機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH   作:筆先文十郎

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第3章-9 ガルガリン対奇襲部隊

 セレーナブリッツ コックピット

(くっ……どうする、私?)

 

 キラの暴走。

 突然の通信障害。

 ファウンデーション軍の進軍。

 アークエンジェルの進路変更。

 ガルガリンの急進。

 

 積み上げてきた盤面が、音を立てて崩れていく。

 この時ソニファーは完全に冷静さを欠いていた。

 普段の彼女ならルナマリアに狙撃用ライフルと通信用スレッドと共に緊急発進を命令したアレクセイ・コノエのように『通信障害=第三勢力の介入』と即座に見抜き、奇襲部隊を急ぎ撤退させつつ何とか味方に撤退するように手段を講じていただろう。

 しかしこの作戦を実行するまでに要した時間や苦労、各所で戦う部下の奮戦を無駄に出来ないという思いが彼女の判断を誤らせた。

 

 アークエンジェル撃墜。

 キラ・ヤマトの動揺。

 そこからの一気に反撃。

 

 自身が描いた勝利の筋書き(・・・・・・)は完全に崩れた。

 崩れゆく盤面を前に、ソニファーの思考は焦りで軋む。冷静さを失いながらも、必死にまだ拾えるもの(・・・・・・・)を探す。

 どんな形でもいい、何か一つでも──この作戦に意味を残さなければ、と。

 そして、追い詰められた思考が導き出した答え。

 ソニファーは歯を食いしばり、叫ぶように命じた。

「計画変更だ! まずはこちらに向かってくるガルガリンを撃墜する!」

 

 

 

「ハァ……ハァ……ハァ……。大丈夫だ、落ち着けカーチス・クラウド」

 ジェットストライカーパックで出撃したカーチスは、ミレイユに代わってモビルスーツ部隊の指揮を執るヒイラーの指示でガルガリンを守るように飛行していた。

(やっぱり慣れないな……戦闘というものは)

 緊張で唇を何度も舐める。そのたびに喉が乾き、呼吸が浅くなる。

(そう言えばイーサが言っていたな)

 歳の近さと味覚の好みがきっかけで親友になったイーサ。

 彼はこう言ってくれた。

「……その恐怖がカーチスのいいところだよ。恐怖を忘れた人間は、平気で死のラインを踏み越えるから」

 欠点だと思っていたものを、長所だと言ってくれた。

 その言葉を思い出すと、不思議と心が落ち着いた。

「そうだ……今一番恐ろしい思いをしているのは、最前線にいるパットン少佐のはずだ。

 まだ敵が見えない自分が恐怖で──」

 〈カーチス、危ない! 〉

「え──」

 

 

 

「……」

 全機出撃命令を受けガルガリンの脇を固めるように飛行するジム。その中で、ジェットストライカーパックで出撃したイーサは得体の知れない感覚を覚えていた。

(何だ、この影に潜んだ何かがこちらを覗いている……そんな感覚は?)

 冷たい汗が身体からにじみ出るのを感じながら、イーサは周囲に視線を走らせる。

「ッ!?」

 その時、視界の隅で何もない空間(・・・・・・)から何かが発射された。

「カーチス、危ない!」

 何かが発射された方向に居た友機の名をイーサは叫んだ。しかしその警告は遅く次の瞬間、カーチスのジムヴィグロリーは左下から突如現れた鋼鉄の槍に貫かれた。

 〈……イーサ……ごめん……──)

 コクピットを貫かれたジムは墜落し、地面に激突し爆発した。

「カーチスッ!」

 突然の戦友の死に無表情以外見たことがないと言われた顔が憤怒に変わった。

 再び別の方向から鋼鉄の槍が放たれる。

「……ッ! そこかッ!」

 イーサは機体を半身ずらす。何もない空間から再度放たれた鋼鉄の槍によって左腕を失うも気にするそぶりもなくイーサはマシンガンを槍が飛んできた方向へ乱射する。ミラージュコロイドによって姿を隠していた青と黒の機体。ソニファーの愛機、セレーネブリッツが姿を現した。

 

 

 

「まさかこんな早くにバレるとはね……」

 ブリッツのミラージュコロイドを解き、フェイズシフトで銃弾を防いだソニファーは苦笑する。

「でもこれで終わりと思わないことね」

 ニヤリと笑ったソニファーは再びミラージュコロイドで姿を消すと、奇襲部隊に次の命令を発した。

 

 

 

「艦長、8時の方向にモビルスーツが出現! クラウド少尉のジムが……ロストしました」

「……」

 状況を伝えるオペレーターのルクスの声は震えていた。最前線ではない、比較的安全とされていた位置での突然訪れた仲間の死。

 その衝撃は、エリオスにも痛いほど理解できた。しかし戦況は悲しみを癒す時間を与えてくれない。

 突如、ガルガリンの前方で巨大な土埃が巻き上がった。

「熱源確認! ビーム、ミサイル多数!」

「回避行動をしつつ撃ち落とせ!」

 ガルガリンがフレア弾を上げながら右に大きく舵を切る。

 〈全機迎撃! ガリガリンに当てさせるな!〉

 ミレイユに代わってモビルスーツ部隊を指揮するヒイラーが叫ぶ。

 土埃の中から飛び出す大量のミサイルに、部隊は必死で迎撃を試みた。

 しかし──

 数が多すぎた。

「ゴットフリート一番、二番被弾! 艦尾を始め各所にも被弾! モビルスーツにも被害!」

「くっ……!」

 エリオスは歯を食いしばる。

(8時方向のモビルスーツは……正面攻撃への注意を逸らすための陽動だったか!)

 奇襲部隊の狙いがようやく見えた。ガルガリンを確実に仕留めるための布石。

 その冷徹さに、エリオスは背筋が冷えるのを感じた。

 

 

 

「よし、少佐のおかげでこちらへの敵の警戒がおろそかになった結果。ありったけの火力を叩きこめて敵に大ダメージを与えたな」

 陽動、そして奇襲部隊を離れアークエンジェル撃墜へ向かったソニファーに代わり指揮権を託されたヒートはまずまずの結果に笑みを浮かべた。

「よし、ここからは白兵戦でガルガリンに肉薄して落とす! ライトとレフトは援護! 後は俺に続け!」

 ドッペルホルン連装無反動砲とランチャーパック装備のウィンダムの援護を受けながら、ヒートのワイルドダガーと2機のジェットストライカーパックのウィンダムがガルガリンに向かった。

 

 

 

「……」

 奇襲部隊の攻撃によって頭部を失ったジェットストライカーパックのジム、そのパイロットのクレアは四足歩行で荒れた地面を走るワイルドダガーをサブカメラで凝視していた。

「あいつはやばい!」

 選択式テストなどでクレアを救った第六感(・・・)がワイルドダガーを自由にさせてはならないと警告した。

「この野郎!」

 ヒイラーの命令も隊列を無視し、クレアのジムはワイルドダガーに斬りかかった。

 

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