機動戦士ガンダムSEED FREEDOM AMBUSH 作:筆先文十郎
「どうなっているんだ、これ?」
星すらも狙い撃てると開発者が豪語した狙撃特化型モビルスーツ──ヴォルテバスタースター。
その安全圏と呼ばれる距離から戦場を監視していたシースは、思わず顔を引きつらせた。
視界の先で、シン・アスカの乗るイモータルジャスティスがファウンデーション軍に取り囲まれていたからだ。それはまるで
「コンパスと共同作戦を行っていたはずのファウンデーションが何故コンパスを攻撃する!?」
シースは思わず口にする。返事をする者などいない。
戦場はシースの混乱を置き去りにしたまま容赦なく進んでいく。
「ッ!?」
シースの視界の端で爆炎が上がる。それはファウンデーション軍によって徹底的に破壊されたアークエンジェルだった。
アークエンジェルが炎と黒煙に包まれ爆発した瞬間、ジャスティスの動きが一瞬止まった。
(まずい……!)
その一瞬を、ルドラは逃さなかった。
黒い影が空気を裂き、ジャスティスへ一気に間合いを詰める。
次の瞬間──ジャスティスの胴体が、真っ二つに切り裂かれた。
「あのジャスティスが……!」
シースの喉がひきつる。
だが、シンは間一髪で脱出していた。
パイロットスーツのまま宙に投げ出されたシンへ、ルドラが無慈悲に手を伸ばす。
握りつぶすつもりだ──そう理解した瞬間。
シンの危機を察知したヒルダ・ハーケンの乗るギャンのヒートロッドが、ルドラの腕を絡め取るように叩きつけた。
「……っ!」
ルドラの動きが一瞬止まる。
その隙を逃さず、ギャンはミサイルを叩き込んだ。
爆炎がルドラの視界を覆い、同時に半壊したジャスティスにも命中する。
その隙にヒルダはシンへ手を伸ばし、コクピットへ引きずり込む。
そのままギャンは全速力で戦場を離脱した。
シースは息を呑んだ。
ルドラが逃げるギャンを数秒だけ見つめていた。
追うか、それとも殺すかを判断しているように見えた。
しかし。
ルドラは追わなかった。
まるで
「何だ……? なぜ追わなかったんだ……?」
シースの疑問は深まるばかりだった。
味方であるはずのコンパスを攻撃するファウンデーション。
アークエンジェルの撃墜。
ジャスティスを切り裂くルドラ。
そして、ギャンの追撃を放棄してどこかへ向かうルドラ。
(何かがおかしい……これは、ただの戦闘じゃない……)
その答えをシースが知るのは、それから数分後のことだった。