユーラシア連邦側へ進路を変更した時。ソドは最初『陽動か!?』と考えた。

 だが、追って移動した彼らの視界に飛び込んできたのは。味方であるはずのユーラシア連邦軍を攻撃し始めるキラの姿だった。

「……嘘だろ」

 呟きはその場で瞬く間に消えた。

 さらにそのキラを追うように、ファウンデーション軍が進軍してくる。

 その動きは迷いがなく、まるでキラを追うこと(・・・・・・・)が最初から決まっていたかのようだった。

 またキラの進路を妨害しようとしたブルーコスモスを、ファウンデーションが容赦なく排除していく光景に(はらわた)が煮えくり返る思いを覚えた。

(これは……ソニファーが考え抜いた作戦とは明らかに違う……)

 意味が解らない状況と仲間が無残に殺された怒り。激しい二つの感情を抱えつつもソドは思考を(めぐ)らせる。

 ソニファーの作戦は緻密で、どんな状況でも筋道が見えるものだった。

 だが今の戦場には、その筋道(・・)が一切ない。

 まるで誰かが裏で糸を引き、戦場そのものを別の目的(・・・・)へと書き換えているような──そんな不気味さがあった。

 崖下では、奇襲により翼を奪われ、機動力と攻撃力を半減されたキラのフリーダムに、シュラのシヴァが執拗(しつよう)に襲いかかっていた。

 キラは必死に応戦しているが、状況は圧倒的に不利。

 一撃でも致命傷になりかねない。

 ソドは息を呑んだ。

(このままではキラ・ヤマトは──いや、それ以前に、この戦場全体が何か(・・)に飲み込まれる!)

「シース。これはもう俺達の理解の範疇(はんちゅう)を超えている。ソニファーの作戦は完全に崩れている。……お前はここから撤退しろ」

 〈いや、ソドさん……〉

 通信越しのシースの声は震えていた。

 恐怖ではない。名目上上司であり、相棒と呼べる親友を置いていけないという焦りだ。

 だがソドは低く、しかし絶対に逆らえない声で言い放った。

「シース、これは命令だ。お前は下がれ。俺は安全な位置から状況を見届けるだけだ。無駄に危険を増やすな」

 〈……わ、わかりました。ソドさん。必ず会いましょう! 〉

 その言葉には、戦場で何度も死線を越えてきた二人だけが共有する約束が込められていた。

 シースの機体が後ろ髪を引かれるように離脱していくのを見届け、ソドは小さくグーサインを返した。

(無事でいてくれよ、シース……)

 そして視線を崖下へ戻す。

 キラはまだ戦っている。

 だが──その戦いは、あまりにも一方的だった。

 まるでキラを殺すこと(・・・・・・・)が、この戦場全体の意思であるかのように。

 ソドは息を呑み、『この戦場で何が起きているのか』を見届ける覚悟を固めた。

 自分たちの作戦が崩れたのなら、その原因を突き止めなければならない。

 それが、ソニファーを支える戦士としての矜持だった。

 そして何より──この異常な戦場の裏に潜む何か(・・)を見極めるために。

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